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熱力学

圧縮機設計計算機

気体が段を通って圧縮される様子をリアルタイムにアニメーション表示。多段圧縮と中間冷却で仕事がどう減るか、最適段間圧力 √(P₁P₂) の効果、T-s/P-v線図上を動く状態点を可視化します。

入口条件
圧縮機特性
プリセット
統計サマリー
計算結果
出口温度(等s)
446
K
出口温度(実)
472
K
出口圧力 P₂
16.0
bar
段当り圧縮比
4.00
最適段間圧力
4.00
bar
比仕事(実)
345
kJ/kg
断熱効率
0.85
実動力
3446
kW
圧縮プロセス・アニメーション
圧縮(仕事入力) 中間冷却(放熱) 高温ガス 節約された仕事
状態線図(状態点が移動)
理論・主要公式

$$T_{2s}= T_1 \left(\frac{P_2}{P_1}\right)^{\frac{\gamma-1}{\gamma}}$$

等エントロピー出口温度。$T_1$ は入口温度[K]、$P_2/P_1$ は圧縮比、$\gamma$ は比熱比。

$$w_s = \frac{\gamma}{\gamma-1}R T_1 \left[\left(\frac{P_2}{P_1}\right)^{\frac{\gamma-1}{\gamma}} - 1\right]$$

等エントロピー比仕事[J/kg]。$R$ は気体定数(空気で287 J/kg·K)。実仕事は $w_a = w_s/\eta$。

$$P_i = \sqrt{P_1 P_2}, \quad r_{p,\text{each}}=\left(\frac{P_2}{P_1}\right)^{1/N}$$

完全中間冷却の最適段間圧力(2段)と、N段で圧縮比を等分する条件。各段の入口を $T_1$ まで冷却すると総仕事が最小になります。

圧縮機設計計算機とは

🙋
上のアニメーションで、シリンダーが2つ並んでて間に水色の丸がありますけど、これって何を表してるんですか?
🎓
ざっくり言うと、あれは「2段圧縮+中間冷却」だね。左のシリンダーで気体を一度圧縮すると温度が上がるだろ?そのまま2段目に入れると効率が悪いから、間にある水色の熱交換器(中間冷却器)で温度をいったん下げてから、右のシリンダーで再圧縮するんだ。段数Nのスライダーを動かすと、シリンダーの数が増えるよ。
🙋
え、わざわざ冷やすんですか?冷やしたら、また温めるのにエネルギーが要るんじゃ…?
🎓
いい疑問だね。でも圧縮仕事は $w=(γ/(γ-1))RT_1[(r_p)^{(γ-1)/γ}-1]$ で、入口温度 $T_1$ に比例するんだ。冷たい気体ほど圧縮しやすい。だから途中で冷やしてから圧縮し直すと、トータルの仕事がむしろ減る。「仕事 vs 段間圧力」タブを開いてみて。単段(赤)と多段+中間冷却(青)の棒グラフを比べると、緑で「節約」が出るはずだ。例えば総圧縮比16・2段なら約20%も仕事が減るよ。
🙋
本当だ、20%近く減ってます!じゃあ「最適段間圧力」っていう数値は、どこで一番おトクになるかを教えてくれてるんですか?
🎓
その通り!2段の場合、各段の圧縮比を等しくすると総仕事が最小になる。これは段間圧力を $P_i=\sqrt{P_1 P_2}$、つまり入口圧力と出口圧力の幾何平均にするのと同じだ。総圧縮比16・入口1barなら $\sqrt{1×16}=4$ bar が最適。N段なら各段を $(P_2/P_1)^{1/N}$ ずつに等分する。statカードの「段当り圧縮比」を見ると、ちゃんと等分されてるのが分かるよ。

物理モデルと主要な数式

等エントロピー(断熱・可逆)圧縮では、出口温度と比仕事は圧縮比 $r_p=P_2/P_1$ と比熱比 $\gamma$ だけで決まります。

$$T_{2s}=T_1\left(\frac{P_2}{P_1}\right)^{\frac{\gamma-1}{\gamma}},\qquad w_s=\frac{\gamma}{\gamma-1}RT_1\left[\left(\frac{P_2}{P_1}\right)^{\frac{\gamma-1}{\gamma}}-1\right]$$

$R$ は気体定数(空気で287 J/kg·K)。実際の比仕事は等エントロピー効率 $\eta$ を用いて $w_a=w_s/\eta$、出口温度は $T_{2a}=T_1+(T_{2s}-T_1)/\eta$ で求めます。

N段圧縮で各段の圧縮比を等分し、完全中間冷却(各段入口を $T_1$ に戻す)すると、総比仕事は次式で最小化されます。

$$r_{p,\text{each}}=\left(\frac{P_2}{P_1}\right)^{1/N},\qquad w_{\text{total}}=N\cdot\frac{\gamma}{\gamma-1}RT_1\left[\left(\frac{P_2}{P_1}\right)^{\frac{\gamma-1}{\gamma N}}-1\right]$$

