固有振動数解析 — トラブルシューティングガイド
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固有振動数解析のトラブル
固有振動数解析でよくあるトラブルを教えてください。
固有振動数のトラブルは入力データの間違いがほとんどだ。
固有振動数がゼロ
固有振動数が0 Hzのモードが出ます(拘束しているのに)。
剛体モードが残っている。拘束が不足して構造が動ける方向がある。
確認:
- 6自由度全てが拘束されているか(並進3+回転3)
- RBE2のスレーブDOFが正しいか
- メカニズム(不安定な構造)がないか
自由境界解析($f = 0$ のモードを含む)をするつもりだったのに、ゼロモードが7個以上出るのは?
メカニズムがある。構造の一部が結合されていない(接続忘れ)。モード形状を見れば、どの部分が分離しているかわかる。
固有振動数が理論値と大きくずれる
確認項目(優先度順):
1. 密度 $\rho$ — 設定忘れ or 単位ミス。$f \propto 1/\sqrt{\rho}$
2. ヤング率 $E$ — 単位ミス(MPa vs. Pa)。$f \propto \sqrt{E}$
3. 境界条件 — ピン/固定/自由の間違い
4. 質量の二重計上 — 密度+集中質量の重複
5. 断面諸元 — 梁の $I$ やシェルの板厚が間違い
密度とヤング率の両方が $f$ に効くんですね。
$f \propto \sqrt{E/\rho}$。密度を10倍間違えると $f$ が $1/\sqrt{10} \approx 0.32$ 倍。ヤング率を1000倍間違え(MPa→Pa)ると $f$ が $\sqrt{1000} \approx 32$ 倍。どちらも桁違いのずれになる。
モードが期待と違う
1次モードが全体曲げではなく局所モードです。
薄いパネルや軽い付属物が全体モードより低い振動数で振動することがある。FEMでは「低い順にモードを出す」ため、局所モードが先に出ると全体モードが後回しになる。
対策:
- モード数を増やして全体モードを探す
- 局所モードの原因(薄いパネル、軽い部品)を特定
- 必要に応じてモデルを簡略化(局所モードの原因を除去)
固有振動数が実験と合わない
FEMと実験で10%以上の差があります。
FEMと実験の5〜10%の差は一般的。10%以上の差がある場合:
- FEMの境界条件が実験と異なる — 実験の支持条件がピンでも固定でもない中間状態
- FEMの質量が不正確 — 非構造質量(配線、塗装、付帯物)の見落とし
- FEMの剛性が不正確 — 接合部の剛性(RBE2→RBE3で変わる)
- 減衰の影響 — 高減衰では固有振動数がずれる($f_d = f_n \sqrt{1-\zeta^2}$)
まとめ
固有振動数解析のトラブル対処、整理します。
「密度の設定確認」が固有振動数解析の第一歩。これだけは忘れません。
密度の設定忘れは固有振動数解析の最も多いミスだ。静解析から動的解析に移行するとき、密度の入力を確認する習慣をつけよう。
計算固有振動数と実測の乖離が大きい場合
FEM固有振動数と実測値が10%以上ずれる場合、境界条件の不一致が最も多い原因だ。「固定端」として設定したボルト締結部が実際には半剛体(ばね支持)になっていることがある。実験値に合わせるにはボルト締結部の接触剛性をパラメータとして感度解析し、最も実測と合う値を特定するモデル更新(Model Updating)が有効だ。
トラブル解決の考え方
「解析が合わない」と思ったら
- まず深呼吸——焦って設定をランダムに変えると、問題がさらに複雑になる
- 最小再現ケースを作る——固有振動数解析の問題を最も単純な形で再現する。「引き算のデバッグ」が最も効率的
- 1つだけ変えて再実行——複数の変更を同時に行うと、何が効いたか分からなくなる。科学実験と同じ「対照実験」の原則
- 物理に立ち返る——計算結果が「重力に逆らって物が浮く」ような非物理的な結果なら、入力データの根本的な間違いを疑う
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