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振動工学

半値幅法による減衰比測定シミュレーター

1自由度振動系の周波数応答関数(FRF)から、減衰比 ζ を「共振ピークの幅」で測定する半値幅法(3dB法)を体験するツールです。固有振動数・減衰比・質量・加振力を変えると、共振ピークの形、半値点 f₁・f₂、品質係数 Q、半値幅 Δf がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
固有振動数 fₙ
Hz
共振ピークが現れる周波数
減衰比 ζ
この値を半値幅法で再現します
質量 m
kg
系の等価質量。剛性 k と静たわみに影響
加振力振幅 F
N
周波数掃引で与える正弦加振力の振幅
計算結果
品質係数 Q
半値幅 Δf (Hz)
下側半値点 f₁ (Hz)
上側半値点 f₂ (Hz)
測定減衰比 ζ
共振増幅率
共振ピークと半値幅 — 周波数掃引アニメーション

FRF振幅曲線の共振ピークと、ピーク÷√2 の半値レベル(破線)を表示。曲線が破線と交わる f₁・f₂ をマークし、その間の半値幅 Δf を網掛けします。マーカーが周波数軸を掃引します。

周波数応答関数(FRF)
半値幅 Δf vs 減衰比 ζ
理論・主要公式

$$H(r)=\frac{1}{\sqrt{(1-r^2)^2+(2\zeta r)^2}},\qquad Q=\frac{1}{2\zeta}$$

無次元振幅 H(静たわみで正規化した変位)と品質係数 Q。r = f/fₙ は周波数比、ζ は減衰比。共振ピークの高さは軽減衰で Q にほぼ等しい。

$$\zeta=\frac{f_2-f_1}{f_2+f_1}\approx\frac{\Delta f}{2 f_n}$$

半値幅法による減衰比。f₁・f₂ は共振の左右でFRF振幅がピーク÷√2(−3 dB)まで落ちる半値点であり、Δf = f₂−f₁ が半値幅。

$$r_1=\sqrt{1-2\zeta},\qquad r_2=\sqrt{1+2\zeta},\qquad k=m\,(2\pi f_n)^2$$

半値点の周波数比 r₁・r₂(f₁=fₙ·r₁、f₂=fₙ·r₂)と系の剛性 k。m は質量、静たわみは x_st = F/k。

半値幅法とは

🙋
「半値幅法で減衰を測る」ってよく聞くんですけど、そもそも減衰比って、振動が止まりやすいかどうかの値ですよね?それを「幅」で測るって、どういうことですか?
🎓
いい質問だね。減衰比 ζ は「振動がどれだけ早く収まるか」を表す無次元数で、これが小さいほど振動が長く尾を引く。半値幅法のキモは、減衰の大きさが「共振ピークの鋭さ」に直結する、という事実なんだ。構造を周波数を少しずつ変えながら揺すって、応答の大きさをプロットすると、固有振動数 fₙ のところに山ができる。減衰が小さいとこの山は細く高く、減衰が大きいとなだらかで低い。だから山の「幅」を測れば、逆に減衰が分かるというわけ。
🙋
なるほど、山の幅ですか。でも幅ってどこからどこまで測るんですか?山のすそは応答ゼロまでずっと続いてますよね。
🎓
そこがこの方法の決め手なんだ。すそまで測るんじゃなくて、「ピークの 1/√2 の高さ」のところで幅を測る。ピーク値を √2 で割った高さに水平線を引くと、山の左右でその線と2回交わる。その2つの周波数を f₁・f₂ と呼んで、差 Δf = f₂−f₁ が「半値幅」だ。このツールの上のキャンバスで、破線が半値レベル、その上に乗っている赤と緑の点が f₁・f₂、網掛けが Δf だよ。減衰比を上げてみると、山が太って Δf が広がるのが見える。
🙋
なんで 1/√2 なんですか?半分なら 1/2 の高さでよさそうなのに、中途半端な数字に見えます。
🎓
「半値」というのは振幅じゃなくて「パワーが半分」という意味なんだ。振動のエネルギーやパワーは振幅の2乗に比例する。だから振幅がピークの 1/√2 倍のとき、その2乗、つまりパワーはちょうど (1/√2)² = 1/2 になる。これをデシベルで言うと 10·log₁₀(0.5) ≈ −3 dB。だから半値幅法は「3 dB法」「半パワー帯域幅法」とも呼ばれる。電気回路のフィルタの帯域幅と全く同じ考え方だよ。
🙋
f₁ と f₂ が分かったら、そこから減衰比はどう出すんですか?
🎓
これがまた美しくて、ζ = (f₂−f₁)/(f₂+f₁) という、ただの引き算と足し算で出る。軽減衰なら f₂+f₁ ≈ 2fₙ だから、ζ ≈ Δf/(2fₙ) と覚えてもいい。このツールでデフォルト値(fₙ=50 Hz、ζ=0.030)を見ると、f₁≈48.48 Hz、f₂≈51.48 Hz、Δf≈3.00 Hz。Δf/(2fₙ) = 3.00/100 = 0.030 で、ちゃんと入力した ζ に戻る。FRFという「見えるデータ」から減衰という「見えない物性」を引き出せる、これが半値幅法の値打ちなんだ。
🙋
便利そうですけど、これっていつでも使えるんですか?万能なら他の方法はいらない気もします。
🎓
残念ながら万能じゃない。半値幅法が得意なのは「減衰が小さく、モードがきれいに離れている」場合だ。減衰が大きい(ζ が 0.1 を超えるあたり)と、ピークがなだらかになって半値点があいまいになるし、近似式の誤差も増える。もっと厄介なのは、隣のモードのピークと裾が重なるケース。片方の山のすそがもう片方の半値線に乗ってきて、f₁・f₂ が正しく読めなくなる。そういうときは円適合や有理多項式適合といった、より高度なカーブフィット法を使う。時間領域の対数減衰率法と組み合わせて、両方で確認するのが実務では安心だよ。

