パラメータ設定
既定値は f₁=440 Hz(A4 ピッチ)、f₂=444 Hz(4 Hz ずれ)、A₁=A₂=0.5。スイープは f₂ を 440→2000 Hz まで往復し、うなりが消える瞬間(f₁=f₂)と差が広がるほどうなりが速くなる様子を観察できます。
合成波形 y(t)(0〜1000 ms)
青=合成波 y(t)=A₁cos(2πf₁t)+A₂cos(2πf₂t)/橙破線=振幅エンベロープ ±|A₁cos(2π·f_b·t)+…|/黄点=最大点(A_max)/赤点=最小点(A_min)。エンベロープの 1 周期が「うなり 1 回」に対応。
周波数スペクトル
横軸=周波数 [Hz]/縦軸=振幅/青のスパイク=f₁ と f₂/黄破線=平均周波数 f_avg=(f₁+f₂)/2/矢印=周波数差 |f₁−f₂|(うなり周波数の発生源)。
理論・主要公式
2 つの正弦波の和を和積公式で展開すると、エンベロープが現れます。
合成波(一般式):
$$y(t) = A_{1}\cos(2\pi f_{1} t) + A_{2}\cos(2\pi f_{2} t)$$
等振幅(A₁=A₂=A)の場合の和積展開:
$$y(t) = 2A\cos(2\pi f_{\mathrm{avg}} t)\cos(2\pi f_{b} t)$$
うなり周波数(聴感上の強弱の周波数):
$$f_{\mathrm{beat}} = |f_{1} - f_{2}|, \qquad T_{b} = \frac{1}{f_{\mathrm{beat}}}$$
$f_{\mathrm{avg}}=(f_{1}+f_{2})/2$ は耳に届く高い音高、$f_{b}=|f_{1}-f_{2}|/2$ はエンベロープの半周期周波数。最大合成振幅は $A_{1}+A_{2}$、最小は $|A_{1}-A_{2}|$。既定値 f₁=440 Hz、f₂=444 Hz、A₁=A₂=0.5 では、うなり周波数 4.0 Hz、平均周波数 442 Hz、うなり周期 250 ms、最大合成振幅 1.00 となります。
音のうなり シミュレーターとは
🙋
既定値で f₁=440 Hz、f₂=444 Hz、振幅 0.5 ずつにすると、うなり周波数 4 Hz、平均周波数 442 Hz って出ました。耳で聞くとどんな音になるんですか?
🎓
面白いところに気づいたね。耳には「442 Hz の高めの A の音」が聞こえつつ、その音量が 1 秒間に 4 回「ワン・ワン・ワン・ワン」と強弱を繰り返す——これが「うなり」だよ。波形カードを見ると、内側の細かい振動(442 Hz)と、外側のゆったりしたエンベロープ(4 Hz の脈動)が二重構造になっているのがわかる。エンベロープ 1 周期=250 ms ごとに「ワン」が来るから、うなり周期 250 ms と表示されるわけだ。f₂ を 440 に近づけてみると、うなりがどんどん遅くなって、最後はぴったり消えるよ。
🙋
スペクトル図には f₁ と f₂ の 2 本のスパイクしか出ていないのに、なぜ 4 Hz のうなり周波数が「聞こえる」んですか?スペクトルには 4 Hz の成分はないですよね?
🎓
鋭い指摘だ。物理的には音には 440 Hz と 444 Hz の 2 成分しか入ってない(スペクトルに 4 Hz のスパイクは存在しない)。でも耳の蝸牛は時間軸上での音圧の「強弱」を検出する非線形応答を持っていて、エンベロープのゆっくりした振幅変動を「リズム」として知覚するんだ。これは数学的には和積公式 cos α + cos β = 2 cos((α+β)/2)·cos((α−β)/2) からエンベロープが現れることに対応していて、線形の重ね合わせとしては 2 周波しかないけど、知覚上は変調された 1 つの音に聞こえる、という仕掛けだよ。
🙋
A₁ と A₂ を変えてみたら、A₂ を 0.2 に下げるとうなりが「浅く」なってあまり消えなくなりました。これはなぜですか?
🎓
エンベロープの最小値が変わるからだよ。等振幅(A₁=A₂)のときはうなりの「谷」で完全に音が消える(破壊的干渉、A_min=0)。でも A₁=0.5、A₂=0.2 だと A_min=|0.5−0.2|=0.3 が残るから、谷でも音が完全には消えない。これを変調度 m=2·min(A₁,A₂)/(A₁+A₂) で測ると、等振幅で m=1(フル変調)、A₂=0.2 なら m=0.57(57%)。実際の楽器・スピーカーは音量バランスが完全には揃わないことが多くて、うなりが浅い「ビブラート風の揺らぎ」として聞こえるのが普通なんだ。
🙋
ピアノ調律のとき「うなりが消えるまでペグを回す」って聞いたんですが、本ツールでそれを再現できますか?
