理論・主要公式
$$\lambda_c = \pi\sqrt{\dfrac{2E}{\sigma_y}}$$
限界細長比。ジョンソン式とオイラー式の境界。\(E\):弾性係数、\(\sigma_y\):降伏応力。
$$\sigma_{cr}=\dfrac{\pi^2 E}{\lambda^2}\quad(\lambda \ge \lambda_c)$$
長柱の弾性座屈(オイラー双曲線)。\(\lambda\):細長比 \(=KL/r\)、\(r=\sqrt{I/A}\)。
$$\sigma_{cr}=\sigma_y-\dfrac{\sigma_y^2}{4\pi^2 E}\lambda^2\quad(\lambda < \lambda_c)$$
中間柱の非弾性座屈(ジョンソン放物線)。\(\lambda=0\) で \(\sigma_y\)、\(\lambda_c\) で \(\sigma_y/2\) となりオイラー曲線に接線連続で接続。臨界荷重は \(P_{cr}=\sigma_{cr}\,A\)。
高度座屈解析(破壊モード遷移)とは
🙋
座屈ってオイラーの式だけで決まると思ってたんですけど、このツールには「降伏」「ジョンソン」「オイラー」って3つの破壊モードがありますね。何が違うんですか?
🎓
いい質問だね。柱の壊れ方は「細長比λ」で決まるんだ。ざっくり言うと、ずんぐりした短い柱は座屈する前に材料が潰れて壊れる(降伏)。逆にひょろ長い柱は材料が無傷のまま横にしなって壊れる(オイラー弾性座屈)。その中間が一番ややこしくて、降伏とのせめぎ合いで座屈する。これを表すのがジョンソンの放物線だ。「長柱」プリセットと「短柱」プリセットを切り替えて、上の破壊モード表示がどう変わるか見てみて。
🙋
なるほど。じゃあオイラーの式がそのまま使えない領域があるってことですか?
🎓
そう。オイラーの式 σcr=π²E/λ² は、λが小さいと σcr が降伏応力 σy を超えてしまう。でも実際には σy で先に降伏するから、その応力には到達できないんだ。だから境界となる「限界細長比 λc=π√(2E/σy)」を境に、λ<λc ではジョンソン放物線に切り替える。右のグラフで、青いオイラー双曲線とオレンジのジョンソン放物線が λc でちょうど滑らかに繋がっているのが見えるはずだよ。
🙋
緑の点が荷重を上げると動いていきますね。あれは何を表してるんですか?
🎓
それが現在の応力レベルだ。「再生」を押すと荷重Pが0から増えていって、緑の点が赤い動作点(その柱の臨界応力σcr)に到達した瞬間に破壊する。左の柱も、長柱なら横にバックリ、中間柱ならややしなりつつ、短柱なら膨らんで圧壊する、と破壊モードごとに違う壊れ方をするから注目してみて。端末条件Kを変えると有効長さKLが変わり、λもλcに対する位置も動くよ。
物理モデルと主要な数式
柱の破壊は細長比 $\lambda = KL/r$($r=\sqrt{I/A}$ は断面二次半径、$KL$ は有効座屈長さ)によって支配的なモードが切り替わります。境界となる限界細長比は次式で与えられます。
$$\lambda_c = \pi\sqrt{\frac{2E}{\sigma_y}}$$
長柱($\lambda \ge \lambda_c$)では弾性座屈が支配し、オイラーの双曲線が臨界応力を与えます。
$$\sigma_{cr} = \frac{\pi^2 E}{\lambda^2}$$
中間柱($\lambda < \lambda_c$)では降伏前に非弾性座屈が起こり、ジョンソンの放物線(J.B. Johnson の式)を用います。
$$\sigma_{cr} = \sigma_y - \frac{\sigma_y^2}{4\pi^2 E}\,\lambda^2$$
この2式は $\lambda_c$ で $\sigma_{cr}=\sigma_y/2$ となり、傾き(接線)も連続して滑らかに接続します。臨界荷重は $P_{cr}=\sigma_{cr}\,A$ で、破壊モードに応じた $\sigma_{cr}$ がそのまま反映されます。極端に短い柱では座屈が起こらず材料降伏($\sigma_{cr}\approx\sigma_y$)で圧壊します。
