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音響シミュレーター

音速 シミュレーター — 理想気体中の音波伝播

比熱比 γ・分子量 M・温度 T と Mach 数から、理想気体中の音速 c・対象速度・Mach コーン半角・1 km 伝播時間を実時間で計算します。球面波伝播と c ∝ √T 曲線を可視化し、空気力学・音響学の基礎を直感的に学べます。

パラメータ設定
比熱比 γ
分子量 M
g/mol
温度 T
K
Mach 数 M

既定値は乾燥空気(γ = 1.40、M = 28.97 g/mol、T = 293 K)。普遍気体定数 R = 8.31446 J/(mol·K) を使用。Mach > 1 で Mach コーン半角 μ = arcsin(1/M) を表示。

計算結果
音速 c
音速 (km/h)
Mach M での速度
1 km 伝播時間
音波の伝播(球面波 / Mach コーン)

青円=音源/白同心円=球面波の波面/黄三角=対象(音源より高速のとき Mach コーンを生成)/赤線=Mach コーン(M > 1 のみ)/水色テキスト=半角 μ

音速 c vs 温度 T(気体別)

横軸=温度 T [K](200〜2000)/縦軸=音速 c [m/s]/青曲線=現在の気体(γ, M)/薄色曲線=H₂・He・空気・CO₂ の比較/黄点=現在の (T, c)

理論・主要公式

理想気体中の音波は断熱微小変動として伝わり、その位相速度は以下の閉じた式で書けます。

理想気体の音速:

$$c = \sqrt{\frac{\gamma R T}{M}}$$

Mach 数 M による対象速度と 1 km 伝播時間:

$$v = M\,c,\qquad t_{\rm km} = \frac{1000}{c}$$

超音速(M > 1)の Mach コーン半角:

$$\sin\mu = \frac{1}{M}\;\Rightarrow\;\mu = \arcsin\!\left(\tfrac{1}{M}\right)$$

$R = 8.31446$ J/(mol·K) は普遍気体定数、$\gamma$ は比熱比、$M$ は分子量 [kg/mol]、$T$ は絶対温度 [K]。圧力 $P$ は式に現れず、c は密度 $\rho$ ではなく $T$ と $M$ だけで決まります。

音速 シミュレーターとは

🙋
中学で「空気中の音速は約 340 m/s」と覚えましたが、これってどんな条件のときの値なんですか?気温や気体の種類で変わるんですよね?
🎓
いい質問だ。理想気体の音速は c = √(γRT/M) と書ける。γ は比熱比(空気は 1.40)、R は気体定数 8.314 J/(mol·K)、T は絶対温度、M は分子量だ。20℃(T=293 K)の乾燥空気で計算すると 343 m/s で、教科書の "340 m/s" はその丸め値だね。本ツールで γ=1.40、M=28.97 g/mol、T=293 K のまま「計算結果」を見てごらん。c=343.1 m/s、km/h 換算で約 1235 km/h と出るはずだ。
🙋
え、じゃあヘリウムを吸うと声が高くなるのって、ヘリウム中の音速が空気より速いからですか?
🎓
そのとおり!ヘリウムは M=4 g/mol、γ=1.66 で、室温の音速は約 1010 m/s — 空気の約 3 倍だ。声帯の振動数は変わらないけど、口腔内の共鳴周波数は音速に比例して上がる(パイプの共鳴 f=c/(4L) を思い出して)から、ヘリウムボイスはおよそ 1 オクターブ高く聞こえる。本ツールで M スライダーを 4 g/mol、γ を 1.66 に変えて c の変化を確かめてみて。比較プロットでヘリウムが H₂ に次いで上位に来るのも見えるよ。
🙋
Mach 数 M を 0.7 から 2.0 とかに変えると、グラフの右側のキャンバスが急に三角形になりますね。あれは何ですか?
🎓
それが Mach コーン — ソニックブームの円錐だ。音源が音速より速く動くと、音波の波面が音源の進行方向の後方に円錐状に集まる。半角は μ = arcsin(1/M) で決まり、M=2 で μ=30°、M=5 で約 11.5° と細くなる。F-22 戦闘機(M ≈ 2)の通過後に「ドーン」と聞こえるのは、この円錐が地上を掃過するときに鼓膜に届く圧力跳躍だ。本ツールで Mach 1.5、2.0、3.0 と変えて μ がどう細まるかを観察してみて。
🙋
高度が上がると音速が遅くなるって聞きますが、それは気圧が低いからですか?
🎓
よくある誤解だが、答えは「いいえ、温度のせい」。c = √(γRT/M) には P が現れない — 圧縮率と密度で P が相殺するんだ。海面 15℃(T=288 K)で c=340 m/s、対流圏上部 -56℃(T=217 K)で c=295 m/s と、約 13% 遅くなる。これはほぼ全て温度低下による。本ツールで T スライダーを 217、288、500 と変えて √T 依存性を確かめてみて。比較曲線がきれいな放物線様(実際には √T)に並ぶのが見える。

