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熱流体・空調シミュレーター

冷却コイル熱負荷シミュレーター — 顕熱・潜熱・除湿

入口と出口の空気状態から、冷却コイルが処理する顕熱負荷・潜熱負荷・全熱負荷・除湿量・顕熱比SHFをリアルタイム計算。空気線図上に冷却過程を描画し、空調設計の基本を直感的に学べます。

パラメータ設定
入口乾球 Tin
°C
入口相対湿度 RHin
%
出口乾球 Tout
°C
風量 V
m³/min

出口相対湿度はコイル表面付近の飽和を想定し RHout=95% 固定、大気圧 patm=1013 hPa 固定としています。

計算結果
顕熱負荷 Q_s
潜熱負荷 Q_L
全熱負荷 Q_t
除湿量 dW
顕熱比 SHF
空気質量流量 m_a
簡略空気線図と冷却過程

横軸=乾球温度 T (°C)/縦軸=絶対湿度 w (g/kg DA)。赤丸=入口(In)、青丸=出口(Out)。水平成分=顕熱変化、垂直成分=潜熱変化、青曲線=飽和線。

理論・主要公式

飽和水蒸気圧 es(T) と相対湿度 RH から水蒸気分圧と絶対湿度 w を求め、乾き空気基準のエンタルピー h を計算します。

飽和水蒸気圧(Magnus式):

$$e_s(T) = 6.112\,\exp\!\left(\frac{17.62\,T}{243.12+T}\right)\ \text{[hPa]}$$

絶対湿度(乾き空気基準):

$$w = 622\,\frac{e}{p_\text{atm}-e}\ \text{[g/kg DA]}$$

湿り空気の比エンタルピー:

$$h = 1.006\,T + \frac{w}{1000}\,(2501 + 1.86\,T)\ \text{[kJ/kg DA]}$$

空気の質量流量と各熱負荷:

$$m_a = V \cdot \rho \approx V \cdot 1.2\ \text{[kg/s]}$$ $$Q_s = m_a\,c_p\,(T_\text{in}-T_\text{out}),\quad Q_L = m_a\,\frac{w_\text{in}-w_\text{out}}{1000}\,L_v$$ $$Q_t = m_a\,(h_\text{in}-h_\text{out}) \approx Q_s + Q_L,\quad \text{SHF} = \frac{Q_s}{Q_t}$$

ここで cp=1.006 kJ/(kg·K)、Lv≈2501 kJ/kg、ρ≈1.2 kg/m³ を採用しています。除湿量は dW = ma(win-wout)/1000 × 3600 [kg/h] です。

冷却コイル熱負荷シミュレーターとは

🙋
夏場にエアコンの能力を選ぶときって「○○kW」って書いてあるけど、あれって温度を下げるだけの熱量じゃないんですか?
🎓
いい質問だね。実はエアコンの冷却コイルが空気から奪う熱は「温度を下げる分(顕熱)」と「水蒸気を凝縮させる分(潜熱)」の2つに分かれているんだ。ざっくり言うと、夏の蒸し暑い空気を冷やすときには、温度を下げる以上に「除湿」のためのエネルギーが必要になる。シミュレーターで初期値(入口28°C、湿度65%、出口16°C、風量100m³/min)を見ると、Q_s と Q_L がほぼ同じくらいになっているのが分かるよ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ湿度が高い日は、コイルがいっぱい働かないといけないってことですか?
🎓
そのとおり。試しに「入口相対湿度」を65%から85%に上げてごらん。Q_L(潜熱負荷)と「除湿量 dW」がグッと増えるはずだ。空気線図の青丸(出口)と赤丸(入口)の縦の距離が大きくなる——これが「水蒸気をたくさん絞り出している」状態だ。湿度の高い梅雨や真夏の沖縄では、室温は28°Cでも冷えにくいと感じるのは、コイルが除湿に追われて温度を下げる余裕がなくなるからなんだよ。
🙋
「顕熱比 SHF」って結果に出てますけど、これは何の指標ですか?
🎓
SHF = Q_s / Q_t は、コイルの仕事のうち「温度低下に使われた割合」を表す。一般オフィスで0.7前後、湿気の多い厨房や外気導入が多い系統だと0.5を切ることもある。SHFが低い(潜熱比率が高い)ほど、冷水温度を低く設定したり、コイルの列数を増やしたりする必要が出てくる。実務では SHF をもとに、室内負荷線(過程線)と機器特性を空気線図上で重ねて選定するのが基本動作だ。
🙋
風量を倍にすると負荷も倍になりますね。これは直感的にわかります。
🎓
そう、Q_t は ma(hin-hout) で、風量に正比例する。だから風量を絞れば負荷も減るけど、室内の換気量や吹出温度の下限(一般に14°C以下にしない)があるため、闇雲には絞れない。実務では「必要冷却能力 → 風量 → 出口温度」を順番に決めて、最後に SHF と空気線図で過程線が妥当かを確認するんだ。このツールはその第一歩の感覚を掴むのに最適だよ。

