衝撃応答スペクトル(SRS)

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for shock response spectrum theory - technical simulation diagram
衝撃応答スペクトル(SRS)

衝撃応答スペクトル(SRS)の理論基礎

SRSとは

🧑‍🎓

先生、SRS(Shock Response Spectrum)は地震応答スペクトルと同じ概念ですか?


🎓

概念は同じだが、入力が異なる。地震応答スペクトルは「地震波形」に対する最大応答、SRSは衝撃波形(半正弦波、パイロショック等)に対する最大応答。


$$ SRS(f_n) = \max_t |x(t; f_n, \zeta)| $$

🧑‍🎓

衝撃試験の基準はSRSで規定されることが多いんですよね。


🎓

MIL-STD-810のShock試験、NASA-STD-7003のパイロショック環境はSRSで規定。試験の入力波形がSRS仕様を満足するか確認する。


SRSの種類

🎓
  • Primary SRS — 衝撃入力中の最大応答
  • Residual SRS — 衝撃入力後(自由振動中)の最大応答
  • Maximax SRS — Primary + Residualの最大値

  • FEMでのSRS計算

    🎓

    1. 時刻歴解析(モード法 or 直接法 or 陽解法)で応答を計算

    2. 後処理でSRSを生成 — 各固有振動数の1自由度系の最大応答をプロット


    まとめ

    🎓

    要点:


    • SRS = 衝撃に対する各固有振動数の最大応答 — 地震スペクトルの衝撃版
    • MIL-STD-810, NASA-STD-7003で規定 — 衝撃試験の基準
    • Primary / Residual / Maximax — 衝撃中 vs. 衝撃後
    • FEM時刻歴→後処理でSRS生成Nastran PARAM,SRS

    Coffee Break よもやま話

    SRSの起源は核実験の衝撃被害予測

    衝撃応答スペクトル(SRS: Shock Response Spectrum)は1960年代の核実験における機器・構造の衝撃耐性評価のためNASA/軍が開発した手法。正式な数学的定式化はC.V. NagelとD.S. Bernsteinが1969年に発表。その後IEC 60068-2-27(衝撃試験)やMIL-STD-810G(輸送振動・衝撃)に組み込まれ、現在は宇宙機器・軍用電子機器の設計標準となっている。

    衝撃応答スペクトル(SRS)の数値計算手法

    SRSの計算

    🎓

    SRSの数値計算は「多数の1自由度系を同時に時間積分」:


    各固有振動数 $f_n$(10 Hz〜10 kHz、例: 1/3オクターブ間隔)に対して:

    1. 1自由度系の運動方程式を時間積分(Newmark法等)

    2. 最大応答(加速度 or 変位 or 擬似速度)を記録

    3. $f_n$ vs. 最大応答をプロット → SRS


    ソルバーでのSRS出力

    🎓
    • Nastran: PARAM,SRS + SOL 112
    • Abaqus: Pythonスクリプトで後処理
    • Ansys: POST26 + SRS計算
    • MATLAB/Python: 独自にSRS関数を実装(最も柔軟)

    • まとめ

      🎓
      • 多数の1自由度系の時間積分 — 各$f_n$で最大応答
      • 後処理で計算 — FEMの時刻歴結果から
      • MATLAB/PythonでのSRS計算が最も柔軟

      • Coffee Break よもやま話

        SRS計算の最小ダンピングは2%が業界標準

        SRS計算では1自由度振動子の減衰比ζ = 5%がMIL-STD-810標準だが、超高感度機器(ジャイロ・加速度センサ)では実際の減衰が2%以下のため、ζ = 2%でのSRSも併せて計算することがNASA-STD-7003A(2011年)で要求されている。減衰比を5%→2%に変えるとSRSのピーク値が最大1.5倍上昇するため、設計マージンの評価に大きく影響する。

        衝撃応答スペクトル(SRS)の実務適用

        SRSの実務

        🎓

        宇宙機器のパイロショック環境評価、軍用電子機器の衝撃試験で必須。


        実務チェックリスト

        🎓
        • [ ] SRSの減衰比(通常 $Q = 10$, $\zeta = 5\%$)が規格と一致するか
        • [ ] SRSの周波数範囲が規格をカバーしているか
        • [ ] SRSが規格のenvelope(包絡線)以内か
        • [ ] FEMの時刻歴が十分な周波数解像度を持つか($\Delta t < 1/(10 f_{max})$)
        • [ ] SRSの計算で十分な周波数点を使っているか(1/6オクターブ以下)

