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水産資源・MSY

水産資源 MSY 最大持続生産量シミュレーター — Schaefer

タラやマグロ、ニシン、カタクチイワシなど主要な水産資源について、Schaefer・Pella-Tomlinson・Fox の余剰生産モデルから MSY(最大持続生産量)・B_MSY・F_MSY を計算します。現在の資源量と漁獲圧を入力すると、Kobe plot 上の象限(健全/再建中/過剰漁獲/危機)と予防的 TAC(漁獲枠)が即座にわかります。

パラメータ設定
対象魚種
プリセットの r と K を参考値として表示
環境収容力 K
t
海域が支えられる最大資源量
内的増加率 r
1/y
資源量が低いときの増加速度
現存資源量 B
t
現時点の親魚資源量推定値
漁獲死亡率 F
1/y
漁獲による瞬間死亡率
余剰生産モデル
サープラス曲線の形状仮定
戦略
TAC(漁獲枠)算定基準
計算結果
MSY (t/y)
B_MSY (t)
F_MSY (1/y)
B/B_MSY 比
F/F_MSY 比
資源状態
海洋・魚群アニメーション

海面と魚群、ロジスティック曲線、漁船による操業強度を表示します。色は資源状態(緑=健全、黄=再建中、橙=過剰漁獲、赤=危機)を表します。

余剰生産曲線 — Schaefer / Pella-Tomlinson / Fox
Kobe Plot — B/B_MSY × F/F_MSY
理論・主要公式

$$MSY = \frac{rK}{4},\quad B_{MSY} = \frac{K}{2},\quad F_{MSY} = \frac{r}{2}$$

Schaefer ロジスティック余剰生産モデル。r:内的増加率、K:環境収容力、MSY:最大持続生産量。B が K/2 のとき余剰生産が最大化し、その漁獲死亡率 r/2 で持続的に MSY を漁獲できる。

$$\frac{dB}{dt} = r\,B\left(1-\frac{B}{K}\right) - F\,B$$

資源量 B の時間変化。右辺第 1 項が余剰生産、第 2 項が漁獲。dB/dt = 0 の定常解が平衡資源量で、F が F_MSY を超えると平衡 B は B_MSY を下回る。

水産資源 MSY 評価 — Schaefer・Pella-Tomlinson モデル

🙋
「MSY」って、漁業のニュースでよく聞きますけど、結局何の数字なんですか?「これ以上獲ったらアウト」みたいなライン?
🎓
いい質問。MSY(Maximum Sustainable Yield、最大持続生産量)は「毎年これだけ獲っても資源が減らない最大量」のことなんだ。式で書くと MSY = rK/4 で、r は資源の内的増加率、K は海域の環境収容力。デフォルトの大西洋タラなら r=0.3、K=100 万トンだから MSY=7.5 万トン/年。これより少なければ資源は回復方向、これより多いと長期的に枯渇に向かう、っていう分岐点だね。
🙋
じゃあ MSY ぎりぎりまで毎年獲ればいいじゃないですか。なんで「予防的に 0.8 MSY」みたいに減らすんですか?
🎓
理由は 2 つある。1 つ目は r と K の推定値自体に大きな誤差があること。±30〜50% は当たり前で、本当の MSY が思っていたより低いと、毎年 MSY 狙いで獲っているうちに資源が崩れる。2 つ目はエルニーニョみたいな環境変動で、ある年の加入量(新しい世代の魚)が激減することがある。1972 年のペルー・カタクチイワシは ENSO で 1 年で 1/100 になった。だから FAO は「MSY の 70〜90% を上限に」って言ってて、これが予防的アプローチなんだ。
🙋
右側の Kobe plot、緑・黄・橙・赤の 4 象限が出てますね。デフォルトだと B/B_MSY=1.20、F/F_MSY=1.00 で「緑(健全)」になりますけど、F だけ上げるとどうなるんですか?
🎓
F のスライダーを 0.20 にしてみて。F/F_MSY=1.33 になって象限が「橙(過剰漁獲)」に動く。これは「今は資源量はまだあるけど、このまま獲り続けると数年で B が B_MSY を下回る」という状態。さらに F=0.30 まで上げて B のスライダーを 30 万トンにすると「赤(危機)」になる。Newfoundland のタラが 1992 年に陥った状態がまさにこれで、30 万人が失業して 30 年経った今も完全回復していないんだ。
🙋
余剰生産モデルが Schaefer・Pella-Tomlinson・Fox の 3 つあるのはなぜですか?同じ MSY 評価なのに使い分ける必要が?
🎓
資源の生活史で最適な形状が変わるからだよ。Schaefer は B_MSY = K/2 で対称ベルカーブ。これはタラのように長命で繁殖が安定した魚種の近似に良い。Pella-Tomlinson は m パラメータで非対称化できて、サンマやイワシのような短命・高繁殖力の魚種に向く。Fox は B_MSY ≈ 0.37K と早期に MSY に到達するから、若齢で漁獲圧が掛かる資源で保守的な評価がしたいときに使う。本ツールで上の選択を切り替えると余剰生産曲線の形が変わるのが見えるよ。
🙋
この余剰生産モデル、シンプルですけど実務でそのまま使われてるんですか?もっと高度な手法はないんですか?
🎓
実は ICCAT のクロマグロ評価や WCPFC のメバチマグロ評価では、Statistical Catch-at-Age(年齢別資源量解析)や Stock Synthesis のような年齢構造モデルが主流。これらは Beverton-Holt や Ricker の Stock-Recruitment 関係も内包して、加入の親魚量依存性まで再現する。ただ、データが少ない資源では未だに Schaefer 系の biomass dynamic model が国際的に標準。本ツールはその「最初の見立て」を直感的に掴むための入門ツールだと思って使ってほしい。MSC(Marine Stewardship Council)のサステナブルシーフード認証も、内部では B/B_MSY と F/F_MSY を見ているよ。

