マイナー則 シミュレーター 戻る
疲労解析シミュレーター

マイナー則 シミュレーター — 線形累積損傷による疲労寿命

Palmgren-Miner 線形累積損傷則 D = Σ(n_i/N_i) と Basquin 型 S-N 曲線 N = 0.5·(σ_a/σ_f')^(1/b) に基づき、2 レベル変動荷重の応力振幅と実サイクル数を入力すると、各レベルの許容サイクル数 N_i、累積損傷度 D、安全係数 S = 1/D を実時間計算します。両対数 S-N 曲線上に 2 つの動作点を表示し、損傷分解バーチャートで D_1, D_2, D_total と破壊基準 D=1 を可視化します。

パラメータ設定
応力レベル 1 σ_a1
MPa
実サイクル数 n_1
千 cyc
応力レベル 2 σ_a2
MPa
実サイクル数 n_2
千 cyc

既定値は σ_a1=250 MPa×5,000 サイクル、σ_a2=200 MPa×10,000 サイクル。Basquin 指数 b=-0.10、疲労強度係数 σ_f'=1,000 MPa(典型的な鋼材)を内部で使用。

計算結果
累積損傷 D = Σ(n_i/N_i)
レベル 1 許容 N_1
レベル 2 許容 N_2
安全係数 S = 1/D
Basquin S-N 曲線(両対数)と動作点

横軸=サイクル数 N(対数, 10²〜10⁸)/縦軸=応力振幅 σ_a (MPa, 50〜500)/青曲線=Basquin 型 S-N 曲線/赤丸=レベル 1 (σ_a1, N_1)/橙丸=レベル 2 (σ_a2, N_2)。両対数で直線になります。

累積損傷の分解(D_1, D_2, D_total)

バー=各レベルの損傷度 D_i = n_i/N_i と合計 D/赤水平線=破壊基準 D=1(マイナー基準)/D が 1 に近いほど寿命終端、S = 1/D は同一スペクトルの繰り返し可能回数。

理論・主要公式

Palmgren-Miner 線形累積損傷則は、変動振幅荷重を受ける構造の寿命を予測する古典的な手法です。各応力レベル $i$ で「実サイクル数 $n_i$」と「破壊までの許容サイクル数 $N_i$」の比 $n_i/N_i$ を損傷度と定義し、線形に足し合わせます:

$$D = \sum_i \frac{n_i}{N_i}$$

$D=1$ で疲労破壊と判定されます(Miner 基準)。許容サイクル数 $N_i$ は Basquin 則による S-N 曲線から求めます:

$$\sigma_a = \sigma_f' \cdot (2N_f)^{b} \;\;\Longrightarrow\;\; N = \tfrac{1}{2}\!\left(\frac{\sigma_a}{\sigma_f'}\right)^{1/b}$$

本ツールでは典型鋼材の $\sigma_f' = 1000$ MPa、$b = -0.10$(→ $1/b = -10$)を使用し、安全係数を $S = 1/D$ で定義します:

$$S = \frac{1}{D} = \frac{1}{\sum_i n_i / N_i}$$

$\sigma_a$ は応力振幅、$\sigma_f'$ は疲労強度係数(鋼材で約 $1.5 S_u$)、$b$ は Basquin 指数(鋼材で $-0.05$〜$-0.15$)、$n_i$ は実サイクル数、$N_i$ は同応力での許容サイクル数。両対数 S-N 曲線上で応力を 2 倍にすると $N$ が約 $2^{10} \approx 1000$ 倍小さくなる($b=-0.10$ の場合)のがマイナー則の感度の高さです。