よくある質問
限界細長比 λc=π√(2E/σy) は、ジョンソン式(非弾性座屈)とオイラー式(弾性座屈)の境界です。λ<λc では中間柱としてジョンソン放物線、λ>λc では長柱としてオイラー双曲線が破壊応力を支配します。鋼材(E=200GPa, σy=250MPa)では λc≈126 となり、この点で臨界応力はちょうど σy/2 になります。
オイラー式 σcr=π²E/λ² は弾性座屈を前提としています。λが小さい中間柱では、この式が降伏応力σyを超える非物理的な値を出してしまいます。実際には降伏が先行して材料が非線形(非弾性)になるため、ジョンソン放物線で補正します。短柱はそもそも座屈せず降伏(圧壊)で破壊します。
はい。J.B. Johnson のパラボラ式は、λ=λc でオイラー曲線と「接線連続」になるよう係数が定められています。λc では両式とも σcr=σy/2 を与え、傾きも一致するため、右グラフのオレンジ(ジョンソン)と青(オイラー)の曲線は折れ目なく滑らかに繋がります。これにより設計上の不連続な飛びを避けられます。
細長比 λ=KL/r で計算します。K は端末条件係数(両端ピン=1.0、両端固定=0.5、一端固定他端ピン=0.7、一端固定他端自由=2.0)、L は柱長さ、r=√(I/A) は断面二次半径です。同じ断面・長さでも端末条件で有効長さKLが変わり、λもλcに対する位置も変化して破壊モードが切り替わります。
実世界での応用
鋼構造設計(AISC/許容応力度):鉄骨柱の設計では、細長比に応じてオイラー領域とジョンソン(非弾性)領域を切り替えて許容圧縮応力を決めます。限界細長比λcを境に式が変わるため、中間柱の多い実構造では本ツールのような遷移の理解が安全率設定に直結します。
機械要素・ピストンロッド:油圧シリンダのロッドや長いネジ軸は、長さと径の比で破壊モードが大きく変わります。短く太いロッドは降伏(圧壊)、細長いロッドはオイラー座屈が支配。ジョンソン式は両者の中間域で過大評価を防ぎます。
航空宇宙のストリンガー・支柱:軽量化のため細長比の大きい部材が多く、多くはオイラー領域に入ります。一方で局部的な短い支柱は非弾性座屈となり、ジョンソン式での照査が必要です。破壊モードの切り分けが軽量設計の要です。
仮設構造・サポート:建設仮設のサポートやパイプサポートは長さの幅が広く、現場条件で短柱から長柱まで混在します。同じ製品でも設置長で破壊モードが変わるため、λcに対する位置の把握が転倒・座屈事故の防止に役立ちます。
よくある誤解と注意点
まず「座屈=オイラーの式」という思い込み。オイラー式が有効なのは長柱($\lambda>\lambda_c$)だけだ。中間柱でオイラー式を使うと臨界応力を過大評価し、危険側の設計になる。本ツールで「中間柱」プリセットを選ぶと、ジョンソン放物線がオイラー双曲線より低い応力を与えていることがはっきり見える。$\lambda_c$ に対して自分の柱がどちら側にいるかを必ず確認しよう。
次に降伏応力 $\sigma_y$ を固定値だと考えること。$\lambda_c=\pi\sqrt{2E/\sigma_y}$ なので、高強度鋼($\sigma_y$ 大)ほど $\lambda_c$ は小さくなり、より細長い柱でないとジョンソン領域に入らない。$\sigma_y$ スライダーを動かすと、グラフの遷移点(オレンジと青の継ぎ目)が左右に動くのが分かる。材料を変えたら破壊モードの境界も動く、という感覚が重要だ。
最後に残留応力・初期不整の影響。本ツールは理想化したジョンソン+オイラーの理論曲線を描く。実際の溶接H形鋼などは残留応力により、理論より低い応力で座屈し始める。EC3のPerry-Robertson式や各規格の減少係数χで補正するのが実務だ。理論曲線は「上限の目安」として捉え、安全側の余裕を持たせること。