よくある質問

理想気体公式 c = √(γRT/M) からわかるように、音速は分子量 M の平方根に反比例します。同じ温度・同じ γ(≈1.4 の二原子分子なら)であっても、水素 H₂(M=2 g/mol)の音速は約 1310 m/s と空気の約 4 倍にもなります。これは軽い分子ほど熱運動の速さが大きく、圧力擾乱を素早く伝えるためです。逆に CO₂(M=44 g/mol)では約 270 m/s に下がり、低音域の楽器音が変質します。本ツールで M スライダーを動かすと、この依存性が一目で確認できます。
意外に思われますが、理想気体中の音速 c = √(γRT/M) には圧力 P が現れません。なぜなら断熱変化での圧縮率 1/(γP) と密度 ρ = PM/(RT) が掛け合わさると P がきれいに相殺するからです。結果として標高 0 m と富士山頂で気温が同じなら音速も同じです。実際の高度変化での音速差は、ほぼすべて気温低下によるもので、対流圏では 1 km 上昇で約 6.5 K 低下、つまり c は約 0.3% ずつ遅くなります。航空機の対気速度計測ではこの温度補正が重要です。
音源が音速 c より速く動くと、t 秒後の音波の到達半径 ct と音源の進行距離 vt = Mct の比は 1/M になります。これらが直角三角形の対辺と斜辺をなす幾何関係から、コーン半角 μ は sin μ = c/(Mc) = 1/M、つまり μ = arcsin(1/M) と書けます。M = 1 では μ = 90°(平面音波の前面が音源直上に集まる)、M = 2 では μ = 30°、M = 5 では約 11.5° と細くなります。F-15(M ≈ 2.5)のソニックブーム円錐は約 23.6° 半角で広がり、地上では幅数 km の「ブーム回廊」を通過します。本ツールで Mach > 1 にすると、この円錐角が動的に表示されます。
本ツールは理想気体・凍結比熱の仮定で計算しており、200〜500 K の乾燥空気では実測値と 0.5% 以内で一致します。例えば 293 K(20℃)では計算値 343.1 m/s、JIS B 8005 の標準値 343.4 m/s で誤差は 0.1%。湿度の影響(水蒸気は M=18 g/mol で空気より軽いため音速を上げる)、解離が起こる超高温(>1500 K)、極低温での量子効果などは含みません。航空・空調設計の概算用途には十分な精度で、超音速機の予備設計でも Mach コーン推定の出発点として実用されます。

実世界での応用

航空機の対気速度計算と Mach 計:旅客機の Mach 計は、ピトー管で測った差圧を温度補正された音速で割って Mach 数を表示します。巡航高度 11 km の標準大気では T ≈ 217 K、c ≈ 295 m/s で、ボーイング 787 の巡航速度 250 m/s は M ≈ 0.85 となります。海面付近(T = 288 K, c = 340 m/s)の同じ対気速度なら M ≈ 0.74 で、高高度の方が同じ Mach に到達しやすいことがわかります。本ツールで T を 217 K、288 K と切り替えて c の差を確認すると、なぜ長距離航路が高高度を選ぶかが直感できます。

ロケット・超音速機のソニックブーム評価:F-22 戦闘機(M ≈ 2)や SR-71 偵察機(M ≈ 3.2)が通過すると、地上に Mach コーンが届き「ドーン」という衝撃音となります。コーン半角は M=2 で 30°、M=3.2 で約 18° と狭くなり、地上での「ブーム回廊」幅は飛行高度と sin μ から計算できます。NASA の X-59 QueSST 機は機体形状を最適化してブーム強度を約 1/8 に下げる設計で、本ツールの Mach コーン可視化はこうした音響設計の入門に役立ちます。

音響工学・楽器設計:パイプオルガンや管楽器の共鳴周波数 f = c/(2L)(両端開)または f = c/(4L)(片端閉)には音速が直接入ります。室温 c=343 m/s の場合、開管 L=1 m では基音 f=171.5 Hz。冬場の冷えた室内(T=283 K, c=337 m/s)と夏場の暖かい部屋(T=303 K, c=349 m/s)では同じパイプでも 1.7% の音程差が出ます。コンサートホールでのチューニングがピアノ奏者の悩みの種になる物理的理由です。

超音波計測・流量計:気体配管の流量を超音波の上流/下流伝搬時間差から測る Transit-Time 流量計では、媒質の音速が直接精度に効きます。天然ガス(主成分 CH₄、M=16 g/mol、γ=1.31)の音速は室温で約 450 m/s と空気より速く、CO₂(c=270 m/s)は遅い。本ツールで M=16, γ=1.31 と入力するとメタン中の音速が確認でき、ガス組成変動による誤差解析の出発点になります。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「音速は気圧が高いほど速い」というものです。実際には c = √(γRT/M) に圧力 P は現れず、温度と分子量だけで決まります。なぜなら断熱圧縮率 1/(γP) と密度 ρ = PM/(RT) を掛け合わせると P が完全に相殺するからです。富士山頂(気圧 0.65 atm)と海面付近で気温が同じならば音速は完全に同じで、実際の高地での音速低下はすべて気温低下に起因します。本ツールで γ・M・T を固定したまま「気圧」のスライダーがそもそも存在しないことに注目してください — 入っていないのは作り忘れではなく、物理的に必要ないからです。

次に多いのが、「Mach 数は対気速度の絶対値」という勘違いです。Mach 数は M = v/c という比であり、音速 c は環境(T, γ, M)で変わるため、同じ Mach 数 1.0 でも海面(c=340 m/s)と成層圏(c=295 m/s)では絶対速度が約 50 m/s 違います。スペースシャトル再突入時の Mach 25 は高度 80 km の超低密度大気での値で、地上の Mach 25 とは全く異なる物理状況です。本ツールで T を 200 K と 500 K に切り替えて Mach 0.8 の v が変わることを必ず確認してください。

最後に、「Mach 1 の音速ジャンプ=シミュレーター内の不連続」と思いがちですが、c = √(γRT/M) は Mach に依存しない連続関数です。Mach 数を上げても気体中の音速 c そのものは変わらず、変わるのは「音源の進行速度」と「波面の幾何形状」だけです。M=1 を境に Mach コーンが現れるのは、音源が自分が出した波面に追いつくか追いこすかの幾何的な切り替えで、物質の音速は連続です。本ツールの Mach スライダーを 0.9→1.0→1.1 と動かすと c は同じだが μ が現れる/現れないの違いだけが起こることを確認してください。