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機械要素設計

すべり軸受のゾンマーフェルト数シミュレーター

回転する軸を油膜で支える流体潤滑のすべり軸受(ジャーナル軸受)を設計するツールです。軸径・軸受長さ・すきま・回転数・油の粘度・荷重を変えると、ゾンマーフェルト数と軸受圧力、油膜が成立するかどうかの判定がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
軸(ジャーナル)の直径 D
mm
軸受の長さ L
mm
半径すきま c
µm
軸受穴の半径と軸半径の差
回転数 N
rpm
潤滑油の粘度 µ
mPa·s
運転温度での絶対粘度(動粘度ではない)
半径荷重 W
N
軸を軸受へ押し付ける半径方向の荷重
計算結果
投影面積 (mm²)
軸受圧力 (MPa)
速度パラメータ µN/P
すきま比 r/c
ゾンマーフェルト数 S
潤滑状態の判定
軸受断面 — 油膜くさびと圧力分布

回転する軸が偏心して座り、薄い側に油が引き込まれて圧力くさびを作ります。荷重の反対側は油膜が厚く、荷重側で最小になります。

ゾンマーフェルト数 vs 回転数 N
ゾンマーフェルト数 vs 半径荷重 W
理論・主要公式

$$S=\left(\frac{r}{c}\right)^{2}\frac{\mu\,N}{P},\qquad P=\frac{W}{D\,L}$$

ゾンマーフェルト数 S。r:軸半径、c:半径すきま、µ:潤滑油の絶対粘度、N:毎秒回転数、P:投影面積あたりの軸受圧力、W:半径荷重、D:軸径、L:軸受長さ。

$$\frac{r}{c}=\frac{D/2}{c},\qquad \frac{\mu\,N}{P}=\text{速度パラメータ}$$

すきま比 r/c は通常 500〜1000。速度パラメータ µN/P(粘度・速度・圧力の比)は流体潤滑の成立を支配する。S が大きいほど油膜は厚く安全、小さいほど境界接触の危険が高まる。

すべり軸受とゾンマーフェルト数とは

🙋
「すべり軸受」って、ボールが入っていない、ただの筒みたいな軸受ですよね?あんなシンプルな構造で、どうやって重い軸を支えられるんですか?
🎓
いい質問だね。すべり軸受は、回転する軸(ジャーナル)を、それよりほんの少し大きい筒(軸受メタル)にはめ込んだだけのものだ。でも面白いのは、ちゃんと運転しているとき、軸と筒は実は一度も触れていないということ。両者のすきまに引き込まれた油が、自分で圧力を発生させて軸ごと荷重を浮かせているんだ。これを流体潤滑(ハイドロダイナミック潤滑)と呼ぶ。金属が金属をこすらないから、理想的に運転していればほとんど摩耗しないし、寿命も非常に長い。
🙋
え、油が自分で圧力を作る?油を高圧ポンプで送り込んでいるわけじゃないんですか?
🎓
そう、そこがこの軸受の天才的なところなんだ。軸が回ると、油は粘りけ(粘度)のおかげで軸の表面に引きずられて回り込む。すきまは荷重がかかった側でだんだん狭くなっていて、油はその「くさび形」のすき間に押し込まれる。でも油は逃げ切れないから、そこで圧力がぐっと高まって、軸とその荷重をまるごと持ち上げる。だから油の供給ポンプはあくまで補給用で、支える圧力は軸自身が回転で作っているんだよ。
🙋
なるほど…!じゃあ「ちゃんと浮いているか」はどうやって判断するんですか?パラメータがたくさんあって難しそうです。
🎓
そこで出てくるのが「ゾンマーフェルト数」だ。ドイツの物理学者アーノルト・ゾンマーフェルトが1904年に示したもので、軸径・すきま・粘度・回転数・荷重という多くの量を、たった一つの無次元数 S にまとめてしまう。S =(r/c)²·μN/P と書く。油膜を引き込もうとする「粘度×速度」と、油膜を絞り出そうとする「圧力」の綱引きを、この一つの数字で表しているんだ。左で回転数 N を下げたり荷重 W を上げたりすると、S が小さくなっていくのが見えるはずだよ。
🙋
S が小さいと何が起きるんですか?数字が小さいだけなら問題なさそうですが…。
🎓
S が小さいというのは、油膜が薄くなっているということだ。重荷重・低速・低粘度の油、という条件だね。油膜がある臨界値より薄くなると、軸と軸受の表面の高い突起どうしが触れ始める。これが境界潤滑で、こうなると一気に摩耗が進み、最悪は焼付き(金属が溶着して固まる)に至る。逆に S が大きいときは油膜が厚くて安全だ。実務ではだいたい S が 0.05〜1.0 の範囲を狙う。このツールはその判定を色で教えてくれるよ。
🙋
ゾンマーフェルト数が分かると、ほかに何が分かるんですか?
🎓
これがゾンマーフェルト数の本当にすごいところで、S 一つから軸受のほぼすべての特性が読み取れる。レイモンディとボイドが作った有名な設計線図を使うと、S から軸の偏心率(どれだけ片寄って座っているか)、最小油膜厚さ、摩擦係数、必要な油の流量まで全部出てくる。だからすべり軸受の設計は「まず S を求める」ところから始まる。このツールで S を出して、それが安全域に入っているかをまず確認する、という使い方をしてほしい。

