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材料・腐食工学

腐食防食設計計算機

異種金属接触のガルバニック腐食電流を計算し、鉄のE-pH図(ポーベ図)で腐食・不動態・免疫域を可視化。犠牲陽極の寿命を推定します。

金属ペア設定
x
Ω
kg
計算結果
電位差 (V)
腐食電流 (mA)
腐食速度 (mm/yr)
陽極寿命 (年)
プールベ図
理論・主要公式

$$E_{cell} = E_{cathode} - E_{anode}$$

電池起電力(V):電極間の標準電位差が腐食の駆動力となる。

$$i_{corr} = \frac{\beta_a \beta_c}{2.303 R_p (\beta_a + \beta_c)}$$

腐食電流密度(A/m²):Stern-Geary 式。$R_p$ は分極抵抗、$\beta$ はタフェル定数。

$$\Delta m = \frac{M \cdot i_{corr} \cdot t}{n \cdot F}$$

腐食質量損失(kg):$M$ はモル質量、$n$ は価数、$F$ はファラデー定数(96485 C/mol)。

腐食防食設計計算機とは

🙋
このシミュレーターで計算できる「ガルバニック腐食」って何ですか?鉄とアルミをボルトで締めるとまずいって聞いたことあるけど、それですか?
🎓
その通り!大まかに言うと、異なる金属が水(雨や海水)を介してつながると、電池ができるんだ。その時、卑な金属(電池のマイナス極、アノード)が溶け出して腐食する現象だよ。例えば、鉄(Fe)の船体に銅(Cu)のプロペラをつけると、鉄の方が卑だから鉄が速くボロボロになってしまう。このツールの左上で「アノード」と「カソード」の金属を選んでみると、電位差が計算されるよ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、面積比ってパラメータも重要なんですか?「A_cathode / A_anode」って書いてありますけど。
🎓
非常に重要!実務で多いトラブルがこれだ。例えば、小さなアルミネジ(アノード)で大きな鋼板(カソード)を止めていると、ネジだけが猛烈な速さで腐食してポキッと折れてしまう。カソードの面積が大きいほど、アノードに流れ込む電流密度が高まって腐食が加速するんだ。スライダーを動かして面積比を大きくしてみて。腐食電流密度が跳ね上がるのがわかるよ。
🙋
下の方にある「犠牲陽極」って、あの船の底にくっついてる亜鉛のブロックのことですか?あれでどうやって防ぐんですか?
🎓
いいところに気がついたね!犠牲陽極は、保護したい金属(例えば鉄)よりもさらに「卑な」金属(亜鉛やマグネシウム)をわざと取り付けるんだ。すると、電池のアノード(溶ける側)が亜鉛ブロックになり、本体の鉄は守られる。このツールでは、そのブロックの質量を入力すると、どれくらい持つか(寿命)を推定できる。パラメータを動かして、船体保護に必要な亜鉛の量を試算してみよう。

物理モデルと主要な数式

異種金属接触時の腐食電流は、二つの金属の平衡電位の差(駆動力)と、回路全体の抵抗によって決まります。これを簡略化したモデルで表します。

$$I_{corr}= \frac{E_{cathode}- E_{anode}}{R_{total}}$$

$I_{corr}$: 腐食電流 (A), $E_{cathode}$: カソード金属の平衡電位 (V), $E_{anode}$: アノード金属の平衡電位 (V), $R_{total}$: 溶液抵抗や分極抵抗を含む全抵抗 (Ω)。電位差が大きく、抵抗が小さいほど大きな腐食電流が流れます。

腐食の速度を評価するためには、電流を電流密度に換算し、ファラデーの法則を用いて質量減少速度や侵食深さに変換します。

$$v_{corr}= \frac{I_{corr} \cdot M}{z \cdot F \cdot \rho \cdot A_{anode}}$$

$v_{corr}$: 侵食速度 (m/s), $M$: アノード金属の原子量 (kg/mol), $z$: イオン化数, $F$: ファラデー定数 (96485 C/mol), $\rho$: 密度 (kg/m³), $A_{anode}$: アノード面積 (m²)。この式から、どれくらいの速さで穴が開くかが推定できます。

よくある質問

アノード金属とカソード金属の種類、それぞれの表面積、溶液抵抗、および環境のpHと電位を入力します。これらをもとにガルバニック腐食電流やE-pH図上の位置を計算します。
腐食域では金属がイオンとして溶出し進行性の腐食が起こります。不動態域では表面に保護皮膜が形成され腐食が抑制されます。免疫域では熱力学的に腐食が起こりません。
計算された腐食電流と陽極の質量、およびファラデーの法則から質量減少速度を求め、陽極が消耗し尽くすまでの時間を推定します。実際の寿命は環境条件や電流効率に依存します。
本ツールは簡略化モデルに基づく参考値です。実際の設計では、局部腐食や経時変化、実環境の抵抗変動などを考慮し、実験や詳細シミュレーションで検証することを推奨します。

