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圧縮性流体シミュレーター

レイリー流れ シミュレーター — 加熱付き圧縮性ダクト流

摩擦なし・加熱(または冷却)付き・一定断面ダクトを流れる圧縮性流れを可視化。入口マッハ、比熱比、加熱量、入口総温度を変えながら、出口マッハ、総温度・静圧比、レイリー線図上の状態点の動きを学べます。

パラメータ設定
入口マッハ数 M_1
比熱比 γ
加熱量 q
kJ/kg
入口総温度 T_0_1
K

完全気体・摩擦無し・1次元・定常を仮定。c_p(空気)= 1.005 kJ/(kg·K) で T_0_2 = T_0_1 + q/c_p を計算します。q が q_max を超えると熱的閉塞となり、出口は M=1 に固定されます。

計算結果
出口マッハ M_2
出口総温度 T_0_2
静圧比 P_2/P_1
追加加熱量限界 q_max
ダクト模式図

左=状態 1(入口)/右=状態 2(出口)/中央の上向き赤矢印=壁面からの加熱/矢印長=速度/温度・圧力の相対値を色で表示

レイリー線図 (T-s)

縦軸=T/T*/横軸=無次元エントロピー (s−s*)/cp/上枝=亜音速、下枝=超音速/青丸=状態 1、赤丸=状態 2/橙線=1→2 の経路

理論・主要公式

レイリー流れは、摩擦無し・加熱(冷却)付き・一定断面ダクトの圧縮性流れの理想モデルです。加熱は流れを必ず M=1 に近づけ、亜音速は加速、超音速は減速します。

マッハ数 M における総温度比(M=1 を基準):

$$\frac{T_0}{T_0^*} = \frac{(\gamma+1)M^2 \,\bigl(2 + (\gamma-1)M^2\bigr)}{(1 + \gamma M^2)^2}$$

静温度比と静圧比は同様に M=1 を基準として:

$$\frac{T}{T^*} = \left(\frac{(\gamma+1)M}{1+\gamma M^2}\right)^2, \qquad \frac{P}{P^*} = \frac{\gamma+1}{1+\gamma M^2}$$

下流の総温度は加熱量 q から:

$$T_{0,2} = T_{0,1} + \frac{q}{c_p}, \qquad \frac{T_{0,2}}{T_0^*} = \frac{T_{0,2}}{T_{0,1}} \cdot \frac{T_{0,1}}{T_0^*}$$

M_2 は T_0_2/T_0* の式を Newton 法で数値的に解いて求めます。q ≥ q_max = c_p (T_0* − T_0_1) になると熱的閉塞となり、出口が M=1 に固定されます。

レイリー流れ シミュレーターとは

🙋
ラムジェットの燃焼室で「これ以上燃料を増やすと流れが詰まる」って聞いたんですけど、これってどういう物理ですか?
🎓
それがレイリー流れだ。摩擦無し・加熱付きの一定断面ダクトを圧縮性流体が流れるとき、加熱は流れを必ず M=1 に近づける。亜音速で入った流れは下流ほど加速し、十分な熱を加えると出口で M=1 になる。これ以上熱を加えても流れは『熱的閉塞』してしまうんだ。デフォルト(M_1=0.30, γ=1.4, q=500 kJ/kg, T_0_1=300 K)で出口は M_2 ≈ 0.72、出口総温度 T_0_2 ≈ 797 K と表示されるはず。
🙋
M_1=0.3 から M_2=0.72 までかなり加速したんですね。q をもっと上げるとどうなりますか?
🎓
右の『追加加熱量限界 q_max』を見てごらん。今は約 568 kJ/kg と出てる。これは『M=1 にチョークさせるまでにあと 68 kJ/kg しか余裕がない』ということだ。q スライダーを上げて 568 を超えると CHOKED バッジが出て、出口が M=1 に張り付く。実機では事前にこの上限を計算して、燃料流量に 1.3〜2 倍の安全余裕を持たせて運用するんだ。
🙋
右の T-s 線図、上下に枝が分かれていますね。M=1 の点はどこにありますか?
🎓
それがレイリー曲線。縦軸が T/T*、横軸が無次元エントロピー。上枝が亜音速、下枝が超音速で、M=1 はちょうど右側のピーク付近にある。加熱は必ずエントロピーを増やすから、流れは曲線上を必ず右(=M=1 の方向)にしか進めない。今は青丸(入口)から橙線で右の赤丸(出口)に進んでいるのが見えるはずだ。
🙋
入口を超音速、たとえば M_1=2.0 にしてみたらどうなりますか?
🎓
スライダーで M_1=2.0 にしてみて。今度は加熱で『減速』して、M_2 が 2.0 から 1 の方向に下がっていく。T-s 線図でも下枝(超音速側)の上を、入口の右上から M=1 に向かって左下に進む。亜音速のときと挙動が真逆に見えるけど、どちらも『M=1 に近づく』という意味では同じ物理だ。これがレイリー流れの一番面白いポイントだよ。