よくある質問

半値幅法は、1自由度振動系の周波数応答関数(FRF)に現れる共振ピークの「幅」から減衰比を求める周波数領域の測定法です。構造を周波数を変えながら加振し、共振ピークの応答振幅を測定したうえで、応答がピーク値の 1/√2(−3 dB)まで落ちる左右2つの周波数 f₁・f₂ を読み取ります。減衰比は ζ = (f₂−f₁)/(f₂+f₁) ≈ Δf/(2·fₙ) で直接求まります。共振が鋭いほど Δf は狭く、減衰が小さいことを意味します。
1/√2(≈0.707)はパワーがちょうど半分になる点だからです。振動のエネルギー・パワーは振幅の2乗に比例するため、振幅がピークの 1/√2 倍のとき、パワーはピークの (1/√2)² = 1/2 になります。これがデシベルでは 10·log₁₀(0.5) ≈ −3 dB に相当し、「半値幅」「3 dB帯域幅」「半パワー帯域幅」という呼び名はすべて同じ点を指しています。
半値幅法は周波数領域、対数減衰率法は時間領域の減衰測定法で、互いに補完関係にあります。対数減衰率法は自由振動の振幅が1周期ごとに減る割合から ζ を求めるため、衝撃試験のように1点を叩いて応答を録るだけで済み手軽です。一方、半値幅法は周波数掃引(スイープ加振)やインパルス加振後のFFTでFRFを得る必要がありますが、複数のモードを同時に扱え、モーダル解析の標準手順として広く使われます。鋭い単一モードならどちらでも一致しますが、モードが密集する構造では半値幅法、ノイズが多い現場では対数減衰率法が選ばれます。
半値幅法は減衰が小さく、モードが十分に離れている場合に高い精度を発揮します。逆に、減衰が大きい(ζ が 0.1 を超える)と r₁=√(1−2ζ)、r₂=√(1+2ζ) の近似が崩れ、ピーク自体がなだらかになって半値点が読みにくくなります。また、隣り合うモードのピークが重なると、片方の裾がもう一方の半値レベルに干渉して f₁・f₂ を正しく読めません。さらに、周波数分解能が粗いと狭い Δf を数本のスペクトル線でしか捉えられず誤差が大きくなります。これらの場合はカーブフィット法(円適合・有理多項式適合)など、より高度なモーダルパラメータ推定法を用います。

実世界での応用

モーダル解析(実験モード解析):半値幅法は実験モード解析の最も基本的な減衰推定手段です。インパクトハンマや加振器で構造を励起し、加速度センサで応答を測ってFRFを得たあと、各共振ピークに半値幅法を適用して固有振動数・減衰比・モード形状の三点セットを抽出します。橋梁・建築構造・航空機翼・自動車ボデーなど、ほぼすべての構造物の動特性評価で、まず最初に当たりをつける手段として使われます。

機械の異常診断・状態監視:回転機械やプラント設備では、ボルトのゆるみ・亀裂・支持剛性の変化が共振ピークの形を変えます。定期的にFRFを取得して半値幅から減衰比を追跡すると、減衰の急変や Δf の広がりが構造劣化の早期サインとして検出できます。減衰の変化は固有振動数のずれより敏感に出ることが多く、予知保全のパラメータとして重宝されます。

