Dassault Systèmes SIMULIA戦略 ― Abaqusと非線形解析の系譜

カテゴリ: 業界動向 | 2026-04-13
Dassault SIMULIA and Abaqus nonlinear FEA history visualization

Abaqusの誕生 ― HKSと非線形FEAのパイオニア

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AbaqusってDassaultの製品なんですか? もともと別の会社が作ったと聞いたことがあるんですが…

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そう、もともとはHKS(Hibbitt, Karlsson & Sorensen)という3人の研究者が1978年に開発を始めたソルバーだ。David Hibbitt、Bengt Karlsson、Paul Sorensenの3人で、全員がBrown大学の力学系の出身だった。

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大学の研究者が起業したんですね。当時は他にもFEMソフトがあったんじゃないですか?

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NASTRANやANSYSはすでにあったけど、当時はどちらも線形解析が中心だった。HKSの3人は「実際の構造物は弾塑性変形するし、部品同士が接触する。線形だけじゃ足りない」と考えて、最初から非線形解析に特化したソルバーとしてAbaqusを設計した。これが後にCAE業界で圧倒的な地位を築くことになる。

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「Abaqus」ってユニークな名前ですけど、由来はあるんですか?

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算盤(abacus)のスペル違いだね。計算道具の原点に敬意を表したネーミングだ。電話帳(当時のマーケティング手段)でAの頭に来るようにという実利的な理由もあったらしい(笑)。

Dassaultによる買収とSIMULIAブランド

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そのHKSをDassault Systèmesが買収したわけですよね。いつ頃のことですか?

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2005年にDassault Systèmes(DS)がHKSを買収して、SIMULIAブランドを設立した。DSはすでにCATIA(3D CAD)とENOVIA(PDM)を持っていたけど、本格的なCAE解析能力が弱かった。Abaqusを手に入れることで「設計から解析まで」のフルスイートが完成したわけだ。

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CATIAで設計して、Abaqusで解析するっていう流れですね。

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その通り。しかもDSはAbaqusだけでなく、その後もCAE関連の企業を積極的に買収している:

Abaqusの技術的強み ― なぜ非線形で選ばれるのか

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「非線形解析ならAbaqus」ってよく聞くんですけど、具体的に何がすごいんですか?

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Abaqusの強みは大きく3つある:

1. 接触解析の安定性:部品同士が接触・離反する問題(ボルト締結、プレス成形、ゴムシールなど)で、収束性が非常に高い。実務で「Ansys Mechanicalで収束しなかったけどAbaqusなら解けた」という話は珍しくない。

2. 大変形・大回転への対応:ゴム・エラストマーのような超弾性体の変形や、金属の塑性加工(鍛造・絞り加工)のような大変形問題を安定して解ける。

3. 材料モデルの豊富さ:超弾性(Mooney-Rivlin、Ogden)、粘弾性、クリープ、損傷力学、コンクリートの塑性損傷モデルなど、学術的に検証された材料モデルが非常に充実している。ユーザーサブルーチン(UMAT/VUMAT)で独自モデルも書ける。

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StandardとExplicitの使い分けってどうなんですか?

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Abaqus/Standardは陰解法で、準静的問題や低速の動的問題向きだ。ボルト締結体の応力解析や熱応力解析なんかがこっち。Abaqus/Explicitは陽解法で、衝突・落下・爆発のような高速動的問題に使う。例えば自動車の衝突シミュレーションでは、数ミリ秒の現象を数百万自由度で解くのにExplicitが使われる。両者を一つのモデルで切り替えられるのがAbaqusの大きな利点だ。

SIMULIAの製品群

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SIMULIAってAbaqusだけのブランドじゃないんですよね?

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その通り。今のSIMULIAは「リアリスティック・シミュレーション」を掲げていて、Abaqus以外にも重要な製品がある:

Abaqus単体の会社から、マルチフィジックスのシミュレーションプラットフォームに進化しているんだ。

3DEXPERIENCE統合戦略

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最近「3DEXPERIENCE」ってよく聞くんですけど、SIMULIAとどう関係するんですか?

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DSの中長期戦略の柱がこれだ。3DEXPERIENCE Platformは、CATIA(設計)、SIMULIA(解析)、DELMIA(製造)、ENOVIA(データ管理)を一つのクラウドベースのプラットフォームに統合するものだ。

CAEの視点で言うと、こういう変化が起きている:

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でも、現場のエンジニアは従来のデスクトップ版Abaqus/CAEに慣れてますよね。移行は進んでいるんですか?

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正直なところ、大企業を中心に徐々にという段階だ。デスクトップ版のAbaqus/CAEは引き続き提供されているけど、DSとしてはクラウドネイティブの3DEXPERIENCE版に誘導していきたい方針だ。特に大規模モデルのHPC計算では、クラウドの柔軟なスケーリングにメリットがある。ただ、セキュリティの問題やライセンス体系の変化もあって、すべてのユーザーが移行するにはまだ時間がかかるだろう。

まとめ

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SIMULIAの歴史を整理するとこうなる:

「非線形解析の精度と安定性」というAbaqusの技術的DNAは、SIMULIAブランド全体に受け継がれている。CAEベンダー選定で「複雑な非線形問題」が課題なら、SIMULIAは必ず候補に入る存在だよ。

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3人の研究者が始めたソルバーが、世界最大級の製造業向けプラットフォームの中核になっているって、すごい話ですね。ありがとうございます!

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