よくある質問

本ツールでは空気を想定し c_p = 1.005 kJ/(kg·K) を固定値で使っています。下流総温度は T_0_2 = T_0_1 + q/c_p で計算します。実際の燃焼室では既燃ガスの c_p は 1.15〜1.25 程度に上がるため、厳密な設計では温度依存性や混合気組成を考慮する必要があります。本ツールは入門的な感度解析と挙動の理解を目的としており、c_p 固定で十分な精度です。
出口で M=1 に達した時点で、それ以上の熱を上流のままで加えることはできません。これが熱的閉塞です。式で書くと q_max = c_p (T_0* − T_0_1) で、これを超える加熱を試みると物理的には『M=1 で詰まり、上流圧力が上がる』『あるいは衝撃波が立つ』など別の解にジャンプします。摩擦のチョーキング(ファンノー流れ)と現象は似ていますが、駆動メカニズムが摩擦か熱かで区別します。
レイリー流れでは静圧比は P/P* = (γ+1)/(1+γM²) なので、M が大きくなると P が下がります。亜音速で加熱すると M_2 > M_1 となるため P_2/P_1 = (1+γM_1²)/(1+γM_2²) < 1 となり、静圧は下がります。デフォルトでは P_2/P_1 ≈ 0.652 と約 35% も低下します。これは燃焼器設計で重要な意味を持ち、燃料噴射圧と燃焼器入口圧の関係を決定します。
ファンノー流れは『断熱+摩擦付き』、レイリー流れは『摩擦無し+熱の出入り付き』のモデルです。どちらも一定断面ダクトの圧縮性流れの理想モデルで、両者とも流れを M=1 に近づける方向に働きますが、エントロピーの増減や T-s 線図の形状が異なります。レイリー流れでは総温度が変化(加熱で増加)するのに対し、ファンノー流れでは総温度が一定です。実際の燃焼室や熱交換器では両方の効果が共存します。

実世界での応用

ラムジェット・スクラムジェットの燃焼室設計:ラムジェット・スクラムジェットでは燃焼室内で燃料を燃やして加熱し、推力を生み出します。燃焼室は概ね一定断面で、レイリー流れの理論が支配的に使えます。q_max を超える燃料を入れると熱的閉塞が起こり、不安定燃焼やフレームアウトに直結するため、燃料流量の上限はレイリー流れの解析で厳密に決められます。スクラムジェットでは超音速燃焼となり、加熱で減速する側を扱います。

アフターバーナー(再熱)付きジェットエンジン:F-15 や F-22 のような戦闘機エンジンに搭載されるアフターバーナーでは、タービン後の排気ガスに燃料を再噴射して加熱します。亜音速で入った流れに大量の熱を加えるため、レイリー流れの観点で熱的閉塞限界が必ず議論されます。短時間の最大推力で限界に近づけ、巡航時は熱を加えないことで燃費とのバランスを取ります。

ガスタービンの燃焼器圧損評価:ガスタービンの燃焼器は厳密には冷却空気が混合し複雑ですが、第一近似としてレイリー流れで圧力損失を評価します。加熱に伴う静圧低下は P_2/P_1 ≈ 0.95〜0.97 程度(マッハ 0.2〜0.3 域)であり、この圧損がエンジン全体のサイクル効率を直接左右するため、設計初期段階で必ず検討されます。

太陽熱受熱管・原子炉冷却管:太陽熱集熱管や原子炉一次冷却系の伝熱管では、熱を流体に与えて温度を上げます。低マッハ域なので非圧縮近似が普通ですが、ガス冷却高温炉(HTGR)のヘリウム冷却ループでは速度がマッハ 0.3 以上になることがあり、レイリー流れでの圧損評価が必要です。とくに事故時の高負荷モードで熱的閉塞リスクを事前評価します。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「加熱すれば流れは必ず加速する」と思い込むことです。亜音速のレイリー流れでは確かに加熱で加速しますが、超音速側では逆に『減速』します。直感に反しますが、これはエネルギー保存と運動量保存の組み合わせから出てくる結果で、シミュレーターで M_1=2.0 に設定して q を増やしてみると簡単に確認できます。両者とも M=1 に近づくという点では物理は統一されています。

次に多いのが、『熱はいくらでも加えられる』と勘違いすることです。レイリー流れには q_max = c_p (T_0* − T_0_1) という上限があり、それを超える熱を加えると熱的閉塞して出口で M=1 に固定されます。シミュレーターで q スライダーを上げていくと『CHOKED』バッジが出るのが確認できます。実機では事前にこの上限を計算し、安全率 1.3〜2 程度を見込んで燃料流量を制限します。

もう一つ注意したいのが、本モデルは『摩擦無し』を仮定している点です。実ダクトでは必ず摩擦が存在するため、レイリー流れだけでは精度不足になることがあります。厳密な設計では摩擦と加熱を同時に扱う一般化レイリー・ファンノー流れ、あるいは数値シミュレーション(CFD)が使われます。本ツールはあくまで支配的効果が加熱の場合の入門教材として活用してください。