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電磁気シミュレーター

クーロンの法則 シミュレーター — 点電荷間の電気力

2つの点電荷の間に働くクーロン力 F = k·q_1·q_2 / (ε_r·r²) をリアルタイムに計算。電場 E、ポテンシャルエネルギー U、引力/反発の向きを、電気力線と |F|-r の log-log 曲線で直感的に学べます。

パラメータ設定
電荷 1 q_1
μC
電荷 2 q_2
μC
距離 r
cm
比誘電率 ε_r

クーロン定数 k = 1/(4πε_0) ≈ 8.988×10⁹ N·m²/C²。電荷の単位 μC = 10⁻⁶ C、距離 cm = 10⁻² m。比誘電率 ε_r を 80(水)にすると力は 1/80 に弱まります。

計算結果
クーロン力 |F|
q_1 による電場 E
ポテンシャルエネルギー U
力の向き

符号判定:

点電荷と電気力線

2つの点電荷を距離 r 離して配置。赤=正電荷、青=負電荷。電気力線は同符号で反発、異符号で引力を示す。矢印はクーロン力ベクトル F の大きさと向き。

|F| vs r(log-log)

横軸=距離 r (cm)、縦軸=|F| (N) の log-log プロット。F ∝ 1/r² なので傾き -2 の直線。黄丸=現在の (r, |F|)。

理論・主要公式

クーロンの法則は2点電荷間に働く電気力を、距離の二乗に反比例する形で与えます。

クーロン力($k = 1/(4\pi\varepsilon_0) \approx 8.988\times10^{9}$ N·m²/C²):

$$F = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0\,\varepsilon_r}\,\frac{q_1\,q_2}{r^{2}} = k\,\frac{q_1\,q_2}{\varepsilon_r\,r^{2}}$$

電荷 $q_1$ が距離 $r$ に作る電場と、2電荷系のポテンシャルエネルギー:

$$E = \frac{k\,|q_1|}{\varepsilon_r\,r^{2}},\quad U = \frac{k\,q_1\,q_2}{\varepsilon_r\,r}$$

$F > 0$(同符号)は反発、$F < 0$(異符号)は引力。$U$ は $r \to \infty$ をゼロ基準とした静電ポテンシャルエネルギーです。

クーロンの法則シミュレーターとは

🙋
「クーロンの法則」って F = kq₁q₂/r² ってやつですよね。電荷が大きいほど力が強くて、距離の二乗に反比例する、という。デフォルト値(q₁=+5μC、q₂=+3μC、r=10cm)で力 13.48 N って、けっこう大きくないですか?
🎓
そう、これが意外なポイントなんだ。μC(マイクロクーロン)は小さく聞こえるけど、5 μC = 5×10⁻⁶ C でも、k = 9×10⁹ という途方もなく大きな比例定数のおかげで、10 cm 離した時点で 13 N(約 1.3 kg重)の力になる。これは小型の磁石が冷蔵庫に貼りつく力と同じくらいだ。だから静電気で髪の毛が逆立ったり、下敷きで紙片が持ち上がるのはこの強烈な力の現れなんだよ。
🙋
距離スイープを押すと、|F| vs r が log-log で見事な直線になりますね。傾き -2 ってどう読めばいいですか?
🎓
log F = log k|q₁q₂| − 2 log r、つまり log r が 1 増える(距離が 10 倍)ごとに log F が 2 減る(力が 1/100 になる)。距離を 10 cm から 1 m(10倍)にすると 13.48 N → 0.135 N と 1/100。これは「逆二乗則」の一般的な性質で、重力(ニュートン)も光の強度(ガウスの法則)も同じ。点源から放射状に広がる量は、必ずこの形になるんだ。
🙋
片方の電荷を負にすると、矢印が引き合う方向になりますね。ポテンシャルエネルギー U も負になる。これは「束縛エネルギー」みたいなもの?
🎓
いい着眼点だ。U が負ということは、無限遠(U = 0 基準)よりエネルギーが低い、つまり安定状態にあるということ。引き離すには |U| のエネルギーが必要で、これが「束縛エネルギー」。原子内の電子(陽子に束縛)も、NaCl 結晶のイオン(Na⁺ と Cl⁻ が束縛)も、すべてこのクーロンポテンシャルで結合している。比誘電率を 80(水)にすると U が 1/80 になるのは、水中で塩が解ける物理そのものだよ。
🙋
電場 E が 4.49 MV/m って、すごい数字に見えます。これは何を意味する値ですか?
🎓
電場 E = kq₁/r² は「q₁ から 10 cm 離れた点に単位正電荷を置いたら受ける力(per Coulomb)」のこと。MV/m(メガボルト毎メートル)という単位で、空気の絶縁破壊強度(約 3 MV/m)を超えている。実際は q₁ が点電荷なので、近づくほど E は無限大に発散する。だから「点電荷モデル」は理論上の理想化で、現実の高電圧機器では電極形状を丸めて電場集中(コロナ放電)を避ける設計が必須なんだ。

