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加工・製造

圧延(板圧延)の圧延荷重シミュレーター

2本の回転ロールで金属板を挟んで薄く延ばす「板圧延」を見積もるツールです。板幅・入口板厚・出口板厚・ロール半径・流動応力を変えると、圧下量・接触弧長・圧延荷重・圧延トルクがリアルタイムで分かり、圧延機にかかる巨大な荷重を簡易な平面ひずみモデルで把握できます。

パラメータ設定
板幅 w
mm
入口板厚 h₀
mm
ロールに入る前の板の厚さ
出口板厚 h₁
mm
ロールを抜けた後の板の厚さ(h₀ より小さく)
ロール半径 R
mm
平均流動応力 Y
MPa
材料が塑性変形に抵抗する強さ。冷間・硬質材ほど大きい
計算結果
圧下量 Δh (mm)
圧下率 (%)
接触弧長 (mm)
圧延荷重 (kN)
圧延トルク(両ロール)(kN·m)
圧下率の判定
板圧延の断面図 — 圧延アニメーション

入口板厚 h₀ の板が2本の逆回転ロールに噛み込まれ、出口板厚 h₁ まで薄く(同時に長く)延ばされます。矢印はロールを押し広げる圧延荷重を表します。

圧延荷重 vs 出口板厚 h₁
圧延荷重 vs ロール半径 R
理論・主要公式

$$L=\sqrt{R\cdot\Delta h},\qquad F=w\,L\cdot 1.15\,Y$$

L は投影接触弧長(mm)、1.15Y は平面ひずみの平均圧力(Y は平均流動応力 MPa)。圧延荷重 F は板幅 w・流動応力 Y・接触弧長 L とともに大きくなる。Δh:圧下量、R:ロール半径。

$$\Delta h = h_0 - h_1,\qquad r = \frac{\Delta h}{h_0}\times 100\,[\%]$$

圧下量 Δh と圧下率 r。h₀:入口板厚、h₁:出口板厚。圧下率はその板をどれだけ強く絞ったかを示す。

$$M = F\cdot\frac{L}{1000}\quad[\text{N·m}]$$

圧延トルク M(両ロール合計)。圧延荷重 F が接触弧長 L 程度のレバー長で作用すると見なした概算値。

圧延の圧延荷重とは

🙋
「圧延」って、金属の板を2本のローラーで挟んで薄く延ばす、あの工程ですよね?身近すぎてあまり意識したことがないんですが…。
🎓
そう、それだ。実は圧延は、トン数でいえば金属加工の中で最も重要な工程なんだ。世界の鉄やアルミのほとんどは、薄板・厚板・帯鋼・棒・形鋼になる途中で必ず圧延機のロールの間を通る。板圧延では、板の厚みよりわずかに狭くしたロールのすき間に板を送り込む。ロールは摩擦で板を噛み込み、引きずり込みながら薄く絞る——これがフラットローリングだよ。
🙋
薄くなるってことは、その分だけ材料はどこかに行くんですよね?消えるわけじゃないし…。
🎓
いいところに気づいたね。金属は体積が保存されるから、薄くなった分だけ「長く」なる。幅の狭い材料なら少しだけ「幅広」にもなるけど、板圧延では幅はほぼ変わらず、ほとんどが長さに化ける。1パスで減らした厚みが「圧下量 Δh」、それを入口板厚で割った割合が「圧下率」だ。左で入口板厚 h₀ と出口板厚 h₁ を動かすと、圧下量と圧下率が変わるのが見えるはずだよ。
🙋
なるほど。それで「圧延荷重」っていうのは、ロールが板を押す力のことですか?
🎓
正確には、板を絞るときに2本のロールが互いに「押し広げられる」力——ロール分離力のことだ。これがとにかく巨大で、ふつう数千キロニュートンにもなる。だから圧延機のフレームも軸受も圧下装置も、この荷重に耐えるよう設計しなきゃいけない。しかもロール自身が荷重でたわむから、平らな板を圧延できるように、あらかじめロールをわずかな樽形(クラウン)に研削しておくんだ。圧延荷重はモーター動力も板厚精度も決める、まさに設計の心臓部だよ。
🙋
その圧延荷重って、何を変えると大きくなるんですか?左のスライダーをいじると数字がぐっと動きますね。
🎓
荷重 F = w·L·1.15Y を見ると分かりやすい。板幅 w が広いほど、材料の流動応力 Y が大きいほど——つまり薄くて加工硬化した冷間材ほど——荷重は増える。そして接触弧長 L = √(R·Δh) は、ロール半径 R と圧下量 Δh の両方とともに伸びる。だから大きく絞りたいときは、大径で強力なロールを持つ圧延機を使う。逆に、長い製品を一度に絞らず多スタンドで少しずつ減らすのも、1スタンドあたりの荷重を抑えるためなんだ。
🙋
圧下率が大きすぎると赤い警告が出ますね。一度にたくさん絞るのは、やっぱりまずいんですか?
🎓
そう。圧下率が35%を超えると、このツールは注意を出す。一度に大きく絞ると荷重もトルクも跳ね上がるし、ロールが板を噛み込めなくなる「噛み込み不良」も起きやすくなる。だから現場では、軽い圧下・標準的な圧下・大きい圧下と感覚を持って、1パスの圧下率を無理のない範囲に収めるんだ。足りなければパス数を増やせばいい——それが圧延の基本戦略だよ。

