衝撃応答スペクトル(SRS)
衝撃応答スペクトル(SRS)の理論基礎
SRSとは
先生、SRS(Shock Response Spectrum)は地震応答スペクトルと同じ概念ですか?
概念は同じだが、入力が異なる。地震応答スペクトルは「地震波形」に対する最大応答、SRSは衝撃波形(半正弦波、パイロショック等)に対する最大応答。
衝撃試験の基準はSRSで規定されることが多いんですよね。
MIL-STD-810のShock試験、NASA-STD-7003のパイロショック環境はSRSで規定。試験の入力波形がSRS仕様を満足するか確認する。
SRSの種類
FEMでのSRS計算
1. 時刻歴解析(モード法 or 直接法 or 陽解法)で応答を計算
2. 後処理でSRSを生成 — 各固有振動数の1自由度系の最大応答をプロット
まとめ
要点:
- SRS = 衝撃に対する各固有振動数の最大応答 — 地震スペクトルの衝撃版
- MIL-STD-810, NASA-STD-7003で規定 — 衝撃試験の基準
- Primary / Residual / Maximax — 衝撃中 vs. 衝撃後
- FEM時刻歴→後処理でSRS生成 — Nastran PARAM,SRS
SRSの起源は核実験の衝撃被害予測
衝撃応答スペクトル(SRS: Shock Response Spectrum)は1960年代の核実験における機器・構造の衝撃耐性評価のためNASA/軍が開発した手法。正式な数学的定式化はC.V. NagelとD.S. Bernsteinが1969年に発表。その後IEC 60068-2-27(衝撃試験)やMIL-STD-810G(輸送振動・衝撃)に組み込まれ、現在は宇宙機器・軍用電子機器の設計標準となっている。
衝撃応答スペクトル(SRS)の数値計算手法
SRSの計算
SRSの数値計算は「多数の1自由度系を同時に時間積分」:
各固有振動数 $f_n$(10 Hz〜10 kHz、例: 1/3オクターブ間隔)に対して:
1. 1自由度系の運動方程式を時間積分(Newmark法等)
2. 最大応答(加速度 or 変位 or 擬似速度)を記録
3. $f_n$ vs. 最大応答をプロット → SRS
ソルバーでのSRS出力
まとめ
SRS計算の最小ダンピングは2%が業界標準
SRS計算では1自由度振動子の減衰比ζ = 5%がMIL-STD-810標準だが、超高感度機器(ジャイロ・加速度センサ)では実際の減衰が2%以下のため、ζ = 2%でのSRSも併せて計算することがNASA-STD-7003A(2011年)で要求されている。減衰比を5%→2%に変えるとSRSのピーク値が最大1.5倍上昇するため、設計マージンの評価に大きく影響する。
衝撃応答スペクトル(SRS)の実務適用
SRSの実務
宇宙機器のパイロショック環境評価、軍用電子機器の衝撃試験で必須。
実務チェックリスト
衛星分離衝撃は1000〜10000Gに達する
ロケットから衛星が分離する瞬間のパイロボルト(火工品)爆発により、構造には1000〜10000Gのピーク加速度が瞬間的に加わる。JAXAのH-IIA搭載衛星は分離衝撃のSRS(ζ=5%、10〜10000Hz)を仕様書で規定し、打ち上げ前の衝撃試験で合否を判定。ASTROS-H(2016年打ち上げ)では分離衝撃解析にESI Crash/PAM-SHOCKを使った詳細なSRS予測が実施された。
衝撃応答スペクトル(SRS)のソフトウェア比較
SRSのツール
選定ガイド
DewesoftとData PhysicsがSRS解析のシェアを争う
SRS解析ソフト市場はDewesoft(スロベニア、2000年設立)とData Physics(米、1984年設立)が二分。DewesoftのDS-NET PROはデータ収集からSRS計算・MIL-STD-810判定レポートまで一体化し、処理速度が業界最速級(100万点/秒)。CAEとの連携ではAnsys MotionのSRS入力機能とDewesoft測定値を直接接続するプラグインが2022年から公開されており、実験-解析の迅速な相関確認が可能になっている。
衝撃応答スペクトル(SRS)の先端研究
SRSの先端研究
SRSは可逆でない:同一SRSの衝撃波形は無限個
SRSから元の衝撃時刻歴を復元しようとすると解は一意に定まらない(逆問題の不定性)。同じSRSを持つ衝撃波形は理論上無限に存在し、これをSRS合成(SRS Synthesis)問題と言う。Smallwood(1974年)が提案したウェーブレット重ね合わせ法が現在の標準アルゴリズムで、試験用衝撃波形生成ソフト(Spectral Dynamics SD380等)に実装されている。CAE側で合成波形を生成して時刻歴解析と整合させることも可能。
衝撃応答スペクトル(SRS)のトラブル対応
SRSのトラブル
SRSのノッチは試験機特性が映り込んでいる
実測SRSに局所的な深いディップ(ノッチ)が現れる場合、真の構造応答ではなく試験機(シェーカー)や治具の共振による「試験機ノイズ」が原因のことが多い。MIL-STD-810では試験機共振の影響を排除するために試験治具を超低減衰設計とし、ベアプレートでの参照SRS測定を義務付けている。解析側で現れるノッチは数値積分の時間刻み(Δt)不足が主因で、Δtを1/10以下にすると消えることが多い。
関連トピック
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