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電磁気・光学

無線リンクバジェット計算機(フリスの公式)

フリスの伝達方程式で受信電力・SNR・リンクマージンをリアルタイム計算。BPSK〜64QAMの変調比較・雨減衰・大気吸収損失も含む。

パラメータ設定
プリセット
送信電力 P_t
dBm
周波数 f
MHz
距離 d
km
送信アンテナ利得 G_t
dBi
受信アンテナ利得 G_r
dBi
雑音指数 NF
dB
帯域幅 BW
MHz
その他損失 L_misc
dB
降雨減衰 (ITU-R)
dB
変調方式
目標BER

一時停止中はスライダーを動かすと結果が即座に更新されます。

計算結果
距離 d [km]
自由空間損失 FSPL [dB]
受信電力 P_r [dBm]
リンクマージン M [dB]
リンクバジェット可視化
受信電力分布
ウォーターフォール
理論・主要公式
$$P_r = P_t + G_t + G_r - L_{fs}- L_{misc}\quad \text{[dBm]}$$ $$L_{fs}= 20\log_{10}\!\left(\frac{4\pi d}{\lambda}\right) = 20\log d + 20\log f - 147.55 \;\text{[dB]}$$ $$N_{floor}= -174 + NF + 10\log_{10}(BW) \quad \text{[dBm]}$$ $$SNR = P_r - N_{floor}, \quad M = SNR - SNR_{req}$$

無線リンクバジェット計算機(フリスの公式)とは

🙋
「無線リンクバジェット」って何ですか?電波が届くかどうかの計算ですか?
🎓
その通り!大まかに言うと、送信側から出た電波が、どれだけ弱まって相手に届くかを計算するのがリンクバジェットだ。例えば、Wi-Fiルーターからスマホに電波が届くとき、距離や壁の有無で電波強度が変わるよね。このシミュレーターでは、上の「距離 d」や「周波数 f」のスライダーを動かすと、リアルタイムで「受信電力」がどう変わるか確認できるよ。
🙋
「リンクマージン」が計算結果に出てきますが、これがプラスならOKということですか?
🎓
そうだね。リンクマージンは、ぎりぎり必要な電力に対して、どれだけ余裕があるかを示す安全マージンだ。実務では、雨や建物の影による減衰(フェージング)を考慮して、10〜20 dBのマージンを確保することが多い。試しに「降雨減衰」のスライダーを上げてみて。マージンが一気に減って、通信が危うくなるのがわかるはずだ。
🙋
変調方式をBPSKから64QAMに変えると、必要なSNRがすごく上がりますね。これはどういう意味ですか?
🎓
良いところに気づいたね。64QAMは一度に多くのデータを送れる(高速通信)けど、その分、ノイズに弱くなるんだ。つまり、綺麗で強い電波じゃないと復号できない。逆にBPSKは遅いけど、ノイズに強い。シミュレーターで「距離 d」を増やしながら、各変調方式でリンクマージンが0になるポイントを探してみよう。実は、遠くの端末とは低速(BPSK)でしか通信できない、という現実的なトレードオフが体感できるよ。

よくある質問

受信電力は通常ミリワット単位で非常に小さいため、dBm表記ではマイナス値になります。例えば0dBmは1mW、-30dBmは0.001mWです。本ツールではフリスの公式に基づき、送信電力から距離や周波数による損失を差し引いた結果をリアルタイムで表示しています。
雨減衰は周波数と降雨強度(mm/h)に依存しますが、本ツールでは雨減衰欄に減衰量を dB で直接入力する方式です。実際の降雨強度から dB を求める際は ITU-R P.838 などの降雨減衰モデルを別途用い、その結果(例:Ku帯・中程度の雨で数 dB)を入力してください。入力した dB がリンクマージンに反映されます。
BPSKから64QAMに切り替えると、1シンボルあたりの伝送ビット数が増え周波数利用効率が向上しますが、所要SNR(信号対雑音比)が高くなります。本ツールでは各変調方式の理論的な所要SNRを表示し、現在の受信SNRと比較することで、リンクが成立するか即座に確認できます。
大気吸収損失は主に60GHz付近の酸素吸収帯や24GHz・183GHzの水蒸気吸収帯で顕著になります。10GHz以下では通常0.1dB/km未満で無視できますが、ミリ波帯(30GHz以上)や長距離リンクでは数dB/kmに達します。本ツールには大気吸収の専用入力はないため、見積もった大気吸収量は「その他損失 L_misc」に含めて入力してください。

