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建築音響

室内騒音 NC曲線評価シミュレーター

オクターブバンドで測定した室内 SPL を入力すると、Beranek の NC曲線と照合して NC等級・支配周波数・A特性騒音レベルを自動算出します。寝室・オフィス・会議室など、空調騒音や建築音響の設計でそのまま使える評価ツールです。

オクターブバンド SPL
63 Hz バンド SPL
dB
低周波の轟き感。空調ファンや躯体伝搬が支配的
125 Hz バンド SPL
dB
250 Hz バンド SPL
dB
500 Hz バンド SPL
dB
会話・音声明瞭度に最も影響する中音域
1000 Hz バンド SPL
dB
2000 Hz バンド SPL
dB
4000 Hz バンド SPL
dB
高周波の侵入感。ディフューザ風切り音など
計算結果
NC等級
支配周波数 (Hz)
余裕 (dB)
A特性騒音 dB(A)
用途適合
評価判定
NC曲線と測定 SPL の重ね描き

薄い灰色が NC15〜NC65 の標準曲線、青ドットが入力した SPL、赤線が判定された NC等級曲線です。緑〇は支配周波数(最も余裕の小さい点)。

測定 SPL と NC曲線群(折れ線)
オクターブ帯ごとの NC余裕 dB
理論・主要公式

$$\mathrm{NC} = \min\{\,NC_n \mid \forall f:\; L_p(f) \le NC_n(f)\,\}$$

NC等級の定義。NC曲線は周波数に対する SPL許容値曲線で、全帯(63〜8000Hz)で測定 SPL を下回る最小の NC番号が等級。1帯でも超えれば不合格。

$$L_A = 10\log_{10}\!\left(\sum_{i} 10^{(L_{p,i}+A_i)/10}\right)$$

A特性騒音レベル。$A_i$ は各オクターブ帯の A特性補正値(63Hz:−26.2、125:−16.1、250:−8.6、500:−3.2、1k:0、2k:+1.2、4k:+1.0 dB)。

$$\Delta_i = NC_n(f_i) - L_p(f_i), \qquad f_{\text{gov}} = \arg\min_i \Delta_i$$

支配周波数。判定された NC曲線との余裕 $\Delta_i$ が最小となる帯。ここを下げれば次の NC等級に降りられる「律速バンド」。

NC曲線による室内騒音評価

🙋
「NC曲線」って初めて聞きました。普通の dB(A) と何が違うんですか?オフィスの騒音基準なら dB(A) で十分な気がしますが…。
🎓
いい質問だね。dB(A) は周波数の中身を1つの数字につぶしてしまうから、「全体のうるささ」しか分からない。でも空調騒音って、低周波で「ボー」っと床が震えたり、高周波で「シュー」と耳に刺さったりと、同じ dB(A) でも不快さがまったく違うんだ。NC曲線(Noise Criterion)は Beranek が1957年に提案した方法で、63Hz〜8000Hz の8オクターブ帯ごとに SPL の許容上限を曲線で決めてある。全帯がそれを下回る最小の番号を NC等級として報告する。だから「低音が突出していたら NC は悪化する」というふうに、周波数バランスまで含めて室内の静けさを評価できるんだ。
🙋
なるほど、低周波もちゃんと見てくれるんですね。じゃあ「全帯が下回る最小」ということは、1つでも超えるとアウト?
🎓
そう、その通り。たとえばデフォルトの入力(63Hz=60dB, 125=55, 250=50, 500=45, 1k=42, 2k=38, 4k=35)でやってみよう。NC35曲線だと 125Hz の許容が52dBで、測定値55dBが超えるから不合格。NC40でも 1kHzが許容41dBに対し42dBで超え。NC45曲線(67/60/54/49/46/44/43)なら全帯が下に収まる。だから NC45 になる。このツールでも「支配周波数」が出るだろう? NC45からの余裕が最も小さい250〜1kHzあたりが律速で、そこを少し下げないと NC40には降りられないということが一目で分かる。
🙋
そう聞くと NC等級って「ここを下げれば改善できる」っていう設計指針も同時に教えてくれるんですね。寝室は NC25 とよく言うんですが、それってどのくらい静かなんですか?
🎓
NC25は「冷蔵庫のコンプレッサーが少し聞こえる程度」と思ってもらえばいい。だいたい dB(A) で30前後だね。一般のオフィスは NC35〜40 で、複数の人が会話してても集中できるレベル。コンサートホールや録音スタジオは NC15〜20 まで追い込む。逆に NC50 を超えると会話が聞き取りにくくなり、NC55以上は工場や体育館の「音響的に放棄された空間」だ。住宅で NC45 が出てしまったら、まず空調機の低周波対策とダクト消音器を疑うのが定石だね。
🙋
そうか、NC等級を改善する=支配周波数の SPL を下げる、ということですね。低周波って吸音材を貼っても効かないイメージがありますが、対策はどうするんですか?
🎓
鋭いね。低周波は波長が長いから多孔質吸音材では効きにくい。だから低周波の支配を改善するには、(1) 発生源(ファン・コンプレッサ)と躯体の防振、(2) ダクト系の消音器(共鳴型・キャビティ型)、(3) 二重壁・浮き床による遮音、の順に攻める。逆に4kHz以上が支配ならディフューザを大きい型に変えて吹出風速を 3m/s以下に下げるだけで NC が一段下がることが多い。「支配周波数を見て対策を選ぶ」のがNC設計の本質で、このツールはそこを可視化するのが目的なんだ。

