パラメータ設定
計算結果
計算結果
観測者位置の入射エネルギー — cal/cm²距離 — mm
04 (Cat1)8 (Cat2)25 (Cat4)50
アークフラッシュ・ライブ可視化(PPEゾーン+境界+観測者)
理論・主要公式
アーク電流 (IEEE 1584-2002): lg(Ia)=K+0.662·lg(Ibf)+0.0966·V+0.000526·G+0.5588·V·lg(Ibf)−0.00304·G·lg(Ibf)(≤1kV)/lg(Ia)=0.00402+0.983·lg(Ibf)(>1kV)
入射エネルギー: E = Cf · En · (t/0.2) · (610/D)x
AFB: DAFB = 610 · (Cf·En·(t/0.2)/1.2)1/x
※Ibf,Ia [kA], V [kV], G,D [mm], t [s]、Cf=1.5(≤1kV)/1.0(>1kV)、x=距離指数(LV箱型1.473/HV箱型0.973/開放2.0)
アークフラッシュ解析とは
🙋
アークフラッシュ解析って、電気の設計でよく聞くけど、具体的に何を計算してるんですか?
🎓
大まかに言うと、電気設備でショート(事故)が起きた時に発生する「爆発的な炎」の危険性を数値化するんだ。例えば、配電盤のメンテ中に誤って工具を落としたら、バチッとアークが発生して、数千℃の火の玉が飛び出すことがある。その時に皮膚に当たる熱エネルギー(入射エネルギー)を計算して、必要な防護服のレベルを決めるのが目的だよ。
🙋
なるほど!このツールの「ボルテッド事故電流」って、いわゆる短絡電流のことですか?それを入力すると何がわかるんですか?
🎓
その通り。システムがどれだけ大きな故障電流を流せるか、だね。実は、アークが発生した時の実際の電流(アーク電流 $I_a$)は、IEEE 1584-2002の実証モデル(経験式)で $I_{bf}$ から推定するんだ。低圧では電圧やギャップにも依存するけど、高圧(>1kV)では $I_a$ はほぼ $I_{bf}$ に等しくなって、$I_{bf}$ を超えることはない。この $I_a$ が大きいほど発生するエネルギーも大きくなる。上のスライダーで $I_{bf}$ を変えてみると、下の「入射エネルギー」が変化するのがわかるよ。
🙋
「作業距離」も重要なパラメータみたいですね。これと「アークフラッシュ境界距離」はどう関係してるんですか?
🎓
すごく良いところに気が付いたね。熱のエネルギーは距離とともに約 $1/D^x$ で弱まるんだ(指数 $x$ は箱型・開閉装置で約1.5、開放空間で2=距離の2乗)。だから作業距離を離すほど、皮膚に当たるエネルギーは大きく下がる。ツールで $D$ を動かすと $E$ が大きく変わるでしょ?「アークフラッシュ境界距離」は、危険じゃないギリギリの距離。ここから離れていれば、2度の火傷はしないとされる1.2 cal/cm²以下になるんだ。現場では、この距離にテープを貼って立ち入り禁止区域を設定するよ。
よくある質問
アーク電流Iaは、IEEE 1584-2002の実証モデル(経験式)に基づき、ボルテッド事故電流Ibfから両対数回帰式で推定します。低圧(≤1kV)では系統電圧V・電極ギャップGとIbfから lg(Ia)=K+0.662·lg(Ibf)+0.0966·V+0.000526·G+0.5588·V·lg(Ibf)−0.00304·G·lg(Ibf) で求め、高圧(>1kV)では lg(Ia)=0.00402+0.983·lg(Ibf) となるため、Iaはほぼ Ibf に等しくなり、Ibfを超えることはありません。「Ia≈0.6×Ibf」のような一律係数は用いません。
入射エネルギーは作業距離の増加とともに約1/D^x で減衰します(指数xは囲い込み機器で約1.5、開放空間で2=1/D²)。距離を離すほどエネルギーは大きく低下するため、危険ゾーンの同心円表示で安全な離隔距離を視覚的に確認できます。
算出された入射エネルギー(cal/cm²)に基づき、NFPA 70Eの表で定義されたPPEカテゴリ(1~4)が自動判定されます。例えば4 cal/cm²未満はカテゴリ1、25 cal/cm²以上はカテゴリ4となり、必要な防護服が提示されます。
