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環境工学

埋立地ガス LandGEM 発生量予測シミュレーター

米国 EPA の LandGEM (Landfill Gas Emissions Model) v3.02 に基づき、廃棄物量・受入期間・分解定数 k・メタン生成ポテンシャル L₀ から、埋立処分場で発生するメタンの年間量・ピーク年・発電可能量・CO₂eq 削減ポテンシャルをリアルタイムで計算します。

パラメータ設定
年間廃棄物量 M
Mg/年
毎年受け入れる廃棄物の質量 (湿潤ベース)
受入期間 (オープン年数)
処分場が新規廃棄物を受け入れる期間
分解定数 k
1/年
湿潤地域 0.04、乾燥地域 0.02、生ごみ多 0.1
メタン生成ポテンシャル L₀
m³CH₄/Mg
廃棄物1トン当たりの最終 CH₄ 発生量
閉鎖年 (基準年から)
処分場を閉鎖する年。オープン年数と独立に設定可能
評価時点 (基準年から)
CH₄ 発生率を評価する年 (デフォルト=閉鎖直後がピーク)
計算結果
評価時点メタン生成率 (m³CH₄/年)
ピーク年メタン生成率 (m³CH₄/年)
ピーク年 (基準年から)
連続電力換算 (MW LHV)
回収率70%時の発電可能量 (MW)
年間 CO₂eq (Mg-CO₂eq)
埋立処分場の断面 — ガス回収井と発生分布

受入期間中は廃棄物が積み増され、閉鎖年でピークの CH₄ を発生。回収井 (緑) でガスを吸引し発電・フレアへ送ります。色の濃さは CH₄ 発生強度を示します。

経年変化 — CH₄ 発生率カーブ (0〜100年)
累積 CH₄ 発生量と CO₂eq
理論・主要公式

$$Q_{CH_4}(t) \;=\; \sum_{i=1}^{n} k\,L_0\,M_i\,e^{-k\,t_i}$$

LandGEM の基本式 (IPCC FOD)。各年に投入された廃棄物 M_i (Mg) が時間 t_i (年) にわたって指数減衰しながら CH₄ を放出する寄与の総和。k:分解定数 (1/年)、L₀:メタン生成ポテンシャル (m³CH₄/Mg)。

$$P_{el}\;[\text{MW}]\;=\;Q_{CH_4}\cdot\frac{35.8\,\text{MJ/Nm}^3}{1000\cdot 8760}\,,\quad E_{CO_2eq}\;=\;Q_{CH_4}\cdot 0.717\cdot 25$$

CH₄ の低位発熱量 35.8 MJ/Nm³、密度 0.717 kg/m³、GWP-100 = 25 を用いた連続電力換算と年間 CO₂eq (kg)。実際の発電端効率や回収率を別途乗じて評価します。

埋立地ガス (LFG) 発生量予測 — LandGEMモデル

🙋
埋立処分場って、ゴミを埋めた後も「ガスが出る」って聞いたんですが、本当に何十年も出続けるんですか?
🎓
本当だよ。埋め立てた生ごみ・紙・木くずなどの有機物は、空気がない (嫌気) 状態で微生物にゆっくり分解されて、メタン (CH₄) と CO₂ をだいたい半々ずつ出すんだ。分解は一発で終わらず、ざっくり1次反応 (FOD) で減衰する。例えば年間10万トンを30年間受け入れた処分場なら、閉鎖直後にメタン発生率がピークを迎えて、そこから 25年くらいの時定数でゆっくり減っていく。閉鎖50年後でもピークの 14% くらいは出続けるイメージだね。
🙋
え、半分メタンって…メタンって温室効果が CO₂ の20倍以上って習いました。あれってそのまま大気に出てるんですか?
🎓
いい問題意識。GWP-100 で 25 倍 (最新の IPCC AR6 だと 27〜30) だから、放っておくと埋立地は日本でも有数の温室効果ガス排出源になる。だから先進国の多くの大型処分場では「ガス回収井」を打ち込んでLFGを吸引して、(1) 内燃機関やガスタービンで発電する LFGTE、(2) 都市ガス級に精製してパイプライン注入する RNG、(3) 燃焼困難な場合はフレアでただ燃やすだけ、のいずれかで処理する。燃やすだけでも CO₂ に変わって 1/25 になる、という発想だ。
🙋
じゃあ、左のスライダーで分解定数 k を 0.04 から 0.1 に上げるとどうなるんですか?ピーク値が変わる感じですか?
🎓
やってみるとわかるけど、k を上げるとピーク値は高くなる一方で、減衰時間が短くなる。つまり「短く激しく」出るようになるんだ。湿潤な日本やインドネシアでは k=0.04〜0.05 が標準、乾燥した米西部の処分場では k=0.02 程度。生ごみが多くて雨が多いと早く分解するから、メタン回収井の設計流量を大きく取る必要がある。逆に乾燥地では発生はゆっくりだけど期間が長く、運転コストが何十年も続くという別の課題が出てくる。
🙋
右下に「連続電力換算 29 MW」「回収70%で20 MW」って出てます。これってどのくらいの規模なんですか?
🎓
20 MW というと、ざっくり一般家庭 4〜5万世帯ぶんの電力に相当する規模だね。実際には CH₄ 発電端効率 35〜40% を掛けて 7〜8 MW くらいに落ちるけど、それでも中規模の太陽光発電所に匹敵する。米国 EPA の LMOP プログラムでは、500件以上の処分場で LFGTE が稼働中で、合計 2 GW を超える発電容量がある。日本でも JR 系の鉄道用電源や、自治体の温暖化対策計画の重要オプションとして検討が進んでいるよ。
🙋
CO₂eq が年間 12万 Mg って…これ、相当な量ですよね?
🎓
12万トン-CO₂eq は、ガソリン車 2.5万台分の年間排出量に相当する。逆に言うと、回収・燃焼するだけでそれだけ温室効果ガスを「実質ゼロ化」できる。さらに発電すれば化石燃料代替効果も加わる。日本の自治体が GHG 排出量削減目標を立てるとき、埋立地メタン対策は1事業あたりの削減量が大きく、費用対効果も高い「目玉施策」になりやすいんだ。

