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圧縮性流体シミュレーター

ファンノー流れ シミュレーター — 摩擦付き圧縮性ダクト流

断熱・摩擦付き・一定断面ダクトを流れる圧縮性流れを可視化。入口マッハ・比熱比・ダーシー摩擦係数・L/D を変えながら、出口マッハ、温度比、圧力比、ファンノー線図上の状態点の動きを直感的に学べます。

パラメータ設定
入口マッハ数 M_1
比熱比 γ
ダーシー摩擦係数 f
ダクト長径比 L/D

完全気体・断熱・1次元・定常を仮定。f はムーディ線図と同じダーシー定義。実ダクトの 4fL/D が入口側の 4fL*/D を超えると choke 状態になり、出口は M=1 に固定されます。

計算結果
出口マッハ M_2
最大ダクト長 4fL*/D
温度比 T_2/T_1
圧力比 P_2/P_1
ダクト模式図

左=状態 1(入口)/右=状態 2(出口)/矢印長=速度/下の波線=壁面摩擦/温度・圧力の相対値を色で表示

ファンノー線図 (T-s)

縦軸=T/T*/横軸=無次元エントロピー (s−s*)/cp/上枝=亜音速、下枝=超音速/青丸=状態 1、赤丸=状態 2/橙線=1→2 の経路

理論・主要公式

ファンノー流れは、断熱・摩擦付き・一定断面ダクトの圧縮性流れの理想モデルです。摩擦は流れを必ず M=1 に近づけ、亜音速は加速、超音速は減速します。

マッハ数 M から M=1 までの choking 距離(無次元):

$$\frac{4 f L^*}{D_h} = \frac{1 - M^2}{\gamma M^2} + \frac{\gamma+1}{2\gamma}\ln\!\left(\frac{(\gamma+1)M^2}{2 + (\gamma-1)M^2}\right)$$

出口マッハ M_2 はダクト長 L から次の関係を数値的に解いて求めます:

$$\frac{4 f L^*_2}{D_h} = \frac{4 f L^*_1}{D_h} - \frac{4 f L}{D_h}$$

温度比・圧力比は M=1 を基準とした参照量で表されます:

$$\frac{T}{T^*} = \frac{\gamma+1}{2 + (\gamma-1)M^2}, \qquad \frac{P}{P^*} = \frac{1}{M}\sqrt{\frac{\gamma+1}{2 + (\gamma-1)M^2}}$$

出口の T_2/T_1 や P_2/P_1 は、それぞれ T/T* と P/P* の比として求めます。実ダクトの 4fL/D が 4fL*_1/D を超えるとチョークし、出口は M=1 に固定されます。

ファンノー流れ シミュレーターとは

🙋
天然ガスのパイプラインで「長くするほど流量が頭打ちになる」って聞いたんですけど、これってどういう物理ですか?
🎓
それがまさにファンノー流れだ。断熱・摩擦付き・一定断面のダクトを圧縮性流体が流れるとき、摩擦は流れを必ず M=1 に近づける。亜音速で入った流れは下流ほど加速して、十分長いと出口で M=1 になりそれ以上加速できない。これが『choke(チョーク)』だよ。デフォルト(M_1=0.30, γ=1.4, f=0.020, L/D=50)で出口は M_2 ≈ 0.474 と表示されるはず。
🙋
M_1=0.3 から M_2=0.47 までしか加速していないんですね。L/D を伸ばすともっと M に近づくんですか?
🎓
そう。L/D を上げていって 4fL/D が 4fL*_1/D(今は約 5.30)と一致すると、出口がちょうど M=1 にチョークする。今のパラメータだと L/D ≈ 66 でチョーク。それ以上長くしたいなら、上流圧力か入口マッハを下げて再設計するしかない。シミュレーターで L/D スライダーを上げてみると、M_2 が 1 に張り付いて『CHOKED』バッジが出るのが見える。
🙋
右の T-s 線図、M=1 の点が右端に出ていて、上下に枝が分かれていますね。これは何ですか?
🎓
それがファンノー曲線。縦軸が T/T*、横軸が無次元エントロピーで、上枝が亜音速・下枝が超音速。M=1 で最大エントロピーを取るのが特徴で、断熱・摩擦のもとではエントロピーが必ず増えるから、流れは曲線上を必ず M=1 の方向(右へ)にしか進めない。今の入口(青丸)から出口(赤丸)への矢印が、亜音速枝に沿って右下に進んでいるのが見えるはずだ。
🙋
入口を超音速、たとえば M_1=2.0 にしてみたらどうなりますか?
🎓
スライダーで M_1=2.0 にしてみて。今度は摩擦で『減速』して、M_2 が 2.0 から 1 の方向に下がっていく。T-s 線図でも下枝(超音速側)の上を、入口の右下から M=1 に向かって左上に進む。亜音速のときと挙動が真逆に見えるけど、どちらも『M=1 に近づく』という意味では同じ物理だ。これがファンノー流れの一番面白いポイントだよ。

