CQC法(完全二次合成法)

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for cqc combination theory - technical simulation diagram
CQC法(完全二次合成法)

理論と物理

CQC法とは

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先生、CQC法はSRSSの改良版ですか?


🎓

CQC(Complete Quadratic Combination)はDer Kiureghian(1981)が提案したモード間の相関を考慮した合成法。SRSSの上位互換。


$$ R = \sqrt{\sum_{i=1}^{N} \sum_{j=1}^{N} \rho_{ij} R_i R_j} $$

$\rho_{ij}$ はモード相関係数。


モード相関係数

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$\rho_{ij}$ はDer Kiureghianの式:


$$ \rho_{ij} = \frac{8\sqrt{\zeta_i \zeta_j}(\zeta_i + r\zeta_j) r^{3/2}}{(1-r^2)^2 + 4\zeta_i \zeta_j r(1+r^2) + 4(\zeta_i^2 + \zeta_j^2)r^2} $$

$r = \omega_j / \omega_i$。


🧑‍🎓

$r = 1$(同じ振動数)なら $\rho = 1$(完全相関)、$r$ が離れると $\rho \to 0$(非相関)ですね。


🎓

モードが十分離れていれば $\rho_{ij} \to 0$ で、CQCはSRSSに退化する。つまりCQCはSRSSを包含する。


SRSSとCQCの差

🎓

密集モードがある場合、CQCの結果はSRSSより10〜30%大きいことがある。SRSSはモード間の正の相関を無視するから、密集モードの寄与を過小評価する。


まとめ

🎓

要点:


  • $R = \sqrt{\sum \sum \rho_{ij} R_i R_j}$ — モード間相関を含む完全な合成
  • $\rho_{ij}$ — Der Kiureghianの式。振動数比と減衰に依存
  • CQCはSRSSの上位互換 — モード離れていればSRSSに退化
  • 密集モードでSRSSより10〜30%大きい — SRSSは非保守的
  • 現在の設計コードはCQCを推奨 — ユーロコード8、ASCE 7

Coffee Break よもやま話

CQCはSRSSの「正確版」として1981年に登場

CQC(Complete Quadratic Combination)法はE.L. Wilsonら(UCバークレー)が1981年に発表した論文「A Replacement for the SRSS Method in Seismic Analysis」で提案された。SRSS法が密接した固有周波数間の相関を無視するため誤差が生じることを示し、相関係数ρijを用いた二次結合式を導入。密接モードが問題になる地盤上の不整形建物や原子炉建屋で特に精度が高い。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値解法と実装

CQCの実装

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全FEMソルバーでCQCが標準オプション:


  • Nastran: *RESPONSE SPECTRUM, CQC
  • Abaqus: *RESPONSE SPECTRUM, COMBINATION=CQC
  • Ansys: SRSS→CQCの切り替え
  • ETABS/SAP2000: CQCがデフォルト

🧑‍🎓

CQCをデフォルトにしておけばSRSSの問題を心配しなくて済みますね。


🎓

まさにそう。CQCを常に使うのが最も安全。モードが離れていればSRSSと同じ結果になるから、CQCにデメリットはない。


まとめ

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  • CQCを常に使う — SRSSの問題を回避
  • 全ソルバーで対応 — 設定は合成法の選択のみ
  • CQCとSRSSの差が小さければモードが十分離れている — 確認に使える

  • Coffee Break よもやま話

    相関係数の計算にはモード減衰比が必要

    CQC法の相関係数ρijは固有周波数比βij = ωj/ωi と両モードの減衰比ζi, ζjから計算する。減衰比ζ = 5%(建物標準)の場合、周波数比が1.1以内(10%差以内)で相関係数ρ > 0.1となり無視できない。SRSS(ρ=0仮定)との差が最大になるのはβij=1(完全一致)でρijが最大値1になる場合で、応答値が√2 = 1.41倍の差が生じる。

    線形要素(1次要素)

    節点間を線形補間。計算コストは低いが、応力の精度が低い。せん断ロッキングに注意(低減積分やB-bar法で緩和)。

    2次要素(中間節点付き)