2段では最適段間圧力が $P_i=\sqrt{P_1 P_2}$ となります。段数を無限大に近づけると等温圧縮の仕事 $w_{\text{iso}}=RT_1\ln(P_2/P_1)$ に漸近します。

実世界での応用

航空機エンジン(ターボファン):エンジン前方の軸流圧縮機で吸入空気を高圧縮します。段数を増やして各段の圧縮比を抑えることで、各段の温度上昇を管理し、効率を高く保ちます。シミュレーターで段数を増やすと段当り圧縮比が下がるのが確認できます。

工場の空圧システム:往復式(レシプロ)圧縮機が多く使われます。段間に中間冷却器を入れ、出口温度を下げる設計が一般的です。温度が高すぎるとオイル劣化や機器故障の原因になります。本ツールの「完全中間冷却」と「冷却なし」を切り替えて出口温度の差を見てください。

冷凍・空調サイクル:冷媒ガスを圧縮する遠心式冷凍機の設計に活用されます。冷媒の比熱比γは気体により異なるため、シミュレーターでγを変えて最適な圧縮比と効率のバランスを探ります。

水素ステーションのコンプレッサー:水素を高圧タンクに充填する多段圧縮機の設計。各段の出口温度と必要仕事量を計算し、段間冷却の設計と全体効率の評価に使用されます。総圧縮比が非常に高いため、最適段間圧力の考え方が特に重要です。

よくある誤解と注意点

このツールを使う際に気をつけてほしいポイントがいくつかあります。まず、「比熱比γ」は気体そのものの性質であり、空気なら約1.4、単原子ガス(アルゴン等)なら約1.67、複雑な炭化水素混合物なら1.1〜1.3です。同じ圧縮比でもγが大きいほど出口温度が高くなります。γを変えると出口温度(等s)がどう変わるか確認してください。

次に、「中間冷却で仕事が減る」のは入口温度が下がるからです。冷却そのものに圧縮機の軸動力は不要で、冷却水や空気で熱を捨てます。ただし完全中間冷却(各段入口をT₁まで戻す)は理想であり、実機では冷却器の性能限界で完全には冷えません。本ツールの「冷却なし」と比較すると、冷却の効果の上限が分かります。

最後に、単位系の統一は必須です。温度は絶対温度[K]、圧力は絶対圧[bar abs.]で計算しています。大気圧(約1.013 bar abs.)を入口圧力とし、出口を「8 bar ゲージ」にしたい場合は、絶対圧で約9 barとして総圧縮比を設定する必要があります。ここを間違えると、圧縮比が大きくずれてすべての計算が台無しになります。

使い方ガイド

  1. 吸入条件を設定:T₁(吸入温度、K)とP₁(吸入圧力、bar)を入力。空気の場合は通常T₁=300K、P₁=1.0barから開始
  2. 総圧縮比PRと段数Nを指定:段数を増やすと各段の圧縮比が自動で等分され、段当り圧縮比のstatカードに反映されます
  3. 段間冷却を選択:「完全中間冷却」で各段入口をT₁まで冷却。「冷却なし」と比較して仕事の差を確認
  4. ガス特性γ(比熱比)を入力:空気γ=1.4、天然ガス混合物γ=1.27、アルゴンγ=1.67
  5. アニメーションで圧縮の進行と中間冷却を観察し、「仕事 vs 段間圧力」タブで単段との節約量を確認

具体的な計算例

空気を総圧縮比16で圧縮する場合:T₁=300K、P₁=1.0bar、γ=1.4を入力。単段では等エントロピー出口温度T₂s≈662K、比仕事W_s≈364kJ/kg。2段+完全中間冷却にすると、最適段間圧力P_i=√(1×16)=4bar、各段圧縮比4となり、総比仕事は約293kJ/kg(等エントロピーで)まで低下します。これは単段に対して約20%の仕事削減です。効率η=0.85では実比仕事がそれぞれ1/0.85倍になります。

実務での注意点

  1. 多段圧縮機では各段の圧縮比を1.8〜2.5に制限して出口温度を150℃以下に保ち、中間冷却による効率向上を評価
  2. 天然ガス圧縮ではCO₂やH₂S含有率でγが0.05〜0.10変動し、出口温度が±15K程度変わるため、ガス分析値を正確に反映
  3. 往復式圧縮機の場合、機械効率85〜92%、容積効率80〜95%を実仕事に乗算して所要動力を確認
  4. 吸入ガス温度が±10K変動すると出口温度は±7K程度変化するため、季節別設計確認が重要