CFDメッシュ品質指標

カテゴリ: CFDのメッシュ | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for mesh quality cfd theory - technical simulation diagram
CFDメッシュ品質指標

理論:品質の指標と誤差の関係

概要

🙋

メッシュを作ったら、ソフトが『非直交性の最大値75°』と警告を出しました。どれくらい気にすべきですか?

🎓

品質の指標は、それぞれ特定の計算の誤差とつながっている。非直交性は、面を通る拡散の流束(熱や運動量の伝わり)の計算に効く。セル中心どうしを結ぶ線が面に垂直でないと、その差だけでは面に垂直な勾配が正しく出ないんだ。75°なら、補正しないと流束は7割以上ずれるし、補正を入れても計算が不安定になりやすい。ただし大事なのは最大値よりも、その悪いセルがどこにあるか。流れの重要な場所にあるなら直す、影響の小さい場所なら許容、と判断するんだ。

非直交性

$$ \left.\frac{\partial\phi}{\partial n}\right|_f \approx \frac{\phi_N - \phi_P}{|\mathbf d|} = |\nabla\phi|\cos\theta \quad (\text{uncorrected}), \qquad \text{error} = 1 - \cos\theta $$

セル中心どうしを結ぶベクトル $\mathbf d$ と面の法線のなす角 $\theta$ が非直交角。補正しないと、法線方向の勾配を $\cos\theta$ 倍に小さく見積もる。

拡大率

$$ \phi''_P \approx \frac{2\left[h_-\phi_{E} - (h_- + h_+)\phi_P + h_+\phi_W\right]}{h_- h_+ (h_- + h_+)}, \qquad \text{leading error} \propto (h_+ - h_-)\,\phi''' $$

隣のセルとの幅が違う($h_+ \ne h_-$)と、中心差分の誤差の主な項が格子幅の1乗に比例する形で残る。拡大率を一定にしたまま細かくすると、精度は1次に落ちる。

Coffee Break よもやま話

格子作りが仕事の半分

CFDの初期、1970〜80年代の計算は、形に沿った構造格子を人が手で作るのが普通で、格子作りに解析の時間の大半がかかった。1990年代に四面体の自動メッシュが広まると、複雑な形でもすぐに格子が作れるようになったが、今度はゆがんだセルによる精度の低下や発散が問題になった。そこで、非直交性や拡大率などの品質の指標と、それを補う補正の方法が整えられた。今の汎用ソフトが格子の品質を細かく報告するのは、この経験の積み重ねだ。

計算例

例1:非直交角と流束の誤差

非直交角10°20°30°45°60°70°80°
補正なしの流束の誤差1.5%6.0%13.4%29.3%50.0%65.8%82.6%

一様な勾配の場合、非直交補正を入れれば誤差は0になる。ただし補正は前の反復の勾配を使って足し込むため、角度が大きいと補正が主役になって反復が不安定になる。

例2:拡大率と差分の精度

関数 $e^x$ の2次微分を、隣のセルとの幅の比 $r$ を一定にして3点の差分で求めた(厳密値1)。

拡大率格子幅0.10.050.025次数
1.08.3×10⁻⁴2.1×10⁻⁴5.2×10⁻⁵2.00
1.14.3×10⁻³1.9×10⁻³8.9×10⁻⁴1.09
1.27.7×10⁻³3.6×10⁻³1.7×10⁻³1.05
1.51.8×10⁻²8.7×10⁻³4.3×10⁻³1.03
2.03.6×10⁻²1.7×10⁻²8.5×10⁻³1.03
🙋

拡大率1.2でも、誤差が9倍になって、しかも1次精度になるんですね。

🎓

そう。拡大率を一定にしたまま格子を細かくすると、隣との幅の差も格子幅に比例して残るから、誤差の主な項が消えないんだ。実際に格子依存性を調べるときは、細かくするほど拡大率が1に近づくように作るのが理想だ。境界層のプリズム層で1.2〜1.3程度が使われるのは、壁の近くの急な変化を少ないセルでとらえるための妥協で、その代わり壁から離れた場所でセルの大きさが急に変わらないよう、つなぎ目の拡大率に気をつける必要がある。

品質の目安と対策

  1. 非直交角は70°程度以下を目安にし、それを超えるセルの位置を確かめる。
  2. 拡大率は1.2程度以下、境界層から外側の格子へのつなぎ目で急に変えない。
  3. スキューネスが大きいセルは面の値の補間を悪くするので、流れの重要な場所では避ける。
  4. 縦横比が大きいセルは、流れの向きにそろえれば問題になりにくい(境界層など)。
  5. 品質の指標だけで判断せず、格子依存性の確認で結果が変わらないことを確かめる。
Coffee Break よもやま話

「1個のセルが計算を止めた」

数百万セルの流れの計算が、何度やっても途中で発散した——という例がある。残差の大きい場所を調べると、細い隙間を埋めた部分に、非直交角が88°というほぼつぶれたセルが1個だけあった。全体の品質の平均はとても良く、見落とされていた。その部分の形状を少し簡単にして作り直すと、計算は安定して収束した。品質は平均ではなく、最悪のセルとその場所で判断することが大事だ。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
品質を平均で判断最悪のセルで発散最悪値と位置を確認
急な拡大率精度が1次に落ちる1.2程度以下に
非直交補正を切る拡散の流束がずれる補正を使い、角度を抑える
縦横比だけを問題視本当の原因を見落とす流れの向きとの関係で判断
品質が良ければ十分と考える解像度不足を見落とす格子依存性を確認
🙋

関連する内容も知りたいです。

🎓

格子の確認は格子依存性の確認、境界層の格子はインフレーション層、セルの種類は多面体メッシュ、六面体主体のメッシュ、構造格子、差分の性質は中心差分スキームが参考になるよ。

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