パラメータ設定
プリセット
低Re 定常
放出開始 Re≈47
カルマン渦列
亜臨界 乱流後流
高Re 乱流
再生
リセット
Reynolds数を主操作量とし、U = Re·ν/D で流速を逆算します。Re<47 で定常(渦なし)、Re≈47 で放出開始、Re≈100〜1000 で明瞭なカルマン渦列、高Reで乱流後流。
円柱まわりの流れ(トレーサー粒子+渦度カラーマップ)
上流トレーサー
下流トレーサー
渦度 +(反時計)
渦度 −(時計)
灰色の円柱に左から流れが当たります。色付きの短い線はトレーサー粒子の流跡(ストリークライン)で、上流側は橙、下流側は青に着色。背景の赤/青は渦度(反時計回り/時計回り)。Re<47 では流れは円柱に付着して渦は出ませんが、Re≳47 で上下交互のカルマン渦列が形成され、高Reでは後流が乱流化します。
放出周波数 fs = St·U/D の理論
渦放出周波数:カルマン渦は Strouhal 数 St で流速 U と直径 D から決まる周波数で交互に放出されます。
$$f_s = \mathrm{St}\cdot\frac{U}{D}$$
Reynolds 数(U は流速、D は直径、ν は動粘度):
$$\mathrm{Re} = \frac{U\,D}{\nu}$$
放出の開始は Re ≈ 47、明瞭なカルマン渦列は Re ≈ 100〜1000、Re > 2×10⁵ で後流が乱流化します。円柱では亜臨界域で St ≈ 0.2 にほぼ一定です。
カルマン渦 シミュレーターとは
🙋
「カルマン渦」って、川の橋脚の後ろにできる渦の列のことですよね?なんで上下交互にきれいに並ぶんですか?
🎓
いい質問だ。円柱や橋脚のような鈍頭物体に流れがあたると、Reynolds 数 Re = VD/ν が約 300 を超えたあたりから、後流の上下に交互に渦が剥がれ始めるんだ。これがカルマン渦列 (von Karman vortex street) で、放出周波数は fs = St·V/D で決まる。St は Strouhal 数で円柱では 0.20 前後で安定している。本ツール既定値 (V=5 m/s、D=50 mm、St=0.200) を入れると fs = 20.0 Hz、Re ≈ 1.67×10⁴ と表示されるはずだよ。「上下交互」になるのは、片側の渦が剥がれると圧力場が変わって反対側の渦が成長しやすくなる、というフィードバック機構が働くからだ。
🙋
ロックインって聞いたことあるんですけど、これが危険って具体的にどういうことですか?fs/fn=0.8 だとなぜ「no」なんですか?
🎓
本質的な疑問だ。通常、渦放出周波数 fs と構造物の固有振動数 fn が一致すれば共振で振幅が膨れ上がる。ところがカルマン渦の場合は、fs が fn の ±15% 程度に近づくと、渦の方が fn に「引き込まれて」fs = fn で安定してしまう。これがロックインで、判定条件はおおよそ 0.85 < fs/fn < 1.15 だ。本ツール既定値では fs/fn = 20/25 = 0.800 で、判定が「no」と表示される — ぎりぎり外側だ。ところが V を 6.25 m/s に上げると fs = 25 Hz、fs/fn = 1.000 でロックインに入り、振幅が一気に増大する。Tacoma Narrows 橋 (1940 米国) はこれと風によるフラッターの連成で崩壊した。
🙋
グラフの青い直線が fs = St·V/D で、緑の水平線が fn ですね。緑線と青線の交点が「最も危ない流速」になるってことですか?
🎓
その通り。青線と緑線が交わる V を「臨界流速 Vcr = fn·D/St」と呼ぶ。本ツール既定値 (fn=25 Hz、D=0.05 m、St=0.20) では Vcr = 25·0.05/0.20 = 6.25 m/s。スライダーで V を 6.25 m/s 付近にすると黄色マーカーが緑線に乗り、ロックイン判定が「yes」に切り替わる様子が観察できる。設計では、運転流速範囲がこの Vcr を跨がないように fn を意図的にずらすか、ヘリカルストレーキ (煙突外周のらせん板) で渦放出のコヒーレンスを壊すのが標準対策だ。海洋プラットフォームのライザー管では「Vortex-Induced Vibration (VIV)」抑制が最重要設計課題になる。
🙋
Strouhal 数って St=0.20 でほぼ固定なんですよね?じゃあなぜスライダーで 0.18〜0.22 と振れるんですか?
