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半導体シミュレーター

ショックレーダイオード シミュレーター — pn 接合 I-V 特性

ショックレーのダイオード式 I = I_S(exp(V/nV_T) - 1) を実時間で計算します。飽和電流・順方向電圧・理想率・温度から、熱電圧 V_T = kT/q、動的抵抗 r_d = nV_T/I、消費電力 P = V·I を求め、pn 接合の半対数 I-V 曲線と複数温度での I-V 比較を可視化して半導体物理を直感的に理解できます。

パラメータ設定
飽和電流 log10 I_S
log A
I_S = 1.00 nA
順方向電圧 V_F
V
理想率 n
温度 T
°C

既定値 (I_S = 1 nA、V_F = 0.40 V、n = 1.0、T = 25°C = 298.15 K) では V_T ≈ 25.7 mV、I ≈ 5.7 mA、r_d ≈ 4.5 Ω、P ≈ 2.3 mW。順方向電圧 V_F を 0.6 〜 0.7 V に上げるとシリコン pn 接合の典型動作点に到達し、電流は数百 mA まで指数関数的に増加します。

計算結果
順方向電流 I
熱電圧 V_T
動的抵抗 r_d
消費電力 P
pn 接合と I-V 動作点

左:pn 接合の三角ダイオード記号 (アノード→カソード) と印加電圧 V、流れる電流 I。右:半対数 I-V 曲線 (横軸 V、縦軸 log|I|)。順方向では指数関数的に立ち上がり、逆方向では I ≈ -I_S に飽和します。黄色マーカーが現在の動作点 (V_F, I)。

温度比較 (25/75/125°C)

横軸:順方向電圧 V_F (V, 0 〜 1)、縦軸:電流 I (A、log10 スケール)。3 本の曲線は T = 25/75/125°C の I-V 特性です。高温ほど熱電圧 V_T が増え、同じ V でより大きな電流が流れます (実 pn では I_S の温度依存も加わるため、本ツールでは V_T 効果のみを示します)。現在の温度の曲線を太線で強調表示。

理論・主要公式

ショックレーのダイオード式:pn 接合における電流 I と印加電圧 V の関係を表す理想式です。

$$I = I_S\left(\exp\!\frac{qV}{nkT} - 1\right) = I_S\left(\exp\!\frac{V}{nV_T} - 1\right)$$

熱電圧 $V_T = kT/q$ は温度に比例し、室温 (300 K) で約 25.85 mV です:

$$V_T = \frac{kT}{q}\approx 25.85\,\mathrm{mV}\ \text{at}\ 300\,\mathrm{K}$$

動作点での動的抵抗 (微分抵抗) と消費電力:

$$r_d = \frac{dV}{dI} = \frac{nV_T}{I}, \qquad P = V\cdot I$$

$I_S$ は飽和電流 (A)、$n$ は理想率 (1 〜 2、拡散支配なら 1、再結合支配なら 2)、$k = 1.381\times10^{-23}\,\mathrm{J/K}$、$q = 1.602\times10^{-19}\,\mathrm{C}$。順方向 V > 0 では指数項が支配して I が急増、逆方向 V < 0 では I ≈ -I_S に飽和します。

