熱交換器 ε-NTU 法シミュレーター 戻る
熱工学シミュレーター

熱交換器 ε-NTU 法シミュレーター — 対向流・並流・クロスフロー

熱容量流量 C_h, C_c と UA、入口温度差 ΔT から NTU と効率 ε を計算。対向流・並流・クロスフロー(両流体非混合)の ε を比較できます。

パラメータ設定
高温流体熱容量 C_h (W/K)
W/K
低温流体熱容量 C_c (W/K)
W/K
全熱伝達 UA (W/K)
W/K
入口温度差 T_h_in − T_c_in (K)
K

C_h・C_c は質量流量×比熱(m·cp)に相当する熱容量流量です。

計算結果
NTU = UA/C_min
対向流効率 ε_counter (%)
並流効率 ε_parallel (%)
対向流交換熱量 Q (kW)
ε-NTU 曲線(対向流)と ε バー比較

上半:対向流 ε vs NTU 曲線群(C_r = 0, 0.25, 0.5, 0.75, 1.0)、赤丸が現在点/下半:並流・対向流・クロスフロー無混合の ε 比較

理論・主要公式

ε-NTU 法では、まず熱容量流量比 C_r と無次元伝熱単位数 NTU を定義します。

$$C_\min = \min(C_h, C_c),\quad C_r = \frac{C_\min}{C_\max},\quad \mathrm{NTU} = \frac{UA}{C_\min}$$

対向流の効率(C_r < 1 の場合、C_r = 1 の極限は ε = NTU/(1+NTU)):

$$\varepsilon_\text{counter} = \frac{1 - e^{-\mathrm{NTU}(1-C_r)}}{1 - C_r\,e^{-\mathrm{NTU}(1-C_r)}}$$

並流の効率:

$$\varepsilon_\text{parallel} = \frac{1 - e^{-\mathrm{NTU}(1+C_r)}}{1+C_r}$$

クロスフロー(両流体非混合・近似式):

$$\varepsilon_\text{cross} \approx 1 - \exp\!\left[\tfrac{1}{C_r}\,\mathrm{NTU}^{0.22}\!\left(e^{-C_r\,\mathrm{NTU}^{0.78}} - 1\right)\right]$$

交換熱量と出口温度:

$$Q = \varepsilon\,C_\min\,(T_{h,\text{in}}-T_{c,\text{in}}),\quad T_{h,\text{out}} = T_{h,\text{in}} - \frac{Q}{C_h},\quad T_{c,\text{out}} = T_{c,\text{in}} + \frac{Q}{C_c}$$

熱交換器 ε-NTU 法シミュレーターとは

🙋
熱交換器の設計って LMTD(対数平均温度差)で習ったんですけど、ε-NTU 法って何が違うんですか?
🎓
どちらも同じ物理を別の角度から見ているだけだよ。LMTD 法は「両端の温度が全部わかっているときに必要な UA を逆算する」のが得意。一方 ε-NTU 法は「UA と入口温度はわかっているけど出口温度はまだ知らない」というときに、繰り返し計算なしに一発で効率と Q が求まる。シミュレーターの左パネルで C_h, C_c, UA, ΔT を入れるだけで右に ε と Q が出るのは、まさに ε-NTU 法の良さなんだ。
🙋
既定値だと対向流の効率が約 77.5%、並流が 63.4% って出ました。同じ UA なのに 14 ポイントも違うんですね。
🎓
そう、ここが対向流と並流の決定的な差だ。並流は入口で温度差が一番大きく、出口に向けてだんだん詰まっていく。両方の温度差が「同じ向きで近づく」ので、理論上どんなに UA を大きくしても、両流体の出口温度が一致した点(中間温度)以上には熱を運べない。対向流なら、片方の入口がもう片方の出口に対向するから、温度差が流路全体で比較的均一に保たれて、効率が高くなるんだ。
🙋
C_r を変えるとグラフの曲線群が変わりますね。C_r = 0 がいちばん上にある。
🎓
C_r = 0 は片側の熱容量流量が無限大、つまり凝縮や蒸発みたいに温度がほぼ変わらない側があるケースだ。このとき対向流・並流・クロスフローの ε は全部同じ ε = 1 − exp(−NTU) になる。逆に C_r = 1 は両側が同じ C で、対向流ですら ε = NTU/(1+NTU) で頭打ちになる。実機の蒸発器・凝縮器が「効率が良く見える」のはこの理由なんだよ。
🙋
クロスフロー(両流体非混合)のバーが対向流より少し低いんですね。実機で多いのはどれですか?
🎓
プレート式や小型のシェル&チューブは対向流に近い配置で組まれる。空調用のフィン付きコイルや自動車のラジエータは構造上クロスフローになる。同じ UA なら対向流が有利だけど、現実には流路の取り回しや圧損、コストとの兼ね合いで形式が決まる。設計初期にこのツールで「どの配置なら必要効率に届くか」を当たりつけて、それから詳細設計に進むのが現場的な使い方だね。

