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環境・エネルギー

大気拡散計算(ガウシアンプルーム)

パスキル安定度クラスA〜Fに基づくガウシアンプルームモデル。煙突排ガスの地上濃度分布・最大濃度・到達距離をリアルタイム計算・可視化。

パラメータ設定
プリセット
排出量 Q
g/s
煙突高さ H
m
排ガス速度 vs
m/s
煙突内径 ds
m
風速 u
m/s
排ガス温度 Ts
K
気温 Ta
K
安定度クラス
地形
受容体距離 x_r
km
計算結果
C_max (μg/m³)
x_max (km)
受容体濃度 (μg/m³)
プルーム上昇 Δh (m)
上面図(濃度カラーマップ x-y)
側面図(x-z)
地上濃度 vs 風下距離
拡散幅 σy, σz vs 距離
理論・主要公式
$$C(x,y,z) = \frac{Q}{2\pi\sigma_y\sigma_z u}\exp\!\left(-\frac{y^2}{2\sigma_y^2}\right)\!\left[\exp\!\left(-\frac{(z-H)^2}{2\sigma_z^2}\right)+\exp\!\left(-\frac{(z+H)^2}{2\sigma_z^2}\right)\right]$$

Briggsプルーム上昇式:$\Delta h = \dfrac{1.6\,F_b^{1/3}\,x^{2/3}}{u}$ (浮力フラックス $F_b = g\,v_s\,(d_s/2)^2\,(T_s-T_a)/T_s$)

地上最大濃度位置:$C_{max}= \dfrac{2Q}{\pi e\,u\,H^2}\cdot\dfrac{\sigma_z}{\sigma_y}$

規制値比較
WHO PM2.5年平均: 5 μg/m³
日本 PM2.5年平均: 15 μg/m³
計算後に判定されます

大気拡散計算(ガウシアンプルーム)とは

🙋
工場の煙突から出る煙が、どう広がっていくかを計算するって聞いたんですけど、このシミュレーターで再現できるんですか?
🎓
その通りだ。この「ガウシアンプルームモデル」は、煙突(点源)から出た汚染物質が風下でどう拡散するかを、比較的シンプルな式で予測する古典的で強力なツールなんだ。例えば、右のパネルで「排出量Q」や「煙突高さH」を変えると、下の濃度分布グラフがリアルタイムで変わるよ。風速uを大きくすると、どうなるか確認してみて。
🙋
風速を上げると、グラフの山が低くなって広がりました!「安定度クラス」って何ですか?AからFまであるけど。
🎓
いいところに気がついたね。これは「パスキル安定度クラス」といって、大気の乱れの強さ、つまり汚染物質がどれだけかき混ぜられるかを表すんだ。大まかに言うと、A(非常に不安定)は晴れた昼間で、煙は激しく拡散する。F(非常に安定)は澄んだ夜で、煙は長く薄く滞留する。シミュレーターでAとFを切り替えると、拡散の形が大きく異なるのがわかるよ。実務では、気象データからこのクラスを決めることが多い。
🙋
煙突の高さを非常に高くすれば、地上の濃度はゼロに近づくんですか?でも現実的にはコストが…。
🎓
鋭い指摘だ。確かに高くすれば地上濃度は下がるが、コストが跳ね上がる。そこで重要なのが「有効煙突高さ」の考え方だ。排ガスに熱があれば(排ガス温度Tsを上げてみて)、浮力でさらに上昇する。このシミュレーターでは、煙突高さHにその浮力上昇分を加えた「有効高さ」を使って計算している。煙突設計では、この計算結果を見ながら「必要な高さ」と「コスト」のバランスを取るんだ。

よくある質問

風速・日射量(昼)や雲量(夜)から大気の安定度をA(強不安定)〜F(安定)に分類します。本ツールでは簡易的にプルダウンで選択可能です。不安定ほど拡散が速く、安定ほど高濃度が遠方まで到達しやすいため、評価目的に応じて適切なクラスを選んでください。
風向下流の各地点で地上濃度(z=0)を計算し、その最大値と位置を自動抽出します。最大濃度は排出強度Qに比例し、風速uに反比例します。安定度が安定(F)ほど最大濃度は高く、到達距離は長くなる傾向があります。
本モデルは平坦地形を前提としています。建物による乱流やダウンウォッシュ効果は考慮しません。実務では、煙突高さを建物高さの2.5倍以上にするか、別途建屋影響補正(EPA等)を適用する必要があります。
主な原因として、①排出強度Qが過大、②風速uが極端に小さい(例:1m/s未満)、③安定度Fで無風状態に近い、が考えられます。ガウシアンプルームは弱風・無風時には適用外です。風速1m/s以上での使用を推奨します。

実世界での応用

環境アセスメント・工場立地審査:新規に工場や発電所を建設する際、法律で定められた基準値を超えないかを事前に評価します。このツールのような拡散計算を用いて、最大地上濃度やその発生距離を算出し、煙突高さや排出量の設計指針とします。

煙突・排気筒の最適設計:建設コストと環境性能のトレードオフを考慮します。浮力上昇効果を考慮した有効高さの計算は、物理的な煙突を必要以上に高くせずに済むため、設計上非常に重要です。

緊急時予測・リスク評価:化学工場などで事故が起き、有害物質が漏洩した場合の影響範囲を素早く予測するために使われます。様々な気象条件(安定度クラス、風速)でのシナリオを計算し、避難計画に役立てます。

CFDシミュレーションの検証・初期検討:OpenFOAMなどによる詳細な流体解析(CFD)を行う前に、本ツールでおおよその濃度分布や傾向を把握します。CFDの結果が極端に外れていないか、この簡易モデルで大まかな検証を行うこともあります。

よくある誤解と注意点

このシミュレーターは強力ですが、使い方を誤ると現実とかけ離れた結果を信じてしまう危険があります。まず押さえておきたいのは、「ガウシアンプルームモデルは定常状態の時間平均を扱う」という点です。つまり、瞬間的な煙の塊や、風向が頻繁に変わるような状況は再現できません。例えば、排出源近くの「ダウンドラフト」で煙が地面に叩きつけられる現象は、この基本モデルでは捉えきれないことが多いです。

次に、パラメータ設定の落とし穴。特に「有効煙突高さ」はキモです。シミュレーターでは浮力上昇分を自動計算しますが、実際の設計では地形の影響(丘や建物)が巨大です。平坦な地上の計算結果で「問題なし」と判断しても、風下にビルがあれば、その背後で渦が発生し予想外の高濃度を生む「ビルウェイク効果」が起きます。パラメータを入力する前に、周辺地形と風の通り道を想像するクセをつけましょう。

最後に、「最大地上濃度」の数字だけを追いかけないこと。確かに重要な指標ですが、環境基準は「1時間値の98パーセンタイル値」など、統計的な評価が求められます。このツールで得られるのはあくまで特定条件での濃度分布です。実務では、年間を通じた気象データ(風向・風速・安定度の頻度分布)と組み合わせて、長期平均濃度を評価する「シンタル法」などが使われます。ツールの結果は「第一歩のスクリーニング」と捉えるのが賢明です。