重力式ダム水圧・安定計算 戻る
解析ツール

重力式ダム — 水圧・安定計算ツール

ダム高・底幅・揚圧力係数を変えて、転倒安全率・滑動安全率・底面圧力分布をリアルタイムに確認。水圧・自重・揚圧力の力の釣り合いを断面図とグラフで直感的に可視化。

ダム断面パラメータ
ダム高 H (m)
m
天端幅 b_top (m)
m
底面幅 B (m)
m
コンクリート単位重量 γ_c (kN/m³)
kN/m³
水圧・揚圧力
貯水深 H_w (m)
m
揚圧力係数 α(排水効果)
安定照査結果

一時停止中はスライダーを動かすと結果が即座に更新されます。

静水圧の可視化 — 三角形分布と合力
水深 H [m]
底部圧力 p_max [kPa]
合力 F [kN/m]
作用点 H/3 [m]
転倒モーメント M [kN·m/m]
圧力は深さに比例(p=ρgh)して三角形に増大し、底部で最大。合力 F=½ρgH²·b は底面から H/3 の高さに作用し、つま先まわりに転倒モーメント M=F·(H/3) を生みます。
計算結果
FSo 転倒安全率
必要値 ≥ 1.5
FSs 滑動安全率
必要値 ≥ 1.0
σ_toe つま先応力
kPa
σ_heel かかと応力
kPa
ダム
底面圧力分布
安全率サマリー
理論・主要公式

転倒安全率:

$$FS_o = \frac{\sum M_{stab}}{\sum M_{over}}\geq 1.5$$

滑動安全率:

$$FS_s = \frac{\mu \sum V}{\sum H}\geq 1.0$$

底面応力:

$$\sigma_{toe/heel}= \frac{\sum V}{B}\left(1 \pm \frac{6e}{B}\right)$$

重力式ダムの安定計算とは

🙋
重力式ダムって、どうしてあの三角みたいな形で壊れないんですか?水の力がすごくかかってそうなのに。
🎓
大まかに言うと、ダム自身の重さ(自重)で水圧に耐えているんだ。コンクリートをどっしり積んで、水に押されても滑ったり倒れたりしないように設計する。このツールでは、上のスライダーでダムの高さや幅を変えて、その安定性がどう変わるかすぐに計算できるよ。
🙋
「揚圧力係数α」って何ですか?0から1まで変えられるけど、これが変わると何が起こるんですか?
🎓
良いところに気が付いたね。ダムの下には水が染み込んでいて、底面を上に押し上げる力(揚圧力)が働くんだ。αはその大きさを表す係数で、実務ではダム底面に排水孔を設けてこの力を減らすことが多い。シミュレーターでαを1(排水なし)から0.5くらいに下げてみて?安全率が大きく改善するのがわかるよ。
🙋
「底面圧力分布」のグラフで、片方(踵)がマイナスになることがあるんですけど、これはまずい状態なんですか?
🎓
その通り、非常にまずい状態だ!底面の引張応力が発生していることを意味する。コンクリートは引張に弱いから、そこにひび割れが入り、水が侵入してさらに状況が悪化する可能性がある。ツールで天端幅(b_top)を小さくしすぎたり、貯水深(H_w)を大きくしすぎると、すぐにそうなる。安全な設計は、常に底面全体で圧縮力がかかるようにすることなんだ。

よくある質問

ダムの底幅を広げるか、上流側の形状を変更して自重による安定モーメントを増やしてください。揚圧力係数を下げる(ドレーン工など)ことも効果的です。ツールでパラメータを変更しながらリアルタイムに安全率の変化を確認できます。
μはダム底面と岩盤の摩擦係数で、通常0.6~0.8程度の値を用います。実際の設計では現地の岩盤試験結果に基づきますが、本ツールでは標準的な値(例:0.7)を初期値として入力し、感度分析に活用してください。
転倒モーメントが大きくなると、上流側の底面が岩盤から浮き上がる(引張応力が発生しない)ため、圧力がゼロになります。これは設計上好ましくない状態で、ツールではこの領域を赤色で警告表示します。底幅を広げるなどして改善が必要です。
揚圧力係数は、ダム底面に作用する上向きの水圧の分布形状を決める係数(0~1)です。0で完全なドレーン効果(揚圧力なし)、1で完全な三角分布(最大揚圧力)を意味します。実務では基礎岩盤の透水性やドレーン設計に応じて0.3~0.5程度が一般的です。