よくある質問

どちらも「2点間の力が距離の二乗に反比例する」逆二乗則ですが、決定的に違う点が3つあります。①符号:電荷は正負あり引力にも反発にもなるが、質量は常に正で重力は引力のみ。②強さ:電子と陽子間では電気力が重力の約 10³⁹ 倍。③遮蔽:電気は誘電体や導体で遮蔽できるが、重力は遮蔽不可能(一般相対論ではそもそも力ではなく時空の曲がり)。原子・分子・物質の構造はすべて電気力が支配し、重力は宇宙スケール(惑星・恒星・銀河)でのみ支配的になります。
クーロン定数 k = 8.988×10⁹ N·m²/C² が異常に大きいためです。q₁=q₂=1 C を 1 m 離すと F = 9×10⁹ N(90 億 N、ボーイング 747 約 250 万機分の重量)になります。実用上 1 C は途方もなく大きな電荷量で、静電気現象で扱うのは μC(10⁻⁶ C)や nC(10⁻⁹ C)が普通です。逆に電気回路の電流(A = C/s)では毎秒大量の C が流れますが、そこでは正負電荷が中和して全体としては中性なので、クーロン力は問題になりません。
塩(NaCl)結晶は Na⁺ と Cl⁻ がクーロン引力で固く結合した構造です。真空中ではこの結合エネルギーが数 eV と熱運動(300 K で約 0.025 eV)よりずっと大きいため、結晶は固体のまま。しかし水中では ε_r ≈ 80 で全てのクーロン力が 1/80 に弱まり、結合エネルギーが熱運動と同程度のオーダーに落ちます。さらに水分子の双極子が Na⁺・Cl⁻ を取り囲んで「水和」し、エネルギー的にも有利になるため、結晶は水中で容易に解離(溶解)するのです。本ツールで ε_r を 80 にしてみると、力とポテンシャルが 1/80 に減ることが確認できます。
汎用:Ansys Maxwell(電気機器・モータ)、COMSOL Multiphysics(マルチフィジクス対応)、JMAG(日本製、モータ設計に強い)、CST Studio Suite(高周波・EMC)が代表的です。それぞれ有限要素法(FEM)でラプラス/ポアソン方程式 ∇²φ = -ρ/ε を解き、電場・ポテンシャル・電気力・キャパシタンス・絶縁破壊リスクを 3D で計算します。クーロンの法則は最も基本的な「点電荷の重ね合わせ」モデルで、半解析的計算(境界要素法 BEM、自由空間グリーン関数)でも内部的に使われます。MEMS の静電アクチュエーター、ESD 解析、高電圧絶縁設計、半導体プロセスシミュレーションで必須の技術です。

実世界での応用

静電気放電(ESD)対策:半導体チップは数十 V の静電気でも破壊されるため、製造・実装ラインでは ESD マット、リストストラップ、イオナイザーで人体や治具を除電します。クーロンの法則から、人体に蓄えられる典型的な電荷(数 μC)と機器の対地容量(100〜1000 pF)を組み合わせて放電エネルギー E = Q²/(2C) を見積もり、保護回路(TVS ダイオード、ESD 抑制器)の設計マージンを決定します。本シミュレーターで q = 1 μC, r = 1 mm(指先と IC ピン)を入れると、瞬間的に 9 N の局所的な力と非常に強い電場が発生することがわかります。

