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電磁気・光学

表面処理・コーティング設計計算機

浸炭・窒化の炭素プロファイル(erfc拡散解)、電気めっき膜厚(Faraday則)、ショットピーニング残留応力をリアルタイム計算。

処理条件設定
処理種別
処理温度 T
°C
処理時間 t
h
表面炭素濃度 Cs
%C
心部炭素濃度 C0
%C
計算結果
有効ケース深さ [mm]
表面硬さ HV
心部硬さ HV
コスト指数
疲労改善率
拡散係数 D [mm²/s]
断面・ケース深さ模式図
炭素プロファイル C(x)
硬さプロファイル HV(x)

炭素プロファイル(erfc拡散解):$C(x,t) = (C_s - C_0)\,\mathrm{erfc}\!\left(\dfrac{x}{2\sqrt{Dt}}\right) + C_0$

拡散係数(Arrhenius式):$D = D_0 \exp\!\left(-\dfrac{Q}{RT}\right)$

炭素→硬さ換算(簡易式):$HV \approx 20 + 38 \times \%C + 50 \times (\text{合金係数})$

電気めっき(Faraday則):$\delta = \dfrac{M \cdot I \cdot t}{n \cdot F \cdot \rho \cdot A}$ [m]

ショットピーニング残留応力深さ:$z_p \approx 0.5 d_{shot}\sqrt{HV_{shot}/HV_{part}}$

理論・主要公式

表面処理・コーティング設計計算機とは

🙋
このシミュレーターで「浸炭」を選ぶと、硬さの深さ方向の分布が出てきますけど、あれってどうやって計算してるんですか?
🎓
大まかに言うと、炭素原子が鋼の中をどれだけ深く入り込むかを計算しているんだ。キーになるのは拡散方程式の解で、誤差関数(erfc)を使って炭素濃度のプロファイル $C(x)$ を出しているよ。例えば、上のスライダーで「処理温度」を上げてみて。硬さが深くまで浸透するのがわかるよね? 温度が高いほど炭素の動きが活発になるからだ。
🙋
え、そうなんですか!「拡散係数」ってパラメータも出てきますけど、これも温度で変わるんですか?
🎓
その通り。拡散係数 $D$ はアレニウスの式で決まるんだ。$D = D_0 \exp(-Q / RT)$ ってやつね。$Q$は活性化エネルギーで、材料ごとに決まっている値だ。シミュレーターでは、君が温度$T$を変えるたびに、この式で$D$をリアルタイムに計算し直して、その結果を硬さプロファイルに反映しているんだ。実務では、材料メーカーのデータシートから$D_0$と$Q$を引いてくることが多いよ。
🙋
なるほど!じゃあ「電気めっき」のタブに切り替えると、今度は電流と時間で膜厚が計算できますね。あれはまた別の原理なんですか?
🎓
うん、こっちはファラデーの電気分解の法則がベースだ。流した電気量(電流×時間)に比例して金属が析出するんだ。試しに「めっき種」を「亜鉛」から「ニッケル」に変えてみて。同じ電流・時間でも膜厚が変わるだろ? これは、析出する金属の原子の重さ(モル質量)や、イオンの価数が違うからなんだ。現場では、目標の膜厚から逆算して必要な処理時間を求めるのに使うことが多いね。

よくある質問

拡散係数Dは処理温度に強く依存します。Arrhenius式D = D0 exp(-Q/RT)を用いて計算します。一般的なオーステナイト鋼では、D0≈0.1~1.0 mm²/s、活性化エネルギーQ≈140~160 kJ/mol程度です。ツール内で温度を入力すると自動計算されます。
はい、可能です。Faraday則の計算式では、電流効率ηを乗算する形で組み込んでいます。ツールの入力項目に「電流効率(%)」欄があるので、実際のプロセスに合わせて70~95%などの値を入力してください。標準値は100%です。
ツールでは、一般的なショットピーニング条件(粒径0.2~1.0mm、投射速度30~80m/s)に対応した深さ0~500μm程度の範囲を計算対象としています。材料の降伏応力やショット径に応じて最大圧縮応力の位置や深さが変化するため、入力パラメータを調整してください。
可能です。ツールの入力欄では秒単位が基本ですが、時間(h)で入力したい場合は、自動換算機能を利用してください。例えば「2h」と入力すると7200秒に変換されます。分単位も「30min」のように入力可能です。

実世界での応用

自動車部品の耐久性向上:ギアやカムシャフトなど、高い接触応力を受ける部品に浸炭処理を施します。シミュレーターで計算した硬さプロファイルと有効ケース深さは、歯の曲げ疲労強度や面圧強度を評価するFEM解析の入力データとして直接使用されます。

航空宇宙コンポーネントの防食設計:航空機の着陸装置やエンジン部品には、高い耐食性が要求されます。電気めっき(特にカドミウムめっきやニッケルめっき)の膜厚をこのツールで設計し、塩害環境下での寿命を予測します。

精密機械部品の疲労寿命延長:ショットピーニングにより表面に残留圧縮応力を導入することで、き裂の発生・進展を抑制します。この残留応力の深さ分布は、nCode DesignLifeなどのCAE疲労解析ソフトで、平均応力を考慮した修正Goodman線図に適用され、部品の寿命予測精度を高めます。

金型・工具の表面改質:アルミニウムダイカスト用金型など、高温での摩耗や熱疲労が問題となる工具に対して、窒化処理を施します。処理条件(温度・時間・ガス組成)をシミュレーターで最適化し、要求される硬さ深さと表面硬度を効率的に達成する設計に活用します。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始める際、特にCAE初心者の方が陥りがちなポイントがいくつかあります。まず大きな誤解は、「計算結果がそのまま現場の仕様書になる」と思ってしまうことです。例えば、浸炭計算で「有効硬化深さ550HVで0.8mm」と出たからといって、そのまま図面に記載するのは危険。実際の部品は形状や炉内の配置によって温度ムラが生じ、計算通りの均一なプロファイルにはなりません。安全を見て、計算値に1.2倍などの係数をかけて要求値を設定するのが現場の知恵です。

次に、パラメータの「デフォルト値」を過信しないこと。ツールに入っている拡散係数(D0やQ)は代表値です。使っている鋼材のメーカーやロットが変われば、これらの値も微妙に変わります。重要な案件では、必ず材料メーカーの最新データシートや自社の実績データで値を確認しましょう。例えば、SCM440の拡散係数でも、メーカーAとBでは活性化エネルギーQが数kJ/mol違うことは珍しくありません。

電気めっきの計算でも落とし穴が。計算式は「理論析出量」を求めているので、電流効率100%が前提です。しかし実際のめっき浴では、水素発生などの副反応で効率が80〜95%に落ちます。理論計算で10μmのニッケルめっきが必要なら、効率90%を考慮して時間を約1.1倍に延ばす必要があります。「計算通りやったのに膜厚が足りない!」というトラブルは、ほぼこれが原因です。