実世界での応用

ダムの新規設計・安全性照査:計画段階で様々な貯水位(洪水時、平常時)や地震時を想定し、断面形状が安全基準を満たすかどうかを繰り返し計算します。本ツールのようにパラメータを変えながら最適な断面を探すプロセスそのものです。

既設ダムの評価と補強:経年変化や新しい安全基準の導入により、既存のダムの安定性を再評価します。揚圧力係数αの見直し(排水機能の低下を想定)や、想定する最大洪水位の引き上げなど、条件変更による影響を評価する際に用いられます。

水利構造物の教育・訓練:大学や技術者研修で、重力式構造物の力学挙動を直感的に理解するための教材として利用されます。パラメータを変えると安全率や底面応力が即座に変化するので、各力が安定性に与える影響を深く学べます。

フーチングや擁壁の設計への応用:基本原理は同じです。建物の基礎(フーチング)や土留め擁壁など、自重で水平力に抵抗する「重力式」構造物の安定計算にも同様の考え方が広く適用されています。

よくある誤解と注意点

まず、「安全率が基準を超えていれば絶対安全」というのは大きな誤解です。このツールで計算される安全率は、あくまで静的な基本ケース。実務では、地震時の慣性力や、貯水池の堆砂による土圧、あるいはコンクリートと岩盤の継ぎ目の強度(せん断強度)など、複数の要因を同時に考慮します。例えば、転倒安全率が1.8で一見十分でも、地震力を加えると1.2を切ることも珍しくありません。このツールは「基本原理」を理解するための第一歩だと捉えましょう。

次に、パラメータの現実的な範囲を意識すること。例えば摩擦係数μを1.0以上に設定したくなるかもしれませんが、実際のコンクリート-岩盤面では0.6〜0.8が一般的です。無理に高い値を設定して安全率をごまかすのは禁物です。また、ダム天端幅(b_top)は、保守点検用の通路として最低でも2〜3mは必要で、計算上ギリギリでも実用形状にはなりません。

最後に、「底面圧力が全てプラス(圧縮)ならOK」という単純化も危険。踵(かかと)側の圧力が極端に小さくなると、そこから水が浸透して揚圧力を増大させる「経路」ができてしまう可能性があります。実務では、底面圧力分布に余裕を持たせ、かつ圧力の最小値にも下限を設けて照査します。ツールで遊ぶ時は、踵側の圧力が「0にギリギリ」の状態がどれだけ危ういか、を体感してみてください。

使い方ガイド

  1. ダム高 H(m)、貯水深 H_w(m)を入力し、水圧分布を決定する
  2. 天端幅 b_top(m)、底面幅 B(m)、コンクリート単位重量 γ_c(kN/m³、通常23.5)を設定
  3. 基礎底面の圧力分布を確認し、つま先応力σ_toe、かかと応力σ_heelが許容値以下(σ_heel ≥ 0、σ_toe ≤ 地盤支持力)であることを検証
  4. 転倒安全率FSo≥1.5、滑動安全率FSs≥1.0の要件を満たす断面寸法に調整
  5. 揚圧力係数を変更(0.3~0.5)して基礎排水条件の影響を検討

具体的な計算例

高さH=50m、貯水深H_w=48m、天端幅b_top=8m、底面幅B=35m、コンクリート単位重量γ_c=23.5kN/m³の重力式ダムの場合:水圧F_h=0.5×γ_w×H_w²=0.5×9.81×48²≈11,300kN/mが作用。転倒モーメント=11,300×48/3≈180,800kN・m。堤体自重W=0.5×(8+35)×50×23.5≈25,260kN/m、重心はつま先から約22.84m(断面重心式 x_cg=(b_top²+b_top·B+B²)/(3(b_top+B))=12.16m)なので復元モーメント=25,260×22.84≈576,900kN・mとなり、揚圧力を無視するとFSo=576,900/180,800≈3.2で要件(≥1.5)を満たす。揚圧力を見込むとさらに低下するため照査が必要。

実務での注意点

  1. 揚圧力係数は基礎排水条件による:完全排水時0.3、排水なし0.5を想定し、実施設計では地質調査・グラウト効果で中間値0.35~0.4を採用
  2. 温度応力による堤体の膨張・収縮(ΔT≥20℃で伸縮量≈0.3mm/m)は、クラック誘発時のせん断強度低下を招くため、エクスパンションジョイント間隔を20~30m以下に設定
  3. 地震時動的解析ではダム堤体の加速度応答を考慮し、水平加速度を0.3~0.4g加算してFSo、FSsを再検証する必要がある
  4. 底面応力分布が非線形(ヒール部で応力集中)の場合、堤体下流面形状を湾曲させてσ_toeを低減する対策を検討