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電磁気・光学

腐食速度計算ツール — Butler-Volmer式・エバンス図

タフェルスロープと腐食電流密度を入力し、エバンス分極図・腐食速度(mm/year)・Stern-Geary分極抵抗をリアルタイム計算。混成電位理論の核心を可視化する。

パラメータ設定
腐食電位 Ecorr
V
腐食電流密度 icorr 10.0 μA/cm²
0.01 — 1000 μA/cm²(対数スケール)
陽極タフェルスロープ βa
mV/dec
陰極タフェルスロープ βc
mV/dec
基準温度 T
°C
計算結果(鉄鋼 Fe/H₂O系)
計算結果
10.0
i_corr (μA/cm²)
-0.50
E_corr (V)
0.117
CR (mm/year)
2.19
R_p (kΩ·cm²)
26.1
B / mV (Stern-Geary)
エバンス図(分極曲線)— log|i| vs E
腐食速度 vs 温度(アレニウス則: 10°Cで2倍)
理論・主要公式

Butler-Volmer式(過電位 η = E − Ecorr):

$$i = i_{corr}\!\left(e^{\eta/\beta_a}- e^{-\eta/\beta_c}\right)$$

腐食速度(Faraday則):

$$\mathrm{CR}= \frac{i_{corr} M}{n F \rho}$$

分極抵抗(Stern-Geary):

$$R_p = \frac{\beta_a \beta_c}{2.303\, i_{corr}(\beta_a+\beta_c)}$$

腐食速度計算ツールとは

🙋
このシミュレーターで出てくる「エバンス図」って何ですか?グラフが2本の直線で交わってますけど。
🎓
大まかに言うと、金属がどれだけ速く溶け出すかを決める「収支決算書」みたいなものだよ。右上がりの線が金属が溶ける「陽極反応」、右下がりの線が酸素が還元される「陰極反応」の速度を表すんだ。この2本の線が交わった点が、実際の腐食が起こる電位と電流になる。シミュレーターの「腐食電位 E_corr」と「腐食電流密度 i_corr」のスライダーを動かすと、この交点が動くのがわかるよ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、その近くにある「タフェルスロープ β」って、この直線の傾きのことですか?
🎓
その通り!傾きが急(βの値が小さい)ほど、少し電位を変えただけで電流が大きく変わる、つまり反応が起こりやすいということだ。実務では、例えばステンレス鋼の不動態領域は陽極のβが非常に大きくて傾きが緩やか、つまりめったに溶け出さないことを意味するんだ。試しに「陽極タフェルスロープ β_a」の値を60から120に変えてみて。陽極の線の傾きが変わって、交点(腐食電流)も小さくなるのがわかるよね。
🙋
なるほど!で、計算される「腐食速度 (mm/year)」は、このグラフの情報からどうやって出てくるんですか?
🎓
良い質問だ!交点の腐食電流密度(i_corr)がわかれば、ファラデーの法則で金属がどれだけ溶解したか質量に換算できる。そこから密度で割れば、1年間で何mm減るか(mm/year)という実用的な速度が計算できるんだ。現場で多いのは、この値が0.1 mm/year以下なら「耐食性が極めて優秀」、1 mm/yearを超えると「対策が必要」という目安で使うよ。ツールでi_corrを大きくすると、一気にmm/yearの値が跳ね上がるはずだ。

よくある質問

実測の分極曲線からタフェル外挿法で求めるのが基本です。文献値(例:鉄の活性溶解でβa=60mV/dec、酸素還元でβc=120mV/dec)を初期値として使い、感度分析で腐食速度への影響を確認することを推奨します。
ファラデーの法則に基づき、i_corr [A/cm²]に等価質量と密度から計算される換算係数(例:鉄なら約0.0116)を乗じてmm/yearを算出します。本ツールでは金属種に応じた係数を自動適用します。
混成電位理論では、陽極・陰極の全電流が釣り合う唯一の交点が腐食電位です。図上で複数交点が見える場合は、分極曲線の入力範囲やスケールを確認し、物理的に妥当な領域(活性態域)の交点を選んでください。
分極抵抗Rpは腐食速度の迅速評価に用いられます。Rp = (βa×βc) / (2.303×i_corr×(βa+βc))で計算され、値が小さいほど腐食が進行しやすいことを示します。現場での電気化学測定と組み合わせて活用できます。

実世界での応用

配管・タンクの寿命予測: 化学プラントや海底パイプラインでは、内部を流れる流体による腐食速度をこの理論で推定します。材料選定時に想定環境でのi_corrを評価し、許容腐食速度から検査間隔や耐用年数を決定します。

防食設計(カソード防食・めっき): カソード防食では、外部から電流を流して金属の電位を陰極側にシフトさせ、腐食電流i_corrを実質的にゼロに近づけます。エバンス図上では、陰極分極曲線全体が下に移動する効果として理解できます。

耐食材料の開発評価: 新合金や表面処理材の耐食性を比較する際、電位動分極測定で得られたβ_a, β_c, i_corrの値をベンチマークと比較します。特にi_corrの大小が耐食性の優劣を直接的に表します。

腐食事故の調査・解析: 予想外に早く腐食が進んだ部位の金属を回収し、分極曲線を測定することで、当初の想定と比べてβが小さかった(反応が促進されていた)のか、i_corrが大きかったのか、原因を特定する手がかりを得られます。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始めるとき、いくつかつまずきやすいポイントがあるから気をつけてね。まず「タフェルスロープβの単位」。ここではmV/decade(ミリボルト・パー・デカード)を使っているけど、文献によってはV/decadeだったり、自然対数ベースのVだったりする。例えばβ_a=60 mV/decadeは、電位が60mV上がると電流が10倍になるって意味だ。単位を間違えると計算が全く合わなくなるから要注意。

次に「分極抵抗Rpの解釈」。Rpの値が大きいほど腐食速度が小さいのは確かだけど、これは「微小分極領域」での近似だということを忘れてはいけない。実測でRpを求める時、印加する電位の幅が大きすぎるとタフェル近似から外れて、計算されたi_corrが実際より大きく出てしまうことがある。ツールで「分極抵抗 Rp」のスライダーを動かして、エバンス図の原点付近の傾きがどう変わるか確認してみるといいよ。

最後に「現実は直線じゃない」という根本的な理解。エバンス図は理解を助けるための強力なモデルだけど、実際の測定データはきれいな直線にならないことの方が多い。例えば、溶液中の物質拡散が律速になると陰極反応の線が水平(限界電流)になったり、不動態膜ができると陽極線がぐんと上に跳ね上がったりする。このツールのグラフは「理想的なケース」の教科書的な振る舞いだと心得よう。