撹拌タンク設計計算ツール 戻る
流体解析

撹拌タンク設計計算ツール — 動力数・所要動力・混合時間

タンク寸法・インペラー径・回転数・流体物性を入力し、所要動力P(W)・比動力P/V(W/m³)・混合時間θ_blendをリアルタイム計算。Np-Re動力数曲線と動力vs回転数グラフで設計を最適化。

タンク寸法・インペラー
タンク径 T
m
液高さ H
m
インペラー径 D
m
回転速度 N
rpm
流体物性
密度 ρ
kg/m³
粘度 μ 1.000 mPa·s
0.001 — 1000 mPa·s(対数スケール)
計算結果

一時停止中はスライダーを動かすと結果が即座に更新されます。

撹拌タンク・リアルタイムアニメーション
循環粒子(軸流+径流) トレーサー色素 インペラー(先端速度)
インペラーが流体を汲み上げ・循環させ、色素が混合時間でほぼ均一になります。N を上げると循環が速まり、動力は N³ で急増します。
計算結果
55300
Re(撹拌)
5.0
Np(動力数)
P (W)
P/V (W/m³)
先端速度 (m/s)
流れのレジーム
混合時間 θ_blend (s)
所要動力 P vs 回転速度 N(3インペラー比較)
Np-Re 動力数曲線(ラッシュトンタービン)
理論・主要公式

撹拌レイノルズ数:

$$Re = \frac{\rho N D^2}{\mu}$$

所要動力:

$$P = N_p \rho N^3 D^5$$

混合時間(Nienow乱流相関):

$$\theta_{blend}= \frac{5.9}{N}\left(\frac{T}{D}\right)^{2.43}\left(\frac{T}{H}\right)^{0.5}$$

撹拌タンク設計計算ツールとは

🙋
「動力数Np」って何ですか?計算結果のグラフで、ラッシュトンタービンは値が高くて、マリンプロペラは低いけど…。
🎓
大まかに言うと、インペラー(撹拌翼)の「動力の食いっぷり」を表す無次元数だよ。同じ回転速度でも、抵抗が大きい形状ほどNpは高くなる。上の「粘度 μ」のスライダーを動かしてReを小さく(層流域に)してみて。どのインペラーもNpが急激に上がるのがわかるよね。これは粘性抵抗が支配的になるからだ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、所要動力Pの式 $P = N_p \rho N^3 D^5$ で、Npが一番効くということ?実務で動力不足ってよくあるんですか?
🎓
その通り。Npは定数じゃなくて、流れの状態(Re)と形状で決まるんだ。実務で多いのは、液の粘度を低く見積もって小さなモーターを選んだら、実際は高粘度で回せなかった…という失敗だね。このツールで「密度 ρ」や「粘度 μ」を実機に近い値に変えて、必要な動力が何kWになるか確認するのが第一歩だ。
🙋
「混合時間」も計算されてますね。インペラー径Dを小さくすると、なぜ混合時間が非常に長くなるんですか?
🎓
良いところに気が付いたね。混合時間は $θ_{blend}\propto (T/D)^{2.43}$ に比例するから、タンク径Tに対してインペラー径Dが小さい(T/Dが大きい)と、混合にすごく時間がかかるんだ。右のパラメータで「インペラー径 D」をタンク径の半分から1/3に変えてみて。所要動力は減るけど、混合時間が何倍にもなるのがわかるよ。トレードオフの関係なんだ。

よくある質問

いいえ、Npは自動計算されます。入力されたインペラー形状(タービン、プロペラなど)とレイノルズ数Reに基づき、Np-Re曲線からリアルタイムで決定されます。層流域ではNpはReに反比例し、乱流域では一定値に収束します。
乱流条件ではθ_blend = 5.2 × (V^(1/3) / (N × D^2)) × (T/D)^(1/2) を、層流条件では別の相関式を用いています。タンク径T、インペラー径D、回転数N、液量Vから推定し、スケールアップの指標として活用できます。
グラフ表示を活用してください。動力vs回転数のグラフで急激な変化がないか、Np-Re曲線が既知のインペラー特性と乖離していないかを目視確認できます。また、比動力P/Vが一般的な撹拌操作の目安(例:均一混合で10~100 W/m³)と合致するかも判断基準になります。
高粘度ではReが小さくなり層流域になります。このツールでは層流用のNp相関式が適用されるため問題ありませんが、実際の設計ではモーターのトルク限界や発熱に注意してください。また、混合時間が長くなるため、比動力P/Vを通常より高めに設定する必要があります。

