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流体力学

キャビテーション数シミュレーター

流れの中の液体がどれだけ蒸発(キャビテーション)に近いかを表すキャビテーション数 σ を計算するツールです。局所静圧・蒸気圧・流速を変えると、動圧と圧力余裕からσがリアルタイムで分かり、翼やバルブ・ポンプが空洞を起こす危険域にあるかを判定できます。

パラメータ設定
局所静圧(基準点)p
kPa
物体まわりの基準点における静圧
流体の蒸気圧 p_v
kPa
この圧力まで下がると液体が蒸発する
流体の密度 ρ
kg/m³
流速 V
m/s
基準点における流れの速度
初生キャビテーション数 σ_i
この物体で気泡が発生し始める σ の値
計算結果
キャビテーション数 σ
動圧 ½ρV² (kPa)
圧力差 p − p_v (kPa)
初生キャビテーション数 σ_i
σ / σ_i 比
キャビテーション判定
流れと物体 — キャビテーション可視化

流線が物体(翼)の上面を加速し、低圧域が生まれます。σ が σ_i を下回ると、その低圧域に気泡雲が発生し下流で崩壊します。

キャビテーション数 σ vs 流速 V
キャビテーション数 σ vs 局所静圧 p
理論・主要公式

$$\sigma=\frac{p-p_v}{\tfrac12\rho V^2}$$

キャビテーション数 σ。p:局所静圧、p_v:蒸気圧、ρ:流体密度、V:流速。分子は蒸発に対する圧力余裕、分母は動圧。

$$q=\tfrac12\rho V^2, \qquad \Delta p = p-p_v$$

動圧 q(流速の2乗に比例)と、蒸気圧に対する圧力余裕 Δp。低圧または高速は σ を下げる。

$$\sigma \le \sigma_i \;\Rightarrow\; \text{キャビテーション発生}$$

キャビテーションは σ が物体の初生キャビテーション数 σ_i まで下がると始まる。σ_i は物体ごとの固有値。

キャビテーション数とは

🙋
「キャビテーション」って、ポンプとかプロペラで「空洞ができる」やつですよね?でも、なんで水の中に泡なんてできるんですか?
🎓
いい質問だ。実は「沸騰」と同じ現象なんだ。やかんの水は温度を上げると沸くけど、液体は「圧力を下げて」も沸く。流れの中で物体のまわりを水が速く回ると、その部分の圧力がぐっと下がる。圧力がその液体の蒸気圧まで下がると、常温の水でもそこで蒸発して泡(空洞)ができる。これがキャビテーションだよ。
🙋
なるほど、温度じゃなくて圧力で沸くんですね。じゃあ「キャビテーション数」っていうのは、その泡のできやすさを測る数字ですか?
🎓
そのとおり。キャビテーション数 σ は σ = (p − p_v)/(½ρV²) で定義される無次元数だ。分子の (p − p_v) は「いまの圧力が蒸気圧からどれだけ余裕があるか」、分母の ½ρV² は「流れの動圧」。つまり σ は『圧力の余裕』を『流れの勢い』で割ったもの。σ が大きければ余裕たっぷりで安全、σ が小さいと泡ができる瀬戸際なんだ。
🙋
左の「流速 V」を上げると σ がどんどん小さくなりますね。これは流れが速いほど危ないってことですか?
🎓
そう、まさに。動圧は ½ρV² で V の2乗で効くから、σ は 1/V² で急に下がる。下の「σ vs 流速」グラフを見ると、低速側で急なカーブになっているだろう。速い流れほど物体表面の圧力が下がりやすい。だからプロペラを高回転で回したり、バルブを絞って流速を上げたりすると、キャビテーションが起きやすくなるんだ。
🙋
σ が小さいと泡が出る…でも「いくつ以下だとアウト」みたいな境目はあるんですか?
🎓
それが「初生キャビテーション数 σ_i」だ。翼でもバルブでもポンプ羽根車でも、それぞれ形状ごとに「この σ まで下がると泡が出始める」という固有の値を持っている。運転中の σ が σ_i まで下がったら初生、σ < σ_i なら本格的にキャビテーション発生だ。設計では σ を σ_i より十分高く保つ。このツールも σ と σ_i を比べて、安全か注意か発生かを判定してくれるよ。
🙋
泡ができるとそんなに困るんですか?ただの泡なら害はなさそうな気もしますが…
🎓
それが大問題なんだ。泡は下流の圧力が高い場所まで流れると、一瞬で潰れる(崩壊する)。その崩壊の瞬間に、ものすごく高い圧力衝撃が局所的に発生して、金属表面を少しずつ削り取る。これが「壊食(ピッチング)」だ。さらに振動・騒音・効率低下も招く。ポンプの羽根がスポンジみたいに穴だらけになる写真を見たことがあるかもしれないね。あれは全部キャビテーションの仕業だよ。