よくある質問

Schaefer のロジスティック余剰生産モデル dB/dt = rB(1−B/K) では、余剰生産が最大になる点が MSY = rK/4 で、そのときの資源量が B_MSY = K/2、漁獲死亡率が F_MSY = r/2 です。例えば内的増加率 r=0.30、環境収容力 K=1,000,000 t のタラ資源なら MSY = 75,000 t/年、B_MSY = 500,000 t、F_MSY = 0.15/年 となります。本ツールはこれを魚種別プリセットからリアルタイムで計算します。
Kobe plot は横軸に B/B_MSY、縦軸に F/F_MSY を取って資源状態を 4 区分する図です。緑(B≥B_MSY かつ F≤F_MSY)は健全、黄(B<B_MSY かつ F≤F_MSY)は再建中、橙(B≥B_MSY かつ F>F_MSY)は過剰漁獲継続、赤(B<B_MSY かつ F>F_MSY)は資源も漁獲もどちらも危機。ICCAT・WCPFC など国際管理機関の標準的な可視化手法で、TAC(漁獲枠)の交渉で多用されます。
Schaefer は B_MSY = K/2 で対称な dome 型を仮定する最もシンプルな式です。Pella-Tomlinson は形状パラメータ m を導入して非対称化でき、サンマやイワシのように短命で繁殖力の高い魚種で MSY が K/2 より低い側に来る現実を表現できます。Fox は Gompertz 型で B_MSY ≈ K/e ≈ 0.37K と早期に MSY に到達するため、最大持続生産を保守的に見積もりたい場合や、若齢で漁獲圧が掛かる資源に向きます。
予防的アプローチ(precautionary approach)は、推定誤差や気候変動による加入量変動を考慮し、TAC を MSY そのものではなく安全余裕を見込んで設定する考え方です。1995 年の国連公海漁業協定で国際的に合意され、FAO のガイドラインでは MSY の 70〜90% を上限とするのが一般的。本ツールでは 0.8 MSY(予防的)と 0.5 MSY(資源再建中)の 2 つの戦略を選べます。1992 年の Newfoundland タラ崩壊は、MSY を過信した結果起きた典型例として知られています。

実世界での応用

国際漁業管理機関(ICCAT・WCPFC・NPFC)の TAC 算定:大西洋クロマグロを管理する ICCAT、太平洋クロマグロを管理する WCPFC、北太平洋のサンマを管理する NPFC では、加盟国の科学委員会が毎年 B/B_MSY と F/F_MSY を推定して Kobe plot を作成し、それを基に翌年の TAC(漁獲可能量)を交渉します。2010 年代の太平洋クロマグロは「赤」象限にあり、緊急の漁獲削減と未成魚保護で「黄」象限に戻し、現在は「緑」象限に近づきつつあります。