よくある質問

物理的には「加熱」になるため、本ツールは負の負荷を 0 にクランプして表示します。冷却コイルとしての設計範囲外なので、入口温度より低い値を選択してください。スライダー範囲は入口20〜40°C、出口10〜25°Cに制限していますが、入口を出口より低くした場合は計算結果が 0 になります。
実際のコイル選定ではバイパスファクター(BF=0.05〜0.20)により出口空気が完全飽和に達しません。本ツールは設計の早期検討用として RH_out=95%固定の理想化モデルを採用しています。詳細選定ではメーカーカタログのBFを使い、装置露点 ADP を求めて再計算する必要があります。
エンタルピー法 Q_t = m_a(h_in - h_out) は、水蒸気の比熱と凝縮潜熱の温度依存性を含む正確な式です。一方 Q_s + Q_L は乾き空気の比熱と一定潜熱を使った近似式です。両者の差は通常2〜3%程度で、設計上は無視できる範囲です。本ツールでは Q_t をエンタルピー法、Q_s と Q_L を個別計算しており、僅かな不一致が現れます。
概算は可能ですが、最終選定にはコイル列数・フィンピッチ・冷水入口温度・冷水流量・バイパスファクター・空気側圧力損失・冷水側圧力損失を考慮する必要があります。本ツールで全熱負荷 Q_t と除湿量 dW を把握した上で、機器メーカーの選定ソフトに入力するのが実務の流れです。SHF が極端に低い(0.5以下)場合は二重ハンドリングや低温送風空調の検討も必要になります。

実世界での応用

事務所ビル・商業施設の空調設計:外気条件と室内設定条件から冷却コイルの必要能力を算定する基本工程です。例えば外気32°C/RH70%を導入し、室内26°C/RH50%を維持する場合、外気処理コイルの全熱負荷と除湿量を本ツールで概算し、冷凍機の能力決定や年間消費電力の試算に使います。SHFが0.6を下回る湿度の高い地域では、冷却除湿後に再熱を加える「リヒート空調」の必要性も検討します。

データセンター・サーバールームの精密空調:サーバーから発生する熱は乾燥した顕熱が主体(SHF≈1.0に近い)ですが、外気導入分は潜熱負荷を持ち込みます。本ツールで外気処理分の Q_s と Q_L を分離して把握することで、CRAC(精密空調機)の冷水温度設定や除湿運転モードを最適化できます。結露を避けるため出口温度を上げる「温度高め設定」の検討にも使えます。

食品工場・クリーンルームの環境制御:食品加工室では温度だけでなく湿度を厳密に管理する必要があり、潜熱処理能力が支配的になります。本ツールで除湿量 dW(kg/h)を把握することで、ドレン配管の口径・勾配・ドレンパン容量を決定できます。クリーンルームではさらにダブルバンドル冷水コイル+デシカントロータの組み合わせ設計に発展します。

HVAC CFD解析の境界条件設定:CFDで吹出口の温度・湿度を設定する際、本ツールの h_out と w_out を境界条件として直接使えます。また Q_t/SHF を比較すると、CFDモデル(壁体伝熱・人体発熱など)の妥当性検証ができます。実務では一次元のエンタルピー法で全体収支を確認してからCFDに進むのが効率的です。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「温度差だけでコイル能力を決められる」と考えてしまうことです。実際には湿度の高い空気では潜熱負荷が顕熱負荷と同等以上になり、温度差から想定した能力の倍近い熱量が必要になります。本ツールで入口湿度を50%と90%で比べてみると、温度差は同じでも全熱負荷 Q_t が大きく変わることが体感できます。「温度×風量×空気の比熱」だけで計算した能力では、湿気の多い時期に確実に能力不足を起こします。

次に多いのが、顕熱比 SHF と機器特性のミスマッチです。室内負荷の SHF(例えば0.85)と、コイルが提供できる装置露点 SHF(例えば0.70)が一致しないと、過剰除湿か過少除湿が起きて室内湿度が設計値からずれます。本ツールで Q_s と Q_L の比率を確認し、SHFが極端に低い場合は再熱コイルを追加するか、外気導入量を減らす対策を検討してください。空気線図上で過程線の傾きと機器特性線の傾きを重ねるのが本来の検討手順です。

最後に、出口空気が常に飽和すると仮定する誤りです。本ツールは設計検討の早期段階用として RH_out=95% 固定モデルを採用していますが、実際のコイルではバイパスファクター(典型0.05〜0.20)により完全飽和には達しません。バイパスファクターが大きいコイル(列数が少ない、流速が高い)では出口湿度が下がりきらず、本ツールの結果より除湿量が少なくなります。最終選定では機器メーカーの BF を入力した詳細計算が必須です。本ツールは「概算と直感の養成」用途に使ってください。