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蓄電・EDLC

スーパキャパシタ EDLC Ragone 線図

電気二重層キャパシタ(EDLC)の蓄エネルギー・電力密度・RC 時定数を計算し、Ragone 線図上でリチウムイオン電池などと比較できるツールです。容量・定格電圧・等価直列抵抗・セル質量を変えると、用途(系統バッファ/回生/UAV/エンジン始動)に対する適性がリアルタイムで判定されます。

パラメータ設定
キャパシタタイプ
電極反応とサイクル寿命の前提
容量 C
F
定格電圧 V
V
等価直列抵抗 ESR
Ω
セルの直流抵抗。電力密度を決める支配因子
セル質量 m
g
用途
推奨される放電時間レンジで適性を判定
計算結果
蓄エネルギー (Wh)
エネルギー密度 (Wh/kg)
最大電力 (kW)
電力密度 (kW/kg)
RC 時定数 (s)
サイクル寿命 (cycle)
EDLC セル断面 — イオン吸着アニメーション

活性炭の細孔内で陰イオンと陽イオンが電極表面に吸着し、電気二重層を形成します。色はセルの充電率(緑→橙→赤)に対応します。

Ragone 線図 — 電力密度 vs エネルギー密度 (log–log)
蓄電デバイス比較 — エネルギー密度 (Wh/kg)
理論・主要公式

$$E = \tfrac{1}{2}\,C\,V^{2}, \qquad P_{\max} = \frac{V^{2}}{4\,\mathrm{ESR}}$$

蓄エネルギー E(J)と整合負荷時の最大電力 P_max(W)。C は容量、V は定格電圧、ESR は等価直列抵抗。エネルギーは電圧の2乗、最大電力も電圧の2乗で効く。

$$E_d = \frac{E}{m}, \qquad P_d = \frac{P_{\max}}{m}$$

単位質量あたりのエネルギー密度 E_d(Wh/kg)と電力密度 P_d(W/kg)。Ragone 線図はこの 2 つの軸で蓄電デバイスを比較する。

$$\tau_{RC} = C\cdot\mathrm{ESR}$$

RC 時定数。1τ で約 63%、5τ でほぼ完全放電。τ が大きいと高速応答用途には不向きで、用途選定の指針になる。

スーパキャパシタ EDLC Ragone 線図シミュレーターとは

🙋
スーパキャパシタって、コンデンサとリチウム電池のどっちなんですか?両方の良いとこ取りみたいに言われますけど、実際はどう違うんでしょう?
🎓
ざっくり言うと「電池の電極を細孔だらけの活性炭にして、表面積を稼いだコンデンサ」だね。普通のセラミックコンデンサが数 μF なのに対し、EDLC は同じ体積で 100F とか 3000F まで上がる。蓄エネルギーは ½CV² で出るから、C が桁違いに大きい分エネルギーも増える。ただし、電池みたいに化学反応で電子を出すわけじゃなく、電極表面にイオンが「貼り付くだけ」なんだ。だから、Li-ion 電池の 200 Wh/kg に対して、EDLC は 5〜10 Wh/kg しかない。逆に電力密度では Li-ion の 10〜30 倍出せる。
🙋
なるほど。じゃあ「Ragone 線図」って何を表しているんでしょう?左のパラメータをいじると右上のグラフでドットが動きますけど。
🎓
Ragone 線図は、横軸にエネルギー密度(Wh/kg)、縦軸に電力密度(W/kg)を両対数で取った蓄電デバイスの「地図」だよ。右上に行くほど「容量も大きく、瞬発力もある」理想的な蓄電だけど、現実には誰もそこには到達できない。各デバイスは「P × E ≒ 一定」の右下がりの帯に乗る。EDLC は左上(高 P・低 E)、Li-ion は右下(低 P・高 E)、燃料電池はさらに右(超高 E・低 P)に位置する。例えば C=100F・V=2.7V・mass=80g なら E_d≈1.3 Wh/kg、P_d≈4.6 kW/kg と、典型的な EDLC ゾーンにドットが落ちる。
🙋
用途のところで「回生ブレーキ」「エンジン始動」とありますけど、なんで EDLC が選ばれるんですか?普通のバッテリじゃダメなんでしょうか?
🎓
短時間に大電流を出し入れする用途では、Li-ion 電池だと寿命が一気に落ちるんだ。電池は内部の Li⁺ が電極格子に拡散しながら反応するから、急速充放電を繰り返すと活物質が膨張・収縮で割れる。EDLC はイオンが「吸着して離れる」だけだから、100万回サイクルしても劣化しにくい。例えばハイブリッド車の回生ブレーキは数秒で 50 kW くらい吸い込む必要があって、これを Li-ion でやると 5 年で容量半減。EDLC なら 15 年使える。エンジン始動も同じで、寒冷地で 1000 A 流す瞬間の電圧降下が ESR で決まるから、ミリオームの EDLC が有利だね。
🙋
最大電力 P_max = V²/(4·ESR) という式の「4」は何ですか?テキストには「整合負荷」と書いてありますけど。
🎓
いいところに気づいたね。電源(電圧 V・内部抵抗 ESR)に外部負荷 R_L をつなぐと、負荷で消費する電力は P = V²·R_L/(ESR+R_L)²。これを R_L で微分してゼロにすると R_L = ESR のとき最大になり、その値が V²/(4·ESR) になる。これを「整合負荷時の最大電力」と呼ぶ。実際の運転では負荷で半分、ESR で半分のエネルギーが熱になるので効率は 50% しかない。だから現場では「P_max の 30〜50% 程度」を実用上の出力上限とみなす設計が多いんだ。
🙋
最後にひとつ、RC 時定数が 0.5 秒って出ましたが、これは「0.5 秒で放電が終わる」という意味ですか?
🎓
いや、1τ では電荷が約 63% 抜ける時間で、5τ でほぼ完全放電(99%)。τ=0.5s のセルなら 0.5 秒で 63%、2.5 秒で 99% という感じだね。τ が大きい(ESR が高い/C が大きい)と、高速応答用途では電圧降下が大きくなり過ぎる。例えば UAV のモータ加速で 10 ms 単位の応答が必要なら τ は 10 ms 以下に抑えたい。逆に系統バッファのように「数分かけて充放電」する用途なら τ=数秒でも問題ない。下のグラフのドットの「縦位置」と τ の組み合わせで、用途適合性が見えてくるよ。

