ヤング・ラプラス シミュレーター 戻る
表面・界面シミュレーター

ヤング・ラプラス シミュレーター — 表面張力と毛細管現象

表面張力 γ・曲率半径 R・接触角 θ・密度 ρ から、球面液滴のラプラス圧 ΔP = 2γ/R、円柱液柱 ΔP = γ/R、シャボン玉 ΔP = 4γ/R、ジューランの毛細管上昇 h、ボンド数 Bo をリアルタイムに計算します。液滴・毛細管・シャボン玉の模式図と R-ΔP 比較曲線で、界面物理を直感的に学べます。

パラメータ設定
表面張力 γ
mN/m
曲率半径 R
mm
接触角 θ
deg
液体密度 ρ
kg/m³

既定値は水(20℃、γ = 72.8 mN/m を 73 に丸め、ρ = 1000 kg/m³、θ = 0°)。重力加速度 g = 9.81 m/s² を使用。R 単位は mm、γ 単位は mN/m(= 10⁻³ N/m)。

計算結果
球面ラプラス圧 2γ/R
円柱面ラプラス圧 γ/R
毛細管上昇 h
ボンド数 Bo
液滴・毛細管・シャボン玉の模式図

左=球面液滴(半径 R、内圧 P_in と外圧 P_out、ΔP=2γ/R)/中=毛細管(接触角 θ、上昇高さ h)/右=シャボン玉(薄膜 2 面で ΔP=4γ/R)

曲率半径 R に対するラプラス圧 ΔP(log-log)

横軸=R [mm](0.005〜10、対数)/縦軸=ΔP [Pa](対数)/青=球面 2γ/R/緑=円柱 γ/R/赤=シャボン玉 4γ/R/黄点=現在の R

理論・主要公式

気液界面の曲率は内外の圧力差を生み、ヤング・ラプラスの式で記述されます。

球面液滴・気泡(曲率半径 R):

$$\Delta P = \frac{2\gamma}{R}$$

円柱液柱(半径 R、軸対称):

$$\Delta P = \frac{\gamma}{R}$$

シャボン玉(内外の 2 面):

$$\Delta P = \frac{4\gamma}{R}$$

ジューランの毛細管上昇(半径 r、接触角 θ):

$$h = \frac{2\gamma\cos\theta}{\rho g r}$$

ボンド数(重力と表面張力の比):

$$\mathrm{Bo} = \frac{\rho g R^{2}}{\gamma}$$

$\gamma$ は表面張力 [N/m]、$R$ は曲率半径 [m]、$\theta$ は接触角、$\rho$ は液体密度 [kg/m³]、$g = 9.81$ m/s² は重力加速度。Bo < 1 で表面張力支配、Bo > 1 で重力支配。

