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航空機・性能解析

航空機 離陸距離・V1/Vr シミュレーター

機種・離陸重量・気温・標高・向かい風・フラップ・滑走路勾配を変えると、TORA / TODA / BFL の滑走路長要求と V1・Vr・V2 速度がリアルタイムで分かります。High Hot Heavy 条件での性能低下や、空港選定・荷重制限の検討に使えます。

パラメータ設定
機種
MTOW・基準 Vr・基準離陸距離を自動設定
離陸重量
ton
外気温
°C
ISA 標準より高いほど密度高度が上がる
圧高度
m
空港の標高(Denver≈1655m、La Paz≈4061m)
向かい風
kt
負の値は追風(離陸距離が伸びる)
フラップ設定
大きいフラップほど短距離だが上昇率は悪化
滑走路勾配
%
正で上り勾配(離陸距離が伸びる)
計算結果
V1 決断速度 (kts)
Vr 引き起こし速度 (kts)
V2 安全速度 (kts)
離陸滑走距離 TORA (m)
離陸距離 TODA (m)
BFL (m)
離陸プロファイル — 滑走路と V速度マーカー

機体が V1・Vr を通過して V2 で離陸する様子をアニメーションで表示します。バー長は計算された TORA / TODA を反映します。

TORA vs 温度・標高
機種別 TORA 比較(同条件)
理論・主要公式

$$TORA \approx TODR_{base} \cdot \left(\frac{W}{W_{ref}}\right)^2 \cdot \frac{\rho_0}{\rho} \cdot f_{wind} \cdot f_{flap}$$

W=離陸重量、W_ref=機体 MTOW、ρ=空気密度。重量比の2乗、密度比の逆数、向かい風係数、フラップ係数の累積で離陸滑走距離が決まる。

$$V_r = V_{r,ref}\sqrt{W/W_{ref}}, \qquad V_2 = 1.13\,V_r, \qquad V_1 = 0.95\,V_{r,ref}$$

Vr は重量の平方根に比例。V2 は OEI 上昇に必要な安全速度。V1 は決断速度で、超えると離陸続行が原則。

$$\rho/\rho_0 \approx \frac{T_{ISA}+273.15}{T_{OAT}+273.15} \cdot e^{-h/8400}$$

密度比の概算。T_ISA=15-0.0065·h は ISA 標準気温、T_OAT は実測外気温、h は圧高度 [m]。

航空機 離陸距離 (TODA/TORA) — V1/Vr 設計

🙋
パイロットが「V1、Vr、V2」って叫ぶシーン、映画で見たことあります。あれって何の速度なんですか?滑走路の長さとも関係あるんですよね?
🎓
いいところを突いてきたね。V1 は「もう止まれない速度」、つまり離陸を中断できる最後のチャンスだ。これを超えてエンジンが1基壊れても、もう滑走路上で止まるよりは飛び上がるほうが安全なんだ。Vr は「機首を引き起こす速度」、V2 は「片発停止でも安全に上昇できる最低速度」。3つの速度は機体重量や気象で変わるから、毎フライト前に Airbus OPT や Boeing FCOM で計算する。本ツールではデフォルトの A320 78t で V1=138, Vr=145, V2=164 kts が出るはずだよ。
🙋
なるほど!じゃあ気温を上げてみたら……あ、TORA が一気に伸びますね。何でこんなに敏感なんですか?
🎓
それが「密度高度(density altitude)」の効果だね。空気が薄いとエンジン推力も落ちるし、翼の揚力も同じ速度では小さくなる。だから加速も鈍く、Vr に達するまで長い距離が必要になるんだ。Phoenix Sky Harbor (KPHX) では夏に 45°C を超える日があって、Boeing 757 とか一部の機種は「これ以上重いと飛ばせない」と荷重制限がかかる。Denver (KDEN, 標高1655m) や La Paz (SLLP, 4061m) のような高地空港も同じ理由で、同じ機種でも東京・羽田より滑走路長要求がずっと厳しい。
🙋
じゃあ「High Hot Heavy」が極限条件って言われるのは、その3つが全部重なるからですか?
🎓
そう、まさにそれ。標高が高く(High)、気温も高く(Hot)、機体も重い(Heavy)の三重苦だ。Bombardier CRJ700 や Embraer E190 みたいなリージョナル機が、こういう山岳空港に対応するために短距離離陸性能をどんどん磨いてきた歴史がある。本ツールでも、標高 3000m・気温 40°C・重量 MTOW に近づけると TODA が 4500m を超えて警告が出るはずだ。EASA CS-25 や FAA Part 25 の規制では、TODA が利用可能な滑走路長を超えた時点でその重量での離陸はできないんだ。
🙋
フラップを増やすと距離が短くなるのに、なぜパイロットはいつも一番大きいフラップで離陸しないんですか?
🎓
いい質問だね。フラップを増やすと低速での揚力は確保できるんだけど、抗力も同時に増えるんだ。だから離陸後の「climb gradient(上昇率)」が悪くなる。長い滑走路で近距離障害物がないなら Conf 1+F で離陸して、すぐ加速・上昇したほうがエンジンへの負担も少ない。逆に短い滑走路や、離陸直後に山がある空港では Conf 3 や Full にして、まず確実に浮き上がることを優先する。スライダーで切り替えてみると、Full にしたとき TORA が 16% 縮むのが確認できるよ。
🙋
BFL(Balanced Field Length)ってのは何のための指標なんですか?
🎓
BFL は「accelerate-stop(V1 でブレーキをかけて停止する距離)」と「accelerate-go(V1 でエンジン1基失っても離陸続行する距離)」が一致する滑走路長のことだ。この長さの滑走路を確保しておけば、V1 のタイミングで何が起こっても安全に対処できる。だから空港選定や航路計画では「BFL ≤ 利用可能滑走路長」が満たされる重量・気象でしか飛べない。本ツールでは TODA の 1.05 倍で簡易表示しているけど、実機計算では accelerate-stop も含む詳細な性能データから求めるんだ。