実世界での応用

船舶・海洋構造物:鋼製の船体や海洋プラットフォームは海水という強電解質に常に晒されます。銅合金のプロペラやステンレス製の部品との接触によるガルバニック腐食を防ぐため、船底には大量の亜鉛やアルミニウム合金の犠牲陽極が取り付けられています。本ツールで、プロペラ材質と船体鋼の組み合わせによる腐食電流を評価できます。

自動車ボディ:軽量化のためアルミニウム部品と鋼板を接合する「マルチマテリアル化」が進んでいます。雨や融雪剤がかかる環境下で、これらの異種金属接合部はガルバニック腐食のホットスポットとなります。設計段階で面積比やめっきの有無をシミュレーションし、腐食リスクを低減します。

地下埋設配管:ガス管や水道管などの鋼管は、土壌中で他の金属構造物(銅の接地極など)と接触すると腐食が加速します。防食設計では、絶縁継手で電気的に分離するか、マグネシウム犠牲陽極を用いた陰極防食が適用されます。必要な防食電流密度は土壌のpHや抵抗率に依存します。

電子機器の実装:プリント基板上では、金めっき端子(貴)とはんだ(スズ合金、卑)など、微小な異種金属接触が多数存在します。高湿度環境下で凝縮水が電解質となると、微小なガルバニックセルが形成され、はんだ部分の腐食(ウィスカー発生など)を引き起こすことがあります。

よくある誤解と注意点

この手の計算ツールを使い始めるときに、いくつか陥りがちなポイントがあるよ。まず一つ目は、「電位差が大きいほど必ず腐食が激しい」と思い込むこと。確かに駆動力は大きくなるけど、実際の腐食電流は回路の全抵抗 $R_{total}$ で大きく変わるんだ。例えば、真水(高抵抗)の中で鉄と銅を接触させても、海水(低抵抗)の中に比べて腐食ははるかに遅い。ツールで「溶液抵抗」のパラメータを動かしてみると、電流値がガクンと下がるのが確認できるはずだ。

二つ目は、材料の「表面状態」を考慮していないこと。このツールのポーベ図や平衡電位は、きれいな裸の金属面が想定だ。でも実物は、酸化皮膜(不動態皮膜)ができていたり、塗装が剥がれていたりする。例えば、アルミニウムは不動態皮膜で守られているから、理論値よりも実際の腐食は遅いことが多い。逆に、その皮膜が局所的に破れると、そこだけ猛烈に腐食が進む(孔食)から注意が必要だ。

三つ目は、面積比の現実的な感覚。ツールで「A_cathode / A_anode = 100」とか簡単に設定できるけど、現場では「小さなステンレスボルト1本で大きな炭素鋼板を締結」なんてのがまさにこれだ。計算上はアノード(ボルト)の腐食速度が跳ね上がる。設計では「カソード面積を小さく、アノード面積を大きく」が鉄則で、異種金属接触が必要な場合は、絶縁ワッシャーやコーティングで電気的に分離するのが基本だということを頭に入れておこう。

使い方ガイド

  1. 陽極・陰極の面積比(areaRatio)を入力:鋼製パイプ外径60mm・肉厚3.2mmに亜鉛犠牲陽極φ16mmを接続する場合、面積比≈0.8
  2. 電解質のpH値を設定:海水環境ではpH≈8.2、冷却水系ではpH≈7.0を目安に入力
  3. 電解質抵抗率(resist)を設定:海水は0.2Ω・m、淡水は50~500Ω・mの範囲で確認
  4. 犠牲陽極の質量(anodeMass)を入力:亜鉛合金の密度7140kg/m³から計算した値をg単位で設定
  5. 計算ボタンを押下:ガルバニック腐食電流(mA)とポーベ図上の腐食電位を確認

具体的な計算例

鋼管(面積0.15m²)に亜鉛陽極(面積0.018m²)を接続した防食システムで、面積比0.12、海水環境pH8.1、電解質抵抗0.22Ω・mの条件下では、ガルバニック腐食電流≈180mAが発生。亜鉛陽極質量2000gの場合、陽極消費電流密度20mA/cm²で理論寿命は約3.2年。実際には局部腐食を考慮し2年周期での交換が推奨される。

実務での注意点