よくある質問

ゾンマーフェルト数 S は、すべり軸受の運転状態を一つにまとめた無次元数で、S =(r/c)²·μN/P で定義されます。r/c は軸半径とすきまの比、µ は潤滑油の粘度、N は毎秒回転数、P は投影面積あたりの軸受圧力です。S が大きいほど油膜は厚く安全、小さいほど油膜が薄く境界潤滑のリスクが高まります。S が分かれば、レイモンディ・ボイドの設計線図を通じて偏心率・最小油膜厚さ・摩擦・必要油量まで読み取れます。
一般的なすべり軸受では、ゾンマーフェルト数 S がおおよそ 0.05〜1.0 の範囲なら良好な流体潤滑が成立し、軸と軸受は油膜で完全に隔てられます。S が 0.05 を下回ると油膜が薄くなりすぎて境界潤滑に近づき、突起同士が接触して摩耗・焼付きの危険が出ます。逆に S が 1.0 を大きく超えると油膜は非常に厚い軽負荷状態で、安全ではありますが油膜の不安定(オイルホイップ)に注意が必要です。
ゾンマーフェルト数 S =(r/c)²·μN/P を上げれば油膜は厚くなります。手段は、(1) 粘度 µ の高い潤滑油に変える、(2) 回転数 N を上げる(運転条件で可能なら)、(3) 軸受圧力 P を下げる=投影面積 D·L を大きくする、(4) すきま c を小さくして r/c を上げる、の4つです。ただし粘度を上げすぎると摩擦損失と発熱が増え、すきまを詰めすぎると油の供給が不足するため、バランスで決めます。
すべり軸受は、油膜が金属接触を完全に防ぐため摩耗がほぼなく、衝撃・振動の吸収にも優れ、静粛で、極めて高荷重・高速にも耐えます。発電用蒸気タービン、大型エンジンのクランク軸、大型ポンプなどは、ほぼすべてすべり軸受です。一方、起動・停止時は油膜が形成されず境界潤滑になる弱点があり、低速・断続運転や潤滑が難しい用途では転がり軸受が有利です。連続・高速・高荷重ならすべり軸受、と覚えておくとよいです。

実世界での応用

発電用タービン・大型回転機械:火力・原子力発電所の蒸気タービンや発電機の軸は、すべてすべり軸受で支えられています。数十トンのローターを高速回転させながら、油膜だけで完全に浮かせて運転するため、転がり軸受では到底耐えられない高荷重・連続運転が可能です。これらの軸受設計では、ゾンマーフェルト数から最小油膜厚さと偏心率を求め、回転体の振動特性(オイルホワール・オイルホイップ)まで合わせて検討します。

内燃機関のクランク軸・コンロッド:自動車やディーゼルエンジンのクランク軸メタル、コンロッドの大端メタルは、典型的なすべり軸受です。爆発行程ごとに荷重の向きと大きさが激しく変動するため、瞬間ごとのゾンマーフェルト数と油膜厚さを評価する動的な設計が必要です。軸受メタルにはなじみ性のよいケルメットやアルミ合金が使われ、起動時の境界潤滑に備えてオーバーレイ層を設けます。

