排出条件
固定パラメータ
Pasquill安定度 = D(中立)
σy(x) = 0.10 x^0.92
σz(x) = 0.08 x^0.92
地表反射あり(z = 0)
距離スイープ
リセット
理論・主要公式
地表中心濃度(z = 0, 地表反射込み):$$C(x,0,0) = \frac{Q}{\pi\,u\,\sigma_y\,\sigma_z}\exp\!\left(-\frac{H^2}{2\sigma_z^2}\right)$$
Pasquill Dクラスの拡散係数(簡略式、x は m):$$\sigma_y(x)=0.10\,x^{0.92},\qquad \sigma_z(x)=0.08\,x^{0.92}$$
$Q$=排出量 [kg/s], $u$=風速 [m/s], $H$=排気塔有効高さ [m], $\sigma_y,\sigma_z$=横方向・鉛直方向の拡散係数 [m]。地表反射を考慮しているため分母は $2\pi$ ではなく $\pi$ になります。
ガウス・プルームシミュレーターとは
🙋
「ガウス・プルーム」って、煙突からの煙の広がりを計算するモデルですよね? どこにガウス分布が出てくるんですか?
🎓
いいところに気付いたね。煙が風で流れていく断面(横方向y・鉛直方向z)を切ると、汚染物質の濃度がきれいな正規分布になるという仮定がモデルの根っこなんだ。標準偏差にあたるσyとσzが距離xとともに大きくなっていくのが拡散の正体だよ。本ツールでは Pasquill D クラス(中立)の簡略式 σ = a·x^0.92 を使っていて、x=2 km で σy≈109 m, σz≈87.4 m になる。右の側面図で煙の幅が広がっていく様子をぜひ見てみて。
🙋
え、そうなんですか! じゃあ排気塔の高さ H を上げると、地表の濃度はどれくらい下がるんですか?
🎓
これが煙突設計のキモだ。式の中に exp(-H²/(2σz²)) という指数項が出てくる。σz よりも H が大きいと、この指数項が一気に小さくなる。例えば既定値 H=50 m, σz=87.4 m なら H/σz=0.572 で exp(-0.572²/2)≈0.85 くらい。これを H=120 m まで上げると H/σz=1.37 で 0.39 まで落ちる。逆にスライダーで H を 10 m に下げると、地表濃度がドンと跳ね上がるのが見えるはず。
🙋
風速 u を変えるとどうなりますか? 風が強いほうが薄まりそうですよね。
🎓
そう、その直感は正しい! 分母に u が入っているから、風速を倍にすれば濃度はおよそ半分になる。ただし注意点として、u が 1 m/s を切るほど弱い「ほぼ無風」では、このモデルの前提(風で運ばれて広がる)が崩れる。ツールの下限は 0.5 m/s だけど、現実の評価では弱風時に別の式(ピューフモデル等)に切り替えるのが定番だよ。右上の「距離スイープ」ボタンを押すと、観測距離 x を 0.1〜20 km で振って、濃度のピークがどこに現れるか体感できる。
物理モデルと主要な数式
ガウス・プルームモデルは、点源から定常的に排出される汚染物質が風(x方向)に流されながら、y・z方向に正規分布で広がるという仮定に基づきます。地表反射を考慮した中心線上(y=0, z=0)の濃度は $C(x,0,0)=\dfrac{Q}{\pi u\sigma_y\sigma_z}\exp\!\left(-\dfrac{H^2}{2\sigma_z^2}\right)$ となります。本ツールでは Pasquill 安定度 D クラスの簡略式 $\sigma_y(x)=0.10\,x^{0.92}$、$\sigma_z(x)=0.08\,x^{0.92}$ を使用し、Q=10 g/s、u=5 m/s、H=50 m、x=2 km の既定条件で約 56.6 μg/m³ になります。指数項が地表反射まで含むため、分母は $2\pi$ ではなく $\pi$ になっている点に注意してください。
実世界での応用
環境影響評価(EIA): 新規工場・発電所の煙突を設計する際、Pasquill A〜F の安定度クラスごとに地表濃度を計算し、年間 98 パーセンタイル値が規制値を超えないかを確認します。本ツールは D クラスの基準ケースで素早く感度を見るのに役立ちます。
煙突の有効高さ設計: 排出口高さに浮力上昇分(Briggs 式など)を加えた有効高さ H を設計変数として扱います。地表濃度を WHO/環境基準値以下に保ちながら、煙突を必要以上に高くしない最適化が現場の課題です。
緊急時の影響範囲予測: 化学プラント事故等で漏洩が起きた際、ガウス・プルームで素早く風下影響範囲を見積もります。詳細 CFD を回す前のスクリーニングとして使われます。
都市スケールの大気質モニタリング: 道路や発電所等の点源の組み合わせで、年間平均濃度や 1 時間最大濃度を統計的に評価する基盤式として、ガウス・プルームは依然として広く採用されています。
よくある誤解と注意点
第一に、ガウス・プルームは「定常状態かつ時間平均」を前提としています。短時間の突発的な高濃度や、風向が頻繁に変わる状況は再現できません。風向の標準偏差が大きい場合は、ピューフモデルや CFD など別ツールで補完してください。
第二に、本ツールの $\sigma=a\,x^{0.92}$ は Pasquill D クラスの簡略式 です。AERMOD や CALPUFF などの実務コードでは、各クラスごとに係数と関数形が異なる詳細式(Briggs 開地式、ASME 式など)を使うため、絶対値の精度には限界があります。傾向把握・教育用と割り切りましょう。
第三に、地形・建物の影響は無視しています。煙突近くに高い建物があるとダウンウォッシュで地表近くに巻き込まれ、本モデルでは過小評価になります。実機評価では建屋影響補正(GEP 煙突高さ 2.5 倍ルールなど)を別途適用してください。
よくある質問
ガウス・プルームモデルはなぜ「ガウス」と呼ばれるのですか?
煙の断面(y, z 方向)の濃度分布が、確率論で言う正規分布(ガウス分布)と同じ釣鐘型になると仮定するためです。標準偏差にあたる σy・σz が風下距離 x の増加とともに大きくなることで、煙が薄まりながら広がる過程を表現します。
なぜ既定値の風速は 5 m/s なのですか?
5 m/s は中緯度の年間平均風速としてよく使われる代表値で、Pasquill D(中立)クラスの典型条件にも合致します。実評価では地点ごとの気象台データ(ウィンドローズ)から、安定度クラスごとの出現頻度に重みづけして使うのが一般的です。
中心軸からずれた地点 (y≠0) の濃度はどうなりますか?
y 方向に正規分布で減衰します。中心からの距離 y において、濃度は exp(-y²/(2σy²)) 倍されるため、y = σy ≈ 109 m 離れただけで約 0.61 倍に下がります。本ツールは中心線 (y=0) のみを表示しますが、3D 拡散の理解にはこの y 方向減衰も重要です。
最大地表濃度はどの距離で発生しますか?
理論的には σz = H/√2 となる距離で地表中心濃度が最大になります。本ツールの既定値 H=50 m, D クラスでは σz ≈ 35 m となる距離(約 0.6 km)付近にピークが現れます。右下グラフのカーブで、ピーク位置がどう移動するか確認してみてください。