実世界での応用

衛星通信のリンク設計:地球局と衛星間の超長距離通信の成立可否を検討します。可視範囲や降雨減衰(ITU-Rモデル)を考慮し、必要なアンテナサイズ(利得)や送信出力を決定する際の基本計算ツールとして使われます。

5G/6G基地局のネットワーク計画:ミリ波帯を用いる5Gでは、路損失が大きく、建物や人体の遮蔽の影響が深刻です。カバレッジエリアをシミュレーションし、基地局の最適な配置間隔や、ビームフォーミングによるアンテナ利得の効果を評価します。

IoTデバイスのバッテリー寿命見積もり:LPWA(省電力広域)ネットワークに接続するセンサーデバイスでは、最小限の送信電力で最大通信距離を達成する設計が求められます。リンクバジェット計算から必要な送信電力を決め、消費電力とバッテリー容量の設計にフィードバックします。

CAE(電磁界解析)との連携:FDTD法やモーメント法によるアンテナの詳細な電磁界解析で得られた「放射パターン」や「実効利得」の値を、この計算機の $G_t$ や $G_r$ に入力します。これにより、個々のアンテナ性能がシステム全体の通信可能距離に与える影響を、システムレベルで素早く評価できます。

よくある誤解と注意点

この計算ツールは強力ですが、いくつかの落とし穴があります。まず、「計算結果がプラスなら絶対に通信できる」と考えるのは危険です。フリスの公式は「見通し(LOS)環境」が前提。実際には、木やカーテン、さらには人が通るだけで数dBの損失が発生します。例えば、2.4GHz帯で、計算上は10dBのマージンがあっても、オフィスのパーティションを1枚挟むだけで簡単に吹き飛びます。次に、アンテナ利得[dBi]の意味を誤解しないでください。dBiは「等方性アンテナ(全方向に均等に放射する仮想アンテナ)に対する相対値」です。10dBiのアンテナはパワーを増幅する魔法の装置ではなく、電波を特定方向に「絞る」ことで実現する相対的な強さです。最後に、送信電力[dBm]と消費電力[W]は別物です。回路の消費電力が大きくても、アンテンへの給電効率が悪ければ送信電力は小さくなります。データシートの「送信出力」と「消費電力」は必ず区別して確認しましょう。

使い方ガイド

  1. 送信電力(ptValNum)を1~50 dBmの範囲で設定します。例:衛星通信の場合は30 dBm、地上基地局は20 dBmが標準です
  2. 周波数(freqValNum)をMHz単位で入力します。Ka帯(29.5~30 GHz)、Ku帯(12 GHz)、L帯(1.5 GHz)など通信方式に合わせて選択してください
  3. 送受信アンテナゲイン(gtValNum)をdBi単位で指定し、距離(distValNum)をkmで入力するとフリスの公式により受信電力Prが自動計算されます

具体的な計算例

衛星リンク(雨減衰考慮):送信電力Pt=40 dBm、周波数f=12 GHz(Ku帯)、距離d=38,000 km、送信ゲインGt=50 dBi、受信ゲインGr=40 dBi、雑音指数NF=2 dB、帯域幅BW=36 MHz、その他損失1 dB、降雨減衰3 dBの場合、自由空間損失L_fs≈205.6 dBで受信電力Pr≈−79.6 dBmとなります。雑音フロアN_floor≈−96.4 dBmからSNR≈16.8 dBが得られ、QPSK(所要SNR≈10.5 dB、BER=10⁻⁶)ではリンクマージンM≈+6.3 dBで通信が成立します。

実務での注意点

  1. 周波数が高いほど自由空間損失が増加するため、Ka帯(35 GHz)利用時はL帯(1.5 GHz)比で+28 dBの損失増が発生します。アンテナゲイン強化で補償が必要です
  2. 降雨地域での運用時、東京10 mm/h降雨時のKu帯減衰は約2.1 dB/100 kmが標準値です。可用性99.9%の要求では-3.0 dB以上のマージンを確保してください
  3. 大気吸収損失(酸素22 GHz、水蒸気183 GHz周辺)が顕著な帯域では、高度な伝搬モデル(ITU-R P.676)適用をシミュレータで検証することが重要です