マイナー則 シミュレーターとは

🙋
疲労って S-N 曲線で読むって習ったんですが、現実の機械って一定振幅で揺れてないですよね?例えば自動車のサスペンションって、段差で大きく揺れたり、舗装路でほぼ静止だったり、バラバラじゃないですか。
🎓
良い問題意識だ。それを扱うのが マイナー則(Palmgren-Miner 線形累積損傷則)。式は簡単で D = Σ(n_i/N_i)。「ある応力振幅で n_i 回受けたら、その応力で破壊までの許容サイクル N_i に対して n_i/N_i だけ寿命を消費した」と考え、全レベルを足し合わせる。本ツールの既定値(σ_a1=250 MPa×5,000 サイクル、σ_a2=200 MPa×10,000 サイクル)で計算してみると、N_1 ≈ 524k、N_2 ≈ 4.88M、D = 5000/524288 + 10000/4882813 ≈ 0.0116。D が 1 に達するまで現スペクトルを 86 回繰り返せる、というのが安全係数 S = 1/D ≈ 86 の意味だ。
🙋
なるほど。でも上の式、応力を 250 から 200 に下げただけで許容サイクル数が 10 倍くらい違いますね?感覚的にちょっと変わりすぎな気がします。
🎓
そこが S-N 曲線の核心だ。Basquin 則は両対数で直線になるんだけど、傾き b は普通 -0.05〜-0.15 くらい。本ツールでは典型鋼材の b = -0.10 を使ってる。すると 1/b = -10 で、応力を 1.25 倍(250/200)にすると N は (1.25)^(-10) ≈ 1/9.3 になる。つまり応力 25% 増で寿命が約 10 倍短くなる。航空機やばねの設計で「応力をあと 20 MPa 下げられないか」と粘る理由がここだ。本ツールで σ_a1 スライダーを 250→300 に上げてみると、N_1 が約 6 分の 1(87k)まで激減して D が一気に増えるのが見える。
🙋
じゃあ、実務では「D < 1 ならOK」って単純に判定していいんですか?
🎓
理論上はそうだけど、実験では D=1 で必ずしも壊れず、D = 0.5〜2.0 とバラつくことが知られている。荷重の順序(高荷重→低荷重と逆だと寿命が変わる)、平均応力、疲労限度以下のサイクルの扱い、などが線形仮定からズレる主因だ。だから安全側設計では「D ≤ 0.3」や「D ≤ 0.5」を判定基準にする。航空機構造では D ≤ 0.1 まで厳しくすることもある。本ツールはあくまで線形累積の概念を直感で理解する教材として使ってほしい。実機設計ではレインフロー計数、Goodman/Gerber 補正、変形マイナー則(Manson-Halford 等)と組み合わせるのが標準だ。
🙋
右下のバーチャートで D₁ と D₂ を分解してくれてるの分かりやすいです。これって設計でどう活用しますか?
🎓
鋭い。実は「どの応力レベルが寿命を食ってるか」を可視化するのが、マイナー則の最も実用的な使い方だ。例えば既定値だと D₁ ≈ 0.00954、D₂ ≈ 0.00205 で、レベル 1(250 MPa)が損傷の 82% を担っている。つまり「サイクル数は多いけど応力の低いレベル 2 をいくら減らしてもほぼ効果がない、レベル 1 を 20 MPa 下げる方が圧倒的に効く」と判断できる。実際の設計では応力スペクトルを 5〜10 レベルに分け、棒グラフで支配的レベルを特定して、そこに対策を集中させる。本ツールで σ_a1 を 250→240 に少し下げるだけで D が 35% 減るのを試してみるといい。

よくある質問

マイナー則は、変動振幅荷重を受ける構造の疲労寿命を予測する最も基本的な手法で、線形累積損傷則とも呼ばれます。式は D = Σ(n_i/N_i) で、n_i は実際に作用したサイクル数、N_i は同じ応力振幅で破壊に至る S-N 曲線上の許容サイクル数です。各応力レベルの「損傷度 n_i/N_i」を線形に足し合わせ、合計 D が 1 に達した時点で破壊と判定します。本ツールの既定値(σ_a1=250 MPa×5,000 サイクル、σ_a2=200 MPa×10,000 サイクル)では D ≈ 0.0116、安全係数 S = 1/D ≈ 86 となり、まだ寿命に十分余裕があることが分かります。1924 年 Palmgren が転がり軸受で提唱、1945 年 Miner が一般化しました。
マイナー則は線形仮定のため、(1) 荷重順序効果(高→低と低→高で寿命が違う)を無視する、(2) 平均応力の影響を直接含まない、(3) 疲労限度以下のサイクルを通常カウントしない、という限界があります。実験では D=1 ではなく D=0.5〜2.0 の範囲で破壊することが知られ、安全側設計では「マイナー則の判定値を 0.3〜0.5 に厳しくする」のが一般的です。本ツールはあくまで線形累積を学ぶ教材で、実際の設計では荷重スペクトルのレインフロー計数、Goodman/Gerber 補正、変形マイナー則(Manson-Halford)等と組み合わせる必要があります。
Basquin 則は σ_a = σ_f'·(2N_f)^b の関係を仮定し、これを N について解くと N = 0.5·(σ_a/σ_f')^(1/b) になります。本ツールでは典型的な鋼材を想定し、疲労強度係数 σ_f' = 1000 MPa、Basquin 指数 b = -0.10(→ 1/b = -10)を用いています。例えば σ_a = 250 MPa の場合 N = 0.5·(0.25)^(-10) = 0.5·4^10 = 524,288 サイクル、σ_a = 200 MPa では N = 0.5·(0.2)^(-10) = 0.5·5^10 ≈ 4.88×10^6 サイクルが得られます。S-N 曲線は両対数プロット上で直線になり、応力振幅を下げると許容サイクル数が指数的に増えるのが特徴です。
累積損傷 D が小さいほど寿命に余裕があり、その逆数 S = 1/D が「同じ荷重スペクトルをあと何回繰り返せるか」の目安になります。例えば D = 0.0116 なら S ≈ 86 で、現在の使用ブロックを 86 回繰り返すと破壊予測(D=1)に到達します。実務では設計目標寿命に応じて必要 S が決まり、自動車・産業機械で S ≥ 2、航空機構造で S ≥ 4〜10、原子力配管などで S ≥ 10〜20 が要求されることもあります。本ツールでスライダーを動かして σ_a1 を 250 → 350 MPa に上げると、N_1 が急減(10 倍以上)し、D と S が大きく変化するのを体感できます。