継続時間は保護装置(遮断器やヒューズ)の動作時間に依存し、入射エネルギーは時間に比例します(E ∝ t)。保護装置の設定を適切に選ぶことでエネルギーを大幅に低減できるため、解析時には正確な遮断時間の入力が重要です。
実世界での応用
電気設備のメンテナンス作業計画:工場や変電所で遮断器やブレーカーの点検・修理を行う前に、このツールを用いて作業点での入射エネルギーを計算します。その結果に基づき、NFPA 70E規格で定められたPPEカテゴリ(Cat.1〜4)を決定し、作業員に適切な防護服(アークフラッシュ対応スーツ、フェイスシールドなど)を着用させます。
配電盤・制御盤の安全設計:新しい電気盤を設計する際、想定される事故電流と遮断時間からアークフラッシュエネルギーを予測します。エネルギーが大きすぎる場合は、限流ブレーカーの採用や保護協調の見直しを行い、発生エネルギーを低減する設計変更を行います。
安全作業距離の設定とラベリング:既設設備に対して計算されたアークフラッシュ境界距離(AFB)に基づき、盤の前面に警告テープや立ち入り禁止線を引きます。また、設備には「アークフラッシュ警告ラベル」を貼付し、電圧や入射エネルギー、必要なPPEカテゴリを常時表示します。
電気安全規程の整備とトレーニング:企業の安全衛生部門が、社内の電気安全規程を策定する際の技術的根拠として利用します。また、電気作業者に対する安全教育の教材として、パラメータを変えながら危険性を可視化するツールとして活用されます。
よくある誤解と注意点
このツールを使い始めるとき、いくつか陥りがちな落とし穴があるんだ。まず「ボルテッド事故電流(I_bf)はシステムの最大値で固定」と思い込むこと。実は、同じ配電盤でも、上流の遮断器が変わる(例えばMCCBからVCBに)だけで、システムのインピーダンスが変わり、供給可能な故障電流値は変動する。ツールに入力する値は、計算対象点での実際のシステム構成に基づいた最新の短路計算結果を使わなきゃ意味がない。例えば、変圧器容量を増やしたら、必ずこの値を見直そう。
次にアーク継続時間(t)の設定ミス。これは「保護装置が故障を検知して遮断するまでの全時間」だ。ブレーカーの遮断時間だけじゃなく、リレーの動作時間や、安全マージンを加えた設定時間も考慮する必要がある。例えば、インスタントトリップが効かない領域では、限時要素のカーブに従って時間が長くなる。ここを甘く見ると、計算される入射エネルギーが実際より大幅に小さくなり、防護が不十分という危険な状態を生む。
最後に「PPEカテゴリが決まれば万事OK」という誤解。カテゴリ4の防護服を着ていても、顔や手は別途フェイスシールドや絶縁グローブが必要だし、服の下に燃えやすい素材(ナイロン製の服など)を着ていると、アークの熱で溶けて大やけどするリスクがある。ツールの出力はリスクアセスメントの出発点でしかない。実際の作業手順書には、この結果を基に、工具の絶縁化、バリケードの設置、作業員の位置取りまで含めた総合的な安全策を盛り込む必要があるよ。
具体的な計算例
480V(0.48kV)、20kA三相系統において、箱型開閉装置の前面610mmで作業する場合:電極ギャップ25mm・遮断時間0.2sを設定すると、IEEE 1584-2002の経験式によりアーク電流Iarc≈11.9kA、入射エネルギーは約5.0cal/cm²と算出されます。この値はPPEカテゴリ2(4〜8cal/cm²)相当の防護が必要で、アークフラッシュ境界距離は約1600mmです。一方、同じ20kA・25mm・610mm・0.2sのまま電圧を6.9kVへ昇圧すると、Iarc≈19.2kA(≒Ibf:高圧ではアーク電流が短絡電流を超えず、ほぼ等しくなる)、入射エネルギーは約5.6cal/cm²でカテゴリ2のまま、境界距離は約2960mmとなります。つまり電圧が高いだけで入射エネルギーが自動的に跳ね上がるわけではなく、エネルギーは主にアーク電流と遮断時間で決まる、という点が重要なポイントです。