🎓
完全に再現できるよ。f₁=440 を A4 の基準音、f₂ を弦の音と思って、f₂ を 444 → 442 → 441 → 440 と動かすと、うなり周波数が 4 → 2 → 1 → 0 Hz、うなり周期が 250 → 500 → 1000 → ∞ ms と長くなる。実際の調律では「秒速 0 拍」になった瞬間がぴったり合った状態。プロは秒速 0.5 拍以下まで合わせる人もいる。本ツールでも f₂ を 440 ぴったりにすれば、うなり周期が「∞ ms」と表示され、波形カードでエンベロープが完全にフラットになるのが確認できるよ。
物理モデルと主要な数式
2 つの正弦波の和は、和積公式によりエンベロープと搬送波の積に分解できます。
$$y(t) = A_{1}\cos(2\pi f_{1} t) + A_{2}\cos(2\pi f_{2} t)$$
等振幅 $A_{1}=A_{2}=A$ の場合、和積公式から
$$y(t) = 2A\cos(2\pi f_{\mathrm{avg}} t)\cos(2\pi f_{b} t)$$
と書けます。ここで $f_{\mathrm{avg}}=(f_{1}+f_{2})/2$ は内側の高速振動の周波数(耳に届く音高)、$f_{b}=|f_{1}-f_{2}|/2$ は外側の振幅エンベロープの半周期周波数です。耳が知覚する強弱は $|\cos(2\pi f_{b} t)|$ の周期で生じるため、うなりの可聴周波数は $f_{\mathrm{beat}}=|f_{1}-f_{2}|$ Hz、うなり周期は $T_{b}=1/|f_{1}-f_{2}|$ となります。最大合成振幅は $A_{\max}=A_{1}+A_{2}$(位相が揃った構成的干渉)、最小は $A_{\min}=|A_{1}-A_{2}|$(位相が逆向きの破壊的干渉)です。
非等振幅の一般式では、エンベロープは $\sqrt{A_{1}^{2}+A_{2}^{2}+2 A_{1} A_{2}\cos(2\pi(f_{1}-f_{2})t)}$ となり、最大値 $A_{1}+A_{2}$ と最小値 $|A_{1}-A_{2}|$ の間を周期 $T_{b}$ で振動します。本ツールはこの一般式に基づき、波形カードに上下のエンベロープ(橙破線)を描画します。
実世界での応用
楽器のチューニング:ピアノ調律師・ギター奏者はうなりを聴き分けて秒速 0 拍に合わせます。基準音叉(440 Hz)と弦の音を同時に鳴らし、|f₁−f₂| Hz のうなりを数えるだけで、絶対音感がなくても 0.5 Hz 以内の精度で調律できます。本ツールに f₁=440、f₂=441 を入れるとうなり周期 1000 ms(1 秒に 1 回)と表示され、調律師が「秒速 1 拍ずれ」と言う状態が再現されます。
ヘテロダイン受信機(ラジオ・レーダー):受信した高周波(例:1 GHz)に局部発振器の周波数(例:999.9 MHz)を混合すると、差周波 100 kHz の中間周波(IF)が得られ、増幅・フィルタが容易になります。これは f_b=|f₁−f₂| を意図的に作り出す応用例で、AM/FM ラジオ・テレビ・レーダー・GPS 受信機すべての基本原理です。本ツールで f₁=440、f₂=400 を試すと f_b=40 Hz が得られ、混合により発生する低周波成分が直感的に理解できます。
機械振動の故障診断:2 軸ファン・双発エンジン・複数モーターを搭載する機械では、各軸の回転数が完全には一致せず、回転周波数の差が「うなり振動」として船体・建物に伝わります。例えば 50 Hz と 50.5 Hz の電源系のモーターが同居すると、0.5 Hz のうなり(2 秒に 1 回の脈動)が発生し、乗員に不快感を与えます。設計では同期制御や能動ノイズキャンセル(ANC)でうなりを抑制し、CAE では FFT で 2 本のピークを分離してうなり発生を予測します。
音響学教材・聴覚心理学研究:うなりは「2 周波の差を耳が知覚する」非線形応答の典型例で、聴覚心理学・音楽理論の入門教材として広く使われています。本ツールのように合成波形・エンベロープ・スペクトルを同時に可視化することで、「物理的には 2 周波しかないのに、なぜ第 3 の周波数(うなり)が聞こえるのか?」という根源的な問いを、和積公式と耳の非線形性の組み合わせとして理解できます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解は、「うなり周波数は f_b=|f₁−f₂|/2」というものです。和積公式で内側に出てくるエンベロープ係数 cos(2π·f_b·t) の周波数は確かに $|f_{1}-f_{2}|/2$ ですが、耳が感じる音量変化は $|\cos|$ の周期なので、可聴うなり周波数はその 2 倍、すなわち $|f_{1}-f_{2}|$ Hz になります。本ツールでは「うなり周波数」を後者(聴感上の値)として表示しており、エンベロープの数学的周期と区別する必要があります。
