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熱流体・空調シミュレーター

外気・還気エンタルピー混合シミュレーター

外気(OA)と還気(RA)の混合空気を、エンタルピー保存則で計算。外気温・湿度・外気導入率を変えると、空気線図上の3状態点 OA・RA・MA がリアルタイムに動きます。

パラメータ設定
外気乾球 T_oa
°C
外気相対湿度 RH_oa
%
還気乾球 T_ra
°C
外気導入率 OAF
%

還気の相対湿度は 50%、大気圧は 1013 hPa で固定。OAF=0% は全還気循環、100% は全外気導入を意味します。

計算結果
混合温度 T_ma
混合絶対湿度 w_ma
混合エンタルピー h_ma
混合相対湿度 RH_ma (計算)
空気線図上の混合(T–w)

赤=外気 OA / 青=還気 RA / 緑=混合 MA。3点は直線上に並び、MA は OAF に応じて OA–RA 間を移動します。

理論・主要公式

外気(流量 $m_\text{oa}$)と還気(流量 $m_\text{ra}$)が混合する場合、外気導入率 $x = m_\text{oa}/(m_\text{oa}+m_\text{ra})$ として、混合空気の絶対湿度と比エンタルピーは加重平均で求まります。

質量保存則(絶対湿度):

$$w_\text{ma} = x\,w_\text{oa} + (1-x)\,w_\text{ra}$$

エネルギー保存則(比エンタルピー):

$$h_\text{ma} = x\,h_\text{oa} + (1-x)\,h_\text{ra}$$

湿り空気の比エンタルピーから混合温度を逆算($w$ は kg/kg、$h$ は kJ/kg DA):

$$T_\text{ma} = \frac{h_\text{ma} - 2.501\,w_\text{ma}}{1.006 + 1.86\,w_\text{ma}}$$

飽和水蒸気圧は Magnus 型式 $e_s(T)=6.112\exp[17.62\,T/(243.12+T)]$ hPa、絶対湿度は $w = 622\,e/(p-e)$ g/kg を用いています。

外気・還気エンタルピー混合シミュレーターとは

🙋
ビルの空調って、外の空気を全部取り込んでるわけじゃないんですよね?室内の空気と外気を混ぜてるって聞きました。
🎓
そうそう。外気を全部入れて冷やすと電気代がとんでもないことになるから、室内の戻り空気(還気)と外気を一定比率で混ぜてから冷却・除湿するんだ。その混ぜ方を決めるのが「外気導入率 OAF」で、上のスライダーで動かせるよ。例えば OAF=30% なら、混合空気の3割が外気、7割が還気だ。
🙋
混ぜたあとの温度って、ただの平均で計算していいんですか?
🎓
原則は「比エンタルピー」と「絶対湿度」の加重平均なんだ。湿度が違う2つの空気を混ぜると、空気の比熱が変わるから、温度を直接平均しても完全には合わない。ただ通常の空調レンジでは差が0.1°C未満なので、現場では温度の加重平均でも実用上OK。このツールはエンタルピー逆算で厳密に計算しているけど、デフォルト値(32°Cと26°Cを3:7)で出てくる27.8°Cは単純平均ともほぼ一致するよ。
🙋
空気線図の3つの点が直線上に並んでますね。これって何か意味があるんですか?
🎓
大事なポイント。混合は質量保存とエネルギー保存だけで決まるから、空気線図上では OA と RA を結ぶ直線上のどこかに必ず MA が乗るんだ。OAF を 0% にすると MA は RA に重なり、100% にすると OA に重なる。中間では OAF の比率に応じて直線上を内分する。これを「混合直線の法則」と呼ぶよ。実務ではこの図を見ながら、外気が暑すぎる夏は OAF を最小換気量まで絞り、外気が涼しい中間期は OAF を100%にして「外気冷房」する判断をするんだ。
🙋
「混合相対湿度」も表示されてますね。外気60%、還気50%なのに、混合後は55%くらいになるのはなぜ?
🎓
相対湿度は加重平均で出てこないからだよ。混合計算は絶対湿度(kg/kg)で行い、混合後の温度で改めて飽和水蒸気圧と比較して相対湿度を求める。だから直線的にはならない。混合温度が下がれば飽和圧も下がるので、同じ絶対湿度でも相対湿度は上がる。「相対湿度の加重平均で出していいや」と省略すると数%ずれることがあるから、特に結露ぎりぎりの設計では絶対湿度ベースで考えるのが鉄則だ。