よくある質問

TORA (Take-Off Run Available) は実際の滑走路長で、機体が地上を滑走できる距離です。TODA (Take-Off Distance Available) は TORA に clearway(スクリーンハイト 35ft までの上昇区間)を加えたもので、本ツールでは TORA の 1.15 倍で近似しています。BFL (Balanced Field Length) は accelerate-stop(V1 で減速停止する距離)と accelerate-go(V1 でエンジン1基停止のまま離陸続行する距離)が一致する滑走路長で、機種ごとの滑走路長要求の基本指標です。本ツールでは TODA の 1.05 倍で簡易表示します。
V1 (decision speed) は離陸を中断できる最後の速度で、これを超えるとエンジン故障が発生しても離陸続行が原則となります。Vr (rotation speed) は機首引き起こしを開始する速度で、機体重量の平方根に比例します。V2 (takeoff safety speed) は OEI(片発停止)状態でも安全に上昇できる速度で、Vr の約 1.13 倍が目安です。A320 のデフォルト条件では V1=138, Vr=145, V2=164 kts となります。実機運航では Boeing FCOM や Airbus OPT(Onboard Performance Tool)で重量・気象・滑走路条件から都度計算します。
離陸性能を決めるのは「密度高度」で、空気密度が下がるほどエンジン推力と翼揚力が同時に低下します。気温が ISA 標準より高い、あるいは標高が高いと、空気が薄くなり離陸距離が大幅に伸びます。Phoenix Sky Harbor (KPHX) では夏期 45°C を超える日があり、Boeing 757 など一部機種は離陸重量制限がかかります。Denver (KDEN) や La Paz (SLLP) など高地空港も同様で、本ツールの「外気温」「圧高度」スライダーを上げると TORA が急増することが確認できます。
フラップ角度を増やすほど揚力係数が上がり、低速での揚力が確保できるため離陸滑走距離 TORA は短くなります。本ツールでは Conf 1+F を基準に、Conf 2 で 8%、Conf 3 で 12%、Full で 16% の短縮を仮定しています。ただしフラップを大きくすると抗力も増え、上昇率(climb gradient)が悪化するため、近距離障害物がない通常の長い滑走路では Conf 1+F、短い滑走路や離陸重量超過時には Conf 3 や Full を選択する、というトレードオフがあります。

実世界での応用

空港選定と路線計画:新規路線開設時、エアラインは「就航予定機材の MTOW で全季節・全気象条件下に必要な BFL」を計算し、空港の利用可能滑走路長と比較します。例えば成田 16R/34L (4000m) は重貨物便でも余裕ですが、La Paz El Alto (4061m elevation、3978m runway) のような高地空港では Boeing 737-800 でも夏期の最大離陸重量が大幅に制限されます。本ツールで Cessna 172 → Boeing 777 へ機種を切り替え、同じ条件で TORA がどう変わるかを比較できます。

運航管理・ディスパッチ:毎フライト前にディスパッチャーが Airbus OPT (Onboard Performance Tool) や Boeing PET (Performance Engineering Tool) で当日の気温・QNH・風・滑走路状態(dry/wet/contaminated)から V1/Vr/V2 と最大離陸重量を計算します。風が向かい風 10kt あれば、追風 5kt の条件と比較して TORA が約 22% 短縮されることが本ツールでも確認できます。