よくある質問

出口温度が未知で、伝熱面積 UA と入口条件から交換熱量や出口温度を求めたいときは ε-NTU 法が便利です。逆に既知の入口・出口温度から必要な UA を逆算する設計段階では LMTD 法が直感的です。両者は等価で、目的に応じて選びます。
対向流は流路全体で温度差が比較的均等に保たれるため、同じ UA でも高い効率が得られます。並流は入口側で温度差が大きく出口に向けて急減するため、特に C_r が 1 に近いケースで対向流より効率が下がります。設計指針として、効率を稼ぎたいシェル&チューブやプレート式では対向流配置が好まれます。
熱容量流量比 C_r は、熱容量の小さい側がどれだけ温度変化しやすいかを表します。C_r = 0 は片側の温度がほぼ一定(凝縮・蒸発など相変化)の極限で、対向流・並流・クロスフロー全てで ε = 1 − exp(−NTU) と同じになります。C_r = 1 は両側が同じ C で、対向流の効率は ε = NTU/(1+NTU) という別形になります。
1パスシェル・複数パスチューブの簡易検討であれば、対向流に近いと仮定して ε-NTU 曲線で概算できます。厳密にはシェル&チューブ用の F補正係数や別の ε(NTU, C_r) 関数が必要ですが、設計初期にどの程度の UA で必要効率に届くかの当たりをつける用途には十分です。最終設計では TEMA 規格や専用ソフトで検証します。

LMTD 法との比較

LMTD 法では、対数平均温度差 ΔT_lm を計算し、Q = UA · ΔT_lm として交換熱量を求めます。出口温度が既知ならこれは直接的で簡単ですが、未知の場合は ΔT_lm に出口温度が含まれるため、反復計算が必要になります。ε-NTU 法は無次元化された ε(NTU, C_r) を使うことでこの反復を回避でき、表計算やシミュレーター上で1ステップで結果が得られます。両者は完全に等価な手法で、対向流・並流・クロスフローのいずれでも、ε と LMTD の F補正係数を介して相互変換できます。

設計指針と注意点

初期検討の指針として、NTU が 1.0 を下回ると効率は概ね 60% 未満にとどまります。一方 NTU が 4 を超えても効率は 0.95 以上で頭打ちになり、UA を増やすコストに対して得られる効率向上が急減します。シミュレーターで UA を変化させながら効率カードを見ると、NTU = 2〜3 あたりで「コスト効率」の良い設計領域が見えてきます。実機ではこの領域を狙いつつ、流量の変動やファウリング(汚れ)による UA 低下を 10〜20% 程度見込んでマージンを取るのが一般的です。

クロスフローの近似式は両流体が「非混合」、つまり流路が細かく仕切られて流れに直交する方向の温度ムラを許容するケース向けです。両流体が「混合」される場合や、片方だけ混合される場合には別の ε 関数を使う必要があります。実機ではフィン付きコイル(非混合)と空気側がダクトで一体化されたタイプ(混合)で計算式が変わるため、メーカー提供のチャートや設計マニュアルで形式を確認してください。

実世界での応用

シェル&チューブ熱交換器:化学プラント・発電所・石油精製で最も広く使われる形式。1シェル2パスや2シェル4パスの構成では純粋な対向流にならないため、F補正係数で対向流の ε から減じて評価します。設計初期にはこのシミュレーターで対向流仮定の効率を求め、F ≈ 0.8〜0.95 を掛けて当たりをつけます。

プレート式熱交換器:食品・乳業・冷凍空調で普及。薄い金属プレートを多数積層することで小型でも高い UA を得られ、対向流に近い配置が実現できます。本ツールの ε-NTU 計算結果を、ほぼそのまま設計目安として使えます。

自動車ラジエータ・空調コイル:水と空気を直交させるクロスフロー(両流体非混合)構造。本ツールのクロスフロー近似式が直接適用でき、UA を増やしたときの効率向上の頭打ちや、空気側流量を増やしたときの C_r の変化を直感的に把握できます。

凝縮器・蒸発器:片側で相変化が起こるため C_r ≈ 0 の極限ケース。ε = 1 − exp(−NTU) となり、対向流・並流・クロスフローの区別が消えます。本シミュレーターで C_h(または C_c)を最大値に近づけると、3配置の ε バーが揃っていく様子が確認できます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「UA を大きくすればいくらでも熱を運べる」と考えてしまうことです。ε-NTU 法が示すように、効率には C_r で決まる上限があります。並流の場合、特に C_r = 1 では理論上の上限が ε = 0.5、つまり最大で利用可能熱の半分しか取り出せません。シミュレーターで C_h = C_c に設定し UA を最大まで上げてみると、並流の ε バーが 50% で頭打ちになるのが分かります。「UA を倍にすれば効率も倍」ではなく、「Q が頭打ちになる温度差が物理的に存在する」のがポイントです。

次に、C_min と C_max の取り違え。NTU の分母は必ず C_min(小さい方)、Q の式でも ε に掛けるのは C_min です。C_max を使うと NTU が小さく、ε も誤って小さく見積もられます。シミュレーターは内部で自動的に min/max を判定していますが、手計算でクロスチェックする際は要注意です。

最後に、クロスフロー近似式の適用範囲。本ツールの近似式は両流体非混合の場合のもので、誤差は概ね 1〜2% 程度ですが、C_r = 0 付近や NTU が非常に小さい領域では誤差が増えます。厳密値が必要な場合は、ベッセル関数を使った級数解や数値積分による正確な ε(NTU, C_r) を参照してください。設計マージンを 5〜10% 取っていれば近似式で十分実用になります。