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生体工学

膜電位・ネルンスト方程式・活動電位シミュレーター

ネルンスト式・GHK方程式でイオン平衡電位と膜電位を計算。ホジキン-ハクスリー簡易モデルで活動電位波形と閾値効果をリアルタイムシミュレート。

イオン濃度・透過性
細胞タイプ
K⁺ 濃度 (mM)
[K]_in
mM
[K]_out
mM
Na⁺ 濃度 (mM)
[Na]_in
mM
[Na]_out
mM
Cl⁻ 濃度 (mM)
[Cl]_in
mM
[Cl]_out
mM
透過性比 P_Na/P_K
透過性比 P_Cl/P_K
温度 T
°C
注入電流 I_stim
μA/cm²
計算結果
E_K [mV]
E_Na [mV]
E_Cl [mV]
静止膜電位 V_m [mV]
活動電位ピーク [mV]
活動電位持続時間 [ms]
閾値電流 [μA/cm²]
細胞膜模式図
活動電位波形 V_m(t)
理論・主要公式

$$E_{ion} = \frac{RT}{zF}\ln\frac{[\text{ion}]_{out}}{[\text{ion}]_{in}}$$

ネルンスト方程式。R:気体定数、T:絶対温度 [K]、z:イオン価数、F:ファラデー定数(96485 C/mol)

$$V_m = \frac{RT}{F}\ln\frac{P_K[K]_{out}+P_{Na}[Na]_{out}+P_{Cl}[Cl]_{in}}{P_K[K]_{in}+P_{Na}[Na]_{in}+P_{Cl}[Cl]_{out}}$$

Goldman-Hodgkin-Katz(GHK)方程式。P_K・P_Na・P_Cl:各イオンの膜透過係数(相対比)

$$C_m\frac{dV}{dt} = -g_{Na}(V-E_{Na}) - g_K(V-E_K) - g_L(V-E_L) + I_{stim}$$

H-H簡易モデル。C_m:膜容量 [F/m²]、g:コンダクタンス [S/m²]、I_stim:刺激電流 [A/m²]

膜電位・活動電位とは

🙋
「静止膜電位」って何ですか?教科書には「細胞の内側が外側より約-70mV負に帯電している」と書いてありますが、どうしてそんな電位が生まれるんですか?
🎓
大まかに言うと、細胞膜の内外でイオンの濃度が違うからだよ。例えばカリウムイオン(K⁺)は中に多く、ナトリウムイオン(Na⁺)は外に多い。このシミュレーターで、左側の「[K]_in」と「[K]_out」のスライダーを動かしてみて。濃度差が大きくなると、計算される「K⁺の平衡電位」の絶対値が大きくなるのがわかるかな。
🙋
え、でもK⁺とNa⁺、両方あるのに、なぜ全体の膜電位はK⁺の平衡電位(約-90mV)に近い-70mVになるんですか?
🎓
良い質問だ!実は細胞膜はK⁺を通しやすく、Na⁺はほとんど通さないんだ。この「通りやすさ」の比が「透過性比 P_Na/P_K」だ。このツールでP_Na/P_Kを0(K⁺だけ通る)にすると、膜電位はK⁺の平衡電位と一致する。でも実際は少しNa⁺も通るから(P_Na/P_K=0.01とか)、膜電位は-90mVより少し正側(-70mVくらい)にシフトするんだ。真ん中の透過性スライダーを動かして確かめてみよう。
🙋
なるほど!じゃあ「活動電位」の急激な電位上昇は、この透過性が瞬間的にひっくり返るからなんですか?
🎓
その通り!下の「注入電流 I_stim」を強くして膜電位を閾値(約-55mV)まで上げてみて。すると、電位依存性のNa⁺チャネルが一気に開き、P_Na/P_Kが一時的に100以上にもなる。すると膜電位はNa⁺の平衡電位(約+60mV)に急接近して、あの鋭いスパイク(脱分極)が起こるんだ。その後、K⁺透過性が増して元に戻る(再分極)。この一連の動きがシミュレーター上でリアルタイムに再現されるよ。

