水蒸気・ランキンサイクル計算機 戻る
熱解析

水蒸気・ランキンサイクル計算機

ボイラー圧力・復水器圧力・タービン効率を設定して熱効率・T-s線図をリアルタイム計算。再熱サイクル対応。火力発電・蒸気タービン設計に活用。

パラメータ設定
プリセット
ボイラー圧力 Phigh
MPa
復水器圧力 Plow
kPa
ボイラー出口温度 T1
°C
飽和温度以上で過熱蒸気
タービン効率 ηt
ポンプ効率 ηp
再熱サイクル
再熱後温度 = ボイラー出口温度と同一
計算結果
熱効率 ηth [%]
正味仕事 wnet [kJ/kg]
入熱量 qin [kJ/kg]
背仕事比 BWR [%]
タービン仕事 wt [kJ/kg]
ポンプ仕事 wp [kJ/kg]
タービン出口乾き度 x2
ボイラー飽和温度 [°C]
Ts
理論・主要公式

ランキンサイクル(4状態点):

タービン仕事:$w_t = \eta_t(h_1 - h_{2s})$

ポンプ仕事:$w_p = v_f(P_{high}-P_{low})/\eta_p$

入熱量:$q_{in}= h_1 - h_4$

$$\eta_{th}= \frac{w_{net}}{q_{in}}= \frac{w_t - w_p}{q_{in}}$$

水蒸気物性は多項式近似(IAPWS-IF97ベース簡略版)で計算

ランキンサイクルとは

🙋
火力発電って、蒸気でタービンを回すって聞きますけど、具体的にどうやって効率を計算するんですか?
🎓
大まかに言うと「ランキンサイクル」という理想的なモデルを使って計算するんだ。このシミュレーターで、左側の「ボイラー圧力」と「復水器圧力」のスライダーを動かしてみて。圧力差が大きくなるほど、熱効率が上がるのがわかるよ。
🙋
え、確かに効率が上がります!でも「タービン効率」ってパラメータもありますね。100%じゃないんですか?
🎓
その通り。実務では摩擦や熱損失があって、膨張は等エントロピー(断熱かつ可逆)にはならないんだ。「タービン効率」を90%くらいに下げてみて。T-s線図上のタービン出口点が右にズレて、エントロピーが増大するのが見えるだろう?これが現実の不可逆過程だね。
🙋
「再熱サイクル」のチェックボックスもありますが、これは何のためにあるんですか?
🎓
超臨界圧のような高圧だと、タービンで膨張させた最後の方で蒸気が水滴(湿り蒸気)になって、タービン翼を削ってしまうんだ。再熱をONにすると、一度温め直してから低圧タービンへ送る。試しに高圧側を30MPaくらいに上げて、再熱のON/OFFで「タービン出口乾き度」を比べてみよう。水滴が減って、効率も少し上がるのがわかるよ。

よくある質問

ボイラー圧力は高いほど理論効率が向上しますが、材料耐熱性に注意してください。復水器圧力は低いほど効率が上がりますが、大気圧以下にすると空気漏入対策が必要です。一般的な火力発電ではボイラー圧力10〜25MPa、復水器圧力5〜15kPaを参考にしてください。
100%は理想的な等エントロピー膨張を意味しますが、実際のタービンでは摩擦や漏れ損失が避けられません。本ツールは理論値計算用であり、実機設計では80〜90%程度の効率を入力し、実測データと比較して調整することを推奨します。
再熱サイクルは高圧タービン出口の蒸気を再度ボイラーで加熱し、低圧タービンに導くことで、湿り度を低減しタービン翼の浸食を防ぎます。また、熱効率が2〜5%向上するため、大容量火力発電所で広く採用されています。
ブラウザのJavaScriptが有効か確認してください。また、ボイラー圧力が復水器圧力より低い値になっていないか、タービン効率が0%や負数でないかをチェックしてください。設定値が物理的に矛盾していると線図が描画されないことがあります。

実世界での応用

超臨界圧火力発電所の設計最適化:ボイラー圧力を25MPa以上の超臨界圧に高め、再熱サイクルを組み合わせることで、熱効率45%以上を実現します。このシミュレーターで圧力と再熱の効果を確認し、最適な運転条件を探る基礎となります。

地熱発電や廃熱回収(ORC):地熱熱水や工場の排熱など、中低温の熱源を利用する場合、水ではなくペンタンなどの有機媒体を使う「有機ランキンサイクル(ORC)」が採用されます。基本的なサイクル解析の考え方は、この水蒸気サイクルシミュレーターと共通です。

産業用蒸気タービンの効率改善:製鉄所や化学プラントでは、工程で発生する蒸気をタービンで発電に利用します。タービン効率やポンプ効率のパラメータを変えて、設備更新による省エネ効果を簡易評価できます。

原子力・太陽熱発電のサイクル解析:原子炉や太陽熱集熱装置が「熱源」、復水器が「冷源」となるランキンサイクルです。熱源温度の制約(原子力は約300℃)を「ボイラー出口温度」パラメータで設定し、可能な熱効率の限界を考察するのに役立ちます。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始める際、特に学習目的の方はいくつかつまずきやすいポイントがあります。まず「ボイラー圧力を上げれば上げるほど効率が良くなる」という単純な思い込み。確かに圧力差は効率向上の鍵ですが、例えばボイラー圧力を30MPa以上(超臨界圧)に設定すると、ツール上では効率が頭打ちになるか、場合によっては微減することに気づくはずです。これは材料強度の限界やポンプ仕事の増加、そしてタービン出口での蒸気の「乾き度」の低下が主な原因。湿り蒸気はタービン翼を侵食するので、現実の設計では乾き度0.88以下にならないように調整します。「再熱」はこの問題を解決するための必須技術なんです。

次に、「ポンプ仕事は無視できるから」とポンプ効率を100%のままにしておくこと。学習用の理想サイクルではそれで構いませんが、実機を想定するならポンプ効率も70〜85%程度に下げてみましょう。全体の効率への影響は小さいですが、ネット仕事($$w_{net} = w_t - w_p$$)が確実に減少し、特に低圧・低温のサイクル(例えば地熱発電)では無視できないコスト要因になることが体感できます。

最後に、T-s線図上の「点」と「実際の機器」の対応関係の見落とし。線図上の1→2の過程が「タービン」だと理解していても、その線が「等エントロピー線」からどれだけ右にずれているか(エントロピー増加)が、タービン内部の摩擦や漏れ、冷却損失の総和を表している、という視点が大切です。タービン効率を85%から90%に上げるということは、この「ずれ」を小さくする、つまり何億円もの設計改良を意味するんだ、という実感を持って操作してみてください。