よくある質問

63〜8000Hz のオクターブ帯ごとに「NC番号と SPL の対応表」が定められており、測定した SPL スペクトルが全ての帯で下回る最も小さな NC曲線の番号が NC等級になります。1点でも超えれば、その曲線は不合格となり次に大きな NC曲線で再判定します。本ツールは NC15〜NC65(5刻み)を内部に持ち、入力した7帯の SPL から NC等級を自動で求めます。
dB(A) は周波数特性を1つの数値に圧縮した「総合的な大きさ」、NC等級は「周波数バランスも含めた室内静けさ」を表す指標です。例えば dB(A) が同じでも低周波が突出していると不快感が強く、NC等級ではより悪い(数値の大きい)判定になります。空調機の dB(A) スペックが基準を満たしていても、低周波で NC が高めに出るケースは現場でよくあります。両方を確認するのが基本です。
ANSI S12.2 や ASHRAE Handbook で示されている代表的な推奨値は、コンサートホール・録音スタジオが NC15〜25、寝室・住宅・図書館が NC25〜30、教室・会議室・診察室が NC30〜35、一般オフィスが NC35〜40、店舗・ロビーが NC40〜45、工場・体育館が NC50〜55 です。これより数値が大きいと「会話に支障が出る」「集中できない」レベルとされます。
まず支配周波数(最も余裕の小さいバンド)を特定します。低周波(63〜250Hz)が支配なら空調機のファン・ダクトの再生音が主因なので、消音器の追加、低周波吸音材、躯体伝搬の絶縁が効きます。中音域(500〜1000Hz)が支配なら吹出口の風切り音や反射音が主因で、吹出口の風速を 3m/s 以下に下げる、吸音天井に変える等が有効です。高音域(2000〜4000Hz)はディフューザの絞り音が多く、適正な静圧設計で改善できます。

実世界での応用

オフィス・ワークプレイスの空調設計:一般オフィスは NC35〜40、役員室・会議室は NC30〜35 が標準です。設計段階では空調機メーカーのオクターブバンド音圧データから、ダクト経路の消音損失とディフューザ加算音を差し引いて、室内 SPL を推定し、本ツールで NC を判定します。竣工後に NC42 など基準を1段超えるトラブルが多く、原因の8割は低周波(63〜250Hz)の予測誤差です。現場での実測→ NC再判定→対策(消音器追加・防振)というフローで使うのが実務的です。

劇場・コンサートホール・録音スタジオ:音響的なクリティカル空間では NC15〜20 が要求され、世界の名門ホール(ボストン・シンフォニーホール等)は NC10〜15 を達成しています。ここまで来ると、空調吹出風速 1m/s 以下、二重躯体、浮き床、外部交通騒音の遮断(70dB以上)など、建築コストの大幅増を伴います。NC評価は「どの帯を何 dB 下げれば目標等級に届くか」を明確にするので、コスト対効果を見ながら対策を選ぶ判断に直結します。

