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環境工学

ライフサイクルアセスメント (LCA) シミュレーター

製品の材料製造から廃棄・リサイクルまで(Cradle-to-Grave)の CO₂ 排出量をリアルタイムで集計します。製品質量・電力グリッド強度・使用年数・リサイクル率を変えると各段階の寄与が即座に変わり、カーボンフットプリント低減のホットスポットを見つけられます。

パラメータ設定
製品質量 m
kg
材料製造CO₂原単位
kg-CO₂/kg
鋼:2.0/アルミ:8〜18/樹脂:2〜5/CFRP:25
製造エネルギー
kWh/kg
鋳造・切削・組立の単位質量あたり電力
電力CO₂強度
kg-CO₂/kWh
日本平均0.45/仏0.05/豪0.9
使用年数 t
year
年間使用エネルギー
kWh/year
家電200〜800/業務用5000〜20000
リサイクル率
%
バージン材代替によるクレジットを計上
計算結果
材料製造CO₂ (kg-CO₂)
加工製造CO₂ (kg-CO₂)
使用段階CO₂ (kg-CO₂)
リサイクルクレジット (kg-CO₂)
ライフサイクル合計 CO₂ (kg-CO₂)
年あたりCO₂ (kg-CO₂/year)
Cradle-to-Grave フロー — 段階別CO₂可視化

材料→製造→輸送→使用→廃棄/リサイクルの5段階を左から右に流れで表示。棒の高さは各段階の CO₂ 量(粒子は実時間で流動)。

段階別CO₂排出寄与
累積CO₂ vs 使用年数
理論・主要公式

$$\text{Total CO}_2 = E_{material} + E_{mfg} + E_{use}\cdot t + E_{EoL} - C_{recycle}$$

Cradle-to-Grave 合計排出量。E_use·t は使用段階の年数積算(年間電力 × グリッドCO₂強度 × 使用年数)。C_recycle はリサイクル材によるバージン材代替効果のマイナス計上(kg-CO₂)。

$$E_{material} = m \cdot k_{mat}, \qquad E_{mfg} = m \cdot e_{mfg} \cdot g$$

材料製造排出 E_material は質量 m × 材料原単位 k_mat。加工排出 E_mfg は質量 × 加工電力 e_mfg × 電力グリッド CO₂ 強度 g。

$$E_{use} = U_{annual} \cdot g, \qquad C_{recycle} = m \cdot r \cdot k_{cred}$$

年間使用排出は年間電力 U_annual × g。リサイクルクレジットは質量 × 回収率 r × 代替原単位 k_cred(本ツールでは 2.0 kg-CO₂/kg と仮置き)。

ライフサイクルアセスメント (LCA) とは

🙋
最近ニュースで「カーボンフットプリント」って言葉をよく聞くんですが、これって LCA とどう違うんですか?製品ごとに CO₂ の値が書いてあるアレですよね?
🎓
いいところに気づいたね。カーボンフットプリント(CFP)は「LCA のうち CO₂ など温室効果ガスだけに絞った結果」のことなんだ。LCA は本来、CO₂以外にも資源消費・水使用量・大気汚染・酸性化など多項目を評価する枠組みで、ISO 14040/14044 で標準化されている。Cradle-to-Grave、つまり「材料採取(ゆりかご)から廃棄(墓場)まで」の全段階を集計するのが基本。このツールではCFPに絞っているけど、考え方は LCA そのものだよ。
🙋
なるほど!じゃあ製品のCO₂を計算するとき、何が一番効いてくるんですか?材料?それとも作るときの電気?
🎓
これが LCA で一番面白いところで、製品によって支配段階が全然違うんだ。例えばエアコンや冷蔵庫は使用中ずっと電気を食うから、10年使うと使用段階が 80% 超え。一方でペットボトルや段ボールみたいなパッケージは、使用中にエネルギーをほとんど消費しないから、材料製造が 70% 以上を占める。左のスライダーで「年間使用エネルギー」を 0 にしてみて。一気に材料と製造の割合が支配的になるはずだよ。
🙋
本当だ!使用エネルギーを0にすると材料が圧倒的に大きい…。あれ、でも電力CO₂強度を 0.05(フランスみたい)に下げると、使用段階だけが激減するんですね。これって製品の設計じゃなく場所の問題じゃないですか?
🎓
まさにそこが LCA で揉めるポイントだね。電力グリッドの CO₂ 強度は国・地域・契約電源・時間帯で 10〜20 倍違う。同じ家電を作っても、フランス(原子力中心、約0.05 kg-CO₂/kWh)で使うのと、石炭主体の国(約0.9 kg-CO₂/kWh)で使うのとでは結果が全く違ってくる。だから企業は「再エネ100%電力で工場を動かす」「販売地域別に LCA を出す」といった対応をするんだ。設計だけじゃ解決できない領域もあるのが LCA の現実だよ。
🙋
リサイクルクレジットがマイナスで効いてくるのも面白いですね。これって100%にしたら CO₂ が打ち消されてゼロになる、みたいな?
🎓
残念ながらそこまで甘くないんだ。本ツールでは 2.0 kg-CO₂/kg をクレジットにしているけど、これは「回収した材料がバージン材の代わりに使われたら、その分の製造排出が将来回避できる」という仮定。実際にはリサイクル工程自体がエネルギーを使うし、品質が下がる(ダウンサイクル)ことも多い。ISO 14044 では計上方法が複数定義されていて(カットオフ法、回避負荷法、PEFサーキュラーフットプリント式)、どれを使うかで結果が2倍3倍変わる。比較するときは必ず計上方法を明示するのが原則だよ。

