接着継手応力解析 戻る
解析ツール

接着継手応力解析シミュレーター

Volkersen線形モデル・Hart-Smith弾塑性モデルでラップジョイントのせん断・ピーリング応力を計算。継手長・接着剤特性のパラメトリック解析。

パラメータ設定
荷重 P
N
継手幅 w
mm
重なり長さ L
mm
被着体弾性率 E₁
GPa
被着体板厚 t₁
mm
被着体弾性率 E₂
GPa
被着体板厚 t₂
mm
接着剤せん断弾性率 Ga
GPa
接着剤厚さ ta
mm
許容せん断強度 τ_allow
MPa
計算結果
0.0 MPa
最大τ (端部)
0.0 MPa
平均τ
0.00
応力集中係数 K
0.00
安全率 S.F.
せん断応力分布(Volkersen)
パラメータ影響分析(継手長 vs τ_max)
理論・主要公式
$$\tau(x) = \frac{P\kappa}{2w}\cdot\frac{\cosh(\kappa x)}{\sinh(\kappa L/2)}$$ $$\kappa = \sqrt{\frac{G_a}{t_a}\left(\frac{1}{E_1 t_1}+\frac{1}{E_2 t_2}\right)}$$

平均せん断応力:$\bar{\tau}= P/(w\cdot L)$

応力集中係数:$K = \tau_{max}/\bar{\tau}$

Hart-Smith弾塑性モデル

接着剤を弾完全塑性と仮定:$\tau \leq \tau_y$ で弾性、$\tau > \tau_y$ で塑性流れ。

破壊荷重:$P_f = w\left[2\tau_y\sqrt{\frac{2G_a t_a \gamma_p}{(1/E_1t_1+1/E_2t_2)}}+ \tau_y \cdot L_{el}\right]$

ピーリング応力(線形弾性近似):

$$\sigma_p(x) \approx \frac{6 M(x)}{t_a^2}$$

実務メモ: エポキシ系構造接着剤ではGa ≈ 1〜2 GPa、τy ≈ 25〜40 MPa、破断ひずみ ≈ 0.5〜5%。航空宇宙ではHart-Smith法が設計標準(FAA AC 20-107B)。自動車ボディでは継手長/板厚比 = 10〜30が典型値。

接着継手応力解析とは

🙋
「接着継手の応力解析」って、接着剤がどこで壊れやすいかを計算するんですよね?教科書だと端に応力が集中すると書いてあるけど、実際の設計ではどう考えればいいんですか?
🎓
その通り!大まかに言うと、重ね継手の端っこが一番危ない、というのが基本だね。これは「被着体」、つまり貼り合わせる板が引っ張られて変形し、そのずれを接着剤が食い止めようとするから端に負担がかかるんだ。このシミュレーターの「重なり長さ L」のスライダーを動かしてみて。長くすると端の応力ピークは下がるけど、全体が均等に働かなくて「継手効率」が悪くなるのがわかるよ。
🙋
え、そうなんですか?「継手効率」って何ですか?あと、パラメータに「Volkersen」と「Hart-Smith」って2つモデルがありますけど、どう使い分けるんですか?
🎓
継手効率は、接着剤が全体に均一に働いた理想的な場合と比べて、実際にどれだけの荷重に耐えられるかの指標だ。端に集中するから、長くしても無駄が増えるだけなんだよ。モデルの違いは接着剤の性質の考え方。Volkersenは接着剤が完全にバネのように弾性的に壊れるモデル。一方、Hart-Smithは実務で多い、接着剤が「降伏」する、つまりある程度変形しても力を保つ塑性を考慮するんだ。例えば自動車のボディ接着では、衝撃時に接着剤が塑性変形してエネルギーを吸収するから、Hart-Smithモデルで評価する方が現実的だね。
🙋
なるほど!じゃあ、シミュレーターで「接着剤せん断弾性率 Ga」や「許容せん断強度 τ_allow」を変えると、結果はどう変わるんですか?現場ではどんな値を使うんですか?
🎓
良い質問だ!Ga(剛性)を上げると応力分布の山が鋭くなり、端への集中がより顕著になる。逆に柔らかい接着剤は応力をなだらかに分散するんだ。τ_allowは安全率を決める基準値で、これに対して計算された最大応力がどのくらい余裕があるかを見る。実際のエポキシ系構造接着剤では、Gaは1〜2 GPa、τ_allow(降伏強度に相当)は25〜40 MPaくらいの値が多いよ。パラメータを動かして、最大応力が許容値を超えて赤く表示される状態と、余裕がある状態を作り比べてみると理解が深まるぞ。