よくある質問

本ツールの f は『ダーシー摩擦係数(Darcy friction factor)』であり、ムーディ線図に書かれている値そのものを入れます。教科書によっては『ファニング摩擦係数(Fanning friction factor)』を使い、4f_F = f_D の関係になっているので注意してください。本ツールの式 4fL*/D は Darcy の f を前提とし、4·f_D·L/D を直接使います。乱流域・水力的に滑らかな管で f_D ≈ 0.02 が代表値、粗い管では 0.04〜0.06 程度になります。
出口で M=1 に達した時点で、出口断面の質量流量は『その上流条件で許される最大値』に固定されます。下流圧力をいくら下げても出口マッハは 1 を超えられないため、流量は変わりません。これは収束ノズルの『臨界流』と同じ物理です。実機では事前に choking しないようパイプ径 D を太くするか、入口マッハを下げて運用します。
ファンノー流れは断熱なので全エンタルピー h_0 = h + V²/2 が保存されます。亜音速で加速すると速度 V が増え、その分静温 T が下がります。デフォルトでは T_2/T_1 ≈ 0.974 と少し下がる程度ですが、入口 M_1 が小さく出口が M=1 近くまで加速する場合は T_2/T_1 が 0.83 程度まで下がることもあります。逆に超音速側では減速で T が上がります。
ファンノー流れは『断熱+摩擦付き』、レイリー流れは『摩擦無し+熱の出入り付き』のモデルです。どちらも一定断面ダクトの圧縮性流れの理想モデルで、両者とも流れを M=1 に近づける方向に働きますが、エントロピーの増減や T-s 線図の形状が異なります。実際の燃焼室や熱交換器では両方の効果が共存するため、近似モデルとして使い分けます。

実世界での応用

長距離パイプライン設計:天然ガスや圧縮空気を数十〜数百 km 運ぶ長距離パイプラインでは、出口の必要流量と上流圧力から逆算して、choke しないパイプ径を選定します。ファンノー解析で『この圧力ならこの長さまで送れる』『これ以上長いとブースタ・コンプレッサーが必要』が決まるため、設計の初期段階で必ず使われます。実務では断熱仮定の補正として周囲との熱伝達も加味します。

ロケット・ジェットの吸気・冷却ダクト:液体ロケットエンジンのプロペラント供給ライン、ガスタービンの抽気冷却ダクト、ジェットエンジンのアフタークーラー配管などで、与えられたダクト長で出口マッハがどこまで上がるかをファンノー流れで評価します。とくにブリードラインで choke すると下流の冷却空気が不足する重大事故に直結するため、設計段階で 4fL*/D に十分な余裕を持たせます。

超音速風洞のディフューザ:超音速風洞ではテストセクションを抜けた超音速流をディフューザで減速させて回収します。摩擦の効果でファンノー流れ的に減速するため、ディフューザ長と出口マッハの関係を予測してチョーク点を避ける設計が必要です。長すぎるとチョークしてテスト条件が崩れ、短すぎると下流側の真空ポンプ容量が増えるという、トレードオフの設計が要求されます。

HVAC・換気ダクト:建物の高速換気ダクト(マッハ 0.1〜0.3 程度)でも厳密にはファンノー的な圧力降下が生じます。低マッハでは非圧縮ダルシー・ワイズバッハ式で十分ですが、高速のレンジフード排気ダクトや工場のプロセス排気では、圧縮性補正としてファンノー解析が選ばれることがあります。圧損の見積りが過小だと送風機のスペック不足に直結します。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「摩擦があるから流れは必ず減速する」と思い込むことです。亜音速のファンノー流れでは、摩擦は逆に流れを『加速』します。直感に反しますが、これは断熱条件と質量保存則の組み合わせから出てくる結果で、シミュレーターのデフォルト(亜音速で M_1=0.30 → M_2=0.474 と加速)で簡単に確認できます。減速するのは超音速の場合だけです。

次に多いのが、『ダクトを長くすればいくらでも加速できる』と勘違いすることです。ファンノー流れには 4fL*_1/D という上限があり、それを超える長さを取ると流れがチョークして出口で M=1 に固定されます。シミュレーターで L/D スライダーを上げていくと『CHOKED』バッジが出るのが確認できます。実機では事前にこの上限を計算し、安全率 1.3〜2 程度を見込んで設計します。

もう一つ注意したいのが、ダーシー(Darcy)とファニング(Fanning)の摩擦係数の違いです。本ツールの f はダーシー摩擦係数で、ムーディ線図に書かれている値そのままです。ファニング摩擦係数 f_F を使う流儀の教科書では 4f_F = f_D の関係があり、間違えると圧損計算が 4 倍ずれます。論文・教科書を読むときは必ずどちらの定義かを確認してください。