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流体機械シミュレーター

ポンプ動作点 シミュレーター — ポンプ曲線とシステム曲線の交点

ポンプ性能曲線 H = H0 − kp·Q² と配管側のシステム曲線 H = H_static + ks·Q² を同じグラフに重ね、その交点が運転点。揚程や抵抗をスライダーで動かすたびに流量 Q・揚程 H・水力動力・軸動力が即更新されるので、ポンプ選定の感覚が掴めます。

ポンプパラメータ
ポンプ最大揚程 H0
m
ポンプ曲線傾き kp
×10⁻³
システムパラメータ
システム静的揚程 Hstatic
m
システム抵抗係数 ks
×10⁻³
計算結果
動作流量 Qop
動作揚程 Hop
水力動力 Pwater
軸動力 Pshaft (η=70%)
ポンプ曲線とシステム曲線
ポンプ曲線 H = H0 − kp·Q² システム曲線 H = Hstatic + ks·Q² 動作点
ポンプ系統模式図
理論・主要公式

$$H_{\text{pump}}(Q)=H_0-k_p Q^2,\quad H_{\text{sys}}(Q)=H_{\text{static}}+k_s Q^2$$

$$Q_{\text{op}}^2=\frac{H_0-H_{\text{static}}}{k_p+k_s},\quad H_{\text{op}}=H_{\text{static}}+k_s\,Q_{\text{op}}^2$$

$$P_{\text{water}}=\rho g Q_{\text{op}} H_{\text{op}},\quad P_{\text{shaft}}=P_{\text{water}}/\eta$$

Q は L/s、H は m、kp / ks は m/(L/s)²。ρ = 1000 kg/m³、g = 9.81 m/s²、効率 η = 0.70 を仮定。

ポンプ動作点とは

ポンプを実際の配管に取り付けたとき、ポンプが「出したい」性能(ポンプ性能曲線)と、配管系が「許す」損失(システム曲線)が一致する点で運転状態が決まります。この交点が 動作点(運転点) であり、ポンプ選定の出発点になります。

🙋
先生、グラフの赤と青の線がぶつかる黄色い点は何ですか?スライダーを動かすと一緒に動きますね。
🎓
いい質問だね。あれが動作点(運転点)だよ。赤いポンプ曲線は「Q を流すとこれだけ揚程が出せる」という能力、青いシステム曲線は「Q を流すと配管側でこれだけ損失が出る」という抵抗。両者が一致する Q がそのまま実際の流量になる。だから既定値だと約 68 L/s で揚程は約 53 m、と読めるんだ。
🙋
右下の模式図で「Hstatic」って書かれた縦の矢印がありますが、これは何ですか?タンクの水面の差ですか?
🎓
そう、二つの水槽の水面差が静的揚程 H_static だ。これは流量にかかわらず必ず必要な「お持ち上げ料金」。slHst を動かすと右タンクが上下して、システム曲線も丸ごと上下する。動作点も連動して左右に移る。
🙋
「ks をスイープ」ボタンを押すと動作点が左右に動きますが、これは現場で言うと何の操作に当たりますか?
🎓
バルブの開閉だよ。バルブを絞ると ks が大きくなってシステム曲線が急になり、流量が減る。逆に開けば ks が小さくなり流量が増える。実機では電動弁やインバーター制御で動作点を狙ったところに持って行く。ツールでスイープしながら水力動力 P_water と軸動力 P_shaft の値を見ると、絞ったときに動力がどれくらい節約できるかも一目で分かるんだ。

物理モデルと主要な数式

本ツールではポンプ性能曲線とシステム曲線をどちらも放物線で近似しています。物理的な根拠は次の通りです。

ポンプ性能曲線: $H_{\text{pump}}(Q) = H_0 - k_p Q^2$。Q = 0 のときの揚程 H_0 を 締切揚程、kp は曲線の急峻さを決める係数で羽根車の幾何形状と回転数で決まります。

システム曲線: $H_{\text{sys}}(Q) = H_{\text{static}} + k_s Q^2$。H_static は静揚程(高低差+圧力差)、ks·Q² は配管摩擦と局部損失の合計で、Darcy-Weisbach 則と諸係数の和から導かれます。

動作点: 両者を等置して $Q_{\text{op}} = \sqrt{(H_0 - H_{\text{static}})/(k_p + k_s)}$、$H_{\text{op}} = H_{\text{static}} + k_s Q_{\text{op}}^2$ が得られます。Q を m³/s に換算した上で水力動力 $P_{\text{water}} = \rho g Q_{\text{op}} H_{\text{op}}$、効率 η = 0.70 を仮定して軸動力 $P_{\text{shaft}} = P_{\text{water}}/\eta$ を表示します。

実世界での応用

ビル給排水:地下受水槽から屋上高架水槽までの揚水ポンプ選定で、配管経路と高さから ks と H_static を算出し、動作点が BEP 近傍になる機種を選びます。

工場循環水:冷却塔と熱交換器の循環ループでは熱交換器の差圧が ks の大半を占めます。バルブ開度を変えながら動作点と流量の関係を確認し、年間運用コストを最小化します。

農業灌漑:取水ポンプの揚程は田畑との高低差で決まるため H_static が支配的。ホース径を変えて ks を調整し、必要流量を確保します。

消防設備:消火栓ポンプは静揚程+配管損失+ノズル放水圧を満たす動作点になるよう仕様を決め、複数台直列の場合は H0 が線形に増えると見なして動作点を求めます。

よくある誤解と注意点

ポンプの能力でなく系全体で動作点が決まる:「もっと大きいポンプを入れれば流量が増える」とは限りません。ポンプ曲線を上方にシフトしてもシステム曲線が動かなければ、動作点は左へ動いて流量がほとんど増えないこともあります。配管側の ks を下げる(管径を太くする)方が効果的なケースが多いです。

静揚程は流量にかかわらず必要なエネルギー:H_static が大きいと、いくら kp を小さくしても動作流量は増えにくくなります。Q_op² = (H_0 − H_static)/(kp + ks) という分子に注目してください。H_static ≥ H0 ではポンプは流量を出せません。

効率は動作点で評価する:本ツールは η = 0.70 の固定値で軸動力を概算していますが、実機では動作点が BEP(最高効率点)から外れるほど効率が低下し、軸動力の見積もりがずれます。実際のメーカ性能曲線と効率曲線を必ず照合してください。

よくある質問

既定値は H0 = 100 m, kp = 0.010, H_static = 30 m, ks = 0.005 です。Q_op² = (100 − 30)/(0.010 + 0.005) = 70/0.015 ≈ 4666.7 となり、Q_op = √4666.7 ≈ 68.3 L/s が求まります。H_op は 30 + 0.005×4666.7 ≈ 53.3 m です。
H_static が H0 を超えるとポンプは流量を発生できず、Q = 0 が表示されます。H0 を上げるか H_static を下げて (H0 − H_static) > 0 となる組み合わせにしてください。
kp と ks の物理単位は m/(L/s)² です。実機の典型値が 10⁻³ オーダーのため、スライダー値に 10⁻³ を掛けた数値を係数として使用します。例えばスライダー値 10.0 は kp = 0.0100 m/(L/s)² です。
本ツールは単独運転・固定効率の動作点解析に特化しています。並列/直列や効率曲線については、サイト内の「ポンプ運転点計算ツール」「遠心ポンプ特性曲線シミュレーター」を併用してください。