よくある質問

本ツールでは簡易な平面ひずみモデルを使います。まず圧下量 Δh = h₀ − h₁ を求め、投影接触弧長を L = √(R·Δh) で計算します(R はロール半径)。圧延荷重は平均圧力を 1.15Y(Y は平均流動応力)として、投影接触面積 w·L にかかると考え、F = w·L·1.15Y で見積もります。w は板幅です。実機では摩擦や弾性偏平の影響で荷重はさらに大きくなりますが、設計初期の当たりづけにはこの式で十分です。
圧下量 Δh は1パスで減らした板厚そのもの(Δh = h₀ − h₁、単位 mm)です。圧下率は圧下量を入口板厚で割った割合(reduction = Δh/h₀ × 100、単位 %)で、その材料をどれだけ強く絞ったかを表します。例えば入口10mmを出口8mmにすれば圧下量は2mm、圧下率は20%です。圧延荷重は圧下量(接触弧長を通じて)に効くため、同じ最終板厚でも一度に大きく絞るほど荷重が増えます。
圧延荷重 F = w·L·1.15Y は、板幅 w、平均流動応力 Y、接触弧長 L の3つで決まります。接触弧長 L = √(R·Δh) はロール半径 R と圧下量 Δh とともに大きくなります。つまり、幅広の板ほど、加工硬化した硬い材料ほど、ロール半径が大きいほど、そして1パスの圧下量が大きいほど荷重は増えます。冷間圧延で薄くて硬い材料を絞ると荷重が桁違いに大きくなるのはこのためで、長い製品を一度に絞らず多スタンドで段階的に減らすのも荷重を分散するためです。
圧延荷重は数百〜数千キロニュートンに達し、圧延機のあらゆる設計を支配するからです。フレーム・軸受・圧下装置はこの巨大な荷重に耐えるよう設計しなければなりません。ロール自体も荷重で弾性的にたわむため、平らな板を圧延できるよう、あらかじめわずかな樽形のクラウン(カンバー)を付けて研削します。さらに圧延荷重はモーター動力と達成できる板厚精度も決めます。荷重を見誤ると、板がうねる・寸法が出ない・最悪はロールやハウジングが破損するため、設計初期の見積もりが欠かせません。

実世界での応用

製鉄所の熱間・冷間圧延ライン:スラブやビレットを薄板・厚板・帯鋼へ加工する圧延機が圧延荷重計算の主戦場です。熱間圧延では材料が高温で柔らかく流動応力が低いため大きく絞れますが、冷間圧延では材料が硬く加工硬化するため荷重が桁違いに大きくなります。タンデムミル(多スタンド連続圧延機)では各スタンドの圧下配分を荷重・トルク・動力のバランスで決め、最終スタンドで板厚精度を仕上げます。

非鉄金属の板・箔の製造:アルミ缶用の板材、銅やステンレスの帯材、さらにはミクロン単位のアルミ箔まで、圧延は薄物製造の主役です。極薄の箔では材料が極度に加工硬化して流動応力が非常に高くなるため、小径のワークロールを大径のバックアップロールで支える「クラスタミル」「ゼンジミア圧延機」を使い、巨大な荷重に耐えながら極小の圧下を精密に行います。

圧延機の設計・更新:新しい圧延機やスタンドを設計するとき、想定する材料・寸法・圧下スケジュールから圧延荷重を見積もり、ハウジング(フレーム)の剛性、軸受容量、圧下シリンダの推力、駆動モーターの定格を決めます。本ツールのような簡易計算は、詳細な弾塑性FEM解析や圧延理論計算に入る前の当たりづけとして有効で、ロール径や圧下配分の方針を素早く比較できます。