よくある質問

LCA は ISO 14040/14044 で標準化された、製品の「ゆりかごから墓場まで(Cradle-to-Grave)」の環境負荷を定量評価する手法です。材料採取・素材製造・部品加工・輸送・使用・廃棄/リサイクルの全段階で、資源消費・エネルギー使用・温室効果ガス(GHG)排出を集計します。本ツールでは特に CO₂ 排出量(kg-CO₂e)に絞り、各段階の寄与を可視化します。設計初期の概算や、サステナビリティ報告書・カーボンフットプリント表示の事前検討に使えます。
製造エネルギーと使用段階の電力消費は、最終的にどの電源で発電された電気を使うかで CO₂ 排出量が大きく変わります。例えばフランス(原子力中心、約0.05 kg-CO₂/kWh)と石炭主体の国(約0.9 kg-CO₂/kWh)では同じ電力消費でも 15〜20 倍違います。日本平均は約0.45 kg-CO₂/kWh です。製品を設計・販売する地域、電力契約(再エネメニュー)、稼働時間帯(昼間太陽光が多い時間帯)によって LCA 結果は劇的に変わるため、感度分析が必須です。
リサイクルクレジットは、回収した材料がバージン材料の代替として使われる効果を「マイナス排出」として計上する手法です。本ツールでは productMass × recycleRate × 2.0 kg-CO₂/kg をクレジットとしています。ただし ISO 14044 では計上方法(カットオフ法、回避負荷法、PEFサーキュラーフットプリント式など)が複数あり、結果が変わります。比較目的では計上方法を必ず明示し、同じルールで複数案を比較するのが原則です。
目安として、家電・自動車・産業機器のように使用中にエネルギーを消費し続ける製品は使用段階が 60〜90% を占めます(例:エアコン、冷蔵庫、ガソリン車)。一方で建材・家具・包装材・衣料品のように使用中に大きなエネルギーを消費しない製品は、材料製造段階が 50〜80% を占めます。本ツールの段階別寄与グラフで自分の製品がどちらに分類されるかを確認し、支配段階に絞って改善策(省エネ化 / 軽量化・材料置換)を打つのが効率的です。

実世界での応用

家電・電子機器のエコ設計:エアコン・冷蔵庫・テレビなどは使用段階が支配的で、10年使用なら全 CO₂ の 70〜85% を占めます。設計段階では「待機電力 0.5W → 0.1W」「インバータ化で年間消費電力 30% 削減」といった改善が桁違いに効きます。本ツールの「年間使用エネルギー」スライダーを動かして、累積 CO₂ の傾きがどう変わるか確認すると、省エネ設計の効果が直感的に分かります。

EV と内燃機関車の比較:EV は使用段階で直接 CO₂ を出さない分有利と言われますが、バッテリー製造に大量の CO₂(リチウム採掘・正極材合成・組立)を要するため、製造段階の排出が ICEV の 1.5〜2 倍になります。LCA で公平に比較すると、走行距離が 5〜8 万 km を超えたあたりで EV が CO₂ 優位に転じるのが一般的です(電力グリッドの清浄度で大きく変動)。設計判断ではなく「どこで・何年・どう使うか」が結論を決めます。