よくある質問

キャビテーション数 σ は、流れている液体が蒸発(キャビテーション)にどれだけ近いかを表す無次元数です。σ = (p − p_v) / (½ρV²) で定義され、分子は局所静圧 p と蒸気圧 p_v の差(キャビテーションに対する圧力余裕)、分母は動圧 ½ρV² です。σ が大きいほど圧力余裕が大きく安全、σ が小さいほど(高速・低圧)流れは蒸発の瀬戸際にあります。
初生キャビテーション数 σ_i は、ある物体(翼・バルブ・ポンプ羽根車・船舶プロペラなど)でキャビテーションが発生し始める境界の σ の値です。運転中の σ が σ_i まで下がると気泡が発生し始め、σ < σ_i ではキャビテーションが起きています。σ_i は物体の形状や表面状態で決まる固有値で、設計では運転 σ を σ_i より十分高く保ちます。
動圧 ½ρV² はキャビテーション数 σ の分母です。流速 V が上がると動圧は V の2乗で増えるため、σ は 1/V² で急減します。たとえば流速を2倍にすると動圧は4倍になり、σ は約1/4になります。高速の流れほど物体表面の圧力が下がりやすく、キャビテーションを起こしやすいのはこのためです。
気泡が高圧域で潰れる(崩壊する)瞬間に局所的に非常に高い圧力衝撃が生じ、金属表面を少しずつ削り取るピッチング(壊食)を起こします。さらに振動・騒音・揚程や効率の低下を招きます。ポンプやバルブ、プロペラの寿命を縮める原因になるため、設計では運転 σ を初生キャビテーション数 σ_i より安全側に保つことが重要です。

実世界での応用

遠心ポンプと有効吸込みヘッド(NPSH):ポンプ羽根車の入口は流速が速く圧力が低いため、キャビテーションが最も起きやすい場所です。実務では「有効NPSH」が「必要NPSH」を上回るように吸込み配管を設計しますが、その背景にあるのがまさにキャビテーション数の考え方です。吸込み側の圧力が低い、流量が大きい、揚程が高い運転点では σ が下がり、ポンプ羽根車に壊食が進みます。

水力タービンと船舶プロペラ:水車のランナや船のプロペラは、高速で水を切るため σ が下がりやすい代表例です。プロペラでは羽根の負圧面に発生したシートキャビテーションやチップ渦キャビテーションが、壊食だけでなく騒音・振動の原因になります。海軍の潜水艦では静粛性のためにキャビテーション初生速度を上げる翼型設計が重視されます。

制御弁・オリフィス・絞り機構:バルブで流れを絞ると、絞り部で局所的に流速が上がり静圧が下がります。蒸気圧近くまで圧力が落ちると弁内でキャビテーションが起き、弁体やシートが壊食します。プロセス配管では弁前後の差圧と下流圧から σ を見積もり、多段減圧トリムやアンチキャビテーション弁を選定します。

CFD解析と模型試験:キャビテーションタンネルでの模型試験やマルチフェーズCFD解析では、相似則としてキャビテーション数を実機と一致させます。本ツールのような σ の概算は、試験条件の設定や、CFD結果が物理的に妥当か(低圧域が蒸気圧を割っていないか)を確認するサニティチェックに役立ちます。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「基準点をどこに取るか」を曖昧にしたまま σ を計算することです。キャビテーション数の定義に出てくる局所静圧 p と流速 V は、あくまで「ある決められた基準点」での値です。同じ機械でも、基準点を上流のタンク内に取るか、羽根車入口に取るかで p も V も変わり、σ の数値はまったく違ってきます。文献値の σ_i と比較するときは、その σ_i がどの基準点で定義されたものかを必ず確認してください。基準が揃っていない σ どうしを比べると判定を大きく誤ります。

次に、「蒸気圧 p_v は一定」という思い込みです。水の蒸気圧は温度に非常に敏感で、20°Cで約2.3kPa、50°Cで約12kPa、80°Cで約47kPaと急上昇します。温かい液体ほど p_v が大きく、圧力余裕 (p − p_v) が小さくなって σ が下がります。夏場や高温プロセスでキャビテーションが急に出るのはこのためです。本ツールの蒸気圧スライダーで温度の影響をイメージしてください。低温だから安全とは限らず、運転温度に対応した p_v を使うことが重要です。

最後に、「σ が σ_i を少しでも上回っていれば絶対に安全」と考えること。初生キャビテーション数 σ_i 自体が、物体の表面粗さ・微小な傷・溶存気体・乱れの強さで変動する不確かな値です。また σ_i ちょうどでは「ごく弱い初生」、それより下で「進展キャビテーション」と段階があり、壊食が深刻になるのはさらに低い σ です。実機設計では σ を σ_i の1.2〜2倍程度に保つ余裕を持たせます。本ツールでも σ が σ_i の1.2倍以下なら「初生近傍(注意)」として警告します。

使い方ガイド

  1. 局所静圧(pLocal)をkPa単位で入力します。ポンプ吸込み側や翼吸い込み面の測定値を使用してください。
  2. 流体の蒸気圧(pVapor)を設定します。水の場合20℃で2.34kPa、80℃で47.4kPaが標準値です。
  3. 流体密度(rhoFluid)と流速(velocity)を入力後、シミュレーター実行ボタンでキャビテーション数σを計算します。
  4. 出力される圧力余裕とσ_i(初生キャビテーション数)の比較により、空洞化発生リスクを判定します。

具体的な計算例

遠心ポンプの吸込み部で、局所静圧85kPa、水の蒸気圧2.34kPa、流体密度998kg/m³、流速3.5m/sの条件下でシミュレーション実行。動圧½ρV²=6.1kPa、圧力差p−p_v=82.66kPa、キャビテーション数σ=13.54と算出されます。σ_i=0.5の翼設計では、σ/σ_i=27.08となり、キャビテーション発生の危険性は低いと判定されます。

実務での注意点