よくある質問

LandGEM (Landfill Gas Emissions Model) は米国 EPA が開発した埋立地ガス発生量予測モデルです。IPCC FOD (First Order Decay:一次反応的減衰) 法に基づき、各年に受け入れた廃棄物 M_i が時間とともに指数関数的に分解し、メタンガスを放出するという仮定で年間発生率を計算します。パラメータは分解定数 k (1/年) とメタン生成ポテンシャル L₀ (m³CH₄/Mg-廃棄物) の2つだけで、組成や気候条件から決めます。日本では JIS Q 14064 や IPCC 2006 ガイドラインに沿った温室効果ガス排出量算定でも実質的に同等のFOD法が採用されています。
k は廃棄物が分解する速さを表し、湿潤地域 (年間降水量 635mm以上) で 0.04〜0.05、乾燥地域で 0.02 程度、半乾燥地域で 0.03 が EPA のデフォルト値です。日本のように温暖湿潤な気候では 0.04 が標準的な目安です。L₀ は1トンの廃棄物から最終的に発生する CH₄ の総量で、生分解性有機物の割合に依存します。EPA のデフォルトは混合都市ごみで 100 m³/Mg、生ごみが多いと 150〜170、廃プラ・建設廃材中心だと 30〜70 程度になります。実測値が無い場合は廃棄物組成と現地気候からこの範囲内で設定します。
ピークは「埋立を停止した直後 (閉鎖年)」です。受入期間中はその年に投入された廃棄物がまだ分解しきっておらず、毎年積み増しされるため、廃棄物量と発生率が同時に増えます。閉鎖と同時に新規流入が止まると、累積した既存廃棄物の指数減衰だけが残るため、その直後がピークです。その後 1/k の時定数 (k=0.04 なら 25年) で減衰し、閉鎖から 50年後でも初期の約 14% (= e^(-0.04·50)) の発生が残ります。多くの自治体では閉鎖後30〜50年は環境モニタリングと発電・フレア燃焼を継続します。
はい。LFGTE (Landfill Gas To Energy) は、井戸 (ガス回収井) を打ち込んで吸引した LFG を、内燃機関・ガスタービン・蒸気タービンで発電する技術で、日米欧で標準的に行われています。CH₄ の低位発熱量は約 35.8 MJ/Nm³ で、回収効率を 70% (典型値)・発電効率を含めない連続電力換算で 100,000 Mg/年規模の処分場なら 10〜20 MW 級が成立します。CH₄ は CO₂ の 25 倍 (GWP-100) の温室効果を持つため、燃焼で CO₂ に転換するだけでも年間 10万 t-CO₂eq 規模の削減になります。発電できない部分はフレア燃焼で破壊することが多いです。

実世界での応用

自治体の最終処分場と温暖化対策計画:日本の市町村が運営する一般廃棄物の埋立処分場では、廃掃法と地球温暖化対策推進法に基づき、メタン排出量を算定・報告する義務があります。本ツールの LandGEM 計算は、年間廃棄物量と組成から第一近似の排出量を出すのに使え、温対計画の削減目標 (例:2030年に50%削減) のシナリオ分析や、LFG発電・覆土改善の費用対効果比較に活用されます。

LFGTE プロジェクト (発電所事業):米国 EPA の LMOP (Landfill Methane Outreach Program) では、本ツールと同じロジックで「この処分場で何 MW の発電が成立するか」を事前評価します。発電事業者が PPA (電力購入契約) や FIT 制度を活用してプロジェクト IRR を計算する際、CH₄ 発生量の長期予測カーブが収益モデルの根幹になります。日本でも JR グループや独立系発電事業者が同様のスキームを検討しています。