建材・パッケージのカーボンニュートラル:断熱材・コンクリート・段ボール・PETボトルなど、使用中にエネルギーを消費しない製品は材料製造段階がほぼ全てです。CO₂ 削減策は「リサイクル材比率を上げる」「軽量化」「原料を低炭素プロセス(電炉鋼、グリーンセメント、バイオプラ)に置換」が中心。本ツールで「材料製造CO₂原単位」を変えると、材料置換の効果がそのまま合計値に効いてくるのが分かります。

サーキュラーエコノミー設計:分解しやすい構造、単一素材化、リユース・リファービッシュ前提の設計は、LCA でリサイクルクレジット項(マイナス排出)を増やすことができます。Apple や Dell が公開している製品 LCA レポートでは、「分解性向上で 30% のリサイクル率改善」を定量化しています。本ツールでリサイクル率を 30% → 70% に上げてみると、最終 CO₂ がどれだけ下がるかが見えます。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「電力 CO₂ 強度を全国平均で固定する」こと。実際には販売国・地域・契約電源(再エネ100%メニュー)・時間帯で 10〜20 倍違います。フランス(約0.05)で売る家電と豪州(約0.9)で売る家電は、同じ製品でも LCA 結果が桁違いになります。さらに製品寿命中にグリッドが脱炭素化していくシナリオ(IEA NetZero など)を織り込むと、新しい家電ほど将来の使用段階 CO₂ が減るため、寿命を延ばす設計の価値が上がります。グリッド強度の感度分析を必ず行ってください。

次に、「リサイクルクレジットを過大に計上する」こと。本ツールでは 2.0 kg-CO₂/kg を仮置きしましたが、実際にはリサイクル工程自体がエネルギーを消費し、品質が下がる(ダウンサイクル:飲料 PET → 衣料繊維のように元の用途に戻れない)ことも多くあります。ISO 14044 では複数の計上方法(カットオフ法、回避負荷法、PEFサーキュラーフットプリント式)が定義されており、どれを採用するかで結果が 2〜3 倍変わります。「リサイクル率 100% だから CO₂ ほぼゼロ」という宣伝はほとんどの場合グリーンウォッシュです。

最後に、「機能単位(functional unit)を揃えずに比較する」こと。LCA の鉄則は「同じ機能を提供するための CO₂ を比較する」ことです。例えば紙コップと陶器コップを比較するとき、紙コップは 1 回使い捨て、陶器コップは 500 回使う想定なら、機能単位は「500 回の飲用機会」になり、陶器コップ 1 個の製造 CO₂ を紙コップ 500 個の合計と比較すべきです。「製品 1 個あたり CO₂」で比較すると常に紙コップが有利に見えますが、機能単位で揃えると陶器コップが有利になることが多くあります。本ツールも単一製品の評価なので、複数案比較時は機能単位を意識してください。

使い方ガイド

  1. 製品の質量をkg単位で入力します。例えば、アルミニウム製自動車部品なら2.5kg、鋼製フレームなら15kgを設定
  2. 材料製造時のCO₂排出係数を入力します。アルミニウム12 kg-CO₂/kg、鋼2.1 kg-CO₂/kg、プラスチック3.5 kg-CO₂/kgが標準値
  3. 加工製造に必要な電力量(kWh)を指定し、電力グリッド構成を選択します。日本電力網平均0.498 kg-CO₂/kWh、再生可能エネルギー0.05 kg-CO₂/kWhで自動計算
  4. シミュレーターが材料製造CO₂、加工製造CO₂、使用段階CO₂、リサイクルクレジットを集計し、ライフサイクル合計と年あたりCO₂を表示

具体的な計算例

アルミニウム製自動車ヒートシンク(質量0.8kg)のLCA計算:材料製造CO₂=0.8×12=9.6 kg-CO₂、加工製造に3kWh消費で日本グリッド使用時3×0.498=1.49 kg-CO₂、使用段階15年間で放熱損失削減による30 kg-CO₂削減、リサイクル率85%でアルミニウムクレジット6.8 kg-CO₂を差引。ライフサイクル合計=9.6+1.49-30-6.8=-25.7 kg-CO₂(カーボンネガティブ)、年あたり-1.7 kg-CO₂/year

実務での注意点