    曲線的な変形を表現可能。応力精度が大幅に向上するが、自由度は約2〜3倍に増加。推奨:応力評価が重要な場合。

    完全積分 vs 低減積分

    完全積分:過剰拘束(ロッキング)のリスク。低減積分:アワーグラスモード(零エネルギーモード)のリスク。適材適所で選択。

    アダプティブメッシュ

    誤差指標(ZZ推定量等)に基づく自動細分化。応力集中部の精度を効率的に向上。h法(要素分割)とp法(次数増加)がある。

    ニュートン・ラフソン法

    非線形解析の標準的手法。接線剛性マトリクスを毎反復更新。収束半径内で2次収束するが、計算コストが高い。

    修正ニュートン・ラフソン法

    接線剛性マトリクスを初期値または数反復毎に更新。各反復のコストは低いが、収束速度は線形的。

    収束判定基準

    力の残差ノルム: $||R|| / ||F_{ext}|| < \epsilon$(一般に $\epsilon = 10^{-3}$〜$10^{-6}$)。変位増分ノルム: $||\Delta u|| / ||u|| < \epsilon$。エネルギーノルム: $\Delta u \cdot R < \epsilon$

    荷重増分法

    全荷重を一度に負荷せず、小刻みに増加させる。弧長法(Riks法)は荷重-変位関係の極値点を越えて追跡可能。

    直接法 vs 反復法のたとえ

    直接法は「連立方程式を筆算で正確に解く」方法——確実だが大規模問題では時間がかかりすぎる。反復法は「当て推量を繰り返して正解に近づく」方法——最初は大雑把な答えだが、反復するたびに精度が上がる。辞書で言葉を探すとき、最初のページから順番に探す(直接法)より、見当をつけて開き、前後に調整する(反復法)方が効率的なのと同じ原理。

    メッシュの次数と精度の関係

    1次要素は「定規で曲線を近似する」——直線の折れ線で表現するため精度に限界がある。2次要素は「フレキシブルカーブ」——曲線的な変化を表現でき、同じメッシュ密度でも格段に精度が向上する。ただし、1要素あたりの計算コストは増えるため、トータルのコスト対効果で判断する。

    実践ガイド

    CQCの実務

    🎓

    CQCは現在の耐震設計の標準合成法。


    実務チェックリスト

    🎓
    • [ ] CQC合成を選択しているか(SRSSではなく)
    • [ ] 各モードの減衰比が正しいか(CQCは$\zeta$に依存)
    • [ ] CQC結果がSRSS結果と大きく異なる場合、密集モードの存在を確認
    • [ ] 有効質量90%カバーのモード数
    • [ ] 3方向入力の合成(100-40-40 or SRSS)

    • 🧑‍🎓

      CQCの結果がSRSSと同じなら「密集モードがない」という確認にもなるんですね。


      🎓

      CQC-SRSS比較はモード間の相関の有無を確認するツールとしても使える。


      Coffee Break よもやま話

      原子炉建屋はCQCが法的要件になっている国も

      米国NRCの規制ガイドRG 1.92(2006年改訂)では密接モード(固有周波数差10%以内)を持つ構造にはCQC法を推奨(事実上義務)とした。日本の原子力規制庁も同様の指針を持ち、国内の全BWR・PWR原子力発電所の耐震解析はCQCが標準。SRSS使用が認められるのはモード間隔が十分広い(差>10%)ことを証明した場合のみ。

      解析フローのたとえ

      解析の流れは、実は料理とそっくりです。まず材料を買い出し(CADモデルの準備)、下ごしらえをして(メッシュ生成)、火にかけて(ソルバー実行)、最後に盛り付ける(後処理で可視化)。ここで大事な問いかけ——料理で一番失敗しやすい工程はどこでしょう? 実は「下ごしらえ」なんです。メッシュの品質が悪いと、どんなに優秀なソルバーを使っても結果はめちゃくちゃになります。

      初心者が陥りやすい落とし穴

      あなたはメッシュ収束性を確認していますか? 「計算が回った=結果が正しい」と思っていませんか? これ、実はCAE初心者が最も陥りやすい罠です。ソルバーは与えられたメッシュで「それなりの答え」を必ず返します。でもメッシュが粗すぎれば、その答えは現実から大きくずれている。最低3段階のメッシュ密度で結果が安定することを確認する——これを怠ると「コンピュータが出した答えだから正しいはず」という危険な思い込みに陥ります。