ショックレーダイオード シミュレーターとは

🙋
電子回路の授業でダイオードを習ったんですけど、「ショックレーのダイオード式」って何ですか?順方向に 0.7 V でいいんじゃないんですか?
🎓
いい疑問だ。「シリコンダイオードは 0.7 V で導通」というのは便利な近似だけど、実は電圧と電流の関係はもっと滑らかな指数関数で、それを記述するのがショックレーのダイオード式 I = I_S(exp(V/nV_T) - 1) なんだ。本ツール既定値 (I_S = 1 nA、V_F = 0.40 V、n = 1.0、T = 25°C) で I ≈ 5.7 mA、r_d ≈ 4.5 Ω と出るはず。V_F = 0.40 V でもう mA オーダーの電流が流れていることに注目だ。「0.7 V で導通」は数百 mA 流したときの実用近似で、ショックレー式から見ると V_F は電流に対して 60 mV/decade (n=1 時) で対数的に決まる量だ。
🙋
熱電圧 V_T って何ですか?25.7 mV って出てますけど、なぜそんな中途半端な値なんですか?
🎓
熱電圧 V_T = kT/q は、ボルツマン定数 k と素電荷 q と絶対温度 T の比で、半導体物理の基本パラメータだ。「電子1個の持つ熱エネルギー kT を電圧に換算したもの」と覚えるといい。25°C (298.15 K) で V_T ≈ 25.7 mV、室温 27°C (300 K) で V_T ≈ 25.85 mV — 「室温で 26 mV」と覚えるのが業界の慣習だ。温度スライダーを動かしてみると、T = -40°C で V_T ≈ 20 mV、T = 150°C で V_T ≈ 36 mV と変化する様子が見える。この V_T が分母に来るから、ダイオードの I-V カーブの「立ち上がりの急峻さ」は温度の関数になる。
🙋
理想率 n って 1 と 2 でグラフがどう違うんですか?スライダーで動かすと曲線の角度が変わりますね。
🎓
n は「ダイオードの中で電流がどう運ばれるか」を表す経験パラメータだ。n = 1 は理想的な拡散電流支配 (中電流域)、n = 2 は空乏層中の再結合電流支配 (低電流域) で、実際のダイオードは電流に応じて n が変化する。半対数 I-V カーブの傾きは 60 mV/decade × n になるから、n = 1 なら 1 桁電流を増やすのに 60 mV 必要、n = 2 なら 120 mV 必要だ。本ツールで n を 1.0 → 2.0 にすると、同じ V_F = 0.4 V でも電流が約 √(5.7 mA) ≈ 75 μA 程度まで減るのが観察できる。LED の VI 特性は通常 n ≈ 1.5 〜 2.0 で、これがシリコンダイオード (n ≈ 1.2 〜 1.5) より立ち上がりが緩やかな理由だ。
🙋
動的抵抗 r_d = nV_T/I って何の役に立つんですか?普通の抵抗とは違うんですか?
🎓
動的抵抗 r_d は「ある動作点でダイオードに微小信号を重ねたときの実効抵抗」だ。普通のオームの法則で言う「直流抵抗 V/I」 (既定値で 70 Ω) とは違って、r_d は曲線の傾きの逆数で、本ツール既定値で 4.5 Ω と桁が違う。これは「微小信号に対するインピーダンス」で、定電流バイアスしたダイオードを 5 V 信号源に直結すると、ダイオードは 5 V/4.5 Ω ≈ 1 A 食ってしまう (実際は曲線が変わるので飽和するが、概念的にはそう)。応用としてはミキサ回路、検波回路、定電流源、温度センサーがあり、特に「ダイオード接続トランジスタ」での r_e = V_T/I_E はオペアンプ入力段の小信号モデルそのものだ。
🙋
温度を変えると曲線が左右にズレますね。実機でも同じことが起こるんですか?
🎓
本ツールの「温度比較」グラフで T = 25/75/125°C を見比べてみると、高温ほど曲線が左にズレる (同じ V でより大きな I が流れる) のがわかる。これは V_T の温度依存だけを反映したもので、実 pn ダイオードでは I_S 自体が温度とともに指数関数的に増加 (10°C で約 2 倍) する効果がもっと大きく、結果として「順方向降下電圧 V_F は約 -2 mV/K で温度上昇とともに低下」する。電源回路の整流ダイオードで「高温時のリーク電流増大」「ヒートシンクの設計マージン」が重要視される理由はここで、回路設計では V_F = 0.7 V を「室温の目安」と捉え、温度範囲全域でのワーストケースを別途検討する必要がある。

よくある質問

ショックレーのダイオード式 I = I_S(exp(qV/nkT) - 1) = I_S(exp(V/nV_T) - 1) は pn 接合の電流 I を、印加電圧 V、飽和電流 I_S、理想率 n、熱電圧 V_T = kT/q から表す理想式です。順方向 (V > 0) では I が指数関数的に増加し、逆方向 (V < 0) では I ≈ -I_S の一定値に飽和します。本ツール既定値 (I_S = 1 nA、V_F = 0.40 V、n = 1.0、T = 25°C) では I ≈ 5.7 mA、V_T ≈ 25.7 mV、r_d ≈ 4.5 Ω、P ≈ 2.3 mW と表示されます。
熱電圧 V_T = kT/q は、ボルツマン定数 k = 1.381×10⁻²³ J/K、素電荷 q = 1.602×10⁻¹⁹ C、絶対温度 T で決まります。室温 T = 300 K では V_T ≈ 25.85 mV となり、半導体物理の基本パラメータとして広く使われます。本ツール既定の 25°C (T = 298.15 K) では V_T ≈ 25.7 mV です。温度に比例して増加するため、高温ほど同じ電流を流すのに大きな V が必要に見えますが、実際は I_S の温度依存 (指数的増加) が支配的で、順方向降下電圧 V_F はシリコンで約 -2 mV/K で下がります。
理想率 (ideality factor) n は、ダイオード内の電流輸送機構を表す経験パラメータで、1 〜 2 の範囲を取ります。n = 1 は拡散電流支配の理想 pn 接合 (中電流域)、n = 2 は空乏層中の再結合電流支配 (低電流域) を意味します。実際のシリコンダイオードでは低電流で n ≈ 2、中電流で n ≈ 1、大電流では再び n > 1 となります。n を大きくすると同じ電圧での電流が減り、I-V 曲線の立ち上がりが緩やかになります。本ツールでは n = 1.0 〜 2.0 を 0.05 刻みで調整できます。
動的抵抗 r_d = dV/dI = nV_T/I は、ある動作点でのダイオードの小信号インピーダンスです。バイアス電流 I が大きいほど r_d が小さくなり、ダイオードは「電圧クランプ」として振る舞います。本ツール既定値 (I = 5.7 mA、n = 1、V_T = 25.7 mV) では r_d ≈ 4.5 Ω。LED の駆動回路、定電流源、温度センサーの設計で重要な指標で、ベース・エミッタ接合 (BJT) の小信号モデル r_e = V_T/I_E もまったく同じ式です。