        • Coffee Break よもやま話

          衛星分離衝撃は1000〜10000Gに達する

          ロケットから衛星が分離する瞬間のパイロボルト(火工品)爆発により、構造には1000〜10000Gのピーク加速度が瞬間的に加わる。JAXAのH-IIA搭載衛星は分離衝撃のSRS(ζ=5%、10〜10000Hz)を仕様書で規定し、打ち上げ前の衝撃試験で合否を判定。ASTROS-H(2016年打ち上げ)では分離衝撃解析にESI Crash/PAM-SHOCKを使った詳細なSRS予測が実施された。

          衝撃応答スペクトル(SRS)のソフトウェア比較

          SRSのツール

          🎓
          • Nastran SOL 112 + PARAM,SRS — FEMのSRS出力
          • Vibration Research — 振動試験の制御+SRS計算
          • MATLAB Signal Processing Toolbox — SRS関数
          • Python(scipy) — 自作SRS計算。最も柔軟

          • 選定ガイド

            🎓
            • FEMのSRS評価Nastran SOL 112
            • 試験データのSRS処理 → Vibration Research or MATLAB
            • カスタムSRS計算 → Python(scipyの1自由度系積分)

            • Coffee Break よもやま話

              DewesoftとData PhysicsがSRS解析のシェアを争う

              SRS解析ソフト市場はDewesoft(スロベニア、2000年設立)とData Physics(米、1984年設立)が二分。DewesoftのDS-NET PROはデータ収集からSRS計算・MIL-STD-810判定レポートまで一体化し、処理速度が業界最速級(100万点/秒)。CAEとの連携ではAnsys MotionのSRS入力機能とDewesoft測定値を直接接続するプラグインが2022年から公開されており、実験-解析の迅速な相関確認が可能になっている。

              衝撃応答スペクトル(SRS)の先端研究

              SRSの先端研究

              🎓
              • SRS-FDS(Fatigue Damage Spectrum) — SRSの疲労版。衝撃の累積疲労損傷
              • MDOF SRS — 多自由度系のSRS。モード間の相互作用を含む
              • 非線形SRS — 非線形系(接触塑性)のSRS

              • Coffee Break よもやま話

                SRSは可逆でない:同一SRSの衝撃波形は無限個

                SRSから元の衝撃時刻歴を復元しようとすると解は一意に定まらない(逆問題の不定性)。同じSRSを持つ衝撃波形は理論上無限に存在し、これをSRS合成(SRS Synthesis)問題と言う。Smallwood(1974年)が提案したウェーブレット重ね合わせ法が現在の標準アルゴリズムで、試験用衝撃波形生成ソフト(Spectral Dynamics SD380等)に実装されている。CAE側で合成波形を生成して時刻歴解析と整合させることも可能。

                衝撃応答スペクトル(SRS)のトラブル対応

                SRSのトラブル

                🎓
                • SRSが規格を超える → 構造の固有振動数が衝撃のエネルギーの多い帯域にある。防振/免震を検討
                • SRSの計算がスムーズでない → $\Delta t$が粗い。時刻歴の時間解像度を上げる
                • $Q$の値による差が大きい → 感度分析で$Q = 10$と$Q = 50$の両方を評価

                • Coffee Break よもやま話

                  SRSのノッチは試験機特性が映り込んでいる

                  実測SRSに局所的な深いディップ(ノッチ)が現れる場合、真の構造応答ではなく試験機(シェーカー)や治具の共振による「試験機ノイズ」が原因のことが多い。MIL-STD-810では試験機共振の影響を排除するために試験治具を超低減衰設計とし、ベアプレートでの参照SRS測定を義務付けている。解析側で現れるノッチは数値積分の時間刻み(Δt)不足が主因で、Δtを1/10以下にすると消えることが多い。

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                  Written by NovaSolver Contributors
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