MEMS 静電アクチュエーター:マイクロミラー(DLP プロジェクタ、自動車 LiDAR)、加速度センサー、RF MEMS スイッチでは、平行平板電極間に発生するクーロン引力 F = ε₀A·V²/(2d²) を駆動原理に使います。電極ギャップ d が μm オーダーなので、わずか数 V の印加で μN〜mN レベルの力が得られ、消費電力もほぼゼロ(変位中のみ電流)と低い。本ツールで q を電極上の蓄積電荷、r をギャップに置き換えると、設計の感度(V → 力)が直感的に把握できます。

高電圧機器の絶縁設計:送電線・変圧器・避雷器・GIS(ガス絶縁開閉装置)では、電極形状と絶縁体(空気、SF₆、油、エポキシ)の組み合わせで電場集中を避けます。空気の絶縁破壊強度は 3 MV/m、SF₆ は 9 MV/m、変圧器油は 15 MV/m。クーロンの法則から計算される最大電場が破壊強度の 1/3 を超えるとコロナ放電が始まり、長期的には絶縁劣化を招きます。Ansys Maxwell や COMSOL で 3D 電場解析を行い、電界強度マップを作成して局所最大値を最小化する形状最適化が定石です。

原子・分子の安定性:水素原子の電子は陽子(距離 5.29×10⁻¹¹ m、ボーア半径)から約 8.2×10⁻⁸ N のクーロン引力で束縛され、結合エネルギーは 13.6 eV(リードベリエネルギー)になります。化学結合・分子間力(ファンデルワールス、水素結合、イオン結合)も全てクーロン相互作用が起源です。生体分子(タンパク質、DNA)の立体構造も水中(ε_r ≈ 80)でのクーロン相互作用と熱運動のバランスで決まり、計算化学(DFT、分子動力学)はこれらを高速に解くツールです。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「点電荷の電場・力は r → 0 で発散するから現実的でない」と考えることです。確かに数学的には F → ∞ ですが、これは「点電荷」という理想化が破綻するスケールに近づいたためで、現実の電子(電荷半径 ~10⁻¹⁵ m)や陽子では量子電磁力学(QED)と核力が支配的になり、古典的なクーロン則は成立しません。本シミュレーターで r を 1 cm まで下げると |F| が r=10cm の 100 倍に増えるのは見えますが、それより小さなスケールはあくまで「古典近似」だと理解しておきましょう。実務 CAE でも、電極の角や尖端で電場が局所的に発散するため、メッシュを細かく切って積分形(仮想変位法)で力を計算する工夫が必須です。

次に多いのが、「比誘電率 ε_r は単に係数で力が弱くなるだけ」と思うことです。実際は媒質中で「微視的な分極」が起きており、電場が双極子を整列させ、その整列が外部電場を弱める「自己無撞着」な過程です。低周波では ε_r がほぼ一定(水で 80)でも、高周波(GHz〜THz)では分子双極子が追従できなくなり ε_r が急減します(水のマイクロ波吸収=電子レンジの動作原理)。また強誘電体(BaTiO₃ など)では ε_r が温度・電場履歴に依存し、線形近似が破綻します。CAE でも誘電体の周波数特性を Debye/Cole-Cole モデルで導入する必要があります。

最後に、「電気力線が交差したり消えたりする」と誤解するミスです。電場は各点で一意なベクトルなので、電気力線は決して交差しません(交差点で2方向の電場になり矛盾)。また力線は正電荷から発生して負電荷に終わる(または無限遠へ)ので、途中で消えることもありません(ガウスの法則)。本ツールの電気力線図は同符号で発散・異符号で結合する典型例ですが、複雑な配置(3 個以上の電荷、導体境界)では数値計算(FEM、BEM)が必要になり、Coulomb の単純な式だけでは扱えなくなります。