🎓
大事なポイントだ。確かに円柱の St は亜臨界 Re = 10²〜10⁵ の範囲で 0.20 にほぼ固定なんだが、実際には Re 依存・表面粗さ・流れの乱れ度合いで 0.18〜0.22 と幅がある。さらに非円形断面 (角柱・楕円・橋桁) では形状によって St が 0.06〜0.30 と大きく変わる。設計時はこの不確かさを評価しないと「想定外の流速で共振」が起きる。本ツールでスライダーを動かすと、同じ V・D・fn でも fs と fs/fn 比が変動する様子が見える。煙突や橋では St の最大値で危険評価し、ライザー管では実験 St カーブをそのまま使うのが安全な設計プラクティスだ。
よくある質問
カルマン渦とは何ですか?
カルマン渦 (Karman vortex street) は、円柱や橋脚など鈍頭物体の後ろに、Reynolds 数 Re が約 300〜2×10⁵ の範囲で上下交互に周期的に放出される渦列です。放出周波数は fs = St·V/D で与えられ、St は Strouhal 数 (円柱で 0.20 程度)、V は流速、D は円柱直径。本ツール既定値 (V=5 m/s、D=50 mm、St=0.200) では fs = 20.0 Hz と表示されます。橋・煙突・ケーブル・配管などで振動・騒音の原因になり、過去には Tacoma Narrows 橋崩落 (1940) など重大事故を引き起こしました。
Strouhal 数とは何ですか?
Strouhal 数 St = fs·D/V は、渦放出周波数を流速と特性長で無次元化した数で、放出の「リズム」を表します。円柱では Re = 300〜2×10⁵ の広い範囲で St ≈ 0.20 で安定し、これがカルマン渦の最大の特徴です (流速や径が変わっても比例関係が崩れにくい)。亜臨界 Re=10²〜10⁵ で 0.18〜0.22、超臨界 Re>3.5×10⁵ で乱流境界層の影響で 0.27〜0.30 まで上昇し再び低下します。本ツールでは 0.18〜0.22 の範囲で St を変えられ、設計時の不確かさを評価できます。
ロックインとは何ですか?
ロックイン (lock-in) は、渦放出周波数 fs が構造物の固有振動数 fn に近づいたとき、渦の周期と構造振動が同期して fs が fn に「引き込まれ」、振幅が急激に増大する現象です。条件はおよそ 0.85 < fs/fn < 1.15。本ツール既定値 (fs=20 Hz、fn=25 Hz、fs/fn=0.800) では「ロックインなし」ですが、V を 6.25 m/s に上げると fs/fn=1.00 でロックインに入ります。設計では fs と fn を意図的にずらすか、減衰やストレーキで渦放出を破壊する対策が標準です。
カルマン渦による事故・実害は何ですか?