      境界条件の考え方

      境界条件の設定は、試験の「問題文を書く」のと同じです。問題文が間違っていたら? どんなに正確に計算しても答えは間違いますよね。「この面は本当に完全固定なのか」「この荷重は本当に一様分布なのか」——現実の拘束条件を正しくモデル化することが、実は解析全体で最も重要なステップだったりします。

      ソフトウェア比較

      CQCのツール

      🎓

      全FEMソルバーでCQCが標準対応。建築設計ソフト(ETABS, SAP2000, MIDAS Gen)はCQCがデフォルト。


      選定ガイド

      🎓
      • 全ての応答スペクトル解析でCQCを使う — SRSSに勝るデメリットなし
      • 設計コードがSRSSを指定する場合のみSRSSを使う

      • Coffee Break よもやま話

        SAP2000とEtabsがCQCのデファクト実装

        建築・土木構造のレスポンススペクトル解析でCQCを最も多用するソフトウェアはCSI(Computers and Structures, Inc.)のSAP2000とETABS。UCバークレーのE.L. Wilson教授が1970年代に開発したSAP(Structural Analysis Program)が原型で、Wilson本人がCSI設立に関わった経緯からCQC実装が特に強い。原子力ではNASAP/NRCのPIPESYS/PRIMEが専用ツールとして使われる。

        選定で最も重要な3つの問い

        • 「何を解くか」CQC法(完全二次合成法)に必要な物理モデル・要素タイプが対応しているか。例えば、流体ではLES対応の有無、構造では接触・大変形の対応能力が差になる。
        • 「誰が使うか」:初心者チームならGUIが充実したツール、経験者ならスクリプト駆動の柔軟なツールが適する。自動車のAT車(GUI)とMT車(スクリプト)の違いに似ている。
        • 「どこまで拡張するか」:将来の解析規模拡大(HPC対応)、他部門への展開、他ツールとの連携を見据えた選択が長期的なコスト削減につながる。

        先端技術

        CQCの先端研究

        🎓
        • CCQC(Complex CQC) — 複素モードへの拡張。非比例減衰系
        • CQC-3 — 3方向入力の合成をCQCフレームワークに統合
        • 非定常CQC — 地震の非定常性を考慮したCQC

        • Coffee Break よもやま話

          CQC3成分組み合わせはSRSS適用の二重構造

          3方向(X,Y,Z)地震入力のモード組み合わせには「まず各方向内でCQC → 次に方向間でSRSS(またはCQC)」という二重組み合わせが必要で、CQC3(3成分CQC)と呼ばれる。Menun & Der Kiureghian(1998年)が一般化式を発表。AnsysではRSオプション`SIGNIF`と`NMODE`の設定でCQC3を実行でき、全モード・全成分の相関を一度に考慮した最も厳密な組み合わせを実現する。

          トラブルシューティング

          CQCのトラブル

          🎓
          • CQCとSRSSが大きく異なる → 密集モードあり。CQCの結果が正確
          • $\rho_{ij}$ が異常な値減衰比 $\zeta$ の入力を確認。$\zeta = 0$ だと $\rho$ が不定
          • CQCの方が応答が小さい場合がある → 負の相関によりキャンセル効果。物理的にあり得る
          • CQCは全ての場合でSRSSより正確 — CQCを選べば安全

          • Coffee Break よもやま話

            CQCとSRSSの結果が近い場合は入力を疑え

            CQCとSRSSの最大応答が5%以内に収まるなら問題ないが、モデルに密接モードが存在するのに両者がほぼ一致する場合は相関係数の計算ミスを疑う。よくある原因はNastran SOL 103でCQCを指定したつもりが`CMETHOD = SRSS`のまま(デフォルト)になっているケース。出力ファイルの`COMBINATION METHOD`行を必ず確認すること。差が20%以上あれば構造が密接モードを持つ証拠。

            「解析が合わない」と思ったら

            1. まず深呼吸——焦って設定をランダムに変えると、問題がさらに複雑になる
            2. 最小再現ケースを作る——CQC法(完全二次合成法)の問題を最も単純な形で再現する。「引き算のデバッグ」が最も効率的
            3. 1つだけ変えて再実行——複数の変更を同時に行うと、何が効いたか分からなくなる。科学実験と同じ「対照実験」の原則
            4. 物理に立ち返る——計算結果が「重力に逆らって物が浮く」ような非物理的な結果なら、入力データの根本的な間違いを疑う
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            Written by NovaSolver Contributors
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