Siemens Simcenter ― 設計・解析・テストを統合するCAE戦略
SiemensがCAEに参入した経緯
Simcenterって元々はLMSですか? それともCD-adapcoですか? いろんな名前が出てきて混乱します…。
両方だよ。Simcenterは複数の企業を買収して統合したブランド名であって、もともと一つの会社から発展したわけじゃない。まずSiemensがCAEに参入した経緯から説明しよう。
Siemensって元々は重電・インフラの会社ですよね。なぜソフトウェアに?
2007年にUGS(Unigraphics Solutions)を約35億ドルで買収したのが転機だった。UGSはNX(3D CAD)とTeamcenter(PDM/PLM)を持っていて、さらにNX Nastranという構造解析ソルバーも含まれていた。Siemensは「製造業のデジタル化」を経営戦略の柱に据えていて、設計・解析・製造を一つのプラットフォームで完結させたかったんだ。
大型買収の時系列
UGSの次はどんな買収があったんですか?
SiemensのCAE関連買収は規模が大きい。時系列で整理するとこうなる:
- 2007年:UGS(約35億ドル) ― NX CAD + Teamcenter PLM + NX Nastran。PLMソフト事業に本格参入
- 2012年:LMS International ― ベルギーの振動・騒音テスト&シミュレーション企業。モーダル解析やNVH試験データ処理のスペシャリスト
- 2016年:CD-adapco(約9.7億ドル) ― STAR-CCM+の開発元。CFDの主力ソルバーを獲得
- 2017年:Mentor Graphics(約45億ドル) ― EDA(電子設計自動化)に加え、FloTHERM(電子冷却CFD)を含む
合計すると100億ドル以上を投じている。Ansysとは違って、Siemensは「製造業コングロマリット」として自社の工場でも自分のソフトを使っている点がユニークだ。
えっ、Siemens自身がユーザーでもあるんですか? ガスタービンとか電車とか作ってますもんね。
まさにその通り。Siemens Energyのガスタービン設計でSTAR-CCM+やNX Nastranが使われている。「自分たちが使って検証したツールを外部にも販売する」というモデルは、他のCAEベンダーにはない強みだね。
Simcenterブランドの構成
で、これらがまとまって「Simcenter」になったわけですね。具体的にどんな製品が入っているんですか?
Simcenterブランドは大きく分けて3カテゴリーだ:
シミュレーション系:
- Simcenter Nastran(旧NX Nastran) ― 線形・非線形構造解析。航空宇宙で実績豊富
- Simcenter STAR-CCM+ ― 汎用CFD。ポリヘドラルメッシュの自動生成が得意
- Simcenter Flotherm / Flotherm XT ― 電子機器の熱設計に特化したCFD
- Simcenter MAGNET ― 電磁場解析(モーター設計・電磁弁など)
- Simcenter Amesim ― 1Dシステムシミュレーション(油圧・空圧・制御系)
テスト系:
- Simcenter Testlab ― 振動騒音(NVH)試験のデータ取得・解析
- Simcenter SCADAS ― テスト用データ収集ハードウェア
プラットフォーム:
- Simcenter 3D ― NX CAD統合型のFEA/CFD/音響/電磁場プリポスト環境
テストとシミュレーションの融合
AnsysやAbaqusとの一番の違いって何ですか?
Simcenterの最大の差別化ポイントは「テスト(物理実験)とシミュレーションの統合」だ。これはLMS買収で手に入れた資産が活きている。
例えば自動車のNVH(振動騒音)開発では、こういうワークフローになる:
- 試作車にセンサーを付けてSimcenter Testlabで振動データを計測
- Simcenter Nastranでモーダル解析(固有振動数・モード形状)を実行
- テスト結果とシミュレーション結果を重ねて、モデルの精度を検証(相関解析)
- シミュレーションモデルを更新して、設計変更の効果を予測
この「テスト→シミュレーション→検証→予測」のループを一つのプラットフォームで回せるのがSimcenterの売りだ。AnsysやAbaqusは基本的にシミュレーション専業だから、テスト装置との統合はここまで深くない。
なるほど、テストのデータとシミュレーションの結果を突き合わせられるのは確かに現場では大事ですよね。
Xceleratorとデジタルツイン
最近Siemensが「Xcelerator」って言葉を使っていますけど、何ですか?
Siemens XceleratorはSimcenter、NX、Teamcenterなどの全製品を包含するデジタルビジネスプラットフォームだ。ソフトウェア+ハードウェア+パートナーエコシステムをセットで提供する構想で、最終的にはデジタルツイン(製品の仮想コピー)を実現することが目標だ。
具体的には:
- NXで設計した3Dモデルが、Simcenterでの解析モデルと自動同期
- 製造段階のデータ(工作機械の加工精度など)がフィードバックされ、解析モデルが更新される
- 運用段階のIoTセンサーデータを使って、Simcenterのモデルでリアルタイム予測
「設計→解析→製造→運用」のライフサイクル全体をデジタルで繋ぐ。これはSiemensが製造業コングロマリットだからこそ説得力のあるビジョンだね。
まとめ
Siemens Simcenterのポイントをまとめるとこうなる:
- 出自:UGS(NX Nastran)+ LMS(テスト)+ CD-adapco(STAR-CCM+)+ Mentor(電子冷却)を100億ドル超かけて統合
- 差別化:テスト装置と解析ソフトの統合ワークフロー(NVH開発で特に強い)
- STAR-CCM+:ポリヘドラルメッシュ自動生成とバッチ処理効率で、Fluentと双璧をなすCFDツール
- 戦略:Xceleratorプラットフォームによるデジタルツインの実現。自社工場が実証環境
Ansysが「買収による物理ドメインの網羅」なら、Simcenterは「設計-解析-テスト-製造の統合」というアプローチだ。方向性の違いを理解しておくと、ツール選定の判断に役立つよ。
同じ「CAE大手」でも、戦略がこんなに違うんですね。テストとシミュレーションを両方やれるのはSimcenterならではの強みですね。ありがとうございます!
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