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振動工学

加速度センサの周波数応答シミュレーター

加速度センサ(加速度計)は、それ自体が微小なばね・質量・ダンパ系です。固有振動数・減衰比・測定対象の周波数を変えると、応答倍率(指示値÷真値)・測定誤差・使用可能な上限周波数がリアルタイムで分かり、共振より十分低い「平坦帯域」でだけ正確に測れる理由を体験できます。

パラメータ設定
センサの固有振動数 fₙ
Hz
センサ内部のばね・質量系が共振する周波数
減衰比 ζ
ζ ≈ 0.7 で応答が最も平坦になる
測定対象の振動周波数 f
Hz
いま測ろうとしている振動の周波数
真の加速度 a
m/s²
対象が実際に受けている加速度の振幅
計算結果
周波数比 r
応答倍率(指示/真値)
測定誤差 (%)
使用可能上限周波数 (Hz)
共振での増幅 (倍)
測定の判定
周波数応答曲線 — 測定周波数の掃引アニメーション

センサの応答倍率(指示値÷真値)を周波数に対して描画。低周波の平坦帯域、固有振動数での共振ピーク、その上のロールオフを表示し、誤差5%以内の使用可能帯域を網掛けします。左上の小図はセンサ内部の地震質量・ばねです。

周波数応答(FRF)— 応答倍率 vs 周波数
測定誤差 vs 周波数比 r
理論・主要公式

$$\frac{a_{indicated}}{a_{true}}=\frac{1}{\sqrt{(1-r^2)^2+(2\zeta r)^2}},\qquad r=\frac{f}{f_n}$$

加速度センサの応答倍率(指示値÷真の加速度)。r は測定周波数 f とセンサの固有振動数 fₙ の比、ζ は減衰比。センサが正確なのは r が 1 よりずっと小さい平坦帯域だけで、ζ ≈ 0.7 のとき平坦帯域が最も広くなる。

$$\text{measError}=(\text{response}-1)\times100\ [\%],\qquad a_{indicated}=\text{response}\cdot a_{true}$$

測定誤差と指示加速度。誤差が正なら過大読み取り、負なら過小読み取り。response が 1 に近いほど指示値は真値に一致する。

$$\text{response}_{r=1}=\frac{1}{2\zeta\sqrt{1-\zeta^2}}$$

共振(r = 1)での応答倍率=増幅率。減衰比 ζ が小さいほど大きく跳ね上がり、軽減衰のセンサでは10倍以上にもなる。

加速度センサの周波数応答とは

🙋
加速度センサって、振動を貼り付けるだけで加速度をそのまま測ってくれる便利な部品ですよね。なのに「周波数応答」なんて気にする必要があるんですか?
🎓
ざっくり言うと、加速度センサは「瞬時に正しい値を出す完璧なセンサ」じゃないんだ。中をのぞくと、小さな「地震質量」がばねでぶら下がっている。ケースが揺れると、その質量がどれだけ遅れて動くかを見て加速度を逆算している。つまりセンサ自身がばね・質量系で、固有振動数を持つんだよ。だから「どの周波数を測るか」で正確さが変わってくる。
🙋
え、センサ自体が振動する系なんですか。じゃあ、いつ正確に測れて、いつズレるんですか?
🎓
カギは、測りたい振動の周波数が、センサの固有振動数に対してどこにあるか。固有振動数よりずっと低い周波数なら、地震質量はケースと一緒に素直に動いて、出力は真の加速度のほぼ一定倍になる。これが「平坦帯域」で、ここなら正確だ。上のグラフでデフォルト(fₙ=30000 Hz、f=1000 Hz)を見ると、周波数比 r が 0.0333 しかなく、応答倍率は 1.0022 ── 誤差わずか 0.22% で測れている。
🙋
逆に、測りたい周波数を上げていくとどうなるんですか?
🎓
測定周波数を固有振動数に近づけると、応答倍率がぐーんと跳ね上がる。これが共振だ。デフォルトの軽減衰(ζ=0.05)だと、共振点でちょうど10倍。つまりセンサは真の加速度の10倍を「指示」してしまう。さらに固有振動数を超えると、今度は地震質量がケースに追いつけなくなって応答が落ち、過小に読む。だから測定周波数 f をスライダーで上げていくと、誤差が一気に大きくなるのが見えるよ。
🙋
じゃあ、安全に使える上限ってどのくらいなんですか?
🎓
実用ルールはシンプルだ。減衰の小さいセンサだと、信頼できる帯域は固有振動数のだいたい1/5まで。デフォルトなら 30000 Hz の約1/5、6500 Hz くらいが「振幅誤差5%」の上限になる。だから測りたい最高周波数より、ずっと高い固有振動数を持つセンサを選ぶのが鉄則。例えば 5 kHz の機械振動を測るなら、固有振動数 25 kHz 以上のセンサを使う、という選び方をするんだ。
🙋
固有振動数の高いセンサを選ぶ以外に、帯域を広げる手はないんですか?
🎓
あるよ。減衰比を意図的に上げることだ。減衰比 ζ を 0.7 付近(正確には 1/√2)にすると、共振直前の跳ね上がりがほぼ消えて、応答が広い周波数まで平坦になる。スライダーで ζ を 0.05 から 0.7 へ動かしてみると、使用可能上限が固有振動数の1/5程度から半分近くまで延びるのが分かる。圧電式は内部減衰が小さくて軽減衰だけど、サーボ式やMEMS式では電気的に減衰を調整して、広帯域で平坦な応答を狙う設計が多いんだ。