住宅・ホテルの寝室:就寝環境では NC25〜30、ホテル高級客室では NC25 が目安。住宅の場合、隣戸の生活音(インパクト音)と外部交通騒音が NC を悪化させやすく、サッシ等級(T-2〜T-4)と床衝撃音遮断性能(LL-45〜LL-50)の選定が NC等級の達成可否を左右します。実測 SPL を本ツールに入力すれば、開口部・隔壁のどちらが律速か(支配周波数で判別)を即座に把握できます。

病院・診療所・集中治療室:WHO ガイドラインや国内の医療施設設計指針では、病室 NC30、ICU NC35、診察室 NC35 程度が推奨されています。医療機器のアラーム音や中央配管のノイズなど、特定周波数のピークが NC を支配することが多く、本ツールで「どの帯が突出しているか」を可視化することで、特定機器のシュラウド化や配管断熱増しなど、的を絞った対策が立てられます。

よくある誤解と注意点

第一の誤解は、「NC等級は dB(A) を超えれば自動的に満たせる」という思い込みです。これは逆で、NC は dB(A) より厳しい場合が多く、特に空調騒音のように低周波が豊富なスペクトルでは dB(A) で基準を満たしていても NC で1〜2段悪化することが珍しくありません。設備機器の音響仕様書は dB(A) のみ記載されているケースが多いので、必ずメーカーからオクターブバンドデータを取り寄せて、本ツールで NC換算してから採否を判断してください。dB(A) スペックだけで設計を進めると、竣工時の実測で NC基準未達という大問題になります。

第二の落とし穴は、「NC曲線は1957年の古い基準だから今は使われていない」という誤解です。確かに RC(Room Criterion、ASHRAE 1989)や NCB(Balanced NC、1989)など派生規格が提案されていますが、現在もANSI S12.2 や ASHRAE Handbook、建築学会の室内騒音指針で NC は中心的な評価指標として残っています。RC は低周波の「ランブル感」「ヒス感」を別に判定する細かい指標ですが、現場で要求されるのは依然として NC等級の数字(NC30、NC35 など)であることがほとんどです。建築主との契約条件にも NC が使われるため、必ず押さえておくべき指標です。

第三の注意点は、「測定マイクの位置と暗騒音の補正」です。NC評価は受聴者の耳位置(座位で床上1.2m、立位で1.5m)かつ室の中央から壁面1m以上離れた位置で測定するのが原則です。壁面に近いと定在波で低周波が10dB以上ピークを持つことがあり、NC が誤って高く出ます。また外部交通騒音や他フロアからの空気伝搬音などの暗騒音が、対象音より 10dB 以上小さくないと真の機器騒音の評価になりません。本ツールで「63Hz だけ妙に高く NC が悪化する」場合、まずマイク位置と暗騒音を疑ってください。

使い方ガイド

  1. 63Hz、125Hz、250Hz、500Hzの各オクターブバンドの音圧レベル(SPL)をdB単位で入力してください。測定値または設計値を指定できます。
  2. シミュレーターがBeranekのNC曲線と自動比較し、NC等級(NC25~NC70)を判定します。支配周波数(最もNC曲線に接近した周波数帯)も同時に特定されます。
  3. A特性騒音レベルdB(A)に変換後、寝室(NC30以下)、一般オフィス(NC40~45)、会議室(NC35)などの用途基準と照合して評価結果を表示します。

具体的な計算例

新築オフィスの空調運転音を測定した場合:63Hz=45dB、125Hz=42dB、250Hz=38dB、500Hz=35dBと入力すると、NC45と判定されます。支配周波数は63Hzで、NC曲線との余裕は-2dB(超過)となり、A特性騒音は48dB(A)です。JIS A 1996-1の一般オフィス基準45dB(A)をやや超過しているため、吸音材追加や運転条件見直しが必要と評価されます。

実務での注意点