表面張力・毛細管現象 戻る
流体力学・界面化学

表面張力・毛細管現象計算ツール

表面張力・管半径・接触角から毛細管上昇高さ、Laplace 圧、Bond 数をリアルタイム計算。液滴の接触角変化を Canvas 描画でアニメーションし、水・エタノール・水銀・液体金属の挙動の違いまで一画面で確認できます。

パラメータ

クイック設定
計算結果
親水性(θ = 20°)
毛細管上昇高さ
Laplace圧差
ボンド数 Bo
引き上げ力
可視化
左:毛細管断面(青は液面高さ) 右:液滴の接触角
1
可視化
理論・主要公式

$h = \dfrac{2\gamma \cos\theta}{\rho g r}$

Laplace 圧差

$\Delta P = \dfrac{2\gamma}{r}$

Bond 数

$Bo = \dfrac{\rho g r^2}{\gamma}$

理解を深める対話

🙋
先生、コップの縁で水面が「メニスカス」って上に湾曲しているのはなぜですか?水が勝手に上がっていくのが不思議で。
🎓
水とガラスの間に「付着力(adhesion)」が働いているからだよ。水分子はガラス表面のシラノール基(-SiOH)と水素結合を形成するほど引き合う。この付着力が水分子同士の「凝集力(cohesion)」より強いから、水は壁に沿って広がろうとする。その結果として接触角が小さくなり(水-ガラスで約20°)、メニスカスが上向きに湾曲するんだ。
🙋
じゃあ水銀温度計の水銀が管の中で逆にへこんでいるのはなぜですか?
🎓
水銀はガラスとの付着力より水銀原子同士の金属結合(凝集力)のほうがはるかに強い。だから接触角が約140°になって「ガラス壁から離れようとする」。メニスカスが下向きになって、Jurin式で $h = 2\gamma\cos(140°)/(\rho g r)$ を計算すると cos が負なので h も負、つまり下降(毛細管下降)になるんだよ。プリセットで「水銀」を選ぶとすぐ確認できる。
🙋
管が細いほど水が高く上がるって本当ですか?植物の水の吸い上げはこれで説明できますか?
🎓
確かに Jurin 式で h は r に反比例する。水(γ=72.8 mN/m、θ=20°)の場合:r=1 mm で h≈14 mm、r=0.1 mm で h≈140 mm。でも高さ100 mの大木に水を届けるのは毛細管現象だけでは無理。植物の主な仕組みは「蒸散-引張力メカニズム」で、葉からの蒸散で水柱が引っ張られる。毛細管現象はその補助的な役割を担っているんだ。
🙋
蓮の葉の「ロータス効果」って何ですか?撥水加工との違いは?
🎓
蓮の葉の表面には直径数μmのマイクロワックス突起+その上にナノスケールの微細構造という「二重構造」がある。液滴はこれらの突起の先端にしか接触できないから実際の接触面積が面積の数%しかない。結果として接触角が160°以上、傾け角3〜5°で転がり落ちる。普通の撥水コーティング(フッ素系)は接触角120〜140°程度で、ロータス効果には及ばない。最近のゴアテックスや車のガラスコーティングはこのナノ二重構造を人工的に再現しているよ。
🙋
ボンド数って小さければ小さいほどいいものですか?工業的に使う場面はどこですか?
🎓
善悪ではなく「どの物理が支配的か」を示す指標だよ。Bo ≪ 1(表面張力支配)は、インクジェットプリンターの液滴制御(10〜100 μm)、マイクロ流体デバイス、半導体ウェーハのフォトレジスト塗布などに重要。Bo ≫ 1(重力支配)は大型タンクの液体挙動や波動計算で考慮する。毛細管長 $l_c = \sqrt{\gamma/(\rho g)}$ が境界で、水なら約2.7 mm。これより小さなスケールでは表面張力が無視できない。

