化学吸着はサイト依存性と単分子層性が強く、ラングミュアモデルが比較的よく当てはまります。物理吸着は弱い相互作用のため多層化しやすく、低圧域ではラングミュア的でも高被覆率ではBETモデルへの拡張が必要です。実測データを 1/θ vs 1/p または p/n vs p(線形化形)でプロットして直線性を確認するのが目安です。
Langmuir-Hinshelwood 機構では、反応速度が吸着種の被覆率の積 r = k θ_A θ_B で表されます。低圧では r ∝ p、飽和域では r が一定(圧力に依らない)となり、最適圧力は両者の中間に現れます。活性金属表面への CO や H_2 の吸着を等温線で評価し、温度と圧力の運転窓を決めるのが触媒運転設計の出発点です。
BET は多層吸着を扱い、第2層以降の吸着熱が液化熱に等しいと仮定します。窒素吸着による比表面積測定(BET法、相対圧 0.05〜0.35)で広く使われます。フロインドリッヒは $\theta = K p^{1/n}$ の経験式で、サイトが不均一な実表面に適合しやすい一方、飽和を表現できません。ラングミュアは均一サイト・単分子層の理想モデルで、教科書的・触媒モデルの基準として最も重要です。
最も多い誤解は、「ラングミュア等温線がどんな吸着現象にも当てはまる」と思い込むことです。このモデルは「等価なサイト」「単分子層」「分子間相互作用なし」「ΔH 一定」という4つの理想化された仮定の上に成り立っています。現実の表面はステップ・キンク・欠陥などサイトの異質性を持ち、隣接吸着分子の反発・引力相互作用もあります。とくに高被覆率域や多層吸着が起こる物理吸着では、ラングミュア式は系統的に実測からずれます。データを 1/θ vs 1/p で線形化したときに直線にならなければ、フロインドリッヒ・テムキン・BETなど他モデルへの切り替えが必要です。
次に多いのが、K の温度依存性を見落として「等温線は1本で十分」と考えることです。K は ΔH と T を介して指数関数的に変化するため、温度が50K違うだけで K は数倍〜数十倍動きます。シミュレーターの下半パネルで T=250〜600K の4本を並べてみると、同じ ΔH でも曲線がほぼ3桁も右にシフトすることが分かります。実プロセスの設計では、運転温度帯での K の値を必ず確認する必要があります。逆に複数温度の等温線から van't Hoff プロット ln K vs 1/T を作れば、傾きから ΔH を実験的に決定できます。
最後に、「被覆率 θ」と「吸着量 n」を混同する点に注意してください。θ は「全サイト数に対する占有割合(0〜1)」で無次元、n は「吸着剤単位質量あたりのモル数(mol/g)」など実測量です。両者の関係は n = n_max · θ で、最大吸着量 n_max は表面積とサイト密度で決まる定数。実験データを等温線でフィットするときは、まず n を θ に変換する(n_max を別途決める)必要があります。BET法による比表面積測定もこの考え方を使っており、ラングミュア型データの解析では「全サイト数」の見積りが結果の信頼性を支配します。