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通信工学シミュレーター

シャノンの通信路容量 シミュレーター — 情報理論の限界

帯域幅・信号電力・雑音電力をスライダーで動かすと、シャノン-ハートレーの容量C=B·log2(1+S/N)がその場で求まります。SNRやスペクトル効率の依存関係、目標速度に必要な帯域も同時にグラフ化。

通信路パラメータ
帯域幅 B
kHz
信号電力 S
mW
雑音電力 N
µW
目標通信速度 R
Mbps
計算結果
シャノン容量
SNR
スペクトル効率
必要帯域
通信路の模式図
SNR vs スペクトル効率
理論・主要公式

$$C = B\,\log_2\!\left(1 + \frac{S}{N}\right)$$

B:帯域幅[Hz]、S/N:信号対雑音比、C:通信路容量[bits/s]。

$$\text{SNR}_{\text{dB}} = 10\log_{10}\!\left(\frac{S}{N}\right),\qquad \eta = \frac{C}{B}\ [\text{bits/s/Hz}]$$

必要帯域は $B_{\text{need}} = R/\eta$。スペクトル効率ηはSNRが大きいほど対数的に増加します。

シャノンの通信路容量シミュレーターとは

🙋
シャノンの通信路容量って、ざっくり言うと何ですか?Wi-Fiの速度の上限みたいなものですか?
🎓
いいたとえだね。1948年にクロード・シャノンが示した「ある帯域幅とS/N比のもとで、絶対に超えられない通信速度」のことだよ。C = B·log2(1+S/N) で、Bが広いほど、S/Nが大きいほど容量が増える。例えば帯域1MHz、SNR 20dB(S/N=100)なら、約6.66 Mbpsが理論上限。実際のWi-Fiやスマホは符号化と多重化でこの上限に近づけているんだ。
🙋
じゃあ雑音が増えるとガクンと容量が落ちる?スライダーで動かすとほんとに減りますね…
🎓
そう、雑音電力Nが10倍になるとSNRが−10dB、容量はおよそ3.3 bit/s/Hz減る。例えば自動運転のミリ波レーダーや衛星通信は受信電力が極端に小さいから、雑音温度を下げるLNA(低雑音増幅器)の性能が文字通り通信距離を決める。「再生」ボタンで雑音を増やしながら容量がどう変わるか見てみてね。
🙋
「スペクトル効率」というのは、帯域あたりの容量ってことですか?Wi-Fi 6が10 b/s/Hzって聞いたことあります。
🎓
その通り。η = C/B で、bits/s/Hz の単位。Wi-Fi 6では1024-QAM+MU-MIMOで実効10超を狙っているし、5Gの目標は20以上。シャノンの式から逆算すると、η=10にはSNR≈30 dBが必要。だから5G/6Gの基地局はビームフォーミングで局所的にSNRを上げる方向に進化しているんだ。

シャノン通信路容量とは

シャノンの通信路容量は、与えられた帯域幅Bと信号対雑音比S/Nのもとで、任意に小さい誤り率で信号を伝送できる最大の情報伝送レートを表します。1948年の論文「A Mathematical Theory of Communication」でクロード・シャノンが導いた情報理論の中核概念であり、現代の無線通信、有線通信、衛星通信、光通信のすべての設計はこの限界を基準に行われています。

物理モデルと主要な数式

連続値 AWGN(加法的白色ガウス雑音)通信路では、容量は次式で与えられます:

$$C = B\,\log_2\!\left(1 + \frac{S}{N}\right)$$

ここで B は帯域幅[Hz]、S は受信信号電力[W]、N = N0·B は雑音電力[W]です。SNR(dB)はSNR_dB = 10·log10(S/N) で表され、スペクトル効率は η = C/B [bits/s/Hz] と定義されます。目標通信速度 R を達成するための必要帯域は B_need = R/η で求められます。

実世界での応用

無線LAN(Wi-Fi)の規格設計:Wi-Fi 6/6E/7は1024-QAMや4096-QAMの高次変調と幅広い帯域(160 MHz/320 MHz)、MIMO多重化を組み合わせてシャノン限界に近い実効スループットを実現しています。設計時はこのシミュレーターのような計算で「あと何dBのSNRが必要か」を見積もります。

移動通信(5G/6G):5G NRはmmWave帯で広帯域(100 MHz以上)とビームフォーミングを組み合わせて高SNRを実現し、ピーク20 b/s/Hzのスペクトル効率を目標としています。6Gでは100 b/s/Hz級が議論されており、これにはMIMOやセル細分化が必須です。

衛星・深宇宙通信:極端に弱い受信電力でも通信できるよう、LNAで雑音温度を下げ、ターボ符号やLDPC符号でシャノン限界の0.5dB以内まで迫る設計が標準化されています(CCSDSの深宇宙通信規格など)。

光ファイバ通信:長距離光通信では非線形効果込みの非線形シャノン限界が議論され、コヒーレント検波と多値変調(16-QAM/64-QAM)、波長多重(DWDM)を組み合わせて1本のファイバで Tbit/s級を達成しています。

よくある誤解と注意点

「帯域幅を倍にすれば容量も倍」は半分しか正しくない:確かに帯域Bを増やせばCも線形に増えますが、現実には熱雑音電力 N = kTB も比例して増えるため、SNRが低下しlog2(1+SNR)が減ります。広帯域化は同時にアンテナ利得や送信電力の見直しを伴います。

「シャノン容量を超えた製品」は存在しません:カタログ値のピーク速度は通常、複数チャネルを束ねた値や、誤り率を許容した瞬間値です。真の意味でシャノン限界を超えることは情報理論的に不可能です。「シャノン限界の○%」という表現で実効効率を比較します。

SNRはdB表示と倍率表示を混同しない:SNR=20dBは倍率で100、SNR=30dBは1000です。シャノン式に入れるのは倍率(線形値)であり、log2(1+100)=6.66 と log2(1+1000)=9.97 のように、dBで10増えてもbits/s/Hzは1〜3程度しか増えません。

よくある質問

シャノンの通信路容量Cは、帯域幅Bと信号対雑音比S/Nが与えられた通信路で誤りなく送れる情報量の理論的上限です。C=B·log2(1+S/N) で計算され、単位は bits/s です。この値を超える速度では、どんな符号化を用いても誤り率を任意に小さくすることはできません。
高SNR領域では、SNRが2倍(+3dB)になると容量は約1bps/Hz増えます。log2の中身が大きい場合、log2(1+S/N)≈log2(S/N)なので、SNR(dB)が3dB増えるごとに1bit/s/Hzの増加と覚えるとよいでしょう。低SNR領域ではこの近似は成り立たず、SNR増加の効果が大きくなります。
スペクトル効率η=C/Bは、単位帯域あたり何ビット/秒を運べるかを示す指標で、単位はbits/s/Hzです。Wi-Fi 6では最大10bits/s/Hz超、5Gでは20bits/s/Hzを目標とするなど、無線通信規格の比較によく用いられます。
教育・概念理解のためのツールです。実機設計では符号化利得、変調方式の制約、伝搬路のフェージング、干渉、実装損失などを考慮する必要があります。本ツールは理想的なAWGN通信路における理論上限を直感的に把握するためにご利用ください。