歴史的崩壊事例の事後分析:1992 年の Newfoundland 大西洋タラ崩壊(30 万人失業)、1972 年のペルー・カタクチイワシ崩壊(200 万 t → 2 万 t)、1947 年のカリフォルニア・マイワシ崩壊、Newfoundland カラフトシシャモなど、20 世紀後半の主要な資源崩壊は、いずれも Schaefer / Fox 系モデルで事後的に再現すると「橙〜赤象限に長期間留まっていた」ことが確認されています。MSY 概念の重要性を示す実証例として現代の漁業教科書で繰り返し引用されます。

MSC(Marine Stewardship Council)認証監査:サステナブルシーフードの国際認証 MSC のサプライチェーン認証では、原料となる漁業の B/B_MSY ≥ 0.8 と F/F_MSY ≤ 1.0 を基準に「持続可能漁業」を判定します。スーパーマーケットで青いラベルの魚を見たら、その背後では本ツールと同じ Schaefer 系モデルが回って評価されている、ということです。

気候変動下の資源管理シナリオ分析:海水温上昇で K(環境収容力)が長期的に変化する場合、固定的な MSY ではなく「動的 MSY」が必要になります。本ツールで K を 70% に下げて再計算すると、MSY も同じ比率で下がることが確認できます。ノルウェー海のタラやベーリング海のスケトウダラなど、寒冷種の北上シフトでこの動的 MSY 評価が現在進行形で議論されています。

よくある誤解と注意点

最大の落とし穴は、「MSY=目標漁獲量」と受け取ってしまうことです。MSY は理論上の上限であって、毎年それを獲り続けると、推定誤差(r と K の不確実性)と環境変動が同じ方向に振れた瞬間に資源が崩れます。FAO・国連公海漁業協定が定めた予防的アプローチでは、MSY の 70〜90% を上限とし、さらに資源量が B_MSY を下回ったら自動的に漁獲削減を発動する「HCR(Harvest Control Rule)」を併用します。本ツールでデフォルトの「予防的 0.8 MSY」を選んだのは、この国際合意に沿うためです。MSY を「目標」ではなく「絶対超えてはいけない天井」と捉えるのが正解です。

次に、余剰生産モデルが想定する「決定論的・即時平衡」を信じすぎること。実際の資源は加入量の年変動(recruitment variability、CV で 30〜100%)が支配的で、特に短命魚種のカタクチイワシやイカナゴでは「あるべき MSY」の半分しか獲れない年が普通にあります。Beverton-Holt や Ricker の Stock-Recruitment 関数で親魚量と加入量の関係を入れる、Statistical Catch-at-Age モデルで年齢構造を解く、といった高度化が必要な場面が多い。本ツールの結果は「最初の感覚値」と捉え、本格的な評価には Stock Synthesis や SS3 のような専用ソフトを使ってください。

最後に、「F_MSY を超えなければ安全」だけを見て B(資源量)を軽視すること。Kobe plot の橙象限(B ≥ B_MSY、F > F_MSY)に長期間留まると、いずれ B が B_MSY を下回って黄→赤に転落します。逆に黄象限(B < B_MSY、F ≤ F_MSY)は「再建中」で漁獲は抑えれば数年で緑に戻ります。F だけ・B だけを見るのではなく、必ず両方を Kobe plot で同時に確認し、移動の方向(軌跡)も追跡することが現代の資源管理の基本です。

使い方ガイド

  1. 環境収容力 K(トン)を入力します。例えばマイワシ資源では K=9,000,000トン。
  2. 内的増加率 r(年^-1)を設定します。スケトウダラでは r=0.35程度が標準値。
  3. 現存資源量 B(トン)と漁獲死亡率 F(年^-1)を入力後、計算を実行すると MSY・B_MSY・F_MSY が算出されます。
  4. 出力される B/B_MSY 比と F/F_MSY 比から Kobe plot で資源状態(健全性/過漁/回復段階)を判定します。

具体的な計算例

ホタテ貝資源の場合:K=450,000トン、r=0.42年^-1、現存資源 B=280,000トン、漁獲死亡率 F=0.18年^-1 を入力すると、MSY=47,250トン/年、B_MSY=225,000トン、F_MSY=0.21年^-1 が得られます。B/B_MSY=1.24、F/F_MSY=0.86 となり、資源量は MSY 水準を上回りつつ漁獲圧は適切な「健全性高い」状態と判定されます。

実務での注意点