そこで出てくるのが「ゾンマーフェルト数」だ。ドイツの物理学者アーノルト・ゾンマーフェルトが1904年に示したもので、軸径・すきま・粘度・回転数・荷重という多くの量を、たった一つの無次元数 S にまとめてしまう。S =(r/c)²·μN/P と書く。油膜を引き込もうとする「粘度×速度」と、油膜を絞り出そうとする「圧力」の綱引きを、この一つの数字で表しているんだ。左で回転数 N を下げたり荷重 W を上げたりすると、S が小さくなっていくのが見えるはずだよ。
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S が小さいと何が起きるんですか?数字が小さいだけなら問題なさそうですが…。
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S が小さいというのは、油膜が薄くなっているということだ。重荷重・低速・低粘度の油、という条件だね。油膜がある臨界値より薄くなると、軸と軸受の表面の高い突起どうしが触れ始める。これが境界潤滑で、こうなると一気に摩耗が進み、最悪は焼付き(金属が溶着して固まる)に至る。逆に S が大きいときは油膜が厚くて安全だ。実務ではだいたい S が 0.05〜1.0 の範囲を狙う。このツールはその判定を色で教えてくれるよ。
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ゾンマーフェルト数が分かると、ほかに何が分かるんですか?
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これがゾンマーフェルト数の本当にすごいところで、S 一つから軸受のほぼすべての特性が読み取れる。レイモンディとボイドが作った有名な設計線図を使うと、S から軸の偏心率(どれだけ片寄って座っているか)、最小油膜厚さ、摩擦係数、必要な油の流量まで全部出てくる。だからすべり軸受の設計は「まず S を求める」ところから始まる。このツールで S を出して、それが安全域に入っているかをまず確認する、という使い方をしてほしい。
一般的なすべり軸受では、ゾンマーフェルト数 S がおおよそ 0.05〜1.0 の範囲なら良好な流体潤滑が成立し、軸と軸受は油膜で完全に隔てられます。S が 0.05 を下回ると油膜が薄くなりすぎて境界潤滑に近づき、突起同士が接触して摩耗・焼付きの危険が出ます。逆に S が 1.0 を大きく超えると油膜は非常に厚い軽負荷状態で、安全ではありますが油膜の不安定(オイルホイップ)に注意が必要です。
ゾンマーフェルト数 S =(r/c)²·μN/P を上げれば油膜は厚くなります。手段は、(1) 粘度 µ の高い潤滑油に変える、(2) 回転数 N を上げる(運転条件で可能なら)、(3) 軸受圧力 P を下げる=投影面積 D·L を大きくする、(4) すきま c を小さくして r/c を上げる、の4つです。ただし粘度を上げすぎると摩擦損失と発熱が増え、すきまを詰めすぎると油の供給が不足するため、バランスで決めます。
軸受のトラブル解析:「軸受が異常に発熱する」「異音や振動が出る」「軸受メタルが摩耗・焼付いた」といった不具合では、ゾンマーフェルト数が小さくなって油膜が切れていることが原因の多くを占めます。本ツールのような簡易計算で運転点の S を確認し、荷重・粘度・回転数・すきまのどれを見直すべきかの当たりをつけます。詳細には熱バランスと油の流量計算も併用します。
最後に、「ゾンマーフェルト数が大きければ大きいほど良い」という誤解。確かに S が大きいほど油膜は厚く、摩耗の心配は減ります。しかし S が極端に大きい軽負荷・高速の条件では、軸が軸受のほぼ中心に座ってしまい、油膜が回転体を支える「ばね」としての偏りを失います。すると油膜自体が不安定になり、軸が軸受内をぐるぐる振れ回るオイルホワール・オイルホイップという自励振動が起きることがあります。すべり軸受の設計は、油膜が切れない下限と、振動が出ない上限の間の安全域を狙うものだと理解してください。