ヘキサドミナントメッシュ
理論:セル数と流れの向き
概要
四面体メッシュなら自動で簡単に作れるのに、なぜわざわざ六面体を使うんですか?
理由は2つある。1つはセル数で、同じ細かさなら六面体は四面体の数分の1で済む。もう1つは精度で、六面体は面を流れの向きにそろえられる。流れが格子を斜めに横切ると、離散化の誤差が人工的な拡散として現れ、速度や温度の分布がぼやける。ただし複雑な形状を全部六面体で埋めるのは手間がかかる。そこで大部分を自動で六面体にし、埋められない隙間だけ四面体などで補うのがヘキサドミナントだ。
セル数の見積もり
V は体積、h はセル幅、f は六面体で埋めた体積の割合。六面体を6つの四面体に分ける分割を基準にした。
1次風上差分の数値拡散
θ は流れと格子線のなす角。θ = 0(流れに沿う)では0、45°で最大になる。
斜めの流れのぼやけ
流れが格子を斜めに横切ると1次風上差分がにせの拡散を生むことは、1970年代にデ・ヴァール・デイヴィスとマリンソンが式で示した。この結果は、高次の差分法の開発と、格子を流れに合わせる工夫の両方を後押しした。今日では2次精度の差分が標準になって数値拡散はずっと小さいが、格子の向きの影響が消えたわけではなく、境界層やせん断層を流れに沿った六面体やプリズムで分けるのは今も基本だ。
計算例
例1:1 m角の立方体・セル幅10 mm
| メッシュ | セル数 | 面の数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 六面体のみ | 100万 | 約300万 | 1セル6面 |
| 四面体(六面体を6分割) | 600万 | 約1,200万 | 1セル4面 |
| 正四面体(辺10 mm) | 850万 | — | 体積 h³/(6√2) |
| 多面体(四面体の双対) | 約100万 | 約700万 | 1セル約14面 |
| ヘキサドミナント(85%) | 175万 | — | 四面体の約3割 |
例2:流れの向きと数値拡散(セル幅10 mm・流速1 m/s)
| 流れと格子の角度 | 数値拡散 | 空気の動粘度との比 | 水の動粘度との比 |
|---|---|---|---|
| 0° | 0 | 0 | 0 |
| 15° | 1.4×10⁻³ m²/s | 91 | 1,361 |
| 30° | 2.8×10⁻³ m²/s | 186 | 2,795 |
| 45° | 3.5×10⁻³ m²/s | 236 | 3,536 |
数値拡散が空気の粘性の200倍以上なんて、計算結果は信用できるんですか?
これは1次精度の場合で、実務で使う2次精度の差分ではずっと小さくなる。それでも、格子に対して斜めに流れる部分ほど誤差が大きいという性質は残る。四面体はどの向きの流れに対しても斜めになるので、同じ精度を得るにはより細かい格子が要る。六面体を流れに沿わせると、少ないセルで誤差を抑えられる。ヘキサドミナントでは、六面体部分が流れの主要な部分に来るようにすること、特に壁の近くはプリズムの層で流れに沿わせることが大切だ。また、六面体と四面体の境目にはピラミッドが入り、ここで品質が落ちやすいので、境目を流れの重要な場所に置かないようにする。
作り方のポイント
- 壁にはプリズムの層(インフレーション層)を先に付ける。
- 内部は六面体で埋め、複雑な形状の近くだけ四面体で補う。
- 六面体の向きを主な流れの方向にそろえる。
- ピラミッドや遷移部分の品質(ゆがみ・体積比)を確認する。
- セル数を変えて格子依存性を確かめる。
「圧力損失が合わなかった配管」
曲がりの多い配管の圧力損失を四面体メッシュで計算したところ、実測より15%ほど大きく出た。セル数を増やしても差がなかなか縮まらず、セル数は数千万に達した。直管部分を流れ方向にそろえた六面体に、曲がり部だけを四面体にしたヘキサドミナントに作り直すと、セル数は約3分の1になり、実測との差は数%に縮んだ。直管部の速度分布が四面体では数値拡散でなまっていたことが原因と考えられた。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 壁にプリズム層がない | 壁面摩擦・熱伝達を誤る | インフレーション層 |
| 六面体の向きが流れと斜め | 利点が出ない | 主流方向にそろえる |
| 境目を重要な場所に置く | ピラミッドで誤差 | 境目を移す |
| セル数だけで比較 | 面の数・計算量を見落とす | 面の数も見る |
| 格子依存性を確かめない | 誤差の大きさが不明 | 3水準で比較 |
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