制振設計・防振設計の検証:制振材・ダイナミックダンパ・防振ゴムを追加したとき、設計どおりに減衰が増えたかを半値幅法で確認します。対策前後でFRFを取り、共振ピークが低くなり Δf が広がっていれば制振が効いている証拠です。逆にピークがほとんど変わらなければ、ダンパの取り付け位置やチューニング周波数の見直しが必要だと分かります。

音響・電気系との共通言語:半値幅(3 dB帯域幅)の考え方は機械振動に限りません。スピーカやマイクの共振、RLC回路のフィルタ、レーザ共振器の品質係数 Q など、共振を扱うあらゆる分野で同じ定義が使われます。機械系で身につけた半値幅法は、そのまま音響工学や電子回路の Q 値の理解に直結します。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「ピークの 1/2 の高さで幅を測ってしまう」誤りです。半値幅の「半値」はパワーが半分という意味であり、振幅で見れば 1/√2 ≈ 0.707 倍の高さです。うっかり 1/2(=0.5倍)の高さで f₁・f₂ を読むと帯域幅が広く出て、減衰比を実際より大きく見積もってしまいます。FRFを振幅で表示しているのか、パワー(振幅2乗)やデシベルで表示しているのかを必ず確認し、振幅表示なら 0.707×ピーク、dB表示ならピークから −3 dB の点を読むこと。これが半値幅法で最初につまずくポイントです。

次に、「周波数分解能を考えずに狭いピークを測る」こと。減衰が小さい構造の共振ピークは非常に鋭く、半値幅 Δf がわずか数 Hz ということも珍しくありません。FFTの周波数分解能 Δf_FFT がこれと同じオーダーだと、ピークをたった2〜3本のスペクトル線でしか捉えられず、半値点の読み取り誤差が桁違いに大きくなります。経験則として、半値幅の中に最低でも5〜10本のスペクトル線が入るよう、測定時間を長くして分解能を細かくする必要があります。粗い分解能のまま得た減衰比は、しばしば真値の数倍に化けます。

最後に、「どんな構造にも半値幅法をそのまま適用できる」と思い込むこと。半値幅法は1自由度系の鋭い単一共振を前提とした近似法です。減衰が大きい(ζ が 0.1 を超える)場合はピークがなだらかになり半値点があいまいになるうえ、r₁=√(1−2ζ)、r₂=√(1+2ζ) の近似誤差も無視できなくなります。また、隣り合うモードの間隔が狭く、ピークの裾が重なる構造では、片方の応答がもう片方の半値レベルに干渉して f₁・f₂ を正しく読めません。こうした場合は、円適合(ナイキスト円フィット)や有理多項式によるカーブフィット法を用い、半値幅法はあくまで初期推定値の手段と位置づけるのが正しい使い方です。

使い方ガイド

  1. 共振周波数fnと減衰比ζを入力し、質量m(kg)と加力F(N)の値を設定します
  2. シミュレーションを実行すると、周波数応答関数(FRF)のボードプロット上に共振ピークが表示されます
  3. ピークの-3dB点(半値点)における下側周波数f₁と上側周波数f₂を読み取り、半値幅Δf=f₂-f₁から減衰比ζ=Δf/(2fn)を計算します
  4. リアルタイムで品質係数Q=fn/Δf、共振増幅率MR=Q/√(1-ζ²)を確認し、測定精度を評価します

具体的な計算例

鋼製パネルの振動試験:fn=50Hz、ζ=0.05(5%減衰)、m=2kg、F=10Nの条件で、FRF計測を実施した場合、半値幅法によりf₁=48.75Hz、f₂=51.25Hzが検出され、Δf=2.5Hz、測定ζ=0.05、Q=20、共振増幅率MR=20.1が得られます。この値は機械構造物の標準的な減衰特性に合致し、非減衰共振では理論値51.5Hzから共振ピークが低下することを確認できます。

実務での注意点

  1. fn<10Hzの低周波領域では計測ノイズの影響が増大するため、加力Fを増加させて信号/ノイズ比を改善し、半値点検出精度を確保してください
  2. 減衰比ζ>0.1(10%以上)の高減衰系では半値幅が広がり、隣接共振との干渉が発生しやすいため、単一自由度系の仮定が破綻する可能性があります
  3. 計測点の密度が粗い場合、f₁とf₂の補間誤差で測定ζの精度が±0.01程度低下するため、周波数分解能Δf/fn<0.02を目安に設定してください
  4. アルミニウム(Q=40以上)と鋳鉄(Q=15~25)では品質係数が大きく異なるため、材質別の標準値と比較して異常判定を行います