ヤング・ラプラス シミュレーターとは

🙋
水滴って小さくなるほど球に近づきますよね。あれって表面張力のせいだと習いましたが、内圧と外圧ってどうやって計算するんですか?
🎓
いいところに気づいたね。ヤング・ラプラスの式 ΔP = 2γ/R がそれだ。表面張力 γ が界面を縮める「ゴム膜」のように働き、半径 R の球面では内圧が外圧より 2γ/R だけ高くなる。本ツールで γ=73 mN/m(水)、R=0.5 mm のままにすると ΔP = 292 Pa と出る。半径 0.05 mm の霧粒なら 10 倍の 2920 Pa にもなり、これが小液滴ほど蒸発しにくくなる Kelvin 効果の入口だ。
🙋
真ん中の毛細管の絵で h=29.8 mm って出てますが、これはガラスの細い管に水を立てたら 30 mm くらい上がるってことですか?
🎓
そのとおり。ジューランの式 h = 2γcosθ/(ρgr) で、半径 0.5 mm のガラス管に水(θ ≈ 0°)を立てると 30 mm くらい上昇する。これを直径 0.1 mm(R=0.05 mm)に細くすると h は 5 倍の約 150 mm — ガーゼやスポンジが水をすぐ吸い上げる原理だ。木の樹液が樹冠まで運ばれるのも、根の道管(半径 5〜100 μm)の毛細管力+蒸散による負圧の合わせ技だよ。
🙋
右側のシャボン玉の式が 4γ/R になっている理由がよくわかりません。なぜ 2 倍になるんですか?
🎓
シャボン玉の薄い石鹸膜は内側と外側の 2 つの気液界面を持つからだ。それぞれが 2γ/R を生み、足し合わせて 4γ/R になる。半径 5 mm のシャボン玉(γ ≈ 25 mN/m)なら ΔP = 4×0.025/0.005 = 20 Pa だけ内圧が高い。小さなシャボン玉と大きなシャボン玉をストローでつないだ実験では、小さい方の高い内圧で気体が大きい方へ流れ、大きい方がさらに膨らむ — これは結合シャボン玉が安定しない有名な事例だね。
🙋
「ボンド数 0.034」と表示されますが、これは何の指標ですか?
🎓
ボンド数 Bo = ρgR²/γ は重力と表面張力の比だ。水・R=0.5 mm では Bo=0.034 と小さく、表面張力支配の領域 — 雨粒は球形を保てる。R を 5 mm に上げると Bo=3.4 で重力支配となり、雨粒は扁平な「ハンバーガー型」に変形する。境界はおよそ Bo ≈ 1、水なら R ≈ 2.7 mm の毛管長 √(γ/ρg) だ。微小重力(ISS の宇宙ステーション)では g がほぼ 0 で Bo→0、コップの水も球状の塊になるのを動画で見たことがあるかな?

よくある質問

球面液滴は外界と液体の境界が 1 面ですが、シャボン玉は薄膜の内側と外側の 2 面が空気と接します。それぞれの面で 2γ/R の圧力差が生じ、合計 4γ/R が膜の内側にかかります。半径 5 mm のシャボン玉(γ ≈ 25 mN/m)では ΔP ≈ 20 Pa と意外に小さく、強く吹くとすぐに割れる理由がここにあります。本ツールで R = 5 mm に設定すると、球面・円柱・シャボン玉の 3 つの曲線がきれいに 2:1:4 の比で並ぶのが確認できます。
ジューランの式 h = 2γ cosθ/(ρgr) で、上昇高さは管半径 r に反比例します。これは表面張力が周長 2πr に比例するのに対し、持ち上げる液柱重量は πr²h ρg と半径の 2 乗で増えるため、釣り合うと h ∝ 1/r になるからです。直径 0.1 mm のガラス毛細管に水を入れると h ≈ 30 cm にもなり、植物の道管が水を樹冠まで運ぶ仕組みの一部を担っています。本ツールで R を 0.5 → 0.1 mm に下げると h が 5 倍に跳ね上がるのが見えます。
ボンド数 Bo = ρgR²/γ は重力と表面張力の比で、Bo ≪ 1 なら表面張力支配(小さな液滴は球形)、Bo ≫ 1 なら重力支配(大きな水溜まりは平面状)です。境界はおよそ Bo ≈ 1 で、水の場合 R ≈ 2.7 mm(毛管長 √(γ/ρg))が目安。雨粒が直径 5 mm 以上で扁平になるのも Bo > 1 の領域に入るためです。本ツールで R を 0.5 mm → 5 mm と動かすと Bo が 0.034 → 3.4 と 100 倍変化し、表面張力支配から重力支配への遷移が一目でわかります。
θ が 90° を超えると cosθ が負になり、毛細管上昇 h が負(つまり下降)になります。例えば水銀(θ ≈ 140°)をガラス毛細管に入れると、cos140° ≈ −0.77 で液面が周囲より下がります。これは水銀分子間の凝集力がガラスへの付着力より大きいためで、温度計のメニスカスが上向きに凸になる物理的理由です。本ツールで θ = 130° に設定すると h が負の値で表示され、撥水コーティング表面(θ > 90°)でも同じ現象が起きることが確認できます。