圧延トラブルの解析:「板がうねる」「板厚が長手方向にばらつく」「ロールが早期に摩耗・剥離する」といった圧延トラブルでは、圧延荷重とロールたわみの評価が手がかりになります。荷重が想定より大きければロールクラウンや圧下配分を見直し、噛み込み不良が起きていれば1パスの圧下率を下げる、といった判断に使います。荷重レベルを把握しておくことが、現場改善の出発点になります。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「この簡易式で実機の圧延荷重がそのまま分かる」と思い込むことです。本ツールの F = w·L·1.15Y は、平均圧力を流動応力の1.15倍(平面ひずみのミーゼス係数)と置いた最も単純なモデルです。実際の圧延では、ロールと板の間の摩擦によって接触面の圧力が中央で盛り上がる「フリクションヒル」が生じ、荷重は簡易式より大きくなります。さらにロールが板を押し返す反力で弾性的に偏平(つぶれ)して接触弧長が伸び、荷重をさらに押し上げます。冷間圧延の薄物では、この摩擦と偏平の効果で荷重が2倍以上になることもあります。本ツールはあくまで設計初期の当たりづけと位置づけ、最終的には Bland-Ford や Hill の圧延理論、あるいはFEM解析で詰めてください。

次に、「流動応力 Y は材料ごとに決まった一つの値」という思い込みです。流動応力は、温度・ひずみ・ひずみ速度で大きく変わります。熱間圧延では温度が高いほど Y が下がり、同じ圧下でも荷重は小さくなります。一方、冷間圧延では絞るほど材料が加工硬化して Y が上がるため、パスを重ねるごとに荷重が増えていきます。本ツールに入力する「平均流動応力」は、そのパスの入口と出口の中間的な代表値です。実務では、対象材料の応力-ひずみ曲線や高温変形抵抗のデータから、そのパスの条件に合った平均値を選んでください。

最後に、「圧下量を大きくすればパス数が減って効率的」という単純化です。確かに1パスの圧下量を増やせばパス数は減りますが、圧下量を増やすと接触弧長 L = √(R·Δh) が伸び、荷重もトルクも急増します。荷重が圧延機の許容値を超えれば、ハウジングが過大にたわんで板厚が出ず、最悪はロールやスピンドルが破損します。さらに圧下率を上げすぎると、ロールが板を引き込めない「噛み込み不良」が起きます。噛み込める最大圧下量は摩擦係数とロール半径で決まり、現実には1パスの圧下率を機械の能力と噛み込み条件の範囲に収める必要があります。圧下スケジュールは「荷重・トルク・動力・噛み込み・板厚精度」を同時に見ながら、複数パスに賢く配分するものです。

使い方ガイド

  1. 板厚・圧延前後の板厚(h0, h1)をmm単位で入力。鋼板の場合h0=50mm、h1=45mmが標準値
  2. ロール径(R)をmm単位で設定。鋼板用ワークロール径は通常φ600~φ800mm
  3. ロール幅(W)を入力。実機では幅2000mm超の広幅圧延機が一般的
  4. 「計算実行」をクリックすると圧下量Δh、接触弧長L、圧延荷重P、トルクMが同時算出
  5. 圧下率が15%を超える場合は警告表示。複数パスでの分圧が必要な可能性あり

具体的な計算例

SUS304ステンレス鋼板(降伏応力σy=210MPa)をロール径φ700mm、ロール幅1500mmで圧延する場合。初期板厚h0=40mm、目標板厚h1=36mm(圧下量Δh=4mm、圧下率10%)とすると、接触弧長L≈59.2mm、圧延荷重P≈1890kN、圧延トルク(両ロール)M≈55.7kN·mが算出される。この条件下では安定圧延が可能で、ロール偏心制御は最小限に抑制可能

実務での注意点

  1. 冷間圧延時は材料硬化により実際の荷重が計算値の1.2~1.5倍となるため、安全率を見込む
  2. 接触弧長が80mmを超えると前後ロール間の温度ムラが増加。最大圧下率は材種で異なり、低炭素鋼は20%以下、硬化鋼は8~12%が目安
  3. 圧下量が大きすぎる場合は複数パス(例:5mm→4mm→3mm)に分割し、各ステップで荷重・トルク再計算が必須