次に多いのが、「うなりはいつでも聞こえる」という思い込みです。実際には、|f₁−f₂| が約 20 Hz を超えると、耳は強弱の変動を「リズム」ではなく「粗い音色」として感じ始め、|f₁−f₂| が 30 Hz 以上になると 2 つの独立した音として分離して聞こえます(臨界帯域)。うなりが「ワン・ワン」とリズムとして知覚されるのは概ね 0.5〜15 Hz 程度の範囲で、本ツールで f₂ を 470 Hz(差 30 Hz)にすると数学的にはまだうなりですが、実際の耳には 2 音の和音として聞こえます。
最後に、「振幅 A₁ と A₂ を変えてもうなりの「速さ」は変わらない」という事実も意外と忘れられがちです。うなり周期 $T_{b}=1/|f_{1}-f_{2}|$ は周波数差のみで決まり、振幅には依存しません。振幅比が変わるのは「うなりの深さ(変調度)」であり、本ツールで A₂ を 0.5 から 0.1 に下げてもうなり周期は 250 ms のままで、エンベロープの振幅範囲だけが [0.4, 0.6] に縮小されます。チューニング時に「弦の音量が小さくてうなりが聞こえない」と感じても、実は周期は変わらず、ただ深さが浅くなっているだけです。
よくある質問
等しい振幅の 2 つの正弦波の和は、和積公式から y(t)=2A·cos(2π·f_avg·t)·cos(2π·f_b·t) と書けます。ここで f_avg=(f₁+f₂)/2、f_b=|f₁−f₂|/2。内側の cos(2π·f_avg·t) は耳に高い音として聞こえ、外側の cos(2π·f_b·t) はゆっくりした振幅エンベロープになります。耳が感じる音量の強弱は |エンベロープ| の周期で生じるため、cos の絶対値の周期 1/(2·f_b)=1/|f₁−f₂| 秒ごとに「ワン・ワン」と鳴り、結果としてうなりの可聴周波数は |f₁−f₂| Hz になります。本ツールに既定値 f₁=440 Hz、f₂=444 Hz を入れると、うなり周波数は 4.0 Hz、うなり周期は 250 ms と表示されます。
正確に同じ周波数の 2 音は完全に重なってうなりが消えます(f_b=0、エンベロープが直線)。逆に少しでもずれていれば、|f₁−f₂| Hz のうなりが「ワン・ワン」と聞こえます。例えば 440 Hz の基準音と弦の音を比べ、毎秒 2 回うなれば弦は 442 Hz か 438 Hz、ずれが 0.5 Hz になればほぼ合っています。耳は周波数の絶対値を高精度に判別するのは苦手ですが、うなりの遅さは秒単位で容易に数えられるため、機械的測定器がない時代から調律師の必須技術でした。本ツールで f₂ を 440 Hz に近づけると、うなり周期が 1 s、5 s、10 s と長くなり、ぴったり一致した瞬間にエンベロープが直線化する様子が観察できます。
等振幅のときはエンベロープの最小値が 0 となり、うなりの「谷」で完全に音が消えます(破壊的干渉)。一方、A₁≠A₂ では最小値が |A₁−A₂| までしか下がらず、谷でも音が残るためうなりの深さ(変調度)が浅くなります。最大値は常に A₁+A₂、最小値は |A₁−A₂|、変調度は (A_max−A_min)/(A_max+A_min)=2·min(A₁,A₂)/(A₁+A₂) で評価できます。本ツールで A₂ を 0.50 から 0.20 に下げると、最大合成振幅は 0.70、最小は 0.30 となり、うなりが浅くなる様子が波形カードで確認できます。実際の楽器・スピーカーは音源が複数で振幅が一致しないことが多く、この非対称うなりが「ビブラート風の揺らぎ」として聞こえます。
問題例:複数のジェットエンジン・ファン・モーターが少しだけ異なる回転数で動くと、機体・建物全体に低い周波数(数 Hz)の音圧脈動が生じ、乗客が「ウワン・ウワン」という不快感を覚えます。設計では同期回転制御や能動的ノイズキャンセル(ANC)でうなりを抑制します。利点例:ヘテロダイン受信機(ラジオ・レーダー)は高周波信号を局部発振器とミックスして低い「中間周波(IF)」のうなりに変換し、増幅・復調を容易にします。CAE では構造振動の固有モードどうしの近接 2 周波がうなりとして時系列に表れるため、FFT で 2 本のピークを分離できれば「うなりが起きる構造危険性」を事前に予測できます。本ツールはこの基本物理を直感的に理解する教材として活用できます。