よくある質問

Volkersenモデルは接着剤が弾性範囲内の設計に適しており、Hart-Smithモデルは接着剤の塑性変形を考慮する必要がある場合に使用します。一般的な安全側の設計にはVolkersen、継手の最大強度を評価したい場合や靭性の高い接着剤にはHart-Smithを推奨します。
継手長さを増やすと、端部の応力集中が緩和され、中央部の応力が均一化します。ただし、ある長さ以上では効果が飽和するため、最適な継手長さを見極めることが重要です。シミュレーターで長さをスイープしながらピーク応力の変化を確認してください。
接着剤厚さを薄くするとκ値が大きくなり、せん断応力分布がより急峻になります。これにより継手端部の応力集中が強まるため、剥離リスクが高まります。実際の製造ばらつきを考慮し、厚さは設計公差内で適切に設定してください。
異種材料では剛性差により応力分布が非対称になります。Volkersenモデルでは各被着体のヤング率と厚さを正しく入力することで、非対称性を考慮した解析が可能です。特にピーリング応力が増加しやすいため、Hart-Smithモデルで塑性緩和効果も確認することを推奨します。

実世界での応用

航空機・宇宙構造物:複合材(CFRP)パネルの接合に広く採用。軽量化が命題のため、リベットではなく接着接合が多用されます。FAA(連邦航空局)の設計指針でもHart-Smithモデルに基づく解析が推奨されており、高い安全性が要求される部位の設計に不可欠です。

自動車ボディ:軽量化と衝突安全性向上のため、鋼板やアルミ部材の接着接合が増加。衝突時に接着剤の塑性変形により衝撃エネルギーを吸収するため、Hart-Smithモデルによる評価が有効です。典型的な継手設計では、重なり長さと板厚の比(L/t)が10〜30の範囲に収められます。

電子機器・小型デバイス:スマートフォンやタブレットの筐体、内部基板の固定など。部品の小型化・薄肉化が進み、微細な継手の応力集中管理が重要です。被着体に金属、プラスチック、ガラスなど異種材料が混在するため、Volkersenモデルで剛性差の影響を事前に評価します。

建築・土木構造物:鉄骨の補強に用いるCFRP(炭素繊維シート)の現場接着、コンクリート部材の補修など。長期耐久性と信頼性が求められ、環境(温度、湿度)による接着剤特性の変化も考慮した設計が必要となります。

よくある誤解と注意点

まず、「最大応力が下がればそれでOK」と考えるのは危険です。確かに重なり長さを増やせば端のピーク応力は下がりますが、それ以上に接着剤の使用量や重量、コストが増えます。重要なのは「継手効率」と「最大応力」のトレードオフを見極めること。例えば、L=10mmで最大応力80MPa、効率40%の設計と、L=20mmで最大応力50MPa、効率25%の設計では、後者は一見安全に見えますが、材料を倍使って効率は悪化しています。本当に最適なのは、許容強度を少し上回るぎりぎりの長さを見つけ、必要なら被着体の厚さや材質(Eを下げる)で応力集中を緩和するアプローチです。

次に、パラメータの現実的なオーダーを理解していないこと。シミュレーターは自由に入力できますが、非現実的な数値では意味のある結果になりません。例えば、接着剤厚さt_aを0.01mm(10μm)とすると、製造ばらつきの影響を大きく受け、実用性に欠けます。逆に1mmと厚くすると、内部に気泡が入りやすく強度が低下します。実務では0.1〜0.3mmが一般的な範囲です。同様に、被着体のヤング率Eを鋼(210GPa)からアルミ(70GPa)に変えるだけで、応力分布は劇的に広がり、ピークは低下します。

最後に、シミュレーション結果をそのまま絶対視しないこと。特にHart-Smithモデルは塑性を考慮するとはいえ、あくまで1次元の簡易モデルです。実際の破壊には、ここでは計算されていない「ピーリング応力」(剥がす方向の垂直応力)や、疲労、クリープ、環境劣化(熱、水分)が大きく影響します。このツールの役割は、設計の初期段階でトレンドを掴み、パラメータ感度を理解する「勘所」を養うことです。最終的には実験検証や、より高精度なFEM解析との併用が必須です。