よくある質問

加速度センサの内部には、ばねで支えられた小さな「地震質量(シスミックマス/検出質量)」があり、ケースが揺れたときにその質量がどれだけ遅れて動くかから加速度を逆算しています。つまりセンサ自体が固有振動数を持つばね・質量系です。測定したい振動の周波数がセンサの固有振動数より十分低ければ応答は平坦で正確ですが、固有振動数に近づくと応答が共振で跳ね上がり、超えると追従できず減衰します。このため、平坦で信頼できる帯域には必ず上限が存在します。
加速度センサの応答倍率は、地震計型計器の伝達関数から response = 1 / √((1−r²)² + (2ζr)²) で求めます。r = f/fₙ は測定周波数 f とセンサの固有振動数 fₙ の比、ζ は減衰比です。r が 1 よりずっと小さい平坦帯域では response ≈ 1 となり、指示値は真の加速度にほぼ等しくなります。r が 1 に近づくと共振でピークを取り、r > 1 では 1 を下回ります。測定誤差は (response − 1)×100 [%] で、正なら過大読み取りを意味します。
減衰比 ζ が 0.05 程度の軽減衰センサでは、応答倍率 response = 1/√((1−r²)²+(2ζr)²) が周波数比 r とともに単調に増加し、|response−1| が 5% に達するのは r ≈ 0.22 付近です。つまり固有振動数のおよそ1/5までしか「振幅誤差5%以内」を保てません。だから測定したい最高周波数より十分高い固有振動数を持つセンサを選ぶ必要があります。逆に減衰比を ζ ≈ 0.7 に意図的に高めると、応答が広い帯域で平坦になり、使用可能上限を固有振動数の半分近くまで延ばせます。
減衰比 ζ ≈ 0.7(正確には 1/√2 ≈ 0.707)は、加速度センサの周波数応答を最も平坦にする値です。軽減衰のセンサは共振直前で応答が跳ね上がりますが、ζ を 0.7 付近まで高めると共振ピークがほぼ消え、応答倍率が 1 に近い状態を高い周波数まで維持できます。その結果、誤差5%以内の使用可能上限が固有振動数の1/5程度から半分近くまで広がります。圧電式センサは内部減衰が小さく軽減衰ですが、サーボ式やMEMS式では電気的・機械的に減衰を調整し、広帯域で平坦な応答を狙う設計が行われます。

実世界での応用

機械振動の計測と振動試験:モータ・ポンプ・ギヤボックスの振動計測では、回転数の数次までの周波数成分を正確に捉える必要があります。例えば 10000 rpm のモータの歯車かみ合い周波数が数 kHz に及ぶ場合、その周波数がセンサの平坦帯域に収まっているか必ず確認します。固有振動数の高い小型の圧電式センサを選び、測定対象の最高周波数がセンサ固有振動数の1/5以下になるように機種選定するのが基本です。

衝撃・落下試験:製品の落下衝撃や自動車の衝突試験では、ごく短時間に非常に高い周波数成分を含む加速度パルスが発生します。衝撃信号は数 kHz~数十 kHz の成分を含むため、固有振動数が低いセンサだと共振が励起され、本来より大きなピーク加速度を記録してしまいます。衝撃計測では固有振動数の高い専用センサを使い、必要に応じて機械的フィルタや低域通過フィルタで共振成分を除去します。

