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環境工学

大気質指数 (AQI) シミュレーター — US EPA 方式

PM2.5・PM10・オゾン・NO2・SO2 の濃度を入力すると、US EPA 方式の区間線形補間で大気質指数 (AQI) を計算します。総合 AQI、健康影響カテゴリ、主要汚染物質、各物質の寄与をリアルタイムで可視化します。

パラメータ設定
PM2.5 濃度
µg/m³
直径 2.5 µm 以下の微小粒子状物質(24h 平均)
PM10 濃度
µg/m³
直径 10 µm 以下の粗大粒子状物質(24h 平均)
O₃(オゾン)濃度
ppb
対流圏オゾン(8h 平均)。光化学スモッグの主成分
NO₂(二酸化窒素)濃度
ppb
自動車排ガス・燃焼由来(1h 平均)
SO₂(二酸化硫黄)濃度
ppb
石炭・重油燃焼由来(1h 平均)
計算結果
PM2.5 AQI
PM10 AQI
O₃ AQI
総合 AQI
カテゴリ
主要汚染物質
サブ AQI バーチャート — カテゴリ別カラーバンド

5 物質のサブ AQI を横棒で表示。背景は 6 段階カテゴリ(緑→黄→橙→赤→紫→栗)の色帯で、最も高いバーが総合 AQI を支配します。

各物質のサブ AQI(Chart.js)
PM2.5 濃度 vs AQI — 非線形ブレークポイント
理論・主要公式

$$I = \frac{I_{hi}-I_{lo}}{C_{hi}-C_{lo}}\,(C-C_{lo})+I_{lo}$$

区間線形補間式。汚染物質濃度 C が区間 [C_lo, C_hi] にあるとき、その区間に対応するサブ AQI 区間 [I_lo, I_hi] へ線形補間する。区間ごとに傾きが変わるため、全体としては非線形なステップ状の関数となる。

$$\mathrm{AQI}_{\text{total}} = \max\bigl(I_{\mathrm{PM2.5}},\ I_{\mathrm{PM10}},\ I_{\mathrm{O_3}},\ I_{\mathrm{NO_2}},\ I_{\mathrm{SO_2}}\bigr)$$

総合 AQI は 5 物質のサブ AQI の最大値。最大を示した物質が「主要汚染物質」となり、健康リスクの主因として表示される。CO を加えれば 6 物質、全 US EPA 公式構成となる。

大気質指数 (AQI) とは

🙋
天気予報で「今日の AQI は 150」とか聞きますけど、結局あの数字って何を意味してるんですか?単位もないし、感覚的によく分からなくて…。
🎓
いい質問だね。AQI(Air Quality Index)は、大気中のいろんな汚染物質を「健康への影響」という共通スケールに換算した無次元の指標なんだ。PM2.5、PM10、オゾン、NO2、SO2、CO の 6 種類が代表的で、それぞれ別の単位(µg/m³ や ppb)で測られているけど、これを 0〜500 の範囲に正規化することで「PM2.5 が悪いのとオゾンが悪いの、どっちが体に悪い?」と直接比較できるようにしている。US EPA 方式では、AQI=100 がちょうど「健康基準の上限値」に対応するように設計されているんだ。
🙋
なるほど、共通スケールってわけですね。でも、どうやって濃度から AQI を計算するんですか?単純に「濃度 × 何倍」とかじゃないんですよね?
🎓
そこが面白いところで、線形に比例するわけじゃない。US EPA は「ブレークポイント表」というものを公開していて、例えば PM2.5 なら 12 µg/m³ までは AQI 0-50、12.1〜35.4 で 51-100、35.5〜55.4 で 101-150… と区切られている。各区間内で線形補間するから、全体としては階段状にカクカクと折れ曲がった関数になる。「PM2.5 が 12 から 12.1 に変わると AQI が 50 から 51 へ一気に飛ぶ」みたいなことが起きるんだ。これは健康影響が濃度に対して非線形に効くという疫学エビデンスに基づいて区間を切ってあるためだよ。
🙋
それで、5 物質それぞれの AQI を出した後、最終的な「総合 AQI」はどう決めるんですか?平均?合計?
🎓
「最大値(max)」を採用するんだ。これは worst-of アプローチと呼ばれていて、「一番悪い汚染物質に引きずられる」という考え方。理由は明快で、PM2.5 が AQI 200 でオゾンが 30 の状況では、空気が悪いのは明らかに PM2.5 のせいで、平均化したら危険性が薄まってしまう。最大値を取れば必ず「最悪のケース」を保守的に評価できる。そしてその最大を示した物質を「主要汚染物質(governing pollutant)」と呼んで、対策のターゲットを明確にするんだよ。
🙋
主要汚染物質って、季節や場所で変わったりするんですか?東京の冬と夏で違うとか。
🎓
まさに季節と地域で支配物質ががらりと入れ替わるよ。冬の都市部は気温が低くて大気が安定するから PM2.5 が地表近くに溜まりやすい—暖房・自動車・大陸からの越境汚染が重なって PM2.5 が支配的になる。一方、夏の都市・郊外は強い日射で NOx + VOC が光化学反応してオゾンが生成されるから、オゾンが支配物質になる。SO2 は石炭火力が多い地域で主要、NO2 は交通量の多い大都市の幹線道路沿いで主要、と人為的活動のパターンで決まるんだ。だから AQI を「総合値」だけで見ずに「どの物質が悪いか」まで確認するのが、対策を考えるうえでとても重要なんだよ。
🙋
最後に、AQI 100 を超えたらマスクすべき、みたいな実用的な目安はあるんですか?
🎓
EPA のカテゴリだと、101-150「敏感層に不健康」は喘息や心疾患、小児・高齢者は屋外活動を減らすレベル。151-200「不健康」は一般の人も長時間屋外運動を控える、201-300「非常に不健康」になると全員 N95 マスク推奨・屋内退避、301+「危険」は外出禁止級だ。実務的には、ジョギングや子どもの外遊びは AQI 100 を目安に、HEPA 空気清浄機の常用判断は AQI 50 を目安にする家庭が多い。ただし WHO の最新ガイドライン(2021)はもっと厳しくて、EPA の AQI 50(PM2.5 で 12 µg/m³)ですら WHO 基準では「不健康」相当。地域差が大きいから、住んでいる場所の基準も一緒に確認するといいよ。