実世界での応用

自動車サスペンションのコイルばね:路面の凹凸で変動する荷重を受けるサスペンションばねは、舗装路(低応力)から段差(高応力)まで多レベルの応力サイクルを蓄積します。実走行データから加速度センサー → 応力時刻歴 → レインフロー計数で 5〜10 レベルにヒストグラム化し、各 σ_a_i × n_i に対して Basquin S-N から N_i を求めてマイナー則で D を計算します。10 万 km 走行で D ≤ 0.5 を満たす設計が一般的です。本ツールで σ_a1 を 250→300 にしてみると D が約 6 倍に増え、ばね材料の選定(SUP9 vs SUP12)や直径アップの判断材料が直感できます。

風力発電タワー・ブレードの 20 年寿命設計:風荷重は確率分布(Weibull)でモデル化され、ブレード根元には毎秒〜毎分オーダーで応力サイクルが発生します。20 年で 10^8〜10^9 サイクルに達するため、IEC 61400-1 の規格に従い、年間風速分布から年間損傷 D_year を計算し、20×D_year ≤ 1 を確認します。本ツールはあくまで 2 レベルですが、実機ではこの考え方を多レベルに拡張し、Goodman 補正で平均応力(自重)の影響を含めます。

航空機構造(フレーム・スキン)の耐久試験:離着陸ごとに与圧サイクル(GAG cycle, ground-air-ground)と飛行中の乱気流による振動が組み合わさります。1 機あたりの「飛行スペクトル」は典型 1〜100 MPa の連続変動で構成され、設計寿命 60,000〜100,000 飛行に対して D ≤ 0.5(航空機級では 0.1〜0.3)が要求されます。コメット機事故(1954)で疲労破壊が世界的に認知されて以来、機体構造はマイナー則 + 損傷許容設計(damage tolerance)で二重に評価されます。

圧力容器・配管の運転履歴解析:原子力・化学プラントの配管は、起動・停止・トリップなどの過渡負荷で 1 回あたり数百 MPa の熱応力サイクルを受けます。ASME Boiler & Pressure Vessel Code Sec. III では運転履歴を 5〜8 レベルに分類し、各レベルの設計サイクル数 N_design に対する累積使用率 U = Σ(n_actual/N_design) を計算(米国版マイナー則)。U ≤ 1.0 を全寿命にわたり満たすことが要求されます。本ツールの D は U と同等の概念です。

よくある誤解と注意点

最も典型的な誤解は、「D = 1 で必ず壊れる」と思い込むことです。実際の疲労試験では D = 1 で破壊する確率は 50% 程度で、上下に大きくバラつきます(典型 D = 0.5〜2.0、対数正規分布)。特に高→低の順序で荷重が加わると D < 1 で破壊することが多く、これを「序列効果(sequence effect)」と呼びます。例えば最初に過大荷重を受けて微小き裂が発生し、その後の低応力サイクルが亀裂進展を加速するため、線形累積の予測より早く壊れます。本ツールでは順序効果は再現せず、純粋な線形仮定のみを扱います。

次に、「疲労限度以下なら損傷ゼロ」と単純化しすぎる罠です。古典マイナー則ではこの仮定を採用しますが、現代の疲労試験では超高サイクル領域(N > 10^9)でも破壊が起きることが分かっています(ギガサイクル疲労、超長寿命疲労)。鉄道車輪・列車車軸・タービン翼など極長寿命部品ではこの効果を無視できません。本ツールは Basquin 直線を全域で使うため疲労限度の段差は含めませんが、実機設計では「修正マイナー則(CITA)」や Haibach 法で低応力域の傾斜を緩める手法が使われます。

最後に、「マイナー則は古い、現代では CFD/FEA で疲労寿命が直接計算できる」という誤解。実際には Ansys Workbench・Abaqus FE-SAFE・MSC Fatigue などの市販ソフトも、内部処理はマイナー則です。FEA で求めた応力時刻歴をレインフロー計数で離散化 → 各レベルに S-N 曲線を適用 → マイナー則で D を計算、という流れは変わりません。違いは「複数応力成分(多軸疲労)の合成」「平均応力補正」「表面仕上げ・寸法効果の修正係数」を自動化している点だけです。本ツールはこの「コア」部分を手で動かして直感を養うのが目的で、市販ソフトを使う前に必ず理解すべき基礎概念です。