実世界での応用

整流回路 (AC/DC 変換):家庭用 AC アダプターやスイッチング電源の入力段ブリッジ整流回路では、シリコン pn ダイオードが主流です。1 A 整流回路では V_F ≈ 0.9 V (大電流時にショックレー式の外側、体抵抗が支配)、電力損失 P = V_F · I ≈ 0.9 W/ダイオードとなり、4 個のブリッジ整流で 3.6 W が熱となります。本ツールで V_F を 0.9 V に設定すると I が数 A 級に達することが確認でき、放熱設計の必要性が直感的にわかります。ショットキーダイオード (V_F ≈ 0.3 V) を使うと損失を 1/3 に削減できる理由もここから明らかです。

LED 駆動回路の設計:赤色 LED (V_F ≈ 2.0 V、n ≈ 2.0、I = 20 mA) を 5 V 電源から駆動する場合、直列抵抗 R = (5 - 2.0)/0.02 = 150 Ω が必要です。動的抵抗 r_d = n·V_T/I = 2·25.7e-3/0.02 ≈ 2.6 Ω と R より 60 倍小さく、定電流動作が成立します。本ツールで n = 2.0、I_S を 10⁻¹⁰ A 程度に設定すると、LED 風の I-V 特性が再現できます。「温度上昇で V_F が低下 → 電流増加 → さらに加熱」の熱暴走を防ぐため、電流制限抵抗または定電流ドライバが必須です。

温度センサー (PN 接合温度計):定電流バイアスしたシリコンダイオードの V_F は約 -2 mV/K で線形に温度低下するため、安価な温度センサーとして使えます。10 μA バイアスで V_F (25°C) ≈ 0.55 V、V_F (75°C) ≈ 0.45 V となり、市販品 (LM35、AD590) の基本動作原理です。本ツールで I_S を 10⁻¹² A 程度、V_F を 0.55 V 付近に設定し、温度スライダーを 25 → 75°C に動かして V_F の温度依存性を観察できます。CPU の温度モニタダイオードもこの原理です。

ミキサ・検波回路 (RF/IF):ダイオードの非線形 I-V 特性 (指数関数) は、テイラー展開すると 2 次項を含むため、2 つの周波数を混合 (ミキシング) して和・差周波数を生成できます。AM ラジオの検波、レーダの周波数変換、サテライト LNB のダウンコンバートで使われます。動的抵抗 r_d が信号の整合に直結し、本ツールの r_d 値を 50 Ω に近づけるバイアス電流 (約 0.5 mA) の選定が高効率ミキサ設計の鍵となります。ショットキーダイオード (高周波低 V_F) が好まれる用途です。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解が 「シリコンダイオードは 0.7 V で導通、それ以下は流れない」 という単純化です。実際の I-V 特性は本ツールの半対数グラフが示すように滑らかな指数関数で、V_F = 0.4 V でも mA オーダーの電流が流れます。「導通電圧 0.7 V」は数百 mA 〜 1 A 級の動作点での近似であり、精密回路 (μA 級の微小電流測定、太陽電池の最大電力点追従) では本ショックレー式での厳密計算が必要です。本ツールで V_F = 0.3 〜 0.5 V のレンジでも電流が観測できることを確認し、「閾値電圧」の概念が便宜的な近似であると理解してください。

次に多いのが 「温度が変わっても 0.7 V は 0.7 V のまま」 という誤解です。実 pn ダイオードでは V_F が約 -2 mV/K で温度上昇とともに低下します (シリコンの場合、25°C で 0.7 V なら 75°C で 0.6 V)。本ツールの温度比較グラフではこの効果が V_T 経由でのみ反映されており、実際の I_S(T) 効果 (10°C で 2 倍) が含まれていない点に注意。設計時は産業温度範囲 (-40 〜 85°C) での V_F の振れ幅を必ず考慮し、定電圧駆動ではなく定電流駆動 (LED) または十分な余裕電圧設計 (リニア電源) が必要です。

最後に 「ショックレー式は完璧な物理式」 という思い込みです。実際は (1) 大電流域では半導体内部の体抵抗 (RS) が支配的になり傾きが急に減る、(2) 逆方向では逆飽和ではなく実は緩やかに増加 (ジェネレーション電流) し、ある電圧でアバランシェ・ツェナー降伏する、(3) 低電流域では再結合電流の影響で n が 2 に近づく、など実 pn 特有の効果が含まれません。本ツールは「中電流順方向領域での pn 接合の本質」を学ぶ理想モデルです。実機設計では SPICE モデル (Vto、Rs、Cjo、BV、Eg、Xti などのパラメータ追加) や実測 I-V カーブから個別フィッティングが必要です。