実世界での応用

化学・医薬品製造:反応槽や溶解槽の設計で、反応物を均一に混合するための適切なインペラー選定とモーターサイジングに使用されます。特にスケールアップ(実験室規模から工場規模へ)時には、このツールで扱う相似則が重要になり、混合性能を保ちつつ動力が許容範囲内かどうかを検討します。

食品・飲料工業:ソースやドレッシングの混合、醸造工程などで応用されます。製品によっては高い粘度を持つため、層流域(Reが小さい)での動力数Npの正確な把握が、撹拌機の過負荷防止につながります。

水処理・廃水処理:凝集沈殿池や薬品混合槽の設計に利用されます。マリンプロペラのような低動力数(Np)のインペラーを用いて、大きな槽を低動力でゆっくり撹拌し、フロック(凝集塊)を破壊しないようにする設計が典型的です。

バイオリアクター(発酵槽):微生物や細胞にせん断ストレスを与えずに酸素や栄養分を均一に供給するために、撹拌条件が最適化されます。混合時間の推定は、培養液の均質性を保証する上で重要なパラメータとなります。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始める際、特に実務未経験の方が陥りがちな落とし穴がいくつかあります。まず大きな誤解は「動力数Npはインペラーのカタログ値で固定」と思い込むことです。確かに乱流域ではほぼ一定ですが、液の粘度が高いとReが下がり、Npは大きく変わります。例えば、水(μ=1mPa·s)でNp=5だったラッシュトンタービンが、グリセリン水溶液(μ=100mPa·s)ではNpが20以上に跳ね上がることも。粘度を甘く見ると、モーターが定格電流を超えて焼損する危険があります。

次に、「混合時間が短ければ全てOK」という考え方です。確かに混合時間は重要ですが、例えば結晶化や菌体培養のように「せん断力に弱い物質」を扱う場合、プロペラのような高回転・小径インペラーは粒子を破壊してしまいます。所要動力と混合時間だけでなく、「せん断速度」や「循環流量」といった別の視点も必要です。

最後に、パラメータ入力時の単位ミスです。ツールはSI単位系(m, s, kg)が基本です。実務でよくあるのが、回転速度を[rpm]のまま入力したり、粘度を[cP]で入力し忘れて1000分の1の値を入れてしまうこと。例えば、100 rpmは $100/60 \approx 1.67$ [1/s] に、1000 cPは1 [Pa·s] に変換する必要があります。計算結果が現実とかけ離れていたら、まず単位を疑いましょう。

使い方ガイド

  1. タンク径T、液高H、攪拌翼径D、回転数N、密度ρ、粘度μを入力します
  2. 数値カードはラッシュトンタービン6枚翼(乱流Np≈5.0)として計算し、下のグラフで他インペラーの動力曲線と比較します
  3. レイノルズ数Re=(ρND²/μ)を計算し、層流・乱流領域を判定。P=Np・ρ・N³・D⁵で所要動力を算出します
  4. 混合時間θ_blend=(5.9/N)(T/D)^2.43(T/H)^0.5で均一混合達成時間を推定し、単位体積当たり動力P/Vも表示されます

具体的な計算例

水1000L級の撹拌タンク(T=1.0m、H=1.3m、D=0.33m)をラッシュトンタービン6枚翼で回転数120rpmで撹拌する場合:Re≈217800(乱流)、Np≈5.0、所要動力P≈156.5W、単位体積動力P/V≈153W/m³(0.153W/L)、混合時間θ_blend≈38.3秒となります。容量やインペラー径を変えたスケールアップでは、P/V一定・先端速度一定・混合時間一定など、どの相似条件を優先するかを別途決める必要があります。

実務での注意点

  1. 非ニュートン流体(CMC1.5%水溶液μ=200mPa・s)では乱流域が消失し、Npが2倍以上に跳ね上がるため動力予測に注意が必要です
  2. ガス吹込み撹拌の場合、ガスホールドアップ増加で見掛け粘度低下し、計算値より実動力が20~30%低くなる傾向があります
  3. 軸部浮力による誤差を避けるため、液高H/D比は1.0~2.0の範囲が推奨です。H/D<0.8では循環不良、>2.5では軸強度問題が生じます