よくある質問

コンデンサに蓄えられる静電エネルギーは、電圧 0 から V まで充電する間に電源がした仕事を積分したもので、U = ∫₀ᵛ C·v·dv = ½CV² となります。100F のセルを 2.7V まで充電すると U = 0.5×100×7.29 = 364.5 J ≒ 0.10 Wh です。電池の場合、電圧はほぼ一定(プラトー)のまま電荷が流れるため U ≒ V·Q ですが、EDLC は電圧が直線的に下がるため、同じ電荷でも半分のエネルギーしか取り出せないのが特徴です。
EDLC の電荷蓄積は電極表面でのイオン吸脱着(電気二重層)だけで起こり、化学反応や Li⁺ の格子内拡散がありません。そのため等価直列抵抗(ESR)が ミリオーム級と非常に小さく、整合負荷時の最大電力 P_max = V²/(4·ESR) は kW/kg オーダになります。一方リチウムイオン電池は電極反応律速で、典型値は 300 W/kg 程度です。回生ブレーキやエンジン始動など、短時間に大電流が必要な用途で EDLC が選ばれるのはこのためです。
Ragone 線図は横軸にエネルギー密度 (Wh/kg)、縦軸に電力密度 (W/kg) を取り、両軸とも対数の図です。右上に行くほど「多くを長時間出せる」良い蓄電デバイスですが、現実には右上の隅には誰も到達できず、各デバイスは曲線(一定の積 P×E)に沿って分布します。EDLC は左上(高電力・低エネルギー)、Li-ion は右下(高エネルギー・低電力)に位置し、両者を組み合わせるハイブリッド蓄電が近年の主流です。
対称 EDLC(活性炭電極)では電気化学的反応がほぼ無いため、25℃・定格電圧以下の運転であれば 100 万サイクルでも容量低下は 20% 程度に留まります。一方、温度を 65℃に上げる、または定格を 5% 超えるだけで寿命は 1/10 以下に落ちます。LIC(リチウムイオンキャパシタ)は片側に Li 挿入反応があるため寿命は 1〜10 万サイクル、擬似容量型は 10 万サイクル程度が現実的な目安です。データシートの寿命値は必ず温度・電圧条件と併せて確認してください。