代表事例:(1) Tacoma Narrows 橋崩落 (1940 米国) — 風速 19 m/s で渦励振+フラッター連成、(2) 工場煙突の周期的座屈 (英国 Ferrybridge 1965) — 風によるカルマン渦で 3 本同時崩壊、(3) 海洋ライザー管の疲労破壊 — 潮流で渦放出、(4) 送電線のギャロッピング、(5) 熱交換器伝熱管の振動疲労破壊。対策はヘリカルストレーキ (煙突外周のらせん板)、減衰板、質量同調ダンパー (TMD)、流線形カバー (橋桁) など。本ツールで fs/fn=1.0 付近の危険域を視覚化できます。
実世界での応用
橋梁の風荷重と耐風設計: 長大橋や歩道橋では風によるカルマン渦が桁を上下に揺らし、長期的な疲労破壊や Tacoma Narrows のような崩壊を招きます。設計では桁断面 (高さ D ≈ 2〜4 m) で St ≈ 0.10〜0.15、想定風速 V = 20〜40 m/s から fs ≈ 0.5〜3 Hz を計算し、桁の捩り・たわみ 1 次固有振動数 fn と分離します。本ツールに同等値を入れて Vcr を求め、危険風速域に運転 (供用) が入らないことを確認できます。流線形フェアリングや TMD で対策します。
工場煙突・送電鉄塔のヘリカルストレーキ: 高さ 100〜200 m の鋼製煙突 (D ≈ 5 m) では St ≈ 0.20、設計風速 V = 20 m/s で fs ≈ 0.8 Hz。煙突の 1 次曲げ固有振動数 fn ≈ 0.5〜1 Hz と一致しやすく、ヘリカルストレーキ (外周にらせん状に取り付ける突起、ピッチ 5D・幅 0.1D が標準) で渦放出のコヒーレンスを破壊します。1965 年の英国 Ferrybridge 火力発電所では未対策の煙突 3 本が同時崩壊し、以降ストレーキが業界標準になりました。
海洋ライザー管の VIV 抑制: 水深 1000 m 級の石油プラットフォームでは、潮流 V = 0.5〜2 m/s でライザー管 (D ≈ 0.3 m、St ≈ 0.20) から fs ≈ 0.3〜1.3 Hz の渦が放出されます。管が長く固有振動数が密集しているため、運転中ほぼ常にロックインの危険があります。対策はらせん状ストレーキ、フェアリング、または管内流による減衰増加。本ツールで V スイープ機能を使うと、fs が複数の fn を順次通過する様子を可視化できます。
熱交換器伝熱管の渦励振: シェルアンドチューブ型熱交換器ではシェル側の流れ (V = 1〜5 m/s) で各伝熱管 (D = 19〜25 mm) からカルマン渦が放出され、fs = 8〜50 Hz になります。隣接管との流体弾性結合で「fluidelastic instability」と呼ばれる連成不安定が起きると、管同士が衝突して破断します。設計では Connors 基準で安全率を確保し、必要なら邪魔板 (バッフル) を追加します。本ツールで V と D を変えると典型的な fs 範囲を確認できます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解が 「Strouhal 数 St=0.2 で固定として使える」 というものです。実際には円柱でも Re 依存があり、亜臨界 (Re=10²〜10⁵) で 0.18〜0.22、遷移域 (Re=2×10⁵〜3.5×10⁵) で揺らぎ、超臨界で 0.27〜0.30 まで上昇します。さらに角柱では St ≈ 0.13、橋桁断面では St ≈ 0.06〜0.15、太い円柱列ではより低い値になります。本ツールは円柱の亜臨界域 (0.18〜0.22) を想定していますが、実機形状ごとに風洞試験データを参照する必要があります。
次に多いのが 「ロックイン域から少しでも外れれば安全」 という単純な理解です。実際には 0.85 < fs/fn < 1.15 の境界はソフトで、振幅は徐々に立ち上がります。さらに減衰が小さい構造 (鋼煙突、海洋ライザー、軽量ケーブル) では引き込み域が広く、0.7 < fs/fn < 1.4 でも顕著な振動が起きます。Skop-Griffin 数 SG = (m·δ)/(ρ·D²) (m は質量/長さ、δ は対数減衰率、ρ は流体密度) で振幅レベルを評価するのが定量的アプローチです。本ツールはあくまで「危険域に入るか否か」の判定です。
最後に 「カルマン渦は円柱だけの現象」 という誤解です。実際には角柱・楕円・橋桁・翼後縁・煙突・送電線など、どんな鈍頭断面からも (Re が十分高ければ) 周期的渦放出が発生します。形状ごとに St の値が大きく異なるだけで、メカニズムは共通です。設計時は対象形状の St を文献または風洞試験で確認し、fs と fn の比較を行うこと。本ツールの St スライダーは円柱範囲ですが、角柱の St=0.13 など外挿して概算的に評価することも可能です。
具体的な計算例
直径d=25 mm(slD_mm=25)、流速v=3.5 m/s(slVVal=3.5)、円柱固有振動数fn=8.5 Hz(slFnVal=8.5)の場合:Re=(1.2×3.5×0.025)/1.81×10⁻⁵≈5,800、Strouhal数St=0.20を適用するとfs=0.20×3.5/0.025=28 Hz、周波数比fs/fn=28/8.5=3.29となりロックイン外。流速を1.2 m/sに低下させるとfs=9.6 Hzで周波数比=1.13となり、ロックイン範囲内で円柱が激しく振動する危険領域に到達。