モーダル解析・構造ヘルスモニタリング:橋梁・建物・航空機の構造物を加振してFRFを取得する実験モード解析では、加速度センサ自身の周波数応答が平坦であることが前提です。センサの共振が測定帯域に入っていると、構造の固有振動数とセンサの共振が混同され、誤ったモードパラメータを抽出してしまいます。測定前にセンサの周波数特性表を確認し、対象の最高モード周波数が平坦帯域内にあることを保証します。

センサの校正と機種選定:加速度センサのデータシートには「周波数応答(±5%、±10%)」や「共振周波数」が必ず記載されています。本ツールが示す応答倍率・使用可能上限は、まさにその仕様の意味を可視化したものです。新しい測定を計画するとき、測定したい周波数範囲と要求精度から逆算して、どの固有振動数・減衰比のセンサを選ぶべきかを事前に検討する道具として使えます。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「加速度センサは貼れば何 Hz でも正しく測れる」という思い込みです。加速度センサはそれ自体がばね・質量系であり、固有振動数を持ちます。測定周波数が固有振動数に近づくほど応答倍率は 1 から外れ、共振点では軽減衰センサで10倍以上に跳ね上がります。データシートの「使用可能周波数範囲」は、まさにこの誤差が許容範囲に収まる帯域を示したものです。仕様を読まずに高周波振動を測ると、共振で過大に増幅された値を真値だと信じてしまう危険があります。

次に、「共振周波数まで使える」と誤解すること。共振周波数はセンサが最も誤差を出す周波数であり、使える上限ではありません。軽減衰のセンサで「振幅誤差5%以内」を保てるのは、せいぜい固有振動数の1/5程度までです。データシートに「共振周波数 30 kHz」と書いてあっても、実用上限はその1/5の 6 kHz 前後だと考えるべきです。共振周波数と使用可能上限を混同すると、測定帯域を5倍も過大評価してしまいます。

最後に、「減衰比は固定で変えられない」と思い込むこと。確かに圧電式センサは内部減衰が小さく軽減衰ですが、サーボ(フォースバランス)式やMEMS式では、電気的・機械的に減衰を設計できます。減衰比を ζ ≈ 0.7 に近づけると共振ピークが消え、応答が広帯域で平坦になり、使用可能上限が大きく延びます。一方、減衰を上げすぎると今度は低周波側で位相遅れや応答低下が出るため、用途に応じた最適点が存在します。「センサは選ぶだけ」ではなく、減衰特性まで含めて測定系を設計する視点が重要です。

使い方ガイド

  1. 固有振動数(naturalFreqNum)を1~50Hzの範囲で設定。加速度センサのシステム周波数特性を決定します
  2. 減衰比(dampingNum)を0.1~1.0で入力。0.7未満では共振ピークが顕著に、0.7以上では平坦化します
  3. 測定対象の加速度周波数(measFreqNum)と真値(trueAccelNum)を入力し、シミュレーション実行ボタンをクリック
  4. 応答倍率・測定誤差・使用可能上限周波数がリアルタイム計算され、センサの信頼性判定結果が表示されます

具体的な計算例

固有振動数20Hz・減衰比0.65のICP加速度センサで、測定周波数5Hzの振動加速度3.5m/s²を計測した場合:周波数比r=0.25、応答倍率1.08倍、測定誤差+2.1%、共振での増幅3.2倍。使用可能上限周波数は14Hz(固有振動数の70%以下が目安)となり、低周波振動計測に適しています。一方、測定周波数15Hzの同センサでは周波数比0.75、応答倍率1.45倍で測定誤差+12.8%に拡大し、この周波数帯での使用は要注意です。

実務での注意点

  1. 固有振動数の3倍以上の周波数測定は避ける。例:fn=10Hzセンサで30Hz以上の加速度計測は誤差が急激に増大します
  2. 減衰比0.7(臨界減衰の70%)付近でフラット周波数特性が得られ、±5%精度の実用帯域が最大化されます
  3. 共振周波数での応答倍率が2倍を超える場合、センサの固有振動で共振誤差が発生。機械的に隔離マウント(ゴムスタッド等)で対策してください
  4. 温度変化でセンサの固有振動数が±3%程度変動するため、較正時と測定時の環境条件を記録しておきます