よくある質問

US EPA 方式の AQI は、各汚染物質ごとに濃度 C を区間ごとの線形補間式 I = (I_hi - I_lo)/(C_hi - C_lo)·(C - C_lo) + I_lo で 0〜500 のサブ AQI に変換し、その最大値を総合 AQI とします。例えば PM2.5 が 35 µg/m³ なら区間 [12.1, 35.4] → [51, 100] にあり、I = 49/23.3·22.9 + 51 ≈ 99。区間境界は EPA が公衆衛生エビデンスに基づいて定めた非線形なステップで、単純な比例計算ではないのが特徴です。
総合 AQI は 5〜6 物質のサブ AQI のうち「最大値」を採用します(最も悪い指標で評価する考え方)。その最大を示した物質が「主要汚染物質(governing pollutant)」となり、健康リスクの主因として表示されます。例えば PM2.5 のサブ AQI が 99、他が全て 70 以下なら、総合 AQI = 99、主要汚染物質 = PM2.5。冬の都市部では PM2.5、夏の郊外では O3 が主要になるケースが多く、季節と地域で支配物質が入れ替わります。
AQI は 0-50 良好(緑)、51-100 普通(黄)、101-150 敏感層に不健康(橙)、151-200 不健康(赤)、201-300 非常に不健康(紫)、301+ 危険(栗色)の 6 段階に分類されます。101 を超えると気管支疾患・心疾患・小児・高齢者などの敏感層に影響が出始め、151 を超えると一般の人にも影響、201 を超えると屋外活動を控える警告レベルです。日本の環境基準(PM2.5 で 35 µg/m³/日)はおおむね AQI 100 に相当します。
WHO 2021 年改訂版は PM2.5 で 15 µg/m³/日と非常に厳しく、US EPA より約 2.3 倍厳格です。日本の環境基準(PM2.5: 35 µg/m³/日、35 µg/m³ の日平均が年間 98 パーセンタイル)は WHO より緩く EPA に近い値。本ツールは EPA の公式 AQI ブレークポイントを使用しており、WHO 基準で評価したい場合は表示値が約 2 倍以上低く出る点に注意してください。中国の AQI(HJ 633-2012)は EPA とほぼ同じ枠組みで、ブレークポイントが一部異なります。

実世界での応用

環境モニタリング・大気質公報:米国 AirNow、日本のそらまめ君、中国の全国空气质量发布平台などの公的サイトは、全国の測定局データをリアルタイムで AQI に変換して公開しています。市民は地図上の色(緑〜栗色)から直感的に大気状態を把握でき、外出判断や運動制限に活用します。本ツールは、こうした公開データから自分でブレークポイント計算を再現したいエンジニア・研究者・健康管理担当者のための基本ツールです。

都市計画・排出規制の事前評価:新規工場・交通インフラ建設の環境影響評価(EIA)では、拡散シミュレーション(AERMOD, CALPUFF)で得た濃度予測を AQI に変換し、影響範囲を地図上にプロットします。例えば「新設発電所により周辺 5km の SO2 が +30 ppb 増加し、最悪日に AQI が 80→125 へ悪化」のように、定量的な議論ができるようになります。本シミュレーターで濃度を 5 物質それぞれ動かして、どの物質が最も AQI 悪化に効くかを把握しておくと、規制設計の優先順位付けに役立ちます。