実世界での応用

系統バッファ(電力系統の周波数制御):太陽光や風力の変動を秒〜分単位で吸収する FR(Frequency Regulation)用途では、深い充放電を 1 日に何百回も行うため、Li-ion 電池では寿命が持ちません。MW 級の EDLC バンク(数千セル直並列)が、PCS と組み合わせて系統に並列接続され、瞬時の電力波形を平滑化します。容量よりも電力密度・寿命が支配的なため、Ragone 線図上の「左上」のデバイスが選ばれます。

ハイブリッド車・電動バスの回生ブレーキ:減速時に発電される運動エネルギー(数十 kW を 数秒間)を Li-ion で受けると充電電流が大きすぎて寿命を縮めます。EDLC モジュールを Li-ion と並列に置くことで、急速な電流ピークを EDLC が受け持ち、平均電流のみ Li-ion に流す「電力分担」方式が主流です。マツダの i-ELOOP、PSA・トヨタの一部システムなどが量産採用しています。

UAV(無人航空機)の離陸・推力ピーク:マルチコプターは離陸瞬間に定常飛行の 2〜3 倍の電力を必要としますが、これを電池のサイズで持つと過剰質量になります。小型 EDLC(数百 F 級)を主バッテリと並列にし、上昇・急加速時のピークを EDLC で受け持つ設計が増えています。本ツールで質量 80g・容量 100F といったセルを想定すると、ピーク 4 kW/kg の電力密度が得られる試算が立ちます。

大型ディーゼル・舶用エンジンの始動:寒冷地のディーゼルエンジン始動には 1000A 超の突入電流が必要で、鉛蓄電池では低温時に容量が半減してしまいます。EDLC スタートモジュール(12V/24V 系)を組み合わせ、始動瞬間の電流を EDLC が供給する設計が普及しています。ESR が ミリオーム以下なので、電圧降下が小さく、−30℃でも安定して始動できるのが利点です。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「EDLC は Li-ion 電池を置き換えられる」という誤解です。Ragone 線図を見れば一目瞭然ですが、エネルギー密度は 1〜10 Wh/kg と Li-ion(200 Wh/kg)の 1〜5% しかありません。スマートフォンを EDLC で動かしたら、同じ駆動時間を得るのに 50 倍の重さの電池が必要になります。EDLC は「電力を出すデバイス」であって、エネルギーを蓄えるデバイスではない、と割り切るのが基本です。両者を組み合わせる「ハイブリッド蓄電」設計を最初から想定しましょう。

次に、「P_max を実用出力と勘違いする」こと。整合負荷時の P_max = V²/(4·ESR) では、負荷と ESR で電力が半分ずつ消費されるため効率は 50% しかありません。実用設計では、ESR での発熱を許容温度内に収めるため、P_max の 30〜50% 程度を出力上限とします。例えば本ツールで P_max=364W と出ても、連続定格は 100〜150W 程度と考えるのが安全です。さらに、ESR は温度・周波数・SOC によって 2〜5 倍変動するため、データシートの最悪値で再計算してください。

三つ目は、「直列接続時の電圧バランス」。EDLC 単セルは 2.5〜3.0V 程度の定格しかないため、48V 系で組むには 18〜20 セル直列が必要です。各セルの容量・漏れ電流のばらつき(±20%)により、長時間放置すると電圧が偏り、定格超過セルが急速に劣化します。必ずアクティブバランス回路(個別放電抵抗または DC-DC)を入れ、電圧偏差を ±50mV 以内に保つこと。これを怠ると寿命が 1/10 以下に落ちます。

使い方ガイド

  1. 静電二重層キャパシタ(EDLC)の基本仕様を入力:電気容量(F)、定格電圧(V)、等価直列抵抗ESR(Ω)、セル質量(g)
  2. シミュレーターが蓄エネルギー(Wh)、エネルギー密度(Wh/kg)、最大電力(kW)、電力密度(kW/kg)、RC時定数(s)、サイクル寿命(cycle)を自動計算
  3. Ragone線図上に貴社EDLCの性能点をプロット、リチウムイオン電池・鉛蓄電池と直接比較して用途適合性を判定

具体的な計算例

3000F、2.7V定格、ESR 0.8mΩ、質量68gのEDLCセル(イオニクス製など)の場合:蓄エネルギー=3.645Wh、エネルギー密度=53.6Wh/kg、最大電力=9.11kW、電力密度=133.8kW/kg、RC時定数=204msec、サイクル寿命=100万回。回生ブレーキ車載では電力密度が鉛蓄電池(100kW/kg)を上回り、短時間出力で優位。エンジン始動補助では0.1秒以内の瞬発力が必要なため時定数204msecが有利。

実務での注意点