そこで登場するのが「WKB近似」だ。Wentzel・Kramers・Brillouinという3人の名前からきている。厳密にシュレーディンガー方程式を解く代わりに、ポテンシャルが波長に比べてゆっくり変化する領域では、波動関数を exp(±∫k dx) という指数関数の形で近似できる、というアイデアなんだ。これを使うとトンネル確率が T ≈ exp(−2∫κ dx) という積分一発で見積もれる。半古典近似とも呼ばれるよ。
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左の障壁の幅 L を大きくすると、トンネル確率 T がものすごい勢いで小さくなりますね。グラフが対数軸なのに直線で落ちていきます。
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いいところに気づいたね。矩形障壁では T = exp(−2κL) になる。指数の肩に L が乗っているから、L を増やすと T は指数関数的に減る。対数軸で直線になるのはそのためだ。デフォルト値だと T ≈ 2×10⁻⁸ くらい。これは「1億回ぶつかって2回抜ける」程度の確率だけど、ゼロではないのが量子力学の面白いところ。障壁を半分の幅にすると T は2乗で効いて、いきなり1万倍くらい大きくなるんだ。
WKB近似(Wentzel–Kramers–Brillouin近似)は、シュレーディンガー方程式の半古典的な近似解法です。ポテンシャルがド・ブロイ波長に比べてゆっくり変化する領域では、波動関数を指数関数の形 exp(±∫k dx) で近似できます。これを使うと、トンネル効果のように厳密に解くのが難しい問題でも、透過確率を T ≈ exp(−2∫κ dx) という簡単な積分で見積もれます。本ツールは矩形障壁に対してこのWKB公式を適用しています。
古典力学では、エネルギー E が障壁の高さ V0 より低い粒子は障壁を絶対に越えられず、100%反射されます。しかし量子力学では粒子は波としての性質を持ち、障壁の内部でも波動関数はゼロにならず、指数関数的に減衰しながら染み込みます。障壁の幅が有限なら、減衰しきる前に反対側へ抜け出る成分が残り、これがトンネル効果です。透過確率は障壁内部での減衰量で決まります。
矩形障壁のWKB透過確率は T = exp(−2κL) で、κ は障壁内部の減衰定数、L は障壁の幅です。κ = √(2m(V0−E))/ℏ なので、T は障壁の幅 L に対して指数関数的に減少し、粒子の質量 m と障壁との差 (V0−E) の平方根に対しても指数関数的に減少します。つまり障壁を半分の幅にする、または高さを下げると、T は劇的に大きくなります。逆に重い粒子や厚く高い障壁ではTは急激に小さくなります。
走査トンネル顕微鏡(STM):探針と試料表面の間のわずかな真空ギャップを電子がトンネルする電流を検出し、原子1個ずつを画像化する装置です。トンネル電流は T = exp(−2κL) に従ってギャップ幅 L に指数関数的に依存するため、ギャップが0.1nm変わるだけで電流が約10倍変化します。この極端な感度こそがSTMの原子分解能の源です。本ツールで幅 L を少し動かすと T が桁で変わることを体感できます。
まず最大の誤解が、「トンネルした粒子は障壁内部でエネルギーを借りている」という考えです。トンネル効果では粒子のエネルギーは保存され、障壁の内部でも入射時と同じ E を持っています。「不確定性原理でエネルギーを一時的に借りて壁を越える」という説明は直感的ですが厳密には正しくありません。正しくは、波動関数が障壁内部で振動ではなく指数関数的減衰(エバネッセント波)になり、その染み込みが反対側に届くだけで、エネルギーの貸し借りは起きていません。本ツールの波動関数の図でも、障壁内部では振動せず純粋に減衰する様子を描いています。
最後に、「トンネル確率が小さいから無視してよい」という油断です。本ツールのデフォルトでも T ≈ 2×10⁻⁸ と非常に小さく見えますが、トンネル現象は1個の粒子の試行回数が桁違いに多い場面で効いてきます。たとえばゲート酸化膜では1秒間に膨大な回数の衝突があり、10⁻⁸でもチップ全体では無視できないリーク電流になります。アルファ崩壊も「1個あたりの確率は極小だが原子の数が膨大」だから観測できる現象です。確率の絶対値ではなく、試行回数を掛けた期待値で判断することが重要です。