建物の換気・空気清浄機制御:商業ビル・学校・病院では、屋外 AQI に応じて外気導入量を自動制御するスマート HVAC が普及しています。AQI が 100 を超えたら外気を絞って HEPA 内気循環に切り替え、200 を超えたら全閉鎖、のような制御ロジックを設計する際、AQI ブレークポイントの理解は必須です。住宅向け空気清浄機(IoT 連動型)も同じロジックで、屋外センサー値から自動で運転モードを切り替えます。

疫学研究・健康影響評価:長期 PM2.5 曝露と循環器疾患死亡率の関係(Pope et al., Beelen et al. ら)は、AQI ではなく実濃度 µg/m³ で評価しますが、市民への公開やリスクコミュニケーションでは AQI に変換します。「AQI 50 上昇で死亡率が約 X% 増加」のような形に翻訳することで、専門家でない人にも健康リスクを伝えられます。本ツールで濃度と AQI の関係を体感しておくと、論文の数値を自分の住む地域に当てはめて解釈しやすくなります。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「AQI は濃度に比例する」と思い込むこと。本ツールのグラフを見ると分かるように、AQI vs 濃度は階段状の折れ線で、特に PM2.5 では低濃度域(〜12 µg/m³)の傾き(50/12 ≈ 4.2)と中濃度域(35.5〜55.4)の傾き(49/19.9 ≈ 2.5)と高濃度域(150.5〜250.4)の傾き(99/99.9 ≈ 1.0)が大きく異なります。「濃度が 2 倍になれば AQI も 2 倍」は成立しません。低濃度では小さな濃度上昇が AQI を大きく押し上げ、高濃度では濃度が増えても AQI の上昇は緩やか—これは高濃度では「もう十分悪い」という飽和を表現しています。比率で議論したいときは必ず濃度で行いましょう。

次に、「平均化時間の混在」。US EPA の AQI ブレークポイントは物質ごとに平均化時間が違います—PM2.5・PM10 は 24h 平均、O3 は 8h 平均、NO2・SO2 は 1h 平均、CO は 8h 平均です。本ツールでは入力された値をそのまま用いますが、実際の測定値で計算する際は、必ず物質ごとの公式平均化時間を使ってください。1h 値の PM2.5 を 24h 値と思い込んで入力すると、ピーク時の濃度で実態より悪い AQI が出ます。リアルタイム表示の「nowcast AQI」は短時間値から 24h 値を推定する別の補正式(重み付き移動平均)を使うため、厳密には本ツールの単純な区間補間とは異なります。

最後に、「AQI が同じなら健康影響も同じ」とは限らないこと。AQI=100 の状態でも、PM2.5 が支配的か、オゾンが支配的か、SO2 が支配的かで、影響を受けやすい人や対処法が違います。PM2.5 が主要なら N95 マスクと屋内退避が有効、オゾンが主要なら室内換気を絞る(屋外より室内のオゾン濃度が低くなる)、SO2 が主要なら喘息患者は特に注意、という具合に対策が変わります。総合 AQI だけで判断せず、必ず「主要汚染物質」と「個別サブ AQI」も合わせて見るのが、現代の大気質コミュニケーションの基本です。本ツールが主要汚染物質を別表示しているのもそのためです。

使い方ガイド

  1. PM2.5、PM10、オゾン(O₃)、NO2の測定濃度をμg/m³単位で入力します。例えばPM2.5が35μg/m³、PM10が80μg/m³の場合、各入力フィールドに数値を設定してください
  2. シミュレーターが各汚染物質ごとにUS EPA方式のAQI計算式を適用し、個別のAQI値を算出します。PM2.5のAQI、PM10のAQI、O₃のAQI、NO2のAQIが同時に表示されます
  3. 最高値となった汚染物質が総合AQIとして判定され、健康影響カテゴリ(Good/Moderate/Unhealthy for Sensitive Groups等)が自動決定されます。リアルタイム結果表示で主要汚染物質と汚染度を確認できます

具体的な計算例

工業地帯でのモニタリング事例:PM2.5が42μg/m³、PM10が95μg/m³、O₃が78ppb、NO2が65ppbを測定。各物質のAQI換算では、PM2.5からAQI=135(Unhealthy for Sensitive Groups)、PM10からAQI=168、O₃からAQI=142が算出され、総合AQIは168となり主要汚染物質はPM10と判定されます。この場合、呼吸器疾患者および小児に対する健康勧告が発令されます

実務での注意点