炭素クレジット (J-クレジット・GCF) の創出:埋立地メタン回収・燃焼によるGHG削減は、J-クレジット制度や Verra VCS、Gold Standard 等の自主的炭素市場で、トン-CO₂eq 単位のクレジットとして取引可能です。事業性評価のために、LandGEM ベースの保守的なベースライン (=対策をしない場合の排出量) と、回収後の残存排出量の差分が「削減量」として認定されます。本ツールの「年間 CO₂eq」出力はその概算に使えます。

環境影響評価 (アセス) と覆土設計:新規処分場の環境影響評価では、悪臭・温室効果ガス・移行ガス爆発リスクの観点から CH₄ 発生量の長期予測が必須です。LandGEM 出力を元に、ガス回収井のピッチ・排出パイプ径・脱水設備容量を設計します。覆土材の透気性を変えると逃げるガス量が変わるため、表面散逸モデル (表面フラックス) と組み合わせて検討します。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「LandGEM の出力をそのまま大気排出量だと思い込む」ことです。LandGEM が計算するのは「発生量 (generation)」であり、「大気への排出量 (emission)」ではありません。実際に大気に出るのは、ガス回収井で吸引できなかった分から、覆土を透過する量、好気酸化で CH₄ → CO₂ に変換される量を引いた残りです。EPA の標準的な仮定では、回収率 75%、覆土での酸化率 10% を見込むため、発生量の 22.5% が実排出量になります。本ツールも回収率 70% で「発電可能量」を計算していますが、温対計画書に書く「排出量」を出すときは、回収率・酸化率の自治体個別値を必ず引いてください。

次に、「分解定数 k を全国一律で 0.04 と決めつける」こと。k は気候 (年降水量・気温) と廃棄物の組成 (生ごみ比率) で大きく変わります。沖縄や九州南部の湿潤地域なら 0.05 が現実的、北海道や乾燥した内陸部なら 0.025 が近い場合もあります。さらに、産業廃棄物処分場 (廃プラ・汚泥中心) は生分解性が低いため、L₀ が 30〜50 程度に下がり、k も小さくなります。デフォルト値で計算してから、実測のガス回収量と合わない場合は k と L₀ を校正してください。校正には少なくとも5年程度の連続データが必要です。

最後に、「閉鎖年を過ぎたらガス対策はもう不要」と考える誤りです。LandGEM のカーブを見れば分かる通り、ピーク後も指数関数で減衰するだけで「ゼロ」にはなりません。閉鎖30年後でもピークの 30% (k=0.04 の場合) が出続けます。米国 RCRA Subtitle D では「閉鎖後 30 年間は post-closure care」が義務付けられ、ガス回収・地下水監視・覆土管理を継続します。日本の廃掃法でも、廃止届出後の維持管理積立金で長期モニタリングを担保していますが、実務的には 50年を超えるケースも珍しくありません。閉鎖後の運転コストを事業計画段階で必ず織り込みましょう。

使い方ガイド

  1. 埋立処分場の年間廃棄物受入量(1,000~100万 Mg)を入力します。例えば、年間 50,000 Mg を処分している施設の場合は 50000 を入力してください。
  2. 廃棄物の受入期間(年数)を設定します。例えば過去 20 年間継続して受け入れている場合は 20 を指定します。
  3. 分解定数 k(年⁻¹)とメタン生成ポテンシャル L₀(m³CH₄/Mg)を入力します。一般的に先進国の都市廃棄物では k=0.05~0.1、L₀=170~200 m³CH₄/Mg の範囲です。
  4. 計算ボタンを押すと、評価時点のメタン発生率、ピーク年と発生量、LFG発電規模(MW)、CO₂削減ポテンシャルが表示されます。

具体的な計算例

年間受入量 30,000 Mg、受入期間 15 年の埋立地で、k=0.075 year⁻¹、L₀=180 m³CH₄/Mg の場合を想定します。評価時点(基準年)のメタン生成率は約 8,500 m³CH₄/年になります。ピークはおよそ基準年から 10 年後に約 12,000 m³CH₄/年に達し、回収率 70%での発電可能量は約 0.85 MW、年間 CO₂eq 削減ポテンシャルは約 35,000 Mg-CO₂eq と見積もられます。

実務での注意点

  1. 埋立地の気候・降水量・運用管理(覆土厚、圧密度)によって実際の k 値は大きく変動するため、現地サンプリングデータがあれば反映させてください。
  2. L₀ は廃棄物組成に依存します。有機物が多い場合(飲食店系廃棄物)は 200 m³CH₄/Mg 以上、低い場合(建設廃棄物混在)は 100~150 m³CH₄/Mg程度に調整してください。
  3. LFG 発電による実現性評価では、メタン濃度 40~50%、硫化水素・シロキサンの前処理コスト、エンジン効率 30~40%を考慮した総合採算性分析が必要です。