よくある誤解だが、答えは「いいえ、温度のせい」。c = √(γRT/M) には P が現れない — 圧縮率と密度で P が相殺するんだ。海面 15℃(T=288 K)で c=340 m/s、対流圏上部 -56℃(T=217 K)で c=295 m/s と、約 13% 遅くなる。これはほぼ全て温度低下による。本ツールで T スライダーを 217、288、500 と変えて √T 依存性を確かめてみて。比較曲線がきれいな放物線様(実際には √T)に並ぶのが見える。
よくある質問
理想気体公式 c = √(γRT/M) からわかるように、音速は分子量 M の平方根に反比例します。同じ温度・同じ γ(≈1.4 の二原子分子なら)であっても、水素 H₂(M=2 g/mol)の音速は約 1310 m/s と空気の約 4 倍にもなります。これは軽い分子ほど熱運動の速さが大きく、圧力擾乱を素早く伝えるためです。逆に CO₂(M=44 g/mol)では約 270 m/s に下がり、低音域の楽器音が変質します。本ツールで M スライダーを動かすと、この依存性が一目で確認できます。
意外に思われますが、理想気体中の音速 c = √(γRT/M) には圧力 P が現れません。なぜなら断熱変化での圧縮率 1/(γP) と密度 ρ = PM/(RT) が掛け合わさると P がきれいに相殺するからです。結果として標高 0 m と富士山頂で気温が同じなら音速も同じです。実際の高度変化での音速差は、ほぼすべて気温低下によるもので、対流圏では 1 km 上昇で約 6.5 K 低下、つまり c は約 0.3% ずつ遅くなります。航空機の対気速度計測ではこの温度補正が重要です。
本ツールは理想気体・凍結比熱の仮定で計算しており、200〜500 K の乾燥空気では実測値と 0.5% 以内で一致します。例えば 293 K(20℃)では計算値 343.1 m/s、JIS B 8005 の標準値 343.4 m/s で誤差は 0.1%。湿度の影響(水蒸気は M=18 g/mol で空気より軽いため音速を上げる)、解離が起こる超高温(>1500 K)、極低温での量子効果などは含みません。航空・空調設計の概算用途には十分な精度で、超音速機の予備設計でも Mach コーン推定の出発点として実用されます。
実世界での応用
航空機の対気速度計算と Mach 計:旅客機の Mach 計は、ピトー管で測った差圧を温度補正された音速で割って Mach 数を表示します。巡航高度 11 km の標準大気では T ≈ 217 K、c ≈ 295 m/s で、ボーイング 787 の巡航速度 250 m/s は M ≈ 0.85 となります。海面付近(T = 288 K, c = 340 m/s)の同じ対気速度なら M ≈ 0.74 で、高高度の方が同じ Mach に到達しやすいことがわかります。本ツールで T を 217 K、288 K と切り替えて c の差を確認すると、なぜ長距離航路が高高度を選ぶかが直感できます。