よくある質問

ネルンスト方程式は単一イオンの平衡電位を計算しますが、GHK方程式は複数イオンの透過性を考慮します。実際の膜電位は複数のイオン種の影響を受けるため、GHK方程式の方が生理学的に正確です。透過性比(P_K:P_Naなど)を調整して比較してみてください。
閾値は膜の初期状態やイオンチャネルのパラメータ(最大コンダクタンス、時定数など)に依存します。例えば、外部K⁺濃度を上げると静止膜電位が脱分極し、閾値に達しやすくなります。スライダーで各パラメータを変えながら波形の変化を観察してください。
ネルンスト方程式とGHK方程式には絶対温度Tが含まれています。温度が上がるとRT/F項が大きくなり、同じ濃度勾配でも平衡電位の絶対値が増加します。また、ホジキン-ハクスリーモデルでは温度係数Q10によりチャネルの開閉速度も変化し、活動電位の波形に影響します。
Cl⁻は陰イオンで電荷が-1のため、ネルンスト方程式のzに-1を代入します。これにより対数項の符号が反転し、外部濃度が高いほど平衡電位は負の値になります。価数を間違えると逆転電位の符号が逆になるので、イオン種選択時は正しい価数を確認してください。

実世界での応用

神経工学・深部脳刺激(DBS):パーキンソン病治療などで脳深部に電極を留置し、電気刺激を与えます。シミュレーターのような神経細胞の電気的モデルを使って、症状を抑制し副作用を最小限にする最適な刺激波形(周波数、振幅、パルス幅)を設計します。

人工内耳・網膜インプラント:音や光の情報を、聴神経や網膜神経細胞を直接電気刺激するパルス列に変換します。どのような刺激パターンが神経の活動電位を確実に、かつ自然に誘発できるか、このツールの基礎モデルを拡張して検証します。

心臓電気生理・不整脈モデリング:心筋細胞も活動電位を発生します。Na⁺、K⁺、Ca²⁺などのチャネル動態をモデル化し、多数の細胞が連鎖的に興奮することで拍動が生まれ、そのリズムが乱れる不整脈のメカニズムをコンピュータ上で再現・解析します。

創薬・薬理試験:多くの薬物(特に不整脈治療薬や局所麻酔薬)はイオンチャネルに作用します。パッチクランプ実験で計測された電流データと、このシミュレーターのモデルを照合することで、薬物がどのチャネルの透過性(P)や開閉動態に影響を与えているかを推定できます。

よくある誤解と注意点

このシミュレーターを使い始めるとき、いくつかつまずきやすいポイントがあるよ。まず「静止膜電位は常にK⁺の平衡電位より正」と覚えてしまうこと。確かに神経細胞ではそうだね。でも、シミュレーターでP_Cl/P_Kの値を大きくして確認してみて。 Cl⁻の透過性が高いと、膜電位はE_Cl(通常-70mV前後)に引っ張られる。場合によっては、計算される静止膜電位がE_Kよりもになることもあり得るんだ。ツールで遊んで「こうなるはず」という先入観を壊すのが大事。

次にスライダーの変化に対する膜電位の「感度」は均一じゃないということ。例えば、静止状態(P_Na/P_K=0.01)で[K]_outを5mMから10mMに上げると、膜電位は-80mVから-65mVくらいに大きく動く。でも、同じ変化を[Na]_outでやってもほとんど動かない。これは膜がK⁺に選択的だからだ。パラメータをいじる時は、どのイオンが支配的かを常に意識しよう。

最後に、「活動電位の波形は注入電流の強さで変わらない」という誤解。実際に試してみるとわかるけど、I_stimを閾値ギリギリにするとスパイクの発火が遅れ、波形もなだらかになる。逆に強い電流を一気に流すと、あっという間に発火して鋭いスパイクになる。シミュレーター上のモデルは簡易版だけど、実物の神経でも同じ現象が起きるんだ。ツールで「閾値」が絶対的な値ではなく、刺激の与え方に依存する「事象」であることを体感してほしい。