大型ポンプ・コンプレッサ・送風機:上下水道の大型ポンプ、プロセスコンプレッサ、産業用送風機など、長時間連続運転する流体機械の軸受にすべり軸受が選ばれます。静粛性が高く、適切に潤滑されていれば寿命が事実上無限であることが大きな利点です。設計ではゾンマーフェルト数を安全域に収めつつ、軸受圧力が許容面圧(軸受材料で決まる)を超えないことを確認します。

軸受のトラブル解析:「軸受が異常に発熱する」「異音や振動が出る」「軸受メタルが摩耗・焼付いた」といった不具合では、ゾンマーフェルト数が小さくなって油膜が切れていることが原因の多くを占めます。本ツールのような簡易計算で運転点の S を確認し、荷重・粘度・回転数・すきまのどれを見直すべきかの当たりをつけます。詳細には熱バランスと油の流量計算も併用します。

よくある誤解と注意点

まず多い誤解が、「すべり軸受は金属がこすれて摩耗する古い軸受」というものです。正しく流体潤滑が成立しているすべり軸受は、軸と軸受が油膜で完全に隔てられ、金属どうしは接触しません。だから摩耗はほぼゼロで、寿命は事実上無限です。摩耗が問題になるのは、起動・停止のたびに一瞬だけ生じる境界潤滑のときと、ゾンマーフェルト数が小さすぎて油膜が切れたときだけです。すべり軸受が「摩耗する」なら、それは設計か運転条件が間違っているサインだと考えてください。

次に、「粘度パラメータの µ は動粘度を入れればよい」という思い込み。ゾンマーフェルト数に使う µ は絶対粘度(動粘度ではない)で、単位は Pa·s(このツールでは mPa·s で入力)です。動粘度(mm²/s = cSt)を使うと密度の分だけ値がずれます。さらに重要なのが、粘度は温度で大きく変わる点です。鉱油は温度が10°C上がると粘度がほぼ半分になります。カタログの40°C粘度をそのまま使うと、実際の運転温度(油膜のせん断発熱で60〜80°Cになることも多い)では油膜が想定より薄くなり、計算上は安全でも実機では境界潤滑に陥ります。必ず運転温度での粘度を使ってください。

最後に、「ゾンマーフェルト数が大きければ大きいほど良い」という誤解。確かに S が大きいほど油膜は厚く、摩耗の心配は減ります。しかし S が極端に大きい軽負荷・高速の条件では、軸が軸受のほぼ中心に座ってしまい、油膜が回転体を支える「ばね」としての偏りを失います。すると油膜自体が不安定になり、軸が軸受内をぐるぐる振れ回るオイルホワール・オイルホイップという自励振動が起きることがあります。すべり軸受の設計は、油膜が切れない下限と、振動が出ない上限の間の安全域を狙うものだと理解してください。

使い方ガイド

  1. 軸径(mm)・軸受幅(mm)・ラジアルすきま(μm)を入力し、設計対象のジャーナル軸受寸法を定義する
  2. 回転速度(rpm)と油粘度(mPa·s)を設定し、運転条件に対応した値を反映させる
  3. 「計算実行」ボタンでゾンマーフェルト数Sを算出し、S > 3で完全油膜、S < 0.5で境界潤滑と判定される油膜成立条件を確認する
  4. 軸受圧力(MPa)が許容値を超えないか、速度パラメータμN/Pが100~1000の設計域内かをチェックして潤滑状態を評価する

具体的な計算例

軸径30mm、軸受幅25mm、ラジアルすきま0.05mm、機械油ISO VG 32(粘度32mPa·s)、回転数1500rpmの条件での計算:投影面積750mm²、軸受圧力1.2MPa、速度パラメータμN/P=550、すきま比r/c=0.0017、ゾンマーフェルト数S=4.2となり、完全油膜潤滑状態(S > 3)が確保され、通常の工業機械用モータ軸受として正常な設計値です。

実務での注意点