よくある質問

表面張力とはどういう現象ですか?
液体表面の分子は内部より隣接分子数が少ないため余分なエネルギーを持ちます。液体は表面積を最小にすることでエネルギーを減らそうとし、これが表面張力として観測されます。 単位長さあたりの力(N/m)または単位面積あたりのエネルギー(J/m²)として表されます。水20℃で72.8 mN/m、エタノール22.3 mN/m、水銀485 mN/mです。
毛細管現象はなぜ起きますか?
固体-液体間の付着力が液体の凝集力より大きい(接触角θ < 90°)場合、液体は管壁に広がろうとします。 これによりLaplace圧 ΔP = 2γcosθ/r が生じ、液体を押し上げます。最終的に $h = 2\gamma\cos\theta/(\rho g r)$ の高さで重力とつり合います(Jurinの式)。
水銀が毛細管内で下がるのはなぜですか?
水銀とガラスの接触角は約140°で cos(140°) ≈ −0.766 < 0 となるため、Jurin式の上昇高さが負(下降)になります。これを毛細管下降(capillary depression)といいます。 水銀温度計でメニスカスが下向きに湾曲しているのがこの現象です。また水銀のガラス容器への親和性が低いため、液体金属の取り扱いには特別な考慮が必要です。
撥水加工(ロータス効果)はどうやって機能しますか?
フッ素系化合物で表面エネルギーを低下させると接触角が120〜140°程度になります。さらにマイクロ+ナノの二重微細構造(ロータス効果)では実際の接触面積が数%まで減り、接触角160°以上、傾け角3°以下で液滴が転がります。 応用例:防汚ガラス、撥水テキスタイル(ゴアテックス)、車のボディコーティング、半導体フォトレジスト塗布制御などです。
ボンド数(Bond number)とは何ですか?
ボンド数 $Bo = \rho g r^2 / \gamma$ は重力と表面張力の相対的な大きさを示す無次元数です。毛細管長 $l_c = \sqrt{\gamma/(\rho g)}$ (水:約2.7 mm)を用いると $Bo = (r/l_c)^2$ とも表せます。 Bo ≪ 1 では表面張力支配(球形液滴、マイクロ流体)、Bo ≫ 1 では重力支配(大型容器、波)。インクジェットプリンター(10〜100 μm液滴)はBo ≈ 10⁻³ 〜 10⁻⁵ で強く表面張力支配されています。

表面張力・毛細管現象計算ツールとは

表面張力・毛細管現象計算ツールの物理モデルでは、液体と固体壁面の間に働く分子間力と表面張力の釣り合いに基づき、毛細管内の液面上昇高さを導出する。円管の場合、上昇高さ \( h \) は、表面張力 \( \gamma \)、管半径 \( r \)、接触角 \( \theta \)、液体密度 \( \rho \)、重力加速度 \( g \) を用いて次式で与えられる。 $ h = \frac{2\gamma \cos\theta}{\rho g r} $ この式は、管壁に沿った表面張力の鉛直成分が液柱の重量と釣り合う条件から得られる。また、液面内外の圧力差であるLaplace圧 \( \Delta p \) は、曲率半径を考慮して次式で表される。 $ \Delta p = \frac{2\gamma \cos\theta}{r} $ さらに、表面張力と重力の相対的な強さを示す無次元数として、ボンド数 \( \mathrm{Bo} = \rho g r^2 / \gamma \) を定義し、この値が小さいほど表面張力が支配的となる。本ツールでは、これらのパラメータをリアルタイムで調整し、液滴の接触角変化に伴う形状の変化をCanvas上で視覚的に確認できる。

実世界での応用

産業での実際の使用例
半導体製造業界では、フォトレジスト塗布工程における液滴の広がり制御に本ツールを活用。例えば、東京エレクトロン社の塗布装置では、レジストの表面張力とウエハー上の接触角から毛管上昇高さを計算し、均一な薄膜形成に寄与。また、自動車部品メーカーでは、エンジンオイルのウィッキング現象(細隙への浸透)を評価し、焼き付き防止設計に応用している。

研究・教育での活用
大学の化学工学実験では、学生が液滴の接触角をスライダーで変化させながらLaplace圧と毛管上昇高さの関係を視覚的に学習。Canvas描画により、親水性・疎水性表面での液滴形状の違いを即座に確認でき、界面化学の理解を深める教材として利用されている。

CAE解析との連携や実務での位置付け
本ツールは、CFD(流体解析)の前処理段階で境界条件の表面張力パラメータを決定するために使用。例えば、インクジェットノズル内のメニスカス挙動を解析する際、実測の接触角と管径から計算したLaplace圧をCAEモデルに入力し、液滴吐出シミュレーションの精度を向上させる。設計現場では、試作前に毛細管現象の影響を簡易評価するスクリーニングツールとして位置付けられている。

よくある誤解と注意点

「毛細管現象による液面の上昇高さは、管の半径が小さいほど大きくなる」と思いがちですが、実際には管径が極端に小さい場合(サブミクロンオーダー)、液体分子間力や壁面との相互作用が支配的となり、Jurinの式で予測される値から乖離します。また、「接触角が小さいほど必ず上昇高さが大きくなる」と考えられがちですが、実際には接触角が0°に近づくと理論上の上昇高さは発散しますが、現実には重力と表面張力の釣り合いにより有限値に収束するため、極端な条件設定には注意が必要です。さらに、「Laplace圧は液滴内部で均一」と思いがちですが、実際には液滴が変形している場合や重力の影響が無視できない場合、曲率半径が場所によって異なるため圧力分布に勾配が生じます。本ツールでは理想的な球面を仮定しているため、非球面変形が顕著な条件では計算結果が実現象と一致しない点に注意してください。