機体設計・型式証明:EASA CS-25 や FAA Part 25 の型式証明取得には、メーカーが膨大なフライトテストを実施し、全運用範囲での性能データを Aircraft Flight Manual (AFM) として提出する必要があります。Boeing FCOM や Airbus FCOM に掲載されている離陸性能チャートは、本ツールが用いている重量2乗則・密度高度補正・フラップ補正を高精度化したものです。CRJ700 や E190 のリージョナル機は、High Hot Heavy 条件での short field 性能を強化することで山岳空港や狭隘空港への就航を可能にしました。

事故調査・性能トラブル解析:離陸滑走中の overrun(オーバーラン)事故では、計算上の TORA を超えて滑走した原因として「重量計算ミス(実重量がペーパーより重い)」「気温入力の誤り(朝の気温を昼にも適用)」「フラップ未展開」などが過去に NTSB や ATSB で報告されています。本ツールで気温やフラップを変えた際の TORA 変化を体感しておくと、現場でのクロスチェック感度が上がります。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴は、「ISA 標準大気での性能をそのまま実運用にあてはめる」誤解です。Aircraft Flight Manual の TORA チャートは、特に注記がない限り ISA + 風ゼロ + 滑走路勾配ゼロを基準としています。実運用では真夏の昼で OAT が ISA+20°C 以上になることも珍しくなく、本ツールでも外気温を 25°C → 40°C に上げると TORA が 5〜8% 伸びます。さらに濡れた滑走路(wet runway)や雪上(contaminated runway)では accelerate-stop 距離が大幅に伸びるため、BFL は dry 時の 1.2〜1.5 倍が必要になります。本ツールは dry runway を前提としているので、運用判断には AFM の正規チャートを必ず併用してください。

次に、「V1 は固定値だと思い込む」こと。V1 は単に「決断速度」ではなく、「使用可能滑走路長で accelerate-stop が成立し、かつ accelerate-go でも安全に離陸できる」両条件を満たす速度範囲の中から、運航者・気象・滑走路状態に応じて選択されます。例えば短い滑走路では V1 を低めに取って中断側に余裕を持たせ、長い滑走路では V1 を高めに取って離陸続行側を優先する、という調整があります。本ツールの V1 = Vr × 0.95 はあくまで概算値で、実機では FCOM の V1 チャートまたは OPT 出力に従ってください。

最後に、「フラップを大きくすれば常に有利」という誤解。確かに離陸滑走距離 TORA は短くなりますが、抗力増加で climb gradient(離陸後の上昇率)が悪化し、近距離障害物(near terrain)越えで余裕がなくなる場合があります。Denver や Kathmandu (VNKT) のような周囲に山岳地形がある空港では、TORA だけでなく Net Take-Off Flight Path (NTOFP) のクリアランスが厳しく規制されており、フラップを大きくするほど OEI 時に必要な climb gradient を満たせなくなる重量制限が出ます。本ツールはフラップによる TORA 短縮のみを扱うため、climb gradient 制限は別途 AFM で確認する必要があります。

使い方ガイド

  1. 航空機の離陸重量(トン)を入力します。例えばBoeing 737-800の最大離陸重量79tから実際の運用重量75tに設定します
  2. 気温(℃)・高度補正気圧(m)・向かい風(ノット)を順に入力。高温・高標高・無風の「High Hot Heavy」条件では滑走路長要求が大幅に増加します
  3. V1決断速度、Vr引き起こし速度、V2安全速度、TORA滑走距離、TODA全距離、BFL加速停止距離がリアルタイム計算されます

具体的な計算例

Boeing 737-800で離陸重量75t、気温35℃、標高1500m、向かい風5ノットの条件:V1=152kts、Vr=155kts、V2=165kts、TORA所要距離2680m、TODA2850m、BFL3200m。同じ機体が気温15℃・海面標高・無風では各値が約20~25%短縮され、TORA1950m程度に低下します。Airbus A320-200では離陸重量78t・35℃・1500m・無風でTORA2620mが必要です

実務での注意点

  1. 滑走路実長(ASDA)がTODAより短い場合、V1を再計算して加速停止距離をBFL以内に収める必要があります
  2. 標高100m上昇ごと、気温1℃上昇ごとに離陸距離は約0.7~1.2%増加。国際空港での高温運用は滑走路延伸予定が必須です
  3. 向かい風10ノット存在すれば所要距離を約25~30%短縮できるため、風向判定は離陸可否の重要判断基準です
  4. 機体重量制約(フライト計画でペイロード削減)とルート短縮(燃料削減)のトレードオフを検討してください