実世界での応用

インクジェットプリンタの液滴吐出設計:家庭用インクジェットのノズル直径は 20〜50 μm(R=10〜25 μm)で、本ツールに R=0.025 mm、γ=30 mN/m(インク)を入力すると ΔP=2400 Pa という吐出に必要な最低圧力が出ます。実際のサーマル方式では発熱体で 10⁵ Pa 以上のバブル圧を生成して液滴を打ち出しますが、ヤング・ラプラスの式は「最低でもこの圧力が必要」というベンチマークになります。ノズルの製造誤差で R が 5% ずれると ΔP も 5% ずれ、印字品質に直結します。

植物の水分輸送と土壌物理:樹高 100 m を超えるセコイアの樹冠まで水が運ばれる仕組みは、根毛・道管(半径 5〜100 μm)の毛細管力と葉からの蒸散による負圧(−1 MPa 以上)の合わせ技です。本ツールで R=0.005 mm、γ=72.8 mN/m を入れると h=2.97 m と、毛細管だけで 3 m 上がる計算になります。土壌の水分保持能も、土の粒子間隙(数〜数百 μm)が形成するメニスカスの ΔP によって決まり、Bo の値が灌漑設計の指標です。

マイクロ流体・MEMSデバイス:幅 100 μm のマイクロ流路に水を流す際、ヤング・ラプラスの式で見積もる毛細圧 (ΔP ≈ 1500 Pa) が外部ポンプ圧と同等のオーダーになるため無視できません。Lab-on-a-chip では、わざと撥水コーティング(θ > 90°)でバルブを作り、必要な閾値圧で初めて流れる「キャピラリーバルブ」を実装します。本ツールで θ=130°、R=0.05 mm を試すと h=−14.8 mm の負の上昇が出て、流体閉塞のメカニズムが直感できます。

気泡・噴霧の物理:炭酸飲料や醸造の発酵タンクで生成される CO₂ 気泡は、核生成直後(R≈1 μm)には ΔP=146 kPa という大きな内圧で過飽和液体に「成長すべきか溶解すべきか」の境界を作ります。R が増えると ΔP は急減し、可視サイズ(R=1 mm)で 146 Pa まで下がります。スプレー塗装の液滴サイズ分布や、原子炉冷却系の沸騰危機(DNB)現象の理解にも、Young-Laplace は出発点として広く使われます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「液滴の内圧は半径によらない」というものです。実際にはヤング・ラプラスの式 ΔP = 2γ/R で、内圧は半径に反比例して増大します。半径 1 mm の水滴で ΔP=146 Pa、半径 1 μm の霧粒では 146 kPa と 1000 倍にもなり、これが Kelvin 効果(小液滴ほど飽和蒸気圧が高く、過飽和雲の中で大きな液滴が小さな液滴の犠牲で成長する Ostwald 熟成)の原因です。本ツールで R を 0.005 → 10 mm と log-log プロットで動かすと、ΔP が直線的に減少(傾き −1)するのが確認できます。

次に多いのが、「毛細管上昇は重力に逆らう永久エネルギー源」という誤解です。ジューランの上昇は表面エネルギーの解放であり、上昇が止まった時点で系のエネルギーは最小化されています。下げて元に戻せば吸収した位置エネルギーが必要で、永久機関にはなりません。本ツールで Bo の値が示すように、Bo > 1 の領域では重力が表面張力を圧倒するため、毛細管上昇は半径に応じて自然に頭打ちになります。

最後に、「シャボン玉の式 4γ/R は石鹸膜だけの特殊式」と思いがちですが、これは「2 つの気液界面を持つ薄い液膜」一般に当てはまります。例えばビールの泡やフォームコンクリート、肺胞のサーファクタント膜など、薄膜状の構造はすべて 4γ/R 相当の内圧差を持ちます。逆に、空気中に浮かぶ水滴(界面 1 面)と水中の気泡(界面 1 面)はどちらも 2γ/R で、「気泡は気体中・液体中で違う」というのも誤解。本ツールの 3 曲線を見比べて、係数の違いが「界面の枚数」に対応していることを覚えておいてください。