よくある質問

湿り空気はエネルギーが「乾き空気の顕熱」と「水蒸気の潜熱・顕熱」の和で表され、これら全体を1つの値にしたのが比エンタルピーです。エネルギー保存則は比エンタルピー × 質量流量に対して成り立つため、混合後のエンタルピーは2流体のエンタルピーの加重平均となり、計算が一貫します。温度は熱物性が湿度に依存するため、厳密には加重平均が成り立ちません。
建築基準法や ASHRAE 62.1 などの換気基準で定められた「1人あたりの必要外気量」と「在室人数」から最低 OAF が決まります。一般的なオフィスでは 20〜40% 程度です。夏冬の極端な外気条件では省エネのため最低値で運転し、中間期に外気エンタルピーが室内より低い場合は OAF を100%まで上げる「外気冷房(エコノマイザ)」運転で大幅な省エネが可能です。
標高の高い場所(例:標高1000m で 約899 hPa、富士山頂で約630 hPa)では絶対湿度・エンタルピーの計算結果が変わります。$w = 622\,e/(p-e)$ の $p$ が小さくなるため、同じ温度・相対湿度でも絶対湿度は大きくなります。本ツールは平地(1013 hPa)に最適化しています。高地用途では補正係数を別途考慮するか、専用の高地用空気線図を参照してください。
理論的にはあり得ます。例えば「暖かく湿った外気」と「冷たく乾いた還気」を混ぜたとき、混合直線が一時的に飽和線の上側を通ると、混合空気は過飽和になり微小水滴(霧)が発生します。これを「混合霧」と呼びます。本ツールの既定範囲では発生しませんが、極端なパラメータで混合点が飽和域に入る場合は、空調機内で結露やドレン水が発生することを示します。実機では除湿コイルの容量設計に直結する重要な現象です。

実世界での応用

セントラル空調機(AHU)の混合チャンバ設計:ビルや工場の中央空調では、屋上から取り入れた外気と各階から戻ってくる還気を混合チャンバで合流させ、その後コイルで冷却・除湿します。混合空気の温度・湿度を正確に予測できれば、必要なコイル容量と冷凍機の能力が決まります。本ツールはまさにこの「混合チャンバ出口」の状態を計算する基本式を実装しています。

外気冷房(エコノマイザサイクル)の判断:春・秋の中間期は、外気エンタルピーが室内目標エンタルピーより低くなる時間帯があります。このとき OAF を 100% に上げて全外気運転すると、冷凍機を動かさずに冷房効果が得られます。実装にはエンタルピー比較が必須で、本ツールで外気と還気のエンタルピーを比較しながら省エネ余地を体感できます。

データセンター・サーバー室の温湿度管理:高密度発熱機器の冷却では、外気冷房(フリークーリング)の効果が大きい一方で、湿度の管理を誤ると静電気や結露のリスクがあります。混合後の絶対湿度と相対湿度を別々に把握する必要があり、本ツールで湿度の挙動を理解しておくと設計判断が早くなります。

CFD・BEM 解析の境界条件設定:建築物のエネルギーシミュレーション(BEM)や空調機内 CFD では、AHU 入口の空気状態を「外気と還気の混合状態」として与えます。本ツールの計算式と同じ加重平均モデルが、EnergyPlus・TRNSYS・Modelica などの空調コンポーネントモデルの内部で使われています。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「相対湿度も加重平均で求められる」と思い込むことです。本シミュレーターで OAF を変えると、混合相対湿度は外気と還気の相対湿度の単純加重平均にはなりません。例えば外気60%・還気50%を3:7で混ぜても、混合相対湿度は54%付近になります。これは絶対湿度を加重平均してから、混合後の温度(飽和圧が異なる)で改めて相対湿度を計算するためです。設計で結露余裕度を見るときは、必ず絶対湿度ベースで考えるのが鉄則です。

次に多いのが、「外気導入率を上げれば必ず空気質が良くなる」という単純化です。外気導入率の増加は CO2 や VOC の希釈には有効ですが、夏は冷房負荷を、冬は加湿負荷を増大させます。OAF を最低換気量より大きく取る場合、エネルギー消費が二乗的に増えることがあり、CO2 濃度センサーによる需要応答制御(DCV)と組み合わせることで、必要なときだけ外気を増やす運用が省エネ的にもベストです。本ツールで OAF を 30% から 80% に上げたときのエンタルピー変化を見ると、その負荷増加を直感できます。

最後に、「混合霧」の存在を見落とす注意点があります。極端に湿った外気と冷たく乾いた還気を混合すると、混合直線が一時的に飽和線を超え、見えない過飽和状態を経由します。これが空調機内で結露ドレンとなり、ファンや消音器を濡らす実害につながることがあります。空気線図上で OA と RA を結ぶ直線が飽和曲線の上を横切るかどうかは、本ツールの混合線を見て直感的に確